広角レンズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
広角レンズ(35mm判)
Nikon Nikkor AF 24mm f2.8

広角レンズ(こうかくレンズ、: wide lens, wide angle lens)とは、写真レンズの分類の1つである。「広角レンズ」を定義する厳密な基準はなく、標準レンズよりも「画角の広いレンズ」・「焦点距離が短いレンズ」という分類である。歴史的理由から35mmフィルムカメラで「標準」とされてきた50mmが望遠寄りであるためもあって、標準寄りの広角と、より広角側の広角、といった分類がされることもある。

特性[編集]

超広角レンズの撮影例
(35mm判換算で16mm相当の画像)

「広角レンズ」は、以下の特性も持つ。「超広角レンズ」は、その特性がより顕著になる。

被写界深度が深い
35mm判の焦点距離28mmのレンズは、F値をF8・ピント位置3mで、約1.5m〜無限遠の被写界深度となる[1]
35mm判の焦点距離50mmのレンズでは、同条件で、ピントが合う範囲が約2.3〜約4.4m、被写界深度は約2.1mとなる[1]
上記のように異なる焦点距離のレンズを、ピント位置とF値を同一にして比較すると、広角レンズの方が被写界深度が深い特性を持つ。これは広角レンズの方が、焦点面の錯乱円の直径が許容錯乱円径以下となる距離である「焦点深度」が広くなる。「焦点深度」が広くなるということは、合わせたピント位置に対して「ピントが合っていると感じられる範囲」が前後により深くなるということである。
被写界深度が深い特性のため、スナップ撮影に向いているレンズとされる。また、被写界深度を生かしたパンフォーカス撮影にも適している。
被写界深度の例
(絞り:F2.8・ピント位置:5m)
焦点距離(35mm判) 14mm 24mm 28mm 35mm 50mm 135mm 300mm
ピントが合う範囲 1.5〜∞m 2.8〜26.2m 3.1〜12.3m 3.6〜8.1m 4.2〜6.1m 4.88〜5.13m 4.98〜5.01m
被写界深度 --- 約23m 約9.2m 約4.5m 約1.9m 約0.25m 約0.05m
許容錯乱円径=0.033mm[2]における計算値
焦点距離別の被写界深度の比較(F値=5.6)
Portrait24mm5 6.jpg
広角レンズ
24mm(35mm判)
対角線画角84°
Portrait50mm5 6.jpg
標準レンズ
50mm(35mm判)
対角線画角46°
Portrait100mm5 6.jpg
中望遠レンズ
100mm(35mm判)
対角線画角24°
橋の欄干やその影に注目すると、24mmではかなり奥まで合焦しているように感じられる。50mmでは橋の中ほどより先ではボケている。100mmでは欄干はボケている。なお作例では、被写体(人物)の大きさを一定にしようと撮影しているため、カメラから被写体までの距離(ピント位置)は異なる。
パースペクティブ効果
「広角レンズ」は、肉眼で見たときに比べて、被写体が遠くに写るため、遠近感(パースペクティブ)が強調される。
上図(「焦点距離別の被写界深度の比較」)では、広角レンズは「パースペクティブ効果」により、対岸が遠くにあるように感じる。
デフォルメ効果の例
デフォルメ効果
被写体との距離が近いとパースペクティブ効果の影響で、肉眼で見たときに比べて、近くにある被写体はより大きく、遠くにある被写体はより小さく写る。このデフォルメ効果により、被写体との距離が近いと人物撮影の場合は、肉眼に比べて、鼻が大きく目が離れて写る。
ブレに強い
「広角レンズ」は、拡大倍率が低いため手ぶれによる画像のブレが起きにくいとされる。実際には、手ぶれにより画像はブレているが、被写体が小さく写るので目立ちにくいだけで解像度は落ちている。
歪み
レンズにもよるが、樽型の歪曲収差をもつレンズが多い。
歪曲収差以外に、画像周辺部が外に向って流れるような歪みを持つ。
カメラアングルにより、被写体の形が湾曲する。水平な線を入れて撮影する場合、カメラを水平にして水平線を画面中央に入れて撮ると直線に写るが、上に向けて撮ると凹型に、下に向けて撮ると凸型に写る。

また「超広角レンズ」は、肉眼で見たときに比べて、空間を広く写すことができるため、住宅などの広告写真に用いられる場合がある。

広角単焦点レンズ[編集]

超広角レンズ(35mm判)
Canon EF14mm F2.8L USM

35mm判用の単焦点レンズでは、一般的に焦点距離が35mm以下のレンズを「広角レンズ」と分類している。その対角線画角は63°である。他のフォーマットにおいても、同等の対角線画角をもつレンズを「広角レンズ」と分類することが多い。

超広角レンズ
35mm判用の単焦点レンズで、焦点距離が24mm未満のレンズを「超広角レンズ」と分類する。その対角線画角は84°より広角になる。焦点距離が24mm以下のレンズを「超広角レンズ」と分類するメーカーもある。
他のフォーマットにおいても同等の対角線画角をもつレンズを「超広角レンズ」と分類することが多い。
準広角レンズ
35mm判において焦点距離が35mm〜40mmのレンズは、上記のような特性が弱いため、「準広角レンズ」と分類することがある。

広角ズームレンズ[編集]

広角ズームレンズ(35mm判)
EF17-40mm F4L USM

広角ズームレンズとは、広角レンズの焦点域を中心にカバーするズームレンズをいう。また、超広角レンズの焦点距離をカバーするレンズは、「超広角ズームレンズ」と分類することもある。標準域(35mm判で焦点距離50mm)を中心とするレンズは、広角域をカバーしていても「標準ズームレンズ」と分類することが多い。

レンズ構成としては前が凹、後ろが凸の逆望遠構成の前後間隔を変えてズーミングを行う。 前群と後群の間隔を広げると逆望遠構成となり焦点距離が短くなり、逆に前群と後群の間隔を縮めると対称型構成となり焦点距離が長くなる。詳細は写真レンズズームレンズを参照。

機構上の特徴[編集]

レンジファインダーカメラやコンパクトカメラ用のものは、焦点距離が短いだけで標準レンズとの差は少ないが、特に超広角レンズでは非常に被写界深度が深くなるため、距離計によるピント合わせを不要として距離計非連動としたものもある。バックフォーカスが短いので、歪曲収差の少ない対称型の構造を持つレンズも存在する

一眼レフカメラ用の広角レンズを設計する際に、レンジファインダーカメラと同様の設計ではバックフォーカスが短くなり、レンズの後端がクイックリターンミラーに干渉する。そのため広角レンズは逆望遠型のレンズ構成が採られる。標準レンズは、ダブルガウスタイプの構成を持つレンズが多い。

最近の広角レンズでは近接時の描写性能を向上させるためフローティング機構を採用しているものが多い。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b 被写界深度となる…許容錯乱円径を0.033mmとしての計算値。
  2. ^ 許容錯乱円径用の定数(K)を1300として計算。35mm判の対角線距離「43.3mm」を1300で割った0.033mmとした。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]