クマガイソウ

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クマガイソウ
W kumagaisou4041.jpg
クマガイソウ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ラン目 Orchidales
: ラン科 Orchidaceae
: アツモリソウ属 Cypripedium
: クマガイソウ C. japonicum
学名
Cypripedium japonicum Thunb.[1]
和名
クマガイソウ(熊谷草)

クマガイソウ(熊谷草、学名Cypripedium japonicum Thunb.[1])は、ラン科アツモリソウ属分類される多年草の1。大きな花をつけ、扇型の特徴的な葉をつける。

特徴[編集]

クマガイソウは、北海道南部から九州にかけて分布する。低山の森林内、特に竹林、杉林などに生育し、大きな集団を作る。草丈は40cmくらいまで、葉は対生するように二枚つき、それぞれ扇型の特徴的な形をしている。花はその間からのびた茎の先につき、横を向く。花弁は細い楕円形で緑色を帯び、唇弁は大きく膨らんだ袋状で、白く、紫褐色の模様がある。唇弁の口は左右から膨らんで狭まっている。

和名の由来[編集]

クマガイソウ、アツモリソウの名は、膨らんだ形の唇弁を昔の武士が背中に背負った母衣(ほろ)に見立て、がっしりした方を熊谷直実(くまがいなおざね)に、優しげな姿の方を平敦盛(たいらのあつもり)にあてたものである。花色がそれぞれ白、赤っぽいため源氏の白旗、平氏の赤旗に見立てたための命名ともいわれる。白花のアツモリソウを昔はクマガイソウと呼んでいたという説もある。

栽培[編集]

クマガイソウの地下茎は節間が長く、全長はしばしば1m以上になる。しかも硬く柔軟性に欠け、普通の植木鉢に収めることは難しい。また、先端の生長点は鉢の内壁などに当たると枯死するため、鉢植えに適さない。一般園芸店で販売品をしばしば見かけるが、一般向けの市販品は鉢に入れるために地下茎が短く切断されており、回復に長い期間を要する。回復せずに枯死してしまうことも多い。

適地であれば地植え栽培が可能ではあるが、生育適正条件が狭く、栽培場所は厳密に選ぶ必要がある。明るい日陰で、土壌の状態、温度、湿度が栽培に適したものであること、周囲に風よけになるものがあること、など制約が多く、単に美しいから、珍しいからといって初心者が気安く栽培できるようなものではない。

前述のように無菌播種による大量増殖技術は確立されておらず、ごく一部の栽培農家を除いて栄養繁殖による営利増殖もおこなわれていない。このため苗の供給が十分に出来ているという状況ではない。時には盗掘された個体が販売されることもあり、入手・栽培には慎重でありたい植物の一つである。愛好家がどうしても栽培したい場合は、栽培に責任が持てる場合に限り、苗の入手先が正規のルートを経由したものかどうかを検討して入手するなどの配慮をすべきであろう。

種の保全状況評価[編集]

日本では環境省により、レッドリストの絶滅危惧II類(VU)の指定を受けていて[2][3]、多くの都道府県で、レッドリストの指定を受けている[4]

絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト

Status jenv VU.png

[2]

樹林下に自生するクマガイソウの群落

自生地の現状[編集]

栽培のための乱獲によって自生を見ることは今やまれである。クマガイソウは無菌播種による増殖技術が確立されておらず、アツモリソウのように実生増殖した苗を大量供給することはできない。にもかかわらず、悪質なマニアや業者に乱獲、盗掘され続けている。これを乱獲、盗掘することはもちろん、乱獲、盗掘されたものを取り扱う業者から購入することは、自生地の損失を助長する行為で決して行ってはならない。このままなら絶滅するといっても過言ではない。[要出典]

近縁種[編集]

台湾産のタイワンクマガイソウ Cypripedium formosanum は地下茎が短く、鉢植えが可能である。自生地は乱穫のためほぼ絶滅状態のようだが、日本国内で栄養繁殖された個体が安定して流通している。外見が似ているため日本産のクマガイソウと混同されている場合がしばしばあり、時には植物園の展示などでも両種を間違えて展示している例すら見受けられる。 日本産と同様に栽培環境を選ぶ植物で、園芸的に初心者向きとは言いがたい。

タイワンクマガイソウは海外で無菌播種および育苗に成功しているが、詳細について日本語訳された文献は無いようである。

これら以外にも同属のアツモリソウ類があるが、寒冷地の植物であり、暖地での栽培はきわめて難しい。

その他の情報[編集]

近年、交配後100-130日の未熟種子を次亜塩素酸ナトリウム有効塩素1%溶液で5-8分洗浄、水洗後に無機塩濃度を低減して植物生長ホルモンを添加した液体培地に播種、暗条件18-22℃での振とう培養により種子の発芽に成功、ホルモンフリー固体培地に移植して育成後、数本の苗を馴化した例が報告された[5]。今後、培地や培養条件の改良による量産技術の確立が期待される。

脚注[編集]

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “クマガイソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年9月5日閲覧。
  2. ^ a b 第4次レッドリスト「植物I(維管束植物)」”. 環境省. 2014年11月5日閲覧。
  3. ^ 絶滅危惧情報検索「クマガイソウ」”. 環境省. 2014年11月5日閲覧。
  4. ^ 日本のレッドデータ検索システム「クマガイソウ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年11月5日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  5. ^ 山形県立村山農業高等学校 園芸サイエンス科「難発芽性地生ラン クマガイソウに関する研究」

参考文献[編集]

  • 「自然と野生ラン」343号(2007年7月号)p64-69

外部リンク[編集]