テンペスト (チャイコフスキー)

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幻想序曲テンペスト』(Буря(嵐), The Tempest)作品18は、ピョートル・チャイコフスキーが作曲した演奏会用序曲シェイクスピア戯曲テンペスト』に基づいている。一部では幻想曲と呼ばれることもある。

概要[編集]

チャイコフスキーは文学にも造詣が深く、文学作品に題材を求めた曲も幾つか残している。特にシェイクスピアはチャイコフスキーが非常に敬愛した作家の一人で、幻想序曲『ロメオとジュリエット』につづいてシェイクスピアに題材を得たチャイコフスキーの管弦楽作品の第2作となったこの曲は、1873年8月から10月にかけて作曲された。同年の2月に交響曲第2番モスクワで初演され、ロシア5人組から高い好評を得た。チャイコフスキーに作曲を勧めたのは、5人組の理論的指導者であった評論家のスターソフで、彼はシェイクスピアのほかウォルター・スコットゴーゴリの作品にも候補を挙げたという。しかしチャイコフスキーは『テンペスト』の物語に惹かれ、前作『ロメオとジュリエット』に続いてシェイクスピアを選び、3部から成る幻想序曲を書き上げた。

初演は1873年12月19日にモスクワで、ニコライ・ルビンシテインの指揮によって行なわれ、交響曲第2番に劣らぬ好評を持って迎えられた。ただ、チャイコフスキーは当初「私の最も輝かしい作品の一つ」と語ったが、後になるとこの曲に幻滅を感じていたと伝えられている。構成がやや平板で、冗長な感じを与えるためだったという。しかし、フォン・メック夫人が後年チャイコフスキーを援助したのは、この初演を聴いて感激したのがきっかけだったというエピソードは知られており、また色彩的な響きと抒情的な美しい旋律はリムスキー・コルサコフらも高く評価している。

楽器編成[編集]

ピッコロフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバティンパニ大太鼓シンバル弦五部

構成[編集]

曲は、フルートホルンなどがヘ短調の主和音を奏して始まり、金管によって海が描写され、やがて激しい嵐となる。プロスペロー公爵が魔法で嵐を起こして、宿敵の息子ファーディナンドの船を難破させる場面である。嵐が次第に収まると、チェロが「愛の動機」を奏してプロスペローの娘ミランダとファーディナンドの愛を描き、再び海の描写が戻って、最後は海の静けさを広々と描いて曲を閉じる。演奏時間は約23分。

関連作品[編集]

チャイコフスキーの幻想序曲 - いずれもシェイクスピアの戯曲に基づく。