ディジタルフィルタ

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FIR Filter

電子工学において、デジタルフィルタ: digital filter)は量子化および標本化してAD変換した信号(離散時間信号)をデジタル信号処理することにより働く、フィルタ回路の一つである。

これは完全にアナログ領域(時間領域連続時間信号)で働き、電子部品の物理的な構成(抵抗器コンデンサトランジスタなど)によって構成されているより古いアナログフィルタとは対照的になっている。

デジタルフィルタは事実上数学の関数かアルゴリズムとして表現することができるすべてのフィルタの効果を達成できる。

実装の話として、1bitのA/Dコンバーターを使用する。または、パイプライン処理のできるDSPを用いてプログラミングなどを行いフィルタとして扱う。

デジタルフィルタの2つの主要な制限は、これらの速度(フィルタは使用しているコンピュータの動作よりも早く動作することができない)とコストである。

しかしながら集積回路の費用は時間がたつにつれて低下し続け、デジタルフィルタはますます一般的になり、ラジオ携帯電話、ステレオ受信機などの日常の多くの電気製品の必須要素になった。

利点[編集]

デジタルフィルタは、アナログフィルタで実現することができるものよりも高いパフォーマンスの特性を容易に実行できる。

例えば、完全に1001Hzの信号を遮断し、かつ999Hzの入力のほぼ完全な通過を達成することができる1000Hzの低域通過回路を(ローパスフィルタ)作成するのは特に困難ではない。一方、アナログフィルタではこのように完全に周波数の信号を区別することはできない。さらに、複雑な多段ろ過操作については、デジタルフィルタはアナログフィルタよりはるかに良いSN比を達成する可能性がある。

これはアナログフィルタがそれぞれの中間的段階でより多くの雑音を信号に印加するが、デジタルフィルタは変換におけるそれぞれの中間的段階で無雑音処理を実行するからである。

ただし、デジタルフィルタにおいてもADC(アナログ-デジタル変換回路)や、信号の量子化誤差においてもノイズが発生するため、完全に無雑音というわけではない。

さらに、フィルタの標本化周波数fsの半分を超える周波数に注意しなければならない。(ナイキスト周波数折り返し雑音などを参照) そのため、折り返し雑音の影響を避けるため、回路中にAD変換器の前に高周波成分を遮断する低域通過回路を挿入する場合が多い。

種類[編集]

多くのデジタルフィルタは、信号の周波数成分を調整(通過帯域フィルタを実現)するために、すばやく信号の周波数成分を抽出する数学のアルゴリズム「高速フーリエ変換」に基づいて時間領域から周波数領域への変換を行う。

ほかの線型デジタルフィルタの形式としてZ変換を用いたフィルタがあり、このときの伝達関数(システム関数)は

H(z) = \frac{B(z)}{A(z)}  = \frac{{b_{0}+b_{1}z^{-1}+b_{2}z^{-2} + \cdots + b_{N}z^{-N}}}{{1+a_{1}z^{-1}+a_{2}z^{-2} + \cdots +a_{M}z^{-M}}}

となる。Mはフィルタにおける順序を示す。

この数式は「無限インパルス応答」(IIR)フィルタとも呼ばれる。分母が単一の場合、つまりa_{M}が0の場合は「有限インパルス応答」(FIR)フィルタと呼ばれる。

デジタルフィルタの別の形式は状態空間モデルのそれである。よく使用された状態空間フィルタは1960年ルドルフ・カルマンによって公表されたカルマンフィルタがある。

参考文献[編集]

  • 中村尚五『ビギナーズ デジタルフィルタ』東京電機大学出版局,1989年,ISBN 4-501-31350-1

関連項目[編集]