ハムレット (チャイコフスキー)

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幻想序曲ハムレット』(Гамлет)作品67aは、ピョートル・チャイコフスキーが作曲した演奏会用序曲シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を題材としている。なお、チャイコフスキーは『ハムレット』上演のための劇付随音楽も作品67bとして作曲している。

概要[編集]

交響曲第5番とほぼ同じ年の1888年にフローロフスコエにて作曲された。順番としては、8月に交響曲第5番が完成され、その後直ちにこの『ハムレット』に着手しようとしたが、チャイコフスキーの頭の中では、両者が併存していた時期もあったと思われる。『ハムレット』のスケッチは6月22日に一応完成したが、この後チャイコフスキーは交響曲第5番のオーケストレーションに専念し、交響曲の完成後に再び『ハムレット』の浄書に取りかかったといわれている。

シェイクスピアを題材とする、いずれも《幻想序曲》と銘打たれたチャイコフスキーの作品は、初期の『ロメオとジュリエット』(1869年)が有名で、他に『テンペスト』(1873年)がある。この『ハムレット』は、1888年11月24日ペテルブルクで、作曲者自身の指揮によって初演された。また、当日は交響曲第5番も再演されている。

なおこの曲はグリーグに献呈された。チャイコフスキーは1888年の1月にライプツィヒでグリーグに逢い、のちに2人は深い共感で結ばれた。

劇付随音楽[編集]

チャイコフスキーは1891年に『ハムレット』の上演のための付随音楽(作品67b)を作曲した。作曲の依頼は作品67aの作曲以前から受けていたのであるが、その仕事が滞っている間に、先に演奏会用序曲として作品が成立することになった。しかし、付随音楽の序曲には作品67aの短縮版を作って用いている。なお、この付随音楽には他に、交響曲第2番第2楽章の行進曲、交響曲第3番第2楽章、弦楽のためのエレジーなどの旧作が転用されている。

編成[編集]

フルート3、オーボエ2、コーラングレクラリネット2、ファゴット2
ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3、チューバ
ティンパニスネアドラムトムトムバスドラムタムタムシンバル

演奏時間[編集]

作品67a:約18分(原典版)、作品67bの付随音楽のための短縮版の序曲:約10分。

構成[編集]

楽曲全体には様々な動機が出てくるが、重要なのは冒頭の主題(ハムレット自身を暗示する)と、3分の1ほど進んでから出てくるオーボエによるロシア民謡風のもの(オフィーリアを表す)、そして木管が表情豊かに出す「愛の主題」の3つで、最後は原典版のみ fffff のクライマックスがあり、その後に『ロメオとジュリエット』のように葬送行進曲ふうになる。『ロメオとジュリエット』ほどのものではないが、この『ハムレット』は、チャイコフスキー特有のオーケストレーションの巧みさとメロディの美しさで、聴き手に感銘を与える。

関連作品[編集]

チャイコフスキーの《幻想序曲》