アザミ
アザミ(薊)は、キク科アザミ属 (Cirsium) 及びそれに類する植物の総称。標準和名を単にアザミとする種はない。スコットランドの国花。
概要
葉は深い切れ込みがあるものが多い。また葉や総苞にトゲが多く、さわるととても痛いものが多い。頭状花序は管状花のみで作られていて、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花がならばない。花からは雄蘂や雌蘂が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。花色は赤紫色や紫色をしている。種子には長い冠毛がある。
若いときには根出葉があり、次第に背が高くなり、茎葉を持つが、最後まで根出葉の残る種もある。草原や乾燥地、海岸などに出るが、森林内にはあまり出現しない。別名刺草。名前の由来は、アザム〈傷つける、驚きあきれる意〉がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説がある。
種
世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多く、日本では100種以上あるとされるが、現在も新種が見つかることがある。さらに種間の雑種もあるので、分類が難しい場合もある。
以下の種は比較的分布が広いものである。
- ノアザミ C. japonicum DC.:春のアザミは大体これと考えてよい。本州〜九州。この種の園芸品種をドイツアザミというが、実際はドイツとは無関係である。
- フジアザミ C. purpratum (Maxim) Matsum.:花の直径が8cmにも達する(花の画像:フラボン)。関東〜中部地方の山地。
- ノハラアザミ C. tanakae :秋に花を咲かせる。本州中部地方以北の山地。
- ハマアザミ C. martitimum Makino:海岸性のアザミで、葉が厚くてつやがある。本州中部以南、九州までの太平洋岸。
- モリアザミ C. dipsacolepis (Maxim) Matsum.:本州〜九州の草原。時に食用に栽培される。
- ナンブアザミ C. nipponicum (Maxim) Makino:本州中北部では普通。変種を含めると、四国まで一帯に分布。
- オニアザミ C. borealinipponense Kitam.:中部地方、東北地方の日本海側。
- キセルアザミ C. sieboldii :湿原。
- サワアザミ C. yezoense :近畿以北の日本海側沢沿。
- タチアザミ C.inundatum Makino: 北海道から本州の日本海側の湿地。
- ツクシアザミ C. suffltum (Maxim.) Matsum.:九州では一番普通なアザミ。四国、九州に分布。
- タカアザミ C. pendulum Fisch. ex DC.:北海道、本州の北部に分布。東アジアにも分布する。
ごく分布の限られたものも多い。
- チョウカイアザミ C. chokaiensis Kitam.:東北鳥海山の高山の草原。
- オゼヌマアザミ C. homolepis Nakai:尾瀬およびその周辺の湿地のごく一部区域。
- アイズヒメアザミ C. aidzuense Nakai ex Kitam.:本州日本海側のごく一部区域。
- ジョウシュウオニアザミ C. okamotoi Kitam.:群馬県、新潟県の県境の山域のごく一部区域。
南方島嶼には以下の種がある。
繁殖方法
根が冬越しする他に、綿毛(冠毛)の着いた果実が風で飛散して増える。受粉は昆虫による虫媒花である。
近縁な群
アザミ属の植物とよく似ていたり、名前に「アザミ」が付いたりするが、アザミ属の植物でない物もある(ヒレアザミ、キツネアザミ、ミヤコアザミ、マツカサアザミ、ルリタマアザミなど)。また、トウヒレン属やヒゴタイ属もよく似た花を咲かせる。ゴボウも花はよく似ている。チョウセンアザミ(アーティチョーク)はアザミ属ではなく、チョウセンアザミ属である。
人間との関係・食材
とにかく触れれば痛い草の代表である。スコットランドでは、そのトゲによって外敵から国土を守ったとされ国花となっている。
青森県津軽地方や青森市、東北町を中心とする東北地方や長野県の一部では、春先にアザミの若芽がスーパーマーケットに並び、食用として売られ、主に味噌汁の具として使われる。新芽や根は、てんぷらなどにして山菜として食べられる。「山ごぼう」や「菊ごぼう」などといわれることもあり、味噌漬けなどの加工品として山間部の観光地・温泉地などで販売される「山ごぼう」は多くの場合、栽培されたモリアザミの根である。
有毒植物との区別と注意
学術上の種名、ヤマゴボウとヨウシュヤマゴボウはいずれもキク科ではなく、モリアザミなどのアザミとは類縁関係の遠いヤマゴボウ科であり、薬用にはなるが、食用になるどころか有毒植物であり、混同して誤食しないよう注意を要する。