アル・マディーナ級フリゲート

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アル・マディーナ級フリゲート
艦級概観
艦種 フリゲート
艦名 サウジアラビアの都市
前級 バドル級 (コルベット)
次級 アル・リヤド級
性能諸元
排水量 基準:2,000トン
満載:2,610トン
全長 115.0 m
水線幅 12.50 m
吃水 4.65 m
機関 CODAD方式
SEMT ピルスティク16 PA6 BTCディーゼルエンジン (8,125 bhp) 4基
可変ピッチ・プロペラ 2軸
速力 最大 30ノット
航続距離 8,000海里 (15kt巡航時)
乗員 士官15名+下士官兵164名
兵装 55口径100mm単装速射砲 1基
70口径40mm連装機銃 2基
クロタル短SAM 8連装発射機 1基
オトマートMk.2 SSM 4連装発射機 2基
533mm連装魚雷発射管 2基
艦載機 AS.365汎用ヘリコプター 1機
C4I TAVITAC戦術情報処理装置
レーダー シータイガー 対空捜索用 1基
DRBC-32E SAM射撃指揮用 1基
カストールIIC 砲射撃指揮用 1基
デッカTM-1226 航法用 2基
ソナー ディオドン 艦底装備式 1基
ソレル 可変深度式 1基
電子戦 DR-4000S 電波探知装置
テレゴンVI 方向探知機
ジャネット 電波妨害装置
DAGAIEデコイ発射機 2基

アル・マディーナ級フリゲートアラビア語: الفرقاطات من الفئة المدينة‎、: Al Madinah-class frigate)は、サウジアラビア海軍が運用するフリゲートの艦級[1]。F-2000S型とも称される[2][3]

来歴[編集]

1980年10月、サワリ計画(Sawari program)にもとづいて4隻が発注された。この計画にもとづき、サウジアラビア海軍に対する装備供給元は、アメリカ合衆国からフランスへと移行することになった。ネームシップは1981年10月15日にDCNロリアン工廠で起工された[4]

なお、1994年には、ムエット計画のもとでフランスに対して全面的な近代化改修が発注された。ネームシップは1995年より改修に入り、以後、2000年までに4隻全艦が改修を完了した[1]

設計[編集]

船型は、平甲板型を基本として艦尾に切り欠きをもつ長船首楼型が採用された。抗堪性確保のため船体は13個の水密区画に区分されており、NBC防護にも配慮したシタデル構造が導入されている。また船体安定化のため、隠顕式のフィンスタビライザーも備えている。なお、のちの改修の際にNBC防護はさらに強化された[1]

主機関としては、V型16気筒の高速ディーゼルエンジンであるSEMT ピルスティク16PA6 280V BTCを4基搭載して、CODAD方式で2軸の可変ピッチ・プロペラを駆動している[2]。また電源としては、出力480キロワットのディーゼル主発電機を4基、320キロワットのディーゼル予備発電機を2基搭載する[1]

装備[編集]

C4ISR[編集]

戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置としてはTAVITACが採用された。これは以前はヴェガ-IIIと呼ばれていたもので、本級搭載のものでは、15M 125F型電子計算機2基を中心として、テクスタン・ヴィスタ型コンソール6基とE7000戦術状況表示盤2基が配置されている。またリンクWによる戦術データ・リンクにも対応する[2]

メインセンサーとなるシータイガー対空・対水上捜索レーダーは、艦橋構造物後方のマスト中段に配置された。これはフランス海軍でDRBV-15として制式化されたものの輸出型であり、動作周波数はSバンド、RCS 2㎡の目標を110 km (59 nmi)で探知することができた[5]。またソナーとしては、ディオドンを艦底装備式に、その可変深度ソナー版であるソレルを艦尾甲板に装備した。これらは同型の送振機を用いており、いずれも12キロヘルツ級の中周波ソナーである[1]

武器システム[編集]

主砲としては、55口径100mm単装速射砲(100mmコンパクト砲Mk.2)を艦橋直前に備えている。またこれを補完する中口径機銃として、70口径40mm連装機銃(コンパット・フォーティー)が煙突両脇の01レベルに1基ずつ備えられている。射撃指揮装置としては、艦橋上にカストールIIC主砲射撃指揮レーダーが備えられているほか、光学方位盤として、コントラヴェス社製LSEOS Mk.IIを1基、マトラ社製ナジールを2基備えている[1]

個艦防空ミサイルとして、射撃指揮レーダーと一体化したクロタルEDIRの8連装発射機がハンガー上に配置された。ミサイルは26発を搭載する[1]

また艦対艦ミサイルとしては、オトマートMk.2を4連装発射機に収容して中部甲板に2基備えているが、このオトマートはERATO(Extended-Range Automated Targeting)能力に対応しており、ヘリコプターによる中間指令誘導を受けることができる。これに対応して、サウジアラビア海軍では機首に大型のアグリオン15型レーダーを備えたAS.365汎用ヘリコプターを導入しており、これは本級の艦載機としても用いられる[1]。なおヘリコプター甲板にはSAMAHE着艦拘束・機体移送装置が装備されている[2]

同型艦[編集]

# 艦名 起工 就役
702 アル・マディーナ
HMS Al Madinah
1981年10月 1985年1月
704 フフーフ
HMS Hofouf
1982年6月 1985年10月
706 アブハー
HMS Abha
1982年12月 1986年4月
708 ターイフ
HMS Taif
1983年3月 1986年8月

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 647-648. ISBN 978-1591149545 
  2. ^ a b c d Stephen Saunders, ed (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. p. 712. ISBN 978-0710628886 
  3. ^ 戦略国際問題研究所 (2002年10月30日). “Saudi Arabia Enters the 21st Century: The Military and Internal Security Dimension - VI. The Saudi Navy” (PDF) (英語). 2014年6月16日閲覧。
  4. ^ Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. pp. 454-455. ISBN 978-0870212505 
  5. ^ Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681. https://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC