ナシ亜科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ナシ連
Rosaceae Malus pumila Malus pumila Var domestica Apples Fuji.jpg
セイヨウリンゴ(ふじ)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : サクラ亜科 Amygdaloideae
: ナシ連 Pyreae
シノニム

Maleae

亜連
  • ナシ亜連 Pyrinae

ナシ亜科(ナシあか、Pyroideae) あるいは リンゴ亜科 (Maloideae)は、かつて提唱されていた、バラ科の亜科の1つである。Maloideae をナシ亜科と訳すこともある。リンゴナシビワナナカマドなどを含んでいた。現在の分類では、サクラ亜科(モモ亜科)のナシ連 (Pyreae) またはリンゴ連 (Maleae) にほぼ等しい。

分類[編集]

現在の分類[編集]

ナシ亜科(リンゴ亜科)の正確な範囲は学説により若干揺らぎがあったが、おおよそ、シモツケ亜科に内包されており、シモツケ亜科が側系統になっていた。そのため、同様にシモツケ亜科に内包されていたサクラ亜科なども加え、1亜科に統合された。その新しい亜科の名は当初シモツケ亜科とされた[1]が、Spiraeoideae Arn. (1832) より Amygdalaceae Marquis (1820) が先行していたことから、サクラ亜科(モモ亜科)Amygdaloideae が使われるようになった[2]

従来のナシ亜科(リンゴ亜科)は、おおよそナシ連(リンゴ連)となった。Potter et al. (2007) によると、ナシ連は基底的な連未定の3属と、ナシ亜連 Pyrinae に分かれる。それらの系統関係は次のとおり[3][* 1]。ただし、交雑が起こっているなどの理由で、ナシ亜連内の大半(図の「BC」以下)の系統は不確実である。

Pyrodae

ギレニア属 Gillenia


ナシ連


Kageneckia



Lindleya





Vauquelinia


ナシ亜連
A


Malacomeles




Peraphyllum



ザイフリボク属 Amelanchier






Mespilus



サンザシ属 Crataegus




BC

カナメモチ属 Photinia (含 Stranvaesia ?)



トキワサンザシ属 Pyracantha



テンノウメ属 Osteomeles




ディコトマンテス属 Dichotomanthes




マルメロ属 Cydonia




カマツカ属 Pourthiaea



アロニア属 Aronia






Torminalis [* 2]



アズキナシ属 Aria (含 Chamaemespilus[* 2]




カリン属 Pseudocydonia (Cydonia × Chaenomeles ?)[* 3]



ボケ属 Chaenomeles




Docyniopsis



Docynia




Eriolobus



リンゴ属 Malus






Micromeles (Aria × Sorbus ?)[* 3]





シャリンバイ属 Rhaphiolepis



ビワ属 Eriobotrya





Heteromeles



コトネアスター属(シャリントウ属) Cotoneaster





ナシ属 Pyrus




Cormus [* 2]



ナナカマド属 Sorbus [* 2]










  1. ^ 主な未解析属として Chamaemeles, Hesperomeles がある。
  2. ^ a b c d 広義のナナカマド属のうち、複葉のグループ(ここでのナナカマド属 Sorbus + Cormus)と、単葉のグループ(ここでのアズキナシ属 Aria + Torminalis)は、離れた系統位置にある。
  3. ^ a b カリン属 PseudocydoniaMicromeles (Sorbus subgen. Micromeles) は、葉緑体DNA (cpDNA) とDNAのITSで系統位置が異なり、おそらく雑種である。ここで図示した位置は形式的なもので、進化上の分岐を示していない。

過去の分類[編集]

Schulze-Menz (1964) のリンゴ亜科は、Potter et al. (2007) のナシ亜連にあたる。彼らはリンゴ亜科を2連

  • リンゴ連 (Maleae)
  • サンザシ連 (Crataegeae)

に分けた。この2連は比較的最近まで認める分類があった (Kalkman 2004) が、Takhtajan (1997) による初期の分子系統分類では認められず、実際、系統を反映してはいなかった[1]。また扱いが一定しなかった属として、ディコトマンテス属 Dichotomanthes については、リンゴ連に含める説 (Kalkman 2004) もサンザシ連に含める説 (Hutchinson 1964) もあり、さらに、ナシ亜科から外し単型亜科のディコトマンテス亜科 Dichotomanthoideae に分ける説 (Takhtajan 1997) まであったが、この属は実際には(上掲系統樹のように)ナシ亜連内部に位置している[1]

基底的な3属 KageneckiaLindleyaVauquelinia については、Schulze-Menz (1964) はシモツケ亜科に含めていた。また多くの分類で、これらもしくはその一部が、ヤナギザクラ属 Exochorda などと同じ連に分類され (Schulze-Menz 1964; Hutchinson 1964; Kalkman 2004)、リンゴ亜科(Schulze-Menz の意味で)と近縁とは考えられていなかった[1]。それに対しTakhtajan (1997) は、これら3属をナシ亜科に含め、ナシ亜科を3連

  • リンゴ連 (Maleae) - Schulze-Menz (1964) のリンゴ亜科、ただし Dichotomanthes を除く
  • Kageneckieae - Kageneckia
  • Lindleyieae - VauqueliniaLindleya

に分けた[1]。ただし実際には KageneckiaLindleya が近縁なようである[1]

特徴[編集]

近縁なギレニア属と比べ、3つの特徴がある。

  • 染色体数が異なる。ギレニア属が9本(祖先形質)なのに対し、おそらくは8本の種との交雑により、17本に増えた。ただし Vauquelinia は15本に減っている[3]
  • ギレニア属が草本に変じたのに対し、すべて木本である[3]
  • 原基の形が異なり、ギレニア属は flat-topped、ナシ連は ring-shaped である。

ナシ亜連では、果実(リンゴやナシの芯の部分)を花托(の根元)が包んで肥厚し偽果(ナシ状果:ふつう食べる部分)となる。ただしナシ亜連以外は祖先的な形質の蒴果を保っている[3]

心皮は2ないし5個あり、合着して1本の雌蕊になっている。子房下位。

[編集]

Potter et al. (2007) によるナシ連の属を挙げる[1]。※は、ナシ亜科(リンゴ亜科)以外の亜科とすることがあった属[1]

基底的な3属[編集]

便宜的に1節に記すが、必ずしも互いに類縁関係にはない。

  • Kageneckia  ※シモツケ亜科とする説もあった
  • Vauquelinia  ※シモツケ亜科とする説もあった
  • Lindleya  ※シモツケ亜科とする説もあった

ナシ亜連[編集]

ナシ(豊水)
ビワ
タチバナモドキ

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h Potter, D.; Eriksson, T.; Evans, R.C.; Oh, S.H.; Smedmark, J.E.E.; Morgan, D.R.; Kerr, M.; Robertson, K.R.; Arsenault, M.P.; Dickinson, T.A.; Campbell, C.S. (2007), “Phylogeny and classification of Rosaceae”, Plant Systematics and Evolution 266 (1–2): 5–43, doi:10.1007/s00606-007-0539-9, http://biology.umaine.edu/Amelanchier/Rosaceae_2007.pdf 
  2. ^ McNeill, J.; Barrie, F.R.; Buck, W.R.; Demoulin, V.; Greuter, W.; Hawksworth, D.L.; Herendeen, P.S.; Knapp, S.; Marhold, K.; Prado, J.; Reine, W.F.P.h.V.; Smith, G.F.; Wiersema, J.H.; Turland, N.J. (2012). International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Melbourne Code) adopted by the Eighteenth International Botanical Congress Melbourne, Australia, July 2011. 154. A.R.G. Gantner Verlag KG. ISBN 978-3-87429-425-6. http://www.iapt-taxon.org/nomen/main.php?page=art19.  Article 19.5, ex. 5
  3. ^ a b c d Lo, Eugenia Y.Y.; Donoghue, Michael J. (2012), “Expanded phylogenetic and dating analyses of the apples and their relatives (Pyreae, Rosaceae)”, Molecular Phylogenetics and Evolution 63: 230–243, http://donoghuelab.yale.edu/sites/default/files/209_lo_molphylevol12_0.pdf