Rance IV -教団の遺産-

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Rance IV -教団の遺産-
対応機種 オリジナル:PC-9800シリーズ
Windows版:Microsoft Windows 95
発売日 オリジナル:1993年12月11日
Windows版:1997年4月
備考 PC-9800シリーズ版はハードディスク専用ソフト
「配布フリー宣言」対象ソフト。
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ランス4.1 〜お薬工場を救え!〜/ランス4.2 〜エンジェル組〜
対応機種 FD版:PC-9800シリーズ
CD-ROM版:PC-9800シリーズ/FM TOWNS/Windows 95[1]
ディレクター TADA[2]
シナリオ TADA[2]
発売日 4.1:1995年12月1日
4.2:1995年12月8日
メディア フロッピーディスク
CD-ROM
備考 「配布フリー宣言」対象ソフト。
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Rance IV -教団の遺産-』(ランス4 きょうだんのいさん)は、1993年12月11日アリスソフトから発売されたアダルトゲームで、ランスシリーズの4作目に当たる。

1995年12月には短編作品『ランス4.1 〜お薬工場を救え!〜』(以下:『4.1』)と『ランス4.2 〜エンジェル組〜』(以下:『4.2』)が発売されており、この2作はそれぞれにつながりがある。また、2023年2月には、アリスソフトの許可を得たうえで、開発スタッフのTADAのブログにて『4.1』と『4.2』の動作調整版が公開された[3]。本項では、これら3作品について解説する。

あらすじ[編集]

『IV』本編[編集]

前作『Rance III -リーザス陥落-』のラストで、ランスは冒険の途中で光の神のブロマイドを踏んづけてしまったことをとがめられ、シィルと二人で謎の浮遊都市イラーピュまで飛ばされてしまう。2人が帰る方法を模索していたところ、リーザスとカスタムから「ランス・シィル救助隊」が派遣される。

一方、イラーピュはかつて魔王に戦いを挑み敗れた人類統一国家「聖魔教団」の巨大浮遊都市「闘神都市」のなれのはてであり、ヘルマンではイラーピュを兵器として運用するという目的から、トーマの遺児にしてパットンの親友でもあるヒューバートに、イラーピュ探索の命が下される[4]

ランスはヘルマン軍の魔術師イオに洗脳される形で、闘神都市の制御に必要なキーを探す。一方、「ランス・シィル救助隊」はヘルマン軍の襲撃を受けてバラバラになるが、隊員の一人であるリックがランスをイオから助け出す。

そうこうしてる間に、かつて闘神都市を封印した魔術師フリークが、都市の復活を阻止するために駆け付ける。だが、闘神ユプシロンが復活して人類への攻撃を開始する。死闘の末、ランスたちはユプシロンを倒し、都市から脱出する。

『4.1』/『4.2』[編集]

『IV』の出来事からまもない[5]ある日、体力回復薬「世色癌」シリーズを作っているハピネス製薬の地下の洞窟から、突如として大量のモンスターが発生する。ランスは同社の社長の頼みで、工場周辺に出没する魔物の退治を引き受ける。内職中で家を空けられないシィルに代わり、ランスはあてな2号を連れて魔物退治に乗り出す。

実は、ハピネス製薬第一研究室の室長のジョセフが、女の子モンスターの保護組織・エンジェル組からウェンリーナーという聖女の子モンスターをさらっていたことが判明し、エンジェル組が救出に向けて動いていた。ランスは魔法使いの女の子・キサラとパーティーを組み、エンジェル組の謎に迫っていく。

システム[編集]

ダンジョン探索が再びコマンド式となり、仲間の行動指定や入れ替えが可能になった。時間の概念があり夜8時になると必ず脱出しなければならないが、翌日同じ地点から再開出来るためデメリットは少ない(日付もあるが、早解きする必要は無い)。夜にメシ屋に帰ると魔法ビジョンで番組鑑賞が出来、学園ドラマ、ニュース、雑学が聞ける天気予報、キースギルドやアリスソフトの広告が楽しめる。

開発[編集]

開発(『IV』)[編集]

本作は開発中止となったメガCD用ソフト『闘神都市ユプシロン』を元に開発されたため、舞台としての「闘神都市」が登場する[1]

『III』でのマップ移動や、『DALK』でオートバトルが実現できたことを受け、『IV』に様々なシステムが取り入れられた結果、容量が大きくなりすぎてしまい、画面スクロールなどの機能が削られていった[6]。それでも、数枚組のフロッピーディスクで販売できないほど容量が大きかった[注釈 1]ため、『IV』は当時としては珍しいハードディスク専用ソフトとして売り出された[6][注釈 2]。開発スタッフのTADAは本作について「アリスソフトのゲームシステムは、ここまでは順調に発展してきたんですが、自分の中では『RanceIV』は、自分たちの力を過信して失敗した最初のタイトルになっています(後略)」と電ファミニコゲーマーとのインタビューの中で振り返っている[6]

本作のセッティングは複数人で行われており、うち聖魔教団関連はサブディレクターのぷりんが担当した。また、TADAは当初あてな2号について普通のアンドロイドを想定していたが、セッティングを担当したYUKIMIによって個性的なバカになった。[7]

ヒントディスクには宇宙海賊を題材とした「SFらんす」というミニゲームが収録されている[8]

開発(『4.1』/『4.2』)[編集]

短編作品である『4.1』と『4.2』は『IV』でやりすぎたことへの反省として作られた[6]。また、TADAは2023年のブログの記事の中で、ランスの日常の中で起こる小さな出来事を題材にしたシリーズを作りたかったが、シリーズ化は実現せず、『4.1』と『4.2』も前後編じみた内容になってしまったと振り返っている[2]

この当時のアドベンチャーゲームは選択肢が減る傾向にあり、それ以前のテキストアドベンチャーゲームに親しんでいたTADAはそれをさみしく思っていた[2]。とはいえ、「開ける 扉」のように動詞を先に選んでから対象物を選ぶ形式では古臭いという考えから、対象物を先に選んでから動詞を選択するという手法[注釈 3]を思いついた[2]。この方法では、イベントによって対象物を増やしたり、異なる場所でも対象物が同じであれば同一の処理が適用できるとTADAは考えていたものの、実際に作っていて面倒になり、細部までこだわれなかったと振り返っており、今(2023年)だったらAIやプログラミングでいろいろできるかもしれないとかたっている[2] 。また、TADAは自身が親しんだTRPGゲームブックのように自分でマッピングする方法を考えていたものの、自分のプログラムが雑なので、いまいちな出来になってしまったとも話している[2]

戦闘はカードバトルに近い形式が採用され、カードの図柄は織音が担当した。また、戦闘システムには体力(HP)とは別に「いのち」という治癒不可能なパラメータが用意された。[2]

エッチ以外のイベントシーンはディフォルメキャラによって展開される[5]具体的には『IV』のユニットのグラフィックが場面表現として用いられており、その理由についてTADAは、顔CGでは汎用性があるものの身体全体を使った動きの表現には不向きであることや、立ち絵CGでは身体全体の表現には向いているが場違いな絵面になることを2023年のブログ記事の中で挙げている。[2]

また、『4.1』と『4.2』はランスシリーズとしてははじめてFD版とともにCD-ROM版が発売された[1]一方、ヒントディスクが別売りされていたランスシリーズとしては最後となり、ヒントディスクには通常のゲームのヒントの他、「走り女II」というレースゲームも収録されていた。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ FD16枚組の予定だったがHDD専用となった製品版でFD11枚組であり、当時としては巨大であった。
  2. ^ PC-98版に収録されているHDDニイレルヨ.DOCのWAOのコメントによれば、締め切り直前の11月19日になって急遽決定されたとのこと。他にも作中のアリスの館での情報を含め、PC-H98シリーズ規格の256色AGS(ドライバ)対応予定が中止になる、マウス(だけでの)操作の対応予定が中止になる、難易度がとても低いと宣伝されていたが実際の製品では中程度に難しくなった、などの発売直前になって変更された仕様がいくつも存在する。このためパッケージの修正が間に合わず、事前の雑誌情報やパッケージに記載された仕様とは比較的多くの矛盾点が存在する。
  3. ^ たとえば、独身寮の場面の場合、シルバレル、あてな2号、ランス、ごみ箱という4つの対象物のコマンドと、移動用のコマンドが先に提示され、これらのうちのいずれかを選んだあと、行動用のコマンドに切り替わる[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c 福山幸司 (2019年6月7日). “平成元年に始まり平成で終わった美少女ゲーム『ランス』シリーズを振り返る。各種文献から見るアリスソフトとTADA氏の軌跡”. 電ファミニコゲーマー. 2020年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j TADA (2023年3月30日). “制作記.ランス4.1/4.2”. ハニワ開発室(ゲームデザイナーの隠居生活). 2023年4月13日閲覧。
  3. ^ TADA (2023年2月9日). “ランス4.1/4.2 ver1.05”. ハニワ開発室(ゲームデザイナーの隠居生活). 2023年4月13日閲覧。
  4. ^ ランスブログ1月号 パットン物語”. アリスソフトBlog (2014年1月9日). 2021年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月3日閲覧。
  5. ^ a b 『電撃王 通巻43号 表紙 井出薫』メディアワークス、1995年12年1日、17頁。 
  6. ^ a b c d 今俊郎,黛宏和 (2019年8月1日). “【ゲームの企画書】エロゲー業界の重鎮アリスソフトのTADA氏が駆け抜けた現場30年。平成に始まり平成に終わった『Rance』シリーズを完結させた「作り続ける人」が向かう先(1ページ目)”. 電ファミニコゲーマー. 2020年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月4日閲覧。
  7. ^ 制作記.ランス4”. ハニワ開発室(ゲームデザイナーの隠居生活) (2022年12月1日). 2023年4月13日閲覧。
  8. ^ 制作記.婦警さんVX.DA”. ハニワ開発室(ゲームデザイナーの隠居生活) (2021年10月21日). 2023年4月13日閲覧。

外部リンク[編集]