クァール

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クァール英語: Coeurl)とは、A・E・ヴァン・ヴォークトの古典SF小説宇宙船ビーグル号の冒険』の1章から6章、および短編として発表された『黒い破壊者(Black Destroyer)』に登場する架空の生物。

特徴[編集]

人間並みかそれ以上の高い知能を有する。巨大な型で体色は黒。耳の代わりに巻きひげの様な触角が生えており、あらゆる電磁波の送受信が可能である。肩から生えた2本の長い触手の先端は吸盤状になっており、人間の手と同様、細かい作業をする事ができる。他の生物を襲って殺し、細胞原形質(イド)からカリウムを吸収する。細胞中のカリウムは死後時間が経つと血液中に流出してしまう為、クァールは殺した直後の獲物しか食べないとされる。全身から様々な放射線を発する事もでき、レントゲン写真による透視を阻害する事も可能。また振動波銃の直撃を受けても全く影響を受けない。

性格は残忍で狡猾。巨体にふさわしい膂力も有しており、「黒い破壊者(ブラック・デストロイヤー)」の名で呼ばれる事もある。典型的な猫族の例に漏れず好奇心が旺盛であり、臆病でもある。外部からの刺激に対しての適応力も驚異的なものがある。原住惑星は塩素が大気の主成分であったが、酸素も呼吸することが出来、フッ素大気や真空中でも生存可能と推測されている。

探検宇宙船「スペース・ビーグル号」で航行中の学術探検隊が立ち寄ったある惑星で発見された。滅亡した文明が生み出した実験動物の生き残りであると推測されている。正確な個体数は不明だが、発見当時は既に絶滅の危機に瀕していた。発見された個体は餓死寸前の状態で、少なくとも7頭の同族を共食いで殺し食いつないでいた。無害な獣を装い、生体サンプルとして捕獲される事で探検隊に潜り込む事に成功し、ビーグル号を狩り場として乗組員を欺きつつ数十人を殺傷してはイドを貪ったが、グローヴナーらの研究の末調合された人工のイドに反応した事で本性を暴かれる。その後船内の救命艇を奪って脱出を試みるが、グローヴナーの救命艇に追撃された末、原子熱線砲の攻撃で撃墜されて最期を遂げた。

日本語訳[編集]

"Coeurl"は英語話者では「コゥエァル」などと発音する人が多いが[要出典]、『宇宙船ビーグル号の冒険』の日本語訳での表記には揺れがあり、早川書房浅倉久志訳では「クァール」、創元SF文庫沼沢洽治訳では「ケアル」、角川文庫能島武文訳では「キアル」と表記されている。

他作品での登場[編集]

いくつかの作品でクァールをモチーフとしたキャラクターが登場する。作品によって能力や姿も異なる。

小説[編集]

  • ダーティペアシリーズ
    人間に馴れるよう改造を受けた個体「ムギ」が、主人公のパートナーとして登場する。
    元々はオリジナルの生物を考えていたが設定を考えて行くうちにクァールと殆ど同じになったため、原作小説の末尾に本作が出典であることを明記した上で本作から引用している。

ゲーム[編集]

その他[編集]

脚注[編集]