Classic Tetris World Championship
CTWCのロゴ | |
競技 | テトリス (北米NES版、任天堂) |
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大会形式 | トーナメント(シングル・エリミネーション) |
開始年 | 2010 |
主催 | Adam Cornelius, Vince Clemente, Trey Harrison |
会場 | オレゴン・コンベンション・センター(2012-) |
開催国 | アメリカ合衆国 |
前回優勝 | Eric Tolt(1回目) |
最多優勝 | Jonas Neubauer(7回) |
公式サイト | |
thectwc |
Classic Tetris World Championship(クラシック・テトリス・ワールド・チャンピオンシップ、略称CTWC)は、アメリカ合衆国で開催されている「テトリス」を用いたeスポーツの世界大会である。
北米版のNintendo Entertainment System用ソフトとして1989年に任天堂より発売された「テトリス」(en:Tetris (NES video game))にいわゆる世界チャンピオンという概念が存在しないことを疑問に感じたプレイヤー達が、一番上手いプレイヤーは誰なのかを決めるために創立した[1][2]有志大会であり、自主制作のドキュメンタリー映画「エクスタシー・オブ・オーダー(英語: Ecstasy of Order: The Tetris Masters)」の撮影を兼ねて2010年8月10日に開催された一部招待制のトーナメントが第1回CTWCに当たる[3]。
運営者はエクスタシー・オブ・オーダーの監督であるAdam CorneliusとディレクターのVince Clemente、そして、決勝種目の一つに「テトリス」が採用された1990年のビデオゲーム大会であるニンテンドー・ワールド・チャンピオンシップ(英語: Nintendo World Championships#1990)の出場経験者Trey Harrison(大会のテクニカルディレクターも務める)の3名である[4]。
第1回大会が成功を収めた後、CTWCは年1回開催されるようになり、最初の2年間はカリフォルニア州ロサンゼルスで[5]、2012年からは、レトロゲームを中心とした博覧会であるオレゴン州ポートランドの「ポートランド・レトロ・ゲーミング・エキスポ」(Portland Retro Gaming Expo, PRGE)がホストするイベントのひとつとなり、オレゴン・コンベンション・センター(英語: Oregon Convention Center)で開催されるようになった(後述の2020-2021年のオンライン開催を除く)。また、大会の様子はTwitchでも配信され、オンラインでプレイ中のゲーム映像をHDレンダリングし、お互いの点差やゲームオーバー後の統計を表示、さらにゲーム映像の隣にはプレイヤーの表情や手元をとらえたカメラを写すなどして、視聴者にもゲームの状況や緊張感が伝わりやすくなるよう工夫されている。
使用されるソフト
本大会で用いられる、任天堂から1989年に発売された北米版NES「テトリス」(以下、鉤括弧表記の「テトリス」は同作のことを指す)は日本未発売のゲームソフトであり、また映像信号の方式がNTSCではなくPALを採用するヨーロッパ諸国で販売されていたバージョンは各種移動パラメータの調整が異なる(CTECの項も参照)ため、本項にて大会で使われる「テトリス」の特徴を説明する。
「テトリス」は一人用のゲームであり、開始時のレベル(スピード)を設定して、ブロックが最上段に積み上がってゲームオーバーとなるまでエンドレスにプレイするA-TYPEと、開始時のレベルと盤面の高さ(ブロックがランダムに初期配置される)を設定し、25ラインを消せばゲームクリアとなるB-TYPEという2つのモードがあるが、近年の大会ではもっぱらA-TYPEのみが競技で用いられる。
A-TYPEでは、原則として10ラインを消去するごとにレベルが1上がり、消去点に掛かる倍率が増え、テトリミノ(操作するブロック)の落下速度が上昇する(一部速度の変化しないレベルもある[6])。ライン消去時の得点は基本点×(レベル+1)で与えられ、基本点はシングルが40点、ダブルが100点(1列あたり50点)、トリプルが300点(同100点)、テトリスが1,200点(同300点)である。4列同時消去であるテトリスの得点効率は他より3倍以上高い上に、T-SPINや全消しボーナスも存在せず、下ボタンを押して得られる落下点も少ないため、可能な限りテトリスで消すことが高得点を狙うのに重要である。
「テトリス」は、初期のテトリス作品のため後世の作品に見られる、プレイヤーにとって有利になるような実装がされていない。
- ネクストは次の1手しか表示されず、現在操作中のテトリミノと入れ替えることができるホールド機能も存在しない。
- 操作中のテトリミノが着地した後の「遊び」の時間がないため、着地後はほぼ即時に(正確には1マスの落下に必要な時間が経過した後に)固定されてしまう。
- ブロックの抽籤は偏り補正がない疑似乱数により行われるため、場合によって特定のテトリミノが数十手にわたって降ってこないことがある。(本大会では、テトリス(4列同時消去)が唯一可能なI-テトリミノが長期にわたって出現しないことを俗に「ドラウト」(Drought、干ばつの意)と呼び、テトリスだけを狙い続けるのはリスクが高い行為であることを示唆している。)
本作は、横方向に十字キーを押しっぱなしにしたときの移動速度が遅く、最初の1マス目こそ入力直後に移動するが、2マス目の移動時に約0.27秒のディレイが発生して、そのディレイを超えると「タメ」状態が有効になり約0.1秒おきに横移動が発生する(この横タメによる操作はDelayed Auto-Shiftあるいは頭字語でDASと呼ばれる[7])。しかしながら、レベルの増加による落下速度の上昇に伴い、この操作方法ではテトリミノの可動範囲が大きく制限される。特にレベル19から28まで(天井から床までの落下に要する時間が約2/3秒)では盤面の半分の高さまで来るとテトリミノを左右の端に移動することができなくなり、そしてレベル29以降(同、約1/3秒)になると左右移動はできても2~3マス程度であり、ゲームを続けることは事実上不可能である。このレベル29の落下速度は、バグなどによってこれ以上プレイの続行が出来ない状況を指すレトロゲームの慣例にならい「キルスクリーン」と呼ばれていた[8]。
しかしながら、横タメによる操作ではなく十字キーの左右を高速に連打してテトリミノの可動範囲を増やすことで、結果的に上記の「キルスクリーン」が実は本当のキルスクリーンではなく、プレイが継続可能であることが示された。
十字キーの左右ボタンを1秒間に10回の速度で連打できるならば、横タメ移動のディレイが無い状態に相当するため、テトリミノの可動域に余裕が発生する。この操作方法は「ハイパータッピング」(Hypertapping)と呼ばれる。ボタンを押す回数の正確さが常に要求されるが、連打速度さえ安定すれば横タメによる操作よりも明らかに優位に立てるので、初めてハイパータッピングを採用したプレイヤーが2018年に優勝[9]してから、それまで数名しかいなかった使用者が急増し、後の大会ではハイパータッピング使用者が上位を独占するまでになり、その上位選手層も幼少期から「テトリス」をプレイしていた30代~40代中心の世代から一転、多くが10代~20代の選手へと極端に低年齢化した[10]。
また、コントローラーの背面を複数の指でピアノの鍵盤をなでるように叩いて、十字キーに添えたもう片手の指で入力を行う「ローリング」(rolling)という操作法が2020年11月ごろに発明されてから注目を集め[11]、トッププレイヤーが訓練を重ねた結果これまでの得点や到達レベルの世界記録が2倍以上更新される事態となり、2021年にはハイパータッピングをも上回る潜在的な得点力でトーナメントシーンを席巻した[10]。それを受けてチャンピオンも含めた殆どのトッププレイヤーがローリングを習得した結果、「キルスクリーン」は最早少なくないプレイヤーにとって、ツモ順にもよるが半永久的に続けられる状況にまで至り、2022年には大会のトップ4および多くのトーナメント上位者がローリングをするまでの支配力を得た。同年の決勝に至っては、レベル29の速度をシングルやダブルなどの細かい消去によって耐えることで、結果的にお互いレベル29以降が全体のライン消去の半分以上を占める耐久戦まで発生した。
さて、大会で使われる「テトリス」は日本では発売されなかったため、日本国内でプレイするにはゲームソフト自体に加えて北米のNTSC仕様であるNES本体自体も入手するか、ファミリーコンピュータでNESのソフトを使用出来る非純正のアダプターを利用するしかなかった。しかし、「Tetris Effect」のアップデートである「Tetris Effect: Connected」が2020年7月23日に発表され、このゲームのルールを再現し、かつマルチプレイヤー対戦時にはブロックの降ってくる順番が両者同じになる「クラシックスコアアタック」モードが導入されることがアナウンスされた。これにより、発売から30年後にCTWCのルールに近いテトリスが初めて日本国内でリリースされることになった。2018年大会からCTWCに出場した立島智央は、クラシックスコアアタックを含むマルチプレイヤーモードのリードデザイナーであり、同年のCTWCへの出場、そして現地での水口哲也との出会いが「Connected」のマルチプレイヤーモードを作るきっかけとなった[12][13]。
大会の方式
現行のルールの大本となっている、2012年(第3回)に確立されたルールをベースに説明する[14]。
大会は2日間をかけて行われ、初日が予選、2日目にメインイベント(予選上位者によるトーナメント)を開催する。競技に使用するゲーム機本体、ソフトおよびブラウン管テレビは会場に用意されるが、コントローラーは任天堂純正のものかそれと同等の機能のみを持ち無改造のものだけが認められ、参加者自身が持参することが許される(会場にもコントローラーは用意されているので、もちろんそれを使ってもよい)。 大会2日目のトーナメント終了後には表彰があり、1位と2位の選手にトロフィーが贈呈される。それぞれ金色と銀色に着色された、T-テトリミノをかたどった物であったが、2021年以降は、CTWCで7度の優勝と2度の準優勝を飾るも、2021年の初めに夭折したジョナス・ニューバウアー(英語: Jonas Neubauer)[15]の功績とコミュニティへの貢献に対する顕彰の意を表し、彼の名の頭文字にちなんでJ-テトリミノをかたどった「Jonas Neubauer trophy」が優勝者と準優勝者に贈られた[16]。
予選
予選では、会場内に並べられたゲーム機を用い、A-TYPEモードをプレイする。ゲームオーバーになった場合は得点を会場内のスタッフに申告することで登録が行われる。時間内であれは予選を何度もプレイしてもよいが、会場内のゲーム機の台数には限りがあるため、次にプレイするときには待機列に並び、自分の番を待たなくてはならない。また、一定額の料金を支払うことで、1時間ゲーム機をレンタルする権利が得られ、その間はひとりで自由にプレイすることが許される。
予選で登録されたスコアに従い、規定人数がメインイベントに進める。基本的には32人だが、2018年以降はプレイヤーの増加に伴いカットラインが40位、48位と数が増えていった。その場合はトップ32が残るまで「0回戦」と称したプレイオフが行われ、勝ち残ったプレイヤーが2日目のメインイベントに進むことが出来る。また、A-TYPEモードの最高得点は999,999点であり、それに到達することをマックスアウト(Maxout、日本語のカウンターストップに相当)と呼ぶ。マックスアウトの到達者は、予選時間中に出したマックスアウトの回数が記録され、その回数が並んだときは、マックスアウトではなかった次点の点数によって順位を決し、メインイベントのシードを決定する。
メインイベント
メインイベントは上位32名によるシングル・エリミネーション・トーナメントが行われ、シード順位に沿って試合が決まっている(1位対32位、2位対31位、……)。それぞれの試合は、対戦する二人が同じレベルからA-TYPEのゲームを同時にスタートして、以下の条件になるまでプレイする独立型のスコアアタックである。その結果得点が高かったプレイヤーが1ゲームを取る。これを繰り返し、規定されたゲーム数を先取したプレイヤーが、試合の勝者となる。
- 点数の低いプレイヤーがゲームオーバーになる。
- 点数の高いプレイヤーがゲームオーバーになるが、追っている側のプレイヤーがその点数に届かずゲームオーバーになる。
- 点数の高いプレイヤーがゲームオーバーになった後、追っている側のプレイヤーがその点数を追い越す。
1回戦までの試合は、初期レベルを15か18のどちらかから選択出来るため、第1ゲームと第3ゲームはシード順位の高いプレイヤー、第2ゲームはシード順位の低いプレイヤーがレベルを選択する権利がある。2回戦以降の初期レベルは常に18からである。
2015年までの大会では、純正のNESカートリッジが使われていたが、2016年からはメインイベントの間のみ、特殊なカートリッジを使って試合をすることになった。このカートリッジでは、スコア表記が従来より1桁多い7桁表示ができるようになり(予選とは異なり、お互いのスコアが100万点を超えてもゲームが継続され、スコアの高い方が勝者となる)、また乱数シードを入力することで、(I-テトリミノの出現数や間隔の差による不利をなくすため)別々のカートリッジでテトリミノの降ってくる順番が同じになる機能が備わっている。一方で予選は引き続き純正カートリッジが使われるため、得点も999,999点が最高となりそれ以上は記録されない。
沿革
ここでは、大会が回を重ねるにしたがって、いくつか発生したメイン大会内のルールの変更についてのみ記す。
2010(8月10日、カリフォルニア州ロサンゼルス Downtown Independent Theater)
冒頭にも述べた通り、第1回CTWCは一部招待制の大会であり、5名の出場があらかじめ決まっていた。マックスアウト達成が公認されていた2名(Harry HongとJonas Neubauer)、当時の消去ライン数の世界記録1位、2位記録の保持者(それぞれBen MullenとJesse Kelkar)、そして、1990年のニンテンドー・ワールド・チャンピオンシップの12-17歳部門の覇者であるThor Aackerlundのあわせて5名が招待選手であった[3]。また、プレイヤーの多くがロサンゼルスに住んでいたことから、会場はロサンゼルスの映画館に決まり、決勝の様子はスクリーンにも映された[3][17]。
準決勝を8名で行うため、残る3枠を賭けてB-TYPEのレベル18高さ0を一定時間内で望む回数だけプレイする一般予選が行われ、得点上位3名が準決勝に進んだ。
準決勝は8名が同時にA-TYPEのゲームをプレイした。3ラウンドが行われ、第1ラウンドはライン数が高いプレイヤー、第2・第3ラウンドは得点の高いプレイヤーほど上位となり、各ラウンドの1位は100点、2位以下は1位のスコアと比較したパーセンテージで得点が与えられた。これら3ラウンドの終了時に最も得点の合計が高い2名が決勝に進み、A-TYPE(レベル9スタート)を一対一でプレイし2本先取したプレイヤーを優勝とするルールだった[3]。
2011(10月16日、カリフォルニア州ロサンゼルス 南カリフォルニア大学)
第2回大会からCTWCは招待制ではなくオープン参加となり、全員が予選から参加するシステムに変わった(優勝者などの優遇は無し)。昨年同様、全員が規定された時間内にB-TYPEのゲームを望む回数だけプレイする予選を開催し、その中で得点が高かった上位8名を選出した。ただし、レベル19を選択してクリアできた場合は10万点をボーナスとして加算するルールも採用された[18]。
上位8名はシングル・エリミネーション・トーナメント形式で戦い、A-TYPEのスコアアタックを2本先取で行った。
また、この年からNES版テトリス以外のテトリスによるサイド・トーナメントも開催された。
2012(この年より2日制、オレゴン州ポートランド オレゴン・コンベンション・センター)
CTWCは、ポートランド・レトロ・ゲーミング・エキスポ(PRGE)内のイベントとして開催されるようになった。現在のフォーマットは第3回大会を機に確立された。
- 予選では規定時間内に好きな回数だけA-TYPEのゲームをプレイする。登録された得点のうち上位32名のプレイヤーが、翌日のトーナメントに進出する。
- トーナメントはシングル・エリミネーションであり、決勝戦以外は2本先取、ただし決勝戦は3本先取した方が優勝となる。
- 3位決定戦などはない。同一ラウンドに進出したプレイヤー間の順位は、 1) 負けた試合で取ったゲーム数、 2) 負けた試合のうち、自分が負けたゲームで取った点数の合計 によって決まる。
2015
同一ラウンドに進出したプレイヤー間の順位の決定方法に変更があり、上述のルール 2)の点数に、予選で取ったスコアも加算されるようになった。しかし、このルールは2016年を最後に廃止されている[19]。
2016
2016年からメインイベントのトーナメントの間は、以下の機能を持つ特殊なカートリッジを採用するようになった。
- スコア表記が従来より1桁多い7桁表示になる
- 乱数シードを入力することで、別々のカートリッジでテトリミノの降ってくる順番が同じになる
乱数シードの入力は、それぞれの試合前にレフェリーが10面体ダイスを2個振って、その末尾の番号で決定される(カートリッジの乱数は毎年違う物が割り振られる)。この特殊カートリッジが使用されてからも、予選については引き続き純正カートリッジを用いる。
2018
プレイヤーの増加に伴い、メインイベントのトーナメントに出場可能な選手を32名から40名に増やす変更がなされた。そのため、予選順位が25~40位の選手は、「0回戦」のプレイオフを行い、勝者がトップ8シードと戦うことになった(25位対40位の勝者は1回戦が8位の選手と戦い、26位対39位の勝者は1回戦が7位の選手、……という風になる)。プレイオフは予選終了の直後に1日目に行われ、2日目のメインイベントにはプレイオフを実施した結果残った32名が出場した。
2019
さらにトーナメントに出場可能な選手が48名に拡張された。「0回戦」のプレイオフは予選順位が17~48位の選手が対象となり、その勝者がトップ16シードと戦うことになった(17位対48位の勝者は1回戦が16位の選手と戦い、18位対47位の勝者は1回戦が15位の選手、……という風になる)。 また、2本先取の試合はプレイオフを含む2回戦までとなり、3回戦(準々決勝)からは3本先取となった。
2020-2021(オンライン開催)
新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)により、PRGE自体がキャンセルとなったが、運営者によりオンラインでの開催がアナウンスされた。そのため、現地開催とは大きく異なるルールが採用されている[20]。
予選
出場者は、ゲーム中の映像を配信することで予選に参加することが出来るようになった。各出場者には予選期間中に予約可能な2時間の枠が用意され、その間にA-TYPEのゲームを望む回数だけプレイして最高得点(もしくはマックスアウトの回数と次点の点数)を競う。ただし、純正の本体やソフト・コントローラーを使っていることや不正を行っていないことを確認する必要があるため、予選開始前にジャッジによるチェックの時間が設けられる。また、予選試技中にはプレイヤー自身や操作しているコントローラーが見えるようにすることなどが義務づけられる。
全ての出場者が予選を終了した結果、上位64名がグループ制のトーナメントに出場する(これをGold Bracketと呼ぶ)。また、67~96位だった選手と、(2021年のみ)97~128位だった選手には、それぞれSilver Bracket, Bronze Bracketと称した32名のシングル・エリミネーション・トーナメントの出場資格が与えられ、それぞれのトーナメントの上位入賞者にも少額ながら賞金が与えられた[21]。
グループリーグ(トップ64)
上位64名は8つのグループに分かれ、各グループの8名はダブル・エリミネーション・トーナメントに参加する(オンライン開催のため、特殊カートリッジを使った同一シードを確保する方法が難しいので、不公平性をいくぶん緩和する目的でダブル・エリミネーション制を採用している)。それぞれの中で上位1名のみが、トップ8のトーナメントに進出出来る。勝者側敗者側を問わず、試合は全て3本先取、初期レベルは18固定で行われる。
メインイベント(トップ8)
各グループリーグを勝ち抜いた戦績に応じてシードが再決定され、シングル・エリミネーション・トーナメントを行う。試合は全て3本先取で、初期レベルは18で固定である。
また、このトップ8に残った各選手には運営から特殊カートリッジが贈られるため、試合前に乱数シードを決定し、対戦相手同士が受け取るテトリミノの順番が同じになるよう試合を行う。
2022
2022年大会は3年ぶりの現地開催となった。
予選はオフライン大会の慣例であった行列を作って待つ方式ではなくなり、各プレイヤーに2時間の予選時間が与えられるようになった。また、過去のオンライン大会でも採用されたGold Bracket(ドローサイズ48)とSilver Bracket(同、32)の2部制を採用する。Goldは予選の上位48名、Silverは49~80位の32名が割り当てられ、どちらもシングル・エリミネーション・トーナメントで進行する。
Silver Bracketを含む全ての試合において初期レベルは18で固定である。また、Silver Bracketの準々決勝までの3ラウンドのみ2本先取であるが、それ以外の試合は全て3本先取となる。
結果
公式順位
CTWCの公式サイトに2012年以降の順位が掲載されている[19]。
開催年 | 優勝者 | 準優勝者 | 第3位 | 第4位 |
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2010(第1回) | Jonas Neubauer (1) | Harry Hong | Matt Buco | Dana Wilcox |
2011(第2回) | Jonas Neubauer (2) | Alex Kerr | Harry Hong | Robin Mihara |
2012(第3回) | Jonas Neubauer (3) | Mike Winzinek | Eli Markstrom | Alex Kerr |
2013(第4回) | Jonas Neubauer (4) | Harry Hong | Chad Muse | Matt Buco |
2014(第5回) | Harry Hong (1) | Jonas Neubauer | Terry Purcell | Eli Markstrom |
2015(第6回) | Jonas Neubauer (5) | Sean Ritchie ("Quaid") | Alex Kerr | Harry Hong |
2016(第7回) | Jonas Neubauer (6) | Jeff Moore | Harry Hong | Koji Nishio ("Koryan") |
2017(第8回) | Jonas Neubauer (7) | Alex Kerr | Sean Ritchie ("Quaid") | Matt Buco |
2018(第9回) | Joseph Saelee (1) | Jonas Neubauer | Tomohiro Tatejima ("Greentea") | Koji Nishio ("Koryan") |
2019(第10回) | Joseph Saelee (2) | Koji Nishio ("Koryan") | Aidan Jerdee ("Batfoy") | Daniel Zhang ("DanQZ") |
2020(第11回) | Michael Artiaga ("Dog") (1) | Andrew Artiaga ("PixelAndy") | Jacob Huff | Nenu Zefanya Kariko |
2021(第12回) | Michael Artiaga ("Dog") (2) | Jacob Huff | Joseph Saelee | Andrew Artiaga ("PixelAndy") |
2022(第13回) | Eric Tolt ("EricICX") (1) | Justin Yu ("Fractal") | Andrew Artiaga ("PixelAndy") | Michael Artiaga ("Dog") |
特筆すべき記録
- 予選初のレベル30到達: Joseph Saelee、2018年[22]
- 予選初のレベル31到達: Joseph Saelee、2019年[23]
- 予選での最大マックスアウト回数(2時間で14回): Justin Yu (2022)、、Eric Tolt (2022) [24]
- 本戦初のマックスアウト(100万点)達成: Joseph Saelee、2019年、準々決勝第2ゲーム(後述の第3ゲームも含め、2連続で達成)[25]
- 本戦初の両者がマックスアウト達成: Joseph Saelee 対 Tomohiro Tatejima、2019年、準々決勝第3ゲーム[25]
- 本戦初の両者が110万点突破: Michael Artiaga 対 Koji Nishio、2020年、グループリーグ グランドファイナル第2ゲーム・第3ゲーム(2連続で達成)[26]
- 本戦初の両者が130万点突破: Michael Artiaga 対 Minjun Kim ("Pokenerd")、2021年、グループリーグ グランドファイナル第1ゲーム[27]
- 本戦初の両者が210万点突破: Eric Tolt 対 Justin Yu 2022年決勝第3ゲーム(第1ゲームでは両者が150万点を突破)
サテライトイベント
2018年以降、アメリカ合衆国内外において地区予選(Regional Qualifiers)が開催され、その優勝者は現地で開催されるCTWCの予選に出場するための参加費の免除に加え、PRGEが開催されるオレゴン州ポートランドへの航空券も得られた。
現在では地区予選が多数にわたるため、本項では英語版記事で掲載されている2020年までのデータを挙げる。
創設年 | 開催地域 | 開催地(またはイベント名) | 運営母体 |
---|---|---|---|
2018 | CTWC Hong Kong | サイバーポート(香港數碼港) | RETRO.HK, TKO |
2018 | CTWC Asia (Regional Finals) | サイバーポート/香港城市大学 | RETRO.HK, TKO |
2018 | CTWC Singapore | ジェームス・クック大学シンガポール校/バーサスシティ | RetroDNA, RETRO.HK, TKO |
2018 | CTWC Germany | gamescom(ケルン) | TKOと地元コミュニティ |
2019 | CTWC Norway | Retrospillmessen | TKOと地元コミュニティ |
2019 | CTWC Taipei | 台北ゲームショウ | Brook Gaming, TKO |
2019 | CTWC Australia | 1989 Arcade Newtown | 地元コミュニティ |
2019 | CTWC Poland | 複数箇所 | 地元コミュニティ |
2020 | |
秋葉原ハンドレッドスクエア | 地元コミュニティ |
日本国内でも2020年4月にCTWC Japanが予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により現地開催は不可能と判断し、オンラインでの「CTWC Japan Lite」の開催に切り替えた。時を同じくしてCTWCもオンライン開催が決定したため、CTWC Japan Liteをはじめ、その年の地区予選の勝者は、CTWC出場に必要な参加費(50米ドル)が免除される措置が取られた。
関連・類似するイベント
CTWC内のサイドイベント
CTWC内で併設された、NES版テトリス以外のイベント、およびNES版を使っているが特殊なルール下で戦うサイドイベントの一覧を示す。
- 2011: PlayStation 3版「テトリス」: 2対2のチームバトルモードと、ノーアイテムモード。また、ボードゲームの「Tetris Link」の大会も行われた。
- 2015: PlayStation 4版「テトリスアルティメット」(en:Tetris Ultimate) :バーサスモード。
- 2016, 2017: SNES版「テトリス&ドクターマリオ」(en:Tetris & Dr. Mario) :バーサスモード。CTWC本戦に出場していないプレイヤーのみ参加出来た。
- 2016: アーケード版「テトリス ジ・アブソリュート ザ・グランドマスター2 PLUS」:ノーアイテムの対戦モード。予選は同作のマスターモードの成績でシード順を決定した。
- 2017: アーケード版「テトリス ザ・グランドマスター」:通常モード。到達レベルと段位、およびGMを取得してクリアした場合はタイムの速いプレイヤーが勝利となる。
- 2018: PlayStation 4版「Tetris Effect」:ジャーニーモードとミステリーモードの2大会が行われ、それぞれスコアを競う。
- 2018: NES(NTSC)版「テトリス」:ネクスト表示を消してレベル18をプレイしてスコアを競うNo Next Previewモードと、レベル0から開始して19に到達するまでのタイムを競う0-19 Speedrunモードの2種類。
- 2019: NES(NTSC)版「テトリス」:二人一組で片方が十字キー、片方が回転ボタンを操るタッグ対戦のMindmeldモードと、接地したブロックが見えなくなる状態でスコアを競うInvisible Tetrisモードの2種類。
- 2022: 大会協賛のEnhance Gamesらの協力により、「Tetris Effect: Connected」の様々なモードおよびカスタムルールを使ったトーナメントが行われた。
オンラインイベント
CTWCとも関係の深いイベントとして、Classic Tetris Monthly(CTM)が挙げられる。これはTwitch個人配信者のJessica Morrigan Starr(Fridaywitch)が2017年の12月にイベントとして放映したのが始まりであり、そのときは2014年のチャンピオンであるHarry Hongがゲストプレイヤーとして、また当時のチャンピオンのJonas Neubauerも実況として招待された(Harryはこのトーナメントにて優勝している)[29]。それ以来、オンラインで配信中の二名の映像を接合してCTWCと同じフォーマットで対戦を行うトーナメントを毎月開催していた。
やがて予選出場を希望する選手が世界中から増え運営の負荷を感じたStarrは、CTMを他のホストに委譲することを2018年夏に決め、その結果Keith Didion(Vandweller)がStarrの役割を継承しCTMの2代目のホストとなった。ほどなくしてCTMはプレイヤー層の急激な増加によって規模を拡大し、開催当時は上位16名までしか本戦出場・放映がされなかったが、17位以下の選手に対しても複数の下位リーグを作って出場ができるようにし、コミュニティ内でDiscordを活用し、対戦する選手と動画を一画面にまとめる配信者(Restreamers)が協力してトーナメントを運営させる手法を確立させた。
CTMの隆盛を機にオンラインで配信者の画面を接合して対戦の光景を放映するシーンが増え、CTWC出場選手の中にも、3人以上が同時にプレイするバトルロイヤル形式、あるいはチーム戦・リーグ戦といった本家と異なるシステムを盛り込んだ独自のオンライン大会を運営する者も現れた。
Classic Tetris European Championship(CTEC)
Classic Tetris European Championship(CTEC)は2015年からデンマーク・コペンハーゲンにて年1度開催されているヨーロッパ諸国向けの大会である。本家のCTWCとは違い、ヨーロッパで主に流通している映像形式がPALのNESを用いるため、NTSC版とは移動のパラメータが異なり、若干ではあるが横タメ操作法の不利が少なくなっている。
ただし、最高落下速度はNTSC版と比べてやや遅い(天井から床までの落下に約0.4秒を要する)ため、前述のローリングを駆使することで、より長く耐久できることが分かっている。 「テトリス」では、レベル138に到達するとブロックの色がバグによって本来想定していない色となることが既に知られていた[30]が、PAL版では2022年にこのバグを人力で再現するプレイヤーが現れた[31]。その後半年足らずで、NTSC版でも同様のバグを再現するプレイヤーも現れ、「テトリス」におけるローリングがいかに効果的であるかが示されることになった[32]。
出典
- ^ “Classic Tetris World Championship Coming to Los Angeles”. Wired. (2010年8月3日) 2022年7月8日閲覧。
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- ^ Shaver, Morgan (2017年10月30日). “What You Missed During the 2017 Classic Tetris World Championship”. Tetris.com 2022年7月8日閲覧。
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- ^ 古嶋 誉幸 (2019年2月18日). “海外版『テトリス』発売から30年の挑戦を経て人類が「33面」に到達する。約0.3秒で地面まで落下&即着する世界”. 電ファミニコゲーマー (マレ) 2022年7月8日閲覧。
- ^ 古嶋 誉幸 (2018年10月23日). “8大会で7度優勝の『テトリス』絶対王者を破ったのは弱冠16歳の新世代プレイヤー。「ハイパータッピング」を駆使して競技『テトリス』の歴史塗り替える”. 電ファミニコゲーマー (マレ) 2022年7月8日閲覧。
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外部リンク
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