カブトガニ
カブトガニ | ||||||||||||||||||||||||
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カブトガニ Tachypleus tridentatus
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
DATA DEFICIENT (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Tachypleus tridentatus (Leach, 1819) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Chinese horseshoe crab King Crab Japanese horseshoe crab |
カブトガニ(甲蟹、兜蟹、鱟)とは節口綱カブトガニ目カブトガニ科カブトガニ属に属する節足動物である。学名は Tachypleus tridentatus。お椀のような体にとげのような尻尾を持つ。
概説
カブトガニは背面全体が広く甲羅で覆われ、附属肢などはすべてその下に隠れている。名前はこの甲羅に由来し、またその姿の類似からドンガメ、マンゴエイなどの地方名もある。
日本では古くは瀬戸内海に多かった。取り立ててなんの役にも立たず、図体がでかく漁では網を破るなど嫌われたようである。しかし古生代からその姿がほとんど変わっていない生きた化石であり、学術的な面から貴重であるとして天然記念物の指定を受けた場所もある。近年では環境汚染によって各地でその数を激減させている。
特徴
カブトガニは、この仲間では日本に産する唯一の種であり、またこの類の現生種のうちでもっとも大型になるものである。全長(甲羅の先端から剣状の尾の先端まで)は雄で70cm、雌では85cmに達するが、普通はもう少し小さく、それぞれ50cm、60cm程度。
体は頭胸部と腹部、それに尾からなる。
頭胸部は甲状になっており、両側後方にやや伸びる。背面はなめらかなドーム状で、前方背面に一対の複眼がある。腹面には附属肢などが並ぶ。最前列には鋏状の鋏角があり、先端は後ろに折れ曲がって口に近く、これが口器である。その後ろには六対の歩脚状附属肢があり、その最初のものは触肢であるが、特に分化した形ではない。いずれも先端が鋏になっているが、雄では第二・第三脚の先端が雌を把持する構造に特化している。
腹部は後ろが狭まった台形で、その縁に沿って6対の棘がある。雌ではこのうちの後方3対が小さくなっている。
生態
干潟の泥の溜まった海底に生息する。カブトガニはその体形から泥に沈むことはない。ゴカイなどを餌にする。夏に産卵期を迎え、産卵された卵は数ヶ月で孵化し十数回の脱皮を経て成体になる。カブトガニの幼生は、孵化する以前に卵の中で数回の脱皮を行いながら成長し、それに合わせて卵自体も大きくなってゆく特徴がある。
メスの第一脚と第二脚は鋏状となっているのに対しオスの第一脚と第二脚は鈎状になっていて、繁殖期にはこの脚でメスを捕縛し雌雄繋がって行動する姿が見られる。繁殖期以外にもオスはメスやメスと錯覚したカブトガニのオスや大型魚類、ウミガメなどに掴まる習性を持ち、その捕縛力も極めて強い。なお、メスの背甲部の形状全体が円を描くような形なのに対し、オスの背甲部は中央先端部が突き出ていることで区別できる。腹部の棘(縁ぎょく)の付き方もメスが後の方の棘の発達が悪くなるというのも特徴である。これはオスがメスの背中につかまる際に邪魔にならないように適応した結果と思われる。
瀬戸内海の干潟に生息するカブトガニは、夜間の満潮時に最も活発に活動する。カブトガニの行動は、「休息」、「背を下に向ける反転」、「餌探し・探索」、「砂掘り」の4タイプに分類でき、 1日のうち9割の時間は休息し、断続的な活動の大半はゴカイなどの餌探しに費やす[2]。
分布
日本国内の生息分布は過去は瀬戸内海と九州北部の沿岸部に広く生息したが、現在では生息地の環境破壊が進み生息数・生息地域ともに激減した。
現在の繁殖地は瀬戸内海の山口県沿岸、九州の曽根干潟、博多湾、伊万里湾、杵築湾、芦辺湾が確認されているがいずれの地域も沿岸の開発が進み最近では生息できる海岸が減少しほとんど見ることができない。
伊万里湾は、日本最大の生息・繁殖地とされている。伊万里市街地から程近い湾内の多々良(たたら)海岸周辺296,250平方メートルの繁殖地が、市の天然記念物として指定されている。毎年6月から8月の大潮日の満潮時に、カブトガニがつがいで浜にやってきて産卵する姿を見ることも可能である。7月中旬から8月上旬の大潮日の後1週間が産卵のピークとされており、毎年伊万里市では、「カブトガニの産卵を観る会」が開催されている。現地では、古来からカブトガニのことを“ハチガメ”と呼んできた。
岡山県笠岡市も国内の代表的な生息地・繁殖地であったが、笠岡湾の干拓の影響もあって同地での生息状況は絶滅寸前とされる。同地には、笠岡市立カブトガニ博物館がある。現地ではカブトガニを”ドン亀”という別称で呼んでいる。
日本以外ではインドネシアからフィリピン、それに揚子江河口以南の中国沿岸から知られている。東シナ海にも生息している。インドネシアには後述の二種も生息している。
分類
カブトガニは甲殻類ではなく、カニよりはクモやサソリに近い。幼生は三葉虫に似ていると言われ、三葉虫型幼生の名もある。実際に三葉虫と系統的に近いと思われたこともあるが、今では否定されている。
よくカブトエビと混同されることがあるが、別の生き物である。
日本以外では東アジア、北アメリカに同科の動物を見ることができ特に北アメリカ東海岸の一部ではアメリカカブトガニを無数に見ることができる。アメリカカブトガニはカブトガニよりも一回り小さく50cmほどであり、メスに比べオスの比率が高い種でもある。しかし最近ではカブトガニほどではないとはいえ、産卵場所の減少と水質悪化による減少傾向も出ている。
東南アジアにはマルオカブトガニとミナミカブトガニ(ヘラオカブトガニ)の2種が分布しているがミナミカブトガニは体長が最大でも30cm、マルオカブトガニは20cmほどと小型である。
マルオカブトガニとミナミカブトガニはペット輸入されていた時もあった。
絶滅危惧
絶滅危惧I類 (CR+EN)(環境省レッドリスト)
- 環境省のレッドデータブックでは、絶滅危惧I類に指定されている[3]。
- カブトガニの外部寄生虫としてカブトガニウズムシがおり、同じく絶滅危惧I類に指定されている。
- 日本では佐賀県伊万里市、岡山県笠岡市、愛媛県西条市にて、天然記念物に指定されている。
利用
日本においては田畑の肥料や釣りの餌、家畜の飼料として使われていた。アメリカでも飼料としての利用が行われている。中国やタイ等の東南アジアの一部地域ではカブトガニ類が食用にされている。中国福建省では「鱟」(ハウ)と呼び卵、肉などを鶏卵と共に炒めて食べることが行われている。日本でも山口県下関など一部の地域では食用に用いていたこともあったが、美味しくはないと言われている[4]。現在、国内で食用に用いた場合、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律によって罰せられる。
カブトガニ Tachypleus tridentatus や同じ科に属するアメリカカブトガニ Limulus polyphemus の血球抽出液は内毒素やβ-グルカンの検出法であるリムルステストに用いられる。
脚注
- ^ World Conservation Monitoring Centre 1996. Tachypleus tridentatus. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 30 November 2007.
- ^ "カブトガニ、夜満潮時が活発" 中国新聞 The Chugoku Shinbun ONLINE 2010年12月12日閲覧
- ^ Tachypleus tridentatus (環境省絶滅危惧種情報 by 生物多様性情報システム J-IBIS)
- ^ 大西一實. “Vol.56 食うか食われるか?”. あくあは〜つ通信. 2008年4月18日閲覧。
関連図書
- 関口晃一『カブトガニの不思議「生きている化石」は警告する』岩波書店(岩波新書 新赤版 192), 1991, 229p
外部リンク
- 伊万里公式サイト - 伊万里湾カブトガニ繁殖地
- 笠岡市立カブトガニ博物館
- 国立国会図書館 - カブトガニ 『訓蒙(きんもう)図彙』 中村惕斎(なかむらてきさい)