神裂火織

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神裂 火織かんざき かおり
とある魔術の禁書目録』のキャラクター
初登場 第1巻
作者 鎌池和馬
伊藤静
詳細情報
性別
職業 魔術師
宗教 イギリス清教
天草式十字凄教
所属サイド 魔術サイド
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神裂 火織(かんざき かおり)は、鎌池和馬作のライトノベルとある魔術の禁書目録』に登場する架空の人物であり、同作品のヒロインの一人。担当する声優伊藤静(アニメ版、ドラマCD版、ゲーム版共通)。

人物[編集]

イギリス清教第零聖堂区「必要悪の教会(ネセサリウス)」所属の女性魔術師。「天草式十字凄教」女教皇(プリエステス)でもある。ロンドンでも5本の指に入る凄腕の魔術師で、世界でも20人ほどしかいない聖人の1人[注 1]。日本刀「七天七刀」を使った抜刀術「唯閃」と、ワイヤーによる攻撃「七閃」を主体とする白兵戦を得意とする。魔法名は「Salvare000(救われぬ者に救いの手を)」。住居はロンドンランベス区の「必要悪の教会」女子寮。

神裂編SSでは主人公格として活躍する。

容姿[編集]

Tシャツとジーンズを着用している、長身でスタイルがいいポニーテールの美女。年齢より大人びて見られることを気にしている。術式のため、ジーンズの左脚部分の裾を根元まで切断し、Tシャツをへそが見えるように裾結びしているなど、左右非対称の容姿となっている。靴はウエスタンブーツ、腰のウエスタンベルトには愛刀「七天七刀」を差している(容姿を説明される際には、このような外見を指して「ウエスタンルックサムライガール」と表記される)。秋以降は右腕部分の袖のないデニムのジャケットを羽織っている。普段時は浴衣を着用することもある。

性格[編集]

普段は年下の上条当麻にまで敬語を使う丁寧な口調だが、激昂すると口調が荒っぽくなる。真面目な性格で、戦闘や仕事に関しては完全無欠という面が強く、リーダーシップも高いが、普段の生活ではオルソラ・アクィナスアニェーゼ部隊といった個性的な面々に振り回されて右往左往することが多い。また、非常に義理堅いところがあるが、これが災いして土御門元春には何かと付け込まれている。

生活[編集]

元は天草式十字凄教の女教皇(プリエステス)として生を受け、神の加護による強運を持つが、それが周りに不運を与えていると考えて女教皇の地位を辞し、「必要悪の教会」に加入する。魔法名はその過去に由来し、現在の天草式の基本理念となっている。イギリス清教の一員となった現在は、ロンドンにある「必要悪の教会」の女子寮にオルソラ達と暮らしている。好物は自家製の梅干しや鯛茶漬けといった日本食。

神裂を含む女子寮の住人は皆機械類に弱く、ローラ=スチュアートが学園都市からもらってきた最新鋭の全自動型洗濯機が女子寮に届いた時は、操作方法に悪戦苦闘した。それでも、故障することなく洗濯の任を遂げたことから、洗濯機を友と認識するようになり、イギリスのクーデターの際には持ち出しが不便にもかかわらず女子寮から運び出すなど、かなりの愛着を持っている。

人間関係[編集]

インデックスの「首輪」の件や「御使堕し」、さらには「法の書」事件での天草式の件で上条に多大な恩義を感じており、それを返したいと常々考えている。この感情を神裂はあくまで借りと主張しているが、上条に好意を抱く五和には恋敵として認識されている。

インデックスとはステイル=マグヌスと同じくイギリスにいた頃からの付き合いで、彼女が自分のことを忘れてしまっている現在もステイルと同様、見守る立場にある。

土御門とは自分がイギリス清教に加入した頃からの付き合いで、彼からは「ねーちん」と呼ばれている。当時英語をほとんど話せなかったことから土御門に通訳として色々面倒も見てもらったらしい。神裂はそのことを大きな借りと感じており、そこを土御門に付け込まれ、上条へのアプローチのために「堕天使メイド」のコスプレを行うよう迫られて悩み続けた果てに、アックアの件では最終的にバージョンアップ版の「堕天使エロメイド」を着て上条の見舞いに訪れたが、この件はトラウマになっている。なお、「堕天使エロメイド」姿の神裂の挿絵は作中にはないが、灰村キヨタカの個人サイトにはラフ画が掲載されている[1]。ただし、第17巻の挿絵には「堕天使メイド」姿の神裂がデフォルメ化されて描かれている。

建宮斎字をはじめとする天草式の面々からは全幅の信頼を寄せられているが、上記の「堕天使エロメイド」姿の神裂を見逃したことから何かにつけて「堕天使エロメイド」姿を拝もうと迫られている。

作中の行動[編集]

初登場は第1巻であり、当初は敵として登場。

ステイルと共にインデックスを追って学園都市へと潜入し、7月24日にインデックスを回収しに赴いて圧倒的な強さで上条を倒すが、彼の説得で一旦退く。3日後、記憶消去のために小萌のアパートを訪れるが、上条の説得を受けて「自動書記」を起動させたインデックスに対抗するため、彼を援護する。8月末に発生した「御使堕し」の際には、ロンドンのウィンザー城の結界の中にいたことで世界の異変に気付き、「御使堕し」を食い止めるために土御門と来日し、偶発的に「御使落し」を発動させてしまった上条刀夜を殺害しようとしたミーシャ=クロイツェフと交戦する。

9月8日の法の書事件では天草式が「法の書」の力を利用する可能性への疑惑から危惧を抱いて独断で来日し、天草式を殲滅するために派遣された「騎士派」を全滅させる。後に天草式が私欲のためにオルソラをさらったのではないと分かり、全てが終わった後で上条に事後報告する。

劇場版アニメでは、鳴護アリサが「聖人」であるかを判定するために学園都市に潜入していた。9月18日には土御門の指示でバリスティックスライダーに「武器」として搭乗し、宇宙エレベーターエンデュミオン」から放たれたミサイルを迎撃するため、生身で宇宙空間に出撃。抜刀術でミサイルを破壊した後、そのまま大気圏に突入するという超人ぶりを発揮する。

10月中旬の「神の右席」後方のアックア襲来時には、窮地に陥った天草式を救うために学園都市でアックアと対峙。聖人に加えて聖母の力を持つアックアの圧倒的な力を目の当たりにして追い詰められるが、戦いの最中に天草式を離れたのは仲間の力を信用しなかった自分の我侭であったと理解し、天草式に援護を要請して共闘する。さらには駆け付けた上条と共にアックアの動きを封じることでアックア撃破に貢献し、再び天草式の女教皇の座に就く。その後のキャーリサのクーデターでは、「新たなる光」のフロリスを撃破するもカーテナ=オリジナルからの力を得た騎士団長に敗れて戦線離脱。上条らと合流後にバッキンガム宮殿に乗り込み、キャーリサとの戦いでは新生天草式のトップとして上条らと共に奮戦する。第三次世界大戦では清教派の中心となってフランスと戦う。

大戦後、突如として現れたラジオゾンデ要塞をその調査と同時に安全に着水させる作戦の最中に投擲の槌と交戦することとなり、苦戦の末に勝利を収めて太平洋に着水させる。対グレムリンの国家間会議では、騎士団長に代わり英国女王の護衛を務める。その後、キャーリサ、騎士団長、アックアと共にストウリングでロシア成教の刺客を退けたばかりの上条を確保するが、自身の特性を逆手に取った彼にオティヌスを殺さずに無力化できる可能性を提示され、彼への追撃を食い止めるため不本意ながら聖人級の実力者3名と刃を交えることになってしまう。

12月、「クロウリーズ・ハザード」によるイギリス襲撃時には、急遽ローラの手でクリファパズル545憑依させられ、人間性の軸がズラされたことで他人の死を許容するようになっており、カンタベリーで壊滅したと噂される部下の天草式を捨て置いてロンドン市内の防衛を行う。アレイスターを「騎士派」と共に迎撃するが、近代西洋魔術を網羅した魔術師である彼女には術式が通用せず敗北、槍を脇腹に突き刺されたことで憑依していたクリファパズル545から解放される。敵とはいえクロウリーズ・ハザードを殺してしまったことから精神的に不調に陥るも、オルソラの護衛としてスコットランドに向かう途中の対話で励まされる。不審な行動を取っていた浜面滝壺を拘束してエディンバラ城に向かい、リメリアと合流して周辺調査を行うが、既にオナーズオブスコットランドはコロンゾンに奪われており、遠隔地から城に送り込まれた「アエティール・アバター」を迎撃する。最終決戦においては傷ついた味方をアエティール・アバターから守りつつ、「冥土帰し」を護衛して最前線まで向かう。コロンゾン戦後の祝勝会では、「心理掌握」に対する自動切断で意識を失っている間にインデックスや天草式を神浄に人質に取られ、上条と敵対することになる。ウィンザー城に侵入した上条をステイルと共に迎え撃つも、人殺しの側に回る事を嫌ってあえて慣性でボロボロになるような戦い方をする。城に備えられていたマンドラゴラ地雷で外に誘い出され、駆けつけたダイアンと戦うことになり互角の戦いを演じるが、「聖人」が能力者に近いというブラフで揺さぶられ、行動を縛られたのが原因となり敗北する。

12月26日には「オペレーション・オーバーロードリベンジ」に際して「消失」したロサンゼルス3000万人の調査のため、ステイル、上条、インデックスと共に現地に向かうが、調査団の最大戦力としてキトリニタスから真っ先に狙われ、敵が民間人を人質にしている可能性から攻撃の手が止まり、攻撃範囲と推定した砂嵐から逃れようとするも、科学技術であるロジスティクホーネットが要となっていたために回避に失敗。「黄色化」の餌食になって「養分化」されつつある中で、ステイルに自分の得た情報を伝えて「消失」した。

魔術・戦闘スキル[編集]

2メートル以上の令刀と呼ばれる日本刀大太刀)「七天七刀」を使った抜刀術「唯閃」とワイヤーによる攻撃「七閃」を主体とする白兵戦を得意とする。攻撃魔術も普通に用いるが、結界のような細かい魔術は苦手としている。「聖人」なので一般の魔術師以上の能力を有するものの、100%の力の行使は自滅する恐れがあるために不可能らしく、全力を長時間発揮することは難しい。「魔神」のように死者を復活させる力もなく、死者を生き返らせた「神の子」の力の一端を軸にした特殊な回復魔術を構築しているが、死者の魂を癒す事には失敗している[2]。また、敵味方共に、人の命が奪われる状況を決して認めない性格から、大規模な戦争においては戦闘よりも救助に重きを置き、対人戦闘でも鞘による殴打など殺傷力が低い攻撃を使う。だが、それでも「神裂に勝てるのは本物の神様か天使ぐらいのものだろう」と言われるほどの実力者であり、敗北は数えるほどしかなく、単独で倒せなかった相手は二重聖人にして「神の右席」のアックア、カーテナから莫大な「天使の力」を供給された騎士団長、近代西洋魔術の開発に関わった「黄金」の魔術師アレイスター、同じく「黄金」のオリジナルから再現されたダイアン、人質の存在を匂わせた上で専門外の最先端科学技術を術式に組み込んだキトリニタスなど、特殊な者に限られる。劇場版アニメでは、前述の超人ぶりから「地上で全力を発揮したら、それこそ地球が壊れてしまうので(笑)」と評されている[3]

また、魔術だけでなく肉体的なスキルも高く、作中では最強クラスである。音速を超える挙動を可能とし、銃弾を目視で回避可能、爆撃機を両断できる[4]、道路標識を投げ槍の要領で1km以上先まで投擲する[5]、海に漂うゴミなどのわずかな浮力を利用して水面を高速移動する[6]、風に舞う木の葉やビニール袋を飛び石に上空300mまで瞬時に飛び上がる[7]、蹴り1発で工場を倒壊させる[2]といった超人的な身体能力を持つ。視力は両目共に8.0で、ある程度の暗視も利く[8]

唯閃(ゆいせん)
聖人の力と七天七刀を用いた神速の抜刀術。多角宗教融合型十字教である天草式の技法により、十字術式でできないことは仏教術式、仏教術式でできないことは神道術式、神道術式でできないことは十字術式というように、特定の宗教に対し、別の教義で用いられる術式を迂回し、お互いの弱点をその都度適切な形で補う事で、完全な破壊力を持つ無二の攻撃術式となっている。
さらに、多神教の中でも神の数が多く、神との交渉術として神殺しの術式を保有する神道術式を使い、独特の呼吸法で魔力を練り上げ、一時的に血管筋肉内蔵神経骨格の全てを「神を殺す者」へと組み換えることで、十字教徒では大前提として倒すことのできない一神教の天使すら切断し、天使長と同等の力を得るカーテナの全次元切断術式とも打ち合える、必殺の一撃を放つことができる。ただ、一瞬で勝負を着けないと全身が崩壊するほどの負担が襲う術式であり、抜刀術なのも自身が得意だからではなく、その形を取らざるを得なかっただけでしかない。
七閃(ななせん)
七天七刀の鞘に仕込まれた7本の鋼糸(ワイヤー)による斬撃を軸とする中遠距離用の格闘術。天草式の「七教七刃」を発展させた技で、刀を鞘内で僅かに動かす動作によって抜刀術と誤認させる。攻撃速度は一瞬に7回殺すほどとされ、10メートル以上の距離から相手を切り裂く。刃を置く事で場を区切り聖域化する、一種の拒絶の壁・防御の魔法陣を設ける儀式としての意図もあり、排斥に物理的な攻撃を加え、ワイヤーの形に置き換えた事で、抜刀に織り交ぜてタイミングをずらした斬撃を自由自在に解き放つ、空間全体を味方につけたような切れ味を実現している。また、ワイヤーの軌跡を利用して3次元的な魔法陣を構築できる。左文字の銘を継ぐ刀匠が鍛えた世界遺産級の業物だが、本物の天使には容易く引き裂かれる程度でしかない。
雷切(らいきり)

鋼糸(ワイヤー)魔術[編集]

禁糸結界(きんしけっかい)
紅蓮の炎(ぐれんのほのう)

その他[編集]

神を裂く者(かみをさくもの)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 劇場版アニメでの言動から、聖人の中でも上位9位以内の実力を持つことが示唆されている。

出典[編集]

  1. ^ 『とある魔術の禁書目録9』第一章「炎天下の中での開始合図 commence_hostilities. - 2」(49頁 1行目)
  2. ^ a b 神裂編SS 第8話
  3. ^ 「劇場版 とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」大ヒット記念特集!錦織監督インタビュー(その3) - TOKYO ANIME NEWS[リンク切れ]
  4. ^ 神裂編SS 第1話
  5. ^ 神裂編SS 第3話
  6. ^ 神裂編SS 第5話
  7. ^ 創約4巻、139ページ。
  8. ^ 神裂編SS 第4話

参考文献[編集]

外部リンク[編集]