クビワオオコウモリ

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クビワオオコウモリ
クビワオオコウモリ亜種ヤエヤマオオコウモリ
クビワオオコウモリ
亜種ヤエヤマオオコウモリ
Pteropus dasymallus yayeyamae
保全状況評価[a 1][a 2]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: コウモリ目 Chiroptera
: オオコウモリ科 Pteropodidae
: オオコウモリ属 Pteropus
: クビワオオコウモリ
P. dasymallus
学名
Pteropus dasymallus
Temminck, 1825
和名
クビワオオコウモリ
英名
Ryukyu flying fox
クビワオオコウモリの生息域

クビワオオコウモリPteropus dasymallus)は、哺乳綱コウモリ目(翼手目)オオコウモリ科オオコウモリ属に分類されるコウモリ。

分布

P. d. dasymallus エラブオオコウモリ
日本悪石島口永良部島宝島中之島平島固有亜種[1][a 3]
P. d. daitoensis ダイトウオオコウモリ
日本(北大東島南大東島[1][2][3][a 3]固有亜種
P. d. formosus タイワンオオコウモリ
台湾(緑島)[3]固有亜種
P. d. inopinatus オリイオオコウモリ
日本(沖縄島および周辺の島嶼)[1][3]固有亜種
P. d. yayeyamae ヤエヤマオオコウモリ
日本(宮古列島八重山列島波照間島[3]固有亜種

フィリピン北部の島嶼で確認例があるが詳細は不明[3]。記載者による屋久島での分布記録があるものの発見例がなかったため疑問視されていたが、1992年に基亜種の死骸発見例があり口永良部島からの飛来、あるいは分布しているが生息数が極めて少なく発見例がなかったと考えられている[4]

形態

夜間のクビワオオコウモリの動画

体長19-25センチメートル[1]体重0.3-0.5キログラム[1]。背面を被う体毛は2センチメートル以上に達する[3]。脛背面も体毛で被われる[1][3]。背面の毛衣は暗褐色[2]。頸部に首輪状の淡色斑が入る[3]

上顎の切歯は小型で、上顎前方の小臼歯がないかあっても痕跡的[1]

P. d. dasymallus エラブオオコウモリ
前腕長12-14.5センチメートル[a 3]
P. d. daitoensis ダイトウオオコウモリ
前腕長12-14.5センチメートル[3]。頸部だけでなく額や頭頂部、胸部や腹部に白や淡黄色の斑紋が入る個体が多い[3]。また頸部で首輪状の淡色斑が途切れない[3]
P. d. inopinatus オリイオオコウモリ
前腕長13-14.7センチメートル[3]
P. d. yayeyamae ヤエヤマオオコウモリ
前腕長12.6-13.8センチメートル[3]

分類

  • Pteropus dasymallus dasymallus Temminck, 1825 エラブオオコウモリ
  • Pteropus dasymallus daitoensis Kuroda, 1921 ダイトウオオコウモリ
  • Pteropus dasymallus formosus  タイワンオオコウモリ
  • Pteropus dasymallus inopinatus Kuroda, 1933 オリイオオコウモリ
  • Pteropus dasymallus yayeyamae Kuroda, 1933 ヤエヤマオオコウモリ

生態

常緑広葉樹林に生息する[a 3]夜行性で、昼間は単独もしくは数頭から数十頭の群れで木の枝にぶら下がり休む[1][3][a 3]。季節的な移動を行う[2][a 3]

食性は植物食で、主に果実クワ科など)を食べるが、植物のイチジク属イチョウシマグワマルバグミモモタマナなど)、ビロウなど)なども食べる[1][3][a 3]

繁殖形態は胎生。10-12月に交尾を行う[3]。4-6月に1回に1頭の幼獣を産む[3]。生後4-5か月で独立する[1]

人間との関係

開発による生息地の破壊、および食物の減少により生息数が減少し[a 3]、また人為的に移入されたノネコによる捕食、ダイオウヤシワシントンヤシの葉に絡まり脱出できずに死亡する例もあり生息数の減少が懸念されている[3]。さらに台風による直接の被害、および食料の減少などによる生息数も懸念されている[3]。日本では1973年に亜種ダイトウオオコウモリが、1975年に基亜種が国の天然記念物に指定されている[1][3][a 3]2004年に亜種ダイトウオオコウモリが種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されている[3][a 4]。南大東島での1993年における亜種ダイトウオオコウモリの生息数は300頭と推定されている[3]

P. d. daitoensis ダイトウオオコウモリ
絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[a 3]

沖縄県版レッドデータ 絶滅危惧IA類[3]

P. d. dasymallus エラブオオコウモリ
絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[a 3]
鹿児島版レッドデータ 絶滅危惧I類
P. d. inopinatus オリイオオコウモリ、P. d. yayeyamae ヤエヤマオオコウモリ
沖縄県版レッドデータ 準絶滅危惧[3]

画像

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h i j k 阿部永監修、阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎吾・米田政明 『日本の哺乳類【改訂2版】』 東海大学出版会、2008年、27、159頁。
  2. ^ a b c 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社2000年、66、132-133頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 金城和三「ダイトウオオコウモリ」「オリイオオコウモリ」「ヤエヤマオオコウモリ」『沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)-動物編-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2005年、20-21、37-38頁。
  4. ^ 國崎敏廣、船越公威 「屋久島で発見されたエラブオオコウモリPteropus dasymallus dasymallusについて」『哺乳類科学』Vol.35 No.2、日本哺乳類学会1996年、187-189頁。
  • コウモリの会編 『コウモリ識別ハンドブック』文一総合出版, 2005, 68p.

関連項目

外部リンク