TOKYOゼロ・ハンター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

TOKYOゼロ・ハンター』は、丘野ゆうじによるライトノベルシリーズ。イラストは木場智士で、集英社スーパーダッシュ文庫刊。全3巻で完結予定だったが、好評のため特別編が『TOKYOゼロ・ハンターS』として2巻出された。

概要[編集]

星魔バスターの流れをくむ作品で、異次元から現れる怪物「ゼロ」を特殊な力(作中ではオーラを身にまとったような状態で表現されている)に目覚めたハンターが倒していく。かなり残酷な表現が多く、死体は大半がボロボロにされたりゼロに食い散らされる。『TOKYOゼロ・ハンター』では玲香と誠はゼロ・ハンターとして活躍したが、その経験を生かして『TOKYOゼロ・ハンターS』では探偵事務所を開業している。

ストーリー[編集]

どこにでもいる平凡な大学生七瀬誠は、知り合いの刑事・浅岡に新宿へ連れられて事件の調査に参加させられるが、異形の怪物に襲われる。そこに駆け付けた謎の女性水原玲香により怪物は倒されるが、浅岡は命を落とし、誠も怪物から出た体液を浴びて気を失ってしまう。自衛隊中央病院で目を覚ました後、警察庁公安局の草薙から、怪物は「ゼロ」と呼ばれる正体不明の闇の眷属で、およそ十年前から東京へ出現して人間を襲っているのだと説明される。そして、ゼロを倒す者「ゼロ・ハンター」として玲香と協力するように依頼される。

登場人物[編集]

主要キャラクター[編集]

2巻以上にわたって登場する人物を挙げる。

七瀬 誠(ななせ まこと)
主人公。18歳で、東英大学文学部一年生。身長172cm、体重65kg。ゼロに襲われたところを玲香に助けられるが、死に際の体液に含まれるゼロの生命エネルギーによって「力」に目覚め、目の前で殺された浅岡のかたき討ちとしてゼロ・ハンターになる。
容姿も平凡で女性と交際したこともなく、同じ家に住んでいる玲香の露出度の高い服装に始終ドキドキしている。根は怖がりでゼロを前にすると怖気づくことも多いが、いざというときには能力を発揮して活躍する。
攻撃向けの能力はなく、両手を前に出しオーラを集中することで「盾」をつくり、玲香と自分を守るような膜をつくる防御向けの能力を持つ。オーラの色はライムグリーンとして描かれている。
水原 玲香(みずはら れいか)
ゼロ・ハンター。21歳。池袋の外れにある15階建てビルの屋上に住む。能力に目覚めた誠の担当者として、彼を同じ家に住まわせることになる。愛車はローバー
身長は誠と同じくらいあり、加えてバストは90cm超のプロポーションを持つ。よく室内でトレーニングをしており、ラフな服装をして誠の心を乱しているが、本人はいたって無関心。その他のことはほぼできるが、家事だけはほとんどできず、食事はずっと外食かインスタント関係で済ましていた。誠が引っ越してからは食事を含め雑用を押し付けている。16歳からハンターとして仕事をしているので、普通の学生生活に興味をもっているらしい。
幼少の頃にゼロにより引き起こされた首都高の事故(実はこれが初めてのゼロの出現)により両親と弟を失う。そのときゼロの体液を受けて力に目覚める。
オーラを手や足に集中して攻撃する能力を持つ。スピードはゼロ・ハンターの中でもトップクラス。誠に「盾」をさせて守りつつ、自分は「剣」として戦う連携を見せる。オーラの色はオレンジ。
草薙 憲二(くさなぎ けんじ)
警察庁公安局資料管理部にある零課分室の室長。東大卒のエリートでキャリア官僚。ゼロ・ハンターたちのリーダーのような存在。
事故により孤児となった玲香を引き取り、16歳まで育てた。ゼロによる事件を調査するために設けられた特別な部署「零課」の室長として、現場の指示や上からの折衝などをまかされる。ゼロ・ハンターを一人の生きている人間だと考えており、化け物に汚染された連中だとみなしている政府中枢とのちに対立する。
桜井 ナツミ(さくらい なつみ)
2巻とS1巻で登場する。ショートヘアのかわいい女子高生で、誠と参加した合コンで知りあう。
父親は数年前に病気で他界し、現在は雑誌記者をしている母親と高層マンションでふたり暮らし。友達によると霊感が強いらしく、誠の出す特殊な波動を感じることができる。そのため、本人の知らないうちに誠に惹かれている。
水原 浩樹(みずはら ひろき)
玲香の弟。玲香からはヒロと呼ばれていた。
首都高での事故の時に現れたゼロに取り込まれて、生命エネルギーを奪われゼロの「電池」となってしまう。このことが原因で異次元の扉が開いたままになり、ゼロがこちらの世界に出現を続けている。

その他のキャラクター[編集]

浅岡(あさおか)
誠の古くからの知り合いの刑事。巡査だったが、ゼロ事件により「殉職」して警部補に二階級特進する。
誠の父が監督を務める地元少年サッカーチームのエースをしており、それが縁で誠の面倒を見る。誠にとって頼れる兄貴分であり、何かと相談に乗っていた。
木村(きむら)
誠の大学の同級生。家庭教師をしている女子高生と合コンをすることになり、誠と万城田を誘う。
実はオカルトマニアで、カラオケの後にスペシャルプログラムと称して肝試しへみんなと行くが、その廃墟でゼロに遭遇してしまう。
万城田(まんじょうた)
誠の大学の同級生。メガネをかけてオタク風。木村に合コンに誘われて参加する。名前は作者によるとウルトラQの主人公「万城目」をもじったものらしい。
エリ
ナツミの同級生で、木村に家庭教師をしてもらっている。合コンに誘われ、ナツミとユリカといっしょに参加する。
ユリカ
ナツミの同級生で、エリに誘われ合コンに参加する。
唐沼 弘吉(からぬま こうきち)
与党政権党の議員で、零課の後見役を務める。以前の後見役が亡くなったため、それを引き継いだ。各界に強力なパイプを持っており、草薙からは「先生」と呼ばれている。
ゼロの事件そのものに対してまともに取り組んでおらず、ゼロ・ハンターたちを「クリーンでない人間」として忌み嫌っている。S2巻では自身の収賄疑惑をもみ消してもらうためにアメリカと取り引きし、ゼロの血を浴びた者を生物化学兵器として受け渡そうとした。

ゼロ[編集]

ゼロは異世界から現れる怪物で、さまざまな姿・形をとっている。小型のタイプもいるが、人間よりはるかに大型のものもおり、人間を襲いその体をむさぼる。ほとんどの銃火器は通用せず、ゼロ・ハンターの繰り出す攻撃によりダメージを受ける。作品中に多くのゼロが登場するが、ここでは主なものだけ挙げる。

ゴリラもどき
1巻で登場する、誠と浅岡を襲ったゼロ。体長2mを優に超す巨体を持つ。頭部がない「首なし」で、球形のゼロである「頭部」と共生していたらしい。玲香の攻撃で頭部は倒され、その血液により誠は覚醒した。のちに「首なし」は浅岡の首を奪い、言葉を話しかけ誠を勧誘しようとするが、最終的に誠のオーラにより滅ぼされた。
蒼きオウガ
2巻で登場。爬虫類両生類の特徴をあわせ持ったような体であり、全身が青い鱗により覆われている。戦闘的なタイプで、人間のみならず同族のゼロをも手にかける残虐なゼロ。そのため同族殺しをやめるようにはじまりの者から警告を受けるが、やめずに殺し続けたため、誠と玲香との戦闘中にはじまりの者により「罰」として焼き尽くされてしまう。
まだら
2巻で登場。巨大な昆虫のようなゼロで、まだら模様と6本脚をもち、非常に俊敏に動く。公園で人間を襲っていたが、駆け付けた玲香によりダメージを受け、逃走する。そこで蒼きオウガと戦闘中の誠に遭遇し、誠を襲うが追ってきた玲香とともに阻止され、オウガにより殺されその肉を食われる。
はじまりの者
2巻と3巻で登場する、物語の核心を担うゼロ。不定形の陽炎のような輪郭を持つ。この世界に初めて登場したゼロで、通常のゼロが一定期間しか生きられないのに対し、すでに10年以上も生き続けている。その理由は死に際のヒロの生命エネルギーを取り込んで融合したためである。この世界が蒼きオウガのような掟破りにより元の異界のような地獄に戻さないように秩序を作ろうとする。玲香を取り込んで完全な体になろうとするが失敗し、最後は誠と玲香の力を合わせた攻撃により完全に消滅した。
悪魔
3巻で登場。漆黒の姿でコウモリのような翼を持ち、人間世界の悪魔に似ている。はじまりの者とともに行動し、その危険を救おうとしたが、誠に同行した零課特殊部隊の隊員により手榴弾を口に突っ込まれ、致命傷を負った。
野本 荒児(のもと こうじ)
S1巻で登場。22歳で、城央大学法学部四年生。ゼロの血を浴びて同化してゼロと同等の力を得る。誇大妄想が激しく、秋葉原オタク狩りをしていた不良や入社試験で落とされた会社の社長を罰と称して殺害した。また、自分を英雄だと考え、ナツミをストーカーして伴侶にしようとして公園で襲うが、誠と玲香に阻止され、玲香のビルの7階に用意されたオーラを流した防御壁に誘い出されて、とどめを刺される。
沢渡 厚志(さわわたり あつし)
S2巻で登場する、元零課の隊員。一年半前に民間人をかばいゼロの血を浴び、肉体に異常な変化を受けた最後の人間。唐沼の汚職疑惑のもみ消しのためにアメリカに渡されることになるが、その移送途中に心室細動を起こし、電気ショックを受けて覚醒する。命が限られた体で、同じく死に瀕している妻の綾菜(あやな)のもとに向かい、そこで亡くなった。

作品の舞台や設定[編集]

異形の者たちが生息する異界の中で、監獄都市(ジェイルシティ)という犯罪者を封じ込めておく場所が存在した。都市の周辺は魔壁に囲まれ脱出できず、中の囚人は死を待つしかなかった。残り少ない命だったはじまりの者は、都市の中心にある「核」を壊して全体を崩壊させようとした。ところが都市は破壊されず、代わりに時空に亀裂が生じ、この世界に現れる。本来であればすぐに細胞が自己崩壊して消滅するはずだったが、ヒロと融合することによりこの世界で生き続けられるようになった。
こちらの世界でも向こうの監獄都市に相当する範囲内しか行動できず、そのためゼロの事件は東京周辺にしか発生しない。はじまりの者を倒した後は、時空の自己修復機能により因果律から外れた、この世界に「ありえないもの」もすべて消滅し、ゼロは完全に姿を消すことになる。
ゼロの起こした事件は数多いが、零課が主導となって情報統制を行い、一般にはゼロの存在はまだ知られていない。ゼロの体からはある特殊な周波数の信号が出されており、ゼロが現れたときはハンターにその位置が通報される。なお、作中には多くの地名や警察の部署が登場するが、作者によるとほとんどが架空のものであるらしい。

書誌情報[編集]

外部リンク[編集]