35mmフルサイズ
35mmフルサイズは、デジタルカメラの固体撮像素子のサイズ規格のひとつの通称である。サイズが135フィルム(35mmフィルム)を使用するカメラで広く用いられる24mm×36mmの画面サイズに近いことから、135フィルムサイズ撮像素子の開発でかつて有利であった一部のメーカーが通称として呼んだものである。なお、35mmフルサイズはフルサイズと略されることがある。よりサイズの大きい撮像素子を使用する中判デジタルカメラもあり、何に対してフルサイズなのか曖昧な表現ではあるが、一般的に用いられている。英語圏でも同様にfull-frameと略されることがある。
35mmフィルムがかつてライカに採用され全世界に広まった事から、このサイズの画面フォーマット(縦3.6cm×横2.4cm)をライカ判と呼ぶ事がある。また、ニコンではFXフォーマットという名称を使用している。
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[編集] 撮像素子のサイズ
2008年現在、コストや技術的な問題から、一部の高級一眼レフに採用されるにとどまっている。普及価格帯の一眼レフカメラでは、面積比で40%前後となるAPS-Cサイズの撮像素子が主流である。デジタルレンジファインダー・カメラでは、R-D1ではAPS-Cサイズが採用され、フルサイズのデジタルレンジファインダー・カメラは、2009年秋登場のM9が初となった。ちなみにM8とM8.2はAPS-H。コンパクトカメラに至っては対角線長で12mm未満という極めて小さな撮像素子が使われており、これは対角線長43mmの35mmフルサイズと比較すると面積比でわずか5%前後に過ぎない。
[編集] 製造コストと歩留まり
半導体素子は、その面積が大きくなると、一枚のシリコンウエハーから取れる数量が少なくなったり、歩留まりが悪くなるため、35mmフルサイズのような大きな撮像素子はAPS-Cサイズのものに比べ高価である。2010年11月現在、35mmフルサイズの撮像素子を使用したデジタル一眼レフカメラ現行製品の最も実勢価格が安いものはキヤノンEOS 5D Mark IIやニコンD700で、おおよそ17万円前後で販売されている。デジタルカメラとしての機能上の差異やメーカーの販売戦略の影響もあるため単純な価格比較は出来ないが、APS-Cサイズの撮像素子を搭載した機種は大幅に安くキヤノンEOS Kiss X50やニコンD3000が4万円前後で販売されている。
[編集] メリット
撮像面のサイズが、一般的な35mmフィルムを使用するカメラとほとんど同じである事から、同じ焦点距離のレンズを使用した場合の画角やボケ方がほとんど同一となるというメリットがある。35mmフィルムを使う一眼レフ・レンジファインダーがあまりにも広く普及したため、それらのレンズ交換システムの規格がデジタルカメラに引き継がれていることが多い。また、画角・ボケ方・焦点距離・絞りなどの相互の関係をすでに記憶している写真愛好家も多い。このような理由から、過去に35mmフィルムカメラを使ってきた層にとっては、35mmフルサイズの撮像素子を持つカメラこそ最も使い易いカメラであり、フィルムカメラ時代のレンズの描写特性を生かすためには35mmフルサイズの撮像素子を使う必要があると主張されることがあった。
また、同じ画素数の撮像素子で比較した場合、1画素あたりの受光面積がAPS-Cサイズ比で2.2倍と大きくなり、感度やS/N比の面で有利とされる。
[編集] デメリット
反面、撮像素子の製造コストが高く、カメラ本体の高価格化に直結する。また、撮像素子の構造に起因するデジタルカメラ特有の周辺光量の低下がより強く出るため、テレセントリック性が高いレンズ設計が必要であるとされるが、マウント径の制限があるためレンズの焦点距離によっては設計が困難である。また、構造の関係から、カメラ本体が大型になり、重量も増大し、携帯性に劣る。
さらに、イメージサークルが相対的に大きいこともあり、所要の性能を持つレンズは同じ焦点距離であってもAPS-C向けと比べて大型で重量が増し、価格も高価格にならざるを得ない。それゆえカメラ本体だけでなく、システム全体が大型で重くなり、高価格になりがちである。
[編集] 従来レンズの流用可否
レンズにおいては、従来のフィルム一眼レフと同等の条件での撮影が可能である反面、赤外線カットフィルターや、オプティカルローパスフィルタ、センサーのカバーガラス等の、フィルムカメラには存在しない光学素子の存在により収差が発生してしまうという問題がある。この収差は、光線の入射角度が大きいほど強くでる傾向がある。また、オプティカルローパスフィルターは光線の入射角度が大きい方が効果が強く出る。フィルム用に設計された明るいレンズや広角レンズの周辺部の像が著しく不鮮明になるのは、これらが主な原因である。
なお、一部の高級機でオプティカルローパスフィルターとして高価なニオブ酸リチウムを採用しているのは、ニオブ酸リチウムの強い複屈折性を生かすことでオプティカルローパスフィルターの厚みを抑え、フィルム用のレンズを使った場合の収差の発生を少しでも抑えようとするためである。逆に言えば、安価な水晶をオプティカルローパスフィルターとして採用した場合、フィルム用のレンズとの組み合わせでは収差が大きくなる。
また、フィルムカメラ用のレンズは射出瞳(exit pupil)の位置がまちまちで、マイクロレンズ(撮像素子上にある超小型レンズ)が想定する位置にあるとは限らない。このため多くのレンズで周辺光量の低下が発生する。
デジタル専用設計レンズとは、これらの光学素子の存在や、撮像素子の特性を前提として設計されたものである。収差が最適にコントロールされたレンズ設計をするためには、本来、それらの光学素子が規格化されている必要があるが、機種によってまちまちなのが実状である。そのため、デジタル専用設計レンズであっても、想定と異なる光学素子が搭載されたカメラと組み合わされた場合、収差が設計どおりに収束しない場合もある。また、マウント径の制限により、射出瞳を理想的な位置に配置することができず、周辺光量の低下を十分にコントロールできない場合もある。
以上の理由により、フィルムカメラ用のレンズをそのまま使った場合でも、実際には期待通りの結果を得られるとは限らない。また、フィルムからデジタルへの移行を考えた場合、撮像素子のサイズよりも他要素の影響が大きいため、クリアかつシャープな描写を望む分には、必ずしもフルサイズにこだわる必要は無いという意見もある。
[編集] 展開
従来はセンサ製造のコストが高く、定価60~100万円ほどの価格でプロ向けの製品にのみ採用されたが、ステッパーの改良により露光回数を2回に減らしたり、水晶のローパスフィルタを採用するなど、センサー周辺の製造コストを大幅に削減し、20万円前後のハイアマチュア向け製品を発売できるまでになっている。かつてはAPS-Hサイズまで一回で露光できるステッパーを保有するキヤノンとコダックのみがフルサイズの製造コストを下げることが可能だった。他社では、製造に3回以上の露光が必要となる。よって、この2社からの供給を受けない限り、他社から35mmフルサイズが出てくる可能性は低いと考えられていた。
ところが、2007年8月23日にニコンが、自社開発の35mmフルサイズCMOSイメージセンサを搭載したフラグシップ機「D3」を発表し、2007年11月30日に発売した。
また、ソニーは2008年1月30日、35mmフルサイズで有効2481万画素と高速読み出し(6.3フレーム/秒 - )を実現したデジタル一眼レフカメラ向けCMOSイメージセンサの開発に成功したと発表。2008年10月23日に35mmフルサイズを搭載したαシリーズのフラグシップ機として「α900」を発売した。