メリュジーヌ

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メリュジーヌ。竜の翼を持つ。

メリュジーヌ (: Melusine) は、フランスの伝承に登場する女で一種の異類婚姻譚の女主人公。頭部と胴体は中世の衣装をまとった美女の姿をしているが、下半身は水蛇の姿をしている。また、背中にはドラゴンが付いているとも言われている。ドラゴンメイドマーメイドの伝承とも結び付けられて考えられることもある。

伝説の概要[編集]

入浴中のメリュジーヌ
リュジニャン城。右上に飛ぶ竜が正体を現して怒っている時のメリュジーヌである

1397年にフランスのジャン・ダラスが『メリュジーヌ物語』を散文で著し、クードレットという人物が1401年以降にパルトゥネの領主に命じられ『メリュジーヌ物語、あるいはリュジニャン一族の物語 Le roman de Mélusine ou histoire de Lusignan』を韻文で書き上げたことで広く知られるようになった。

ブルターニュ伯(あるいはポワトゥー伯)の下に美女の姿で現れて求婚し、妻となって後は彼を助けるが「日曜日に必ず沐浴するので、決して覗かないこと」という誓約を夫に破られ正体を明かされる[1]。部屋に一人閉じこもっていた彼女の姿は上半身こそ人間だったが、下半身は巨大なになっていたのだった。

実は、彼女はもともとを掌る妖精アールバニーの領主の間に生まれた姫君であったが、母親の出産時に禁忌とされていた妖精の出産を父親である領主が見てしまったために母親の妖精は妖精の国に押し込められてしまった。寂しい子供時代を過ごしたメリュジーヌと2人の姉妹は結託して父親を幽閉した(異説では母親を陥れようとした)ために母親から呪いを受けて追放された。その呪いというのは、週に一日だけ彼女たちの腰から下の下半身が水蛇の姿となる。だが、人間の男の愛を得れば呪いが解けると聞かされて領主に近づいたのであった。だが、実はその呪いにはもう1つの決まりがあり、変身した姿を見られた場合には永久に下半身が水蛇のままで生きなければならないというものであった。

領主は彼女が人間でないことを知ってからも妻とし続けたが、二人の間に生まれた気性の荒い異形の息子達が町で殺人を犯したと聞いて激昂し、息子達の性格上の欠陥の原因を彼女の正体のせいだと罵り「化け物女」と罵倒したため、自尊心を傷つけられた彼女は正体を現し、教会の塔を打ち壊して川に飛び込んで行方をくらましたという。その後、彼女は水妖の一員となり、紋章などに用いられている尾が2つあるマーメイドは彼女のその後の姿であるとされている。また、正常な姿で生まれた彼女の末の息子は領主の地位を継ぐと名声を上げて王の位に就いたともいわれており、フランス王侯の多くに子孫を伝えたとする説もある。

息子たち[編集]

大牙のジョフロワ

クードレットの記述による。

  • ユリアン(後にキプロスの王になったという)
  • ウード(外見と顔が炎のように燃えて見える)
  • ギイ(後にアルメニアの王になったという)
  • アントワーヌ(片頬に獅子の足が生えている)
  • ルノー(一つ目)
  • ジョフロワ(大牙が一本あり)
  • フロモン(鼻の上に毛で覆われたアザがある)
  • オリブル(三つ目)

お菓子[編集]

ブルターニュ地域圏では近代まで、メリュジーヌが町を去ったとされる日に祭りが開かれ、屋台で人魚のような姿をした女性を木型で浮き彫りにした素朴な焼き菓子が売られていたという。

この素朴な焼き菓子の名も、「メリュジーヌ」と言った。

現代では、祭りが廃れこの「メリュジーヌ」も僅かな木型だけを残して姿を消している。

参考文献[編集]

  • クードレット 作/森本英夫・傳田久仁子 訳『妖精メリュジーヌ伝説』(社会思想社、1995年) ISBN 978-4-390-11584-1
  • キャロル・ローズ 著/松村和夫 監訳『世界の怪物・神獣事典』(原書房、2004年) ISBN 978-4-562-03850-3
  • 渡邉浩司「妖精メリュジーヌの住処-<サスナージュの洞窟>探訪記」、『中央評論』(中央大学)235号(2001年5月)、p.114-121.

脚注[編集]

  1. ^ 神話類型として、見るなのタブーが見受けられる

関連項目[編集]