エルキ・ルースラーティ

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エルキ・ルースラーティ(Erkki Ruoslahti)
人物情報
生誕 1940年2月16日(74歳)
フィンランド、プーマラ
居住 アメリカ合衆国
出身校 ヘルシンキ大学 (フィンランド)
学問
研究分野 がん生物学生化学
研究機関 フィンランド・ヘルシンキ大学
フィンランド・トゥルク大学
米国・国立医療センター・シティー・オブ・ホープ
米国・バーナム研究所
カリフォルニア大学サンディエゴ校
サンフォード‐バーナム医学研究所
カリフォルニア大学サンタバーバラ校
主な業績 フィブロネクチンの発見。RGD配列の発見。インテグリンの発見。
主な受賞歴 ガードナー国際賞(1997年)、 日本国際賞(2005年)、米国科学アカデミー・会員、フィンランド白バラ勲章爵位、フィンランド・アカデミシャン、フィンランド獅子勲章コマンドール章受賞
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エルキ・ルースラーティ(えるき るーすらーてぃ、 Erkki Ruoslahti、1940年2月16日 - )は、ヘルシンキ大学フィンランド)出身のフィンランド系米国人。がん生物学生化学の研究者。男性。米国・サンフォード‐バーナム医学研究所・教授、カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授。専門は、細胞接着分子[1]

細胞接着分子の分野にノーベル賞が授与されれば、最有力候補の1人。日本人の弟子に、鈴木信太郎、福島大吉、菅原一樹がいる。

概要[編集]

1973年 33歳、フィンランドで、ヴァヘーリ(A. Vaheri)(後にヘルシンキ大学・教授)と一緒に、ニワトリ線維芽細胞抗体を作り、細胞表面にある新しい抗原タンパク質を発見した[2]。この時、線維芽細胞(fibroblast)の細胞表面(surface)にある抗原(antigen)に因んで、このタンパク質を「fibroblast surface antigen(SFA)」と命名した。

1976年、SFAを、現在使用されているフィブロネクチンと改名した[3]。つまり、エルキ・ルースラーティは、フィブロネクチンの発見・命名者である。

1976年、36歳、すでに、フィンランド・トゥルク大学の教授だったが、研究の拠点をフィンランドから、アメリカ合衆国に移した。

1984年 44歳、ポスドクのパーシュバッカー(Pierschbacher, M.D.)と共に、RGD配列を発見する。つまり、タンパク質フィブロネクチン細胞接着部位はたった4つのアミノ酸Arg-Gly-Asp-Ser(RGDS)(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-セリン)に担われていることを発見した[4]

このRGD配列の発見に基づき、米国・医薬品業界が、血栓を抑制する抗血小板剤を開発し、米国食品医薬品局(FDA)に認可された医薬品がすでに2種類ある。世界の医薬品業界は、さらなる医薬品を開発している。

1985年、45歳、ポスドクのパイテラ(Pytela R)と共に、フィブロネクチンレセプタータンパク質(インテグリン)を発見した[5]

1986年、46歳、ポスドクの鈴木信太郎と共に、ビトロネクチンレセプタータンパク質のcDNA塩基配列を解明した。フィブロネクチン・レセプタータンパク質の塩基配列とよく似ていたことから、インテグリンインテグリンファミリーを形成していることを発見した [6]

フィブロネクチンインテグリンがんの研究を意欲的に発展させていく。

2009年 69歳、ポスドクの菅原一樹(Sugahara Kazuki)と共に、RGD配列インテグリンαvβ3に特異的に結合することを利用し、RGD配列に別の機能的分子を結合させた新しい医薬品の研究を行なっている。その意図は、がん動脈硬化部位に特異的に毒物を送り込むナノ粒子・新しいドラッグデリバリーシステムの開発である[7] [8][9]

ニューロフィリン‐1(neuropilin-1)のR/KXXR/Kモチーフ は C末端アミノ酸がないと不活性である。そこでC末端にアミノ酸をつけて体内の組織に浸透させることを考案した。この効果を「センダー(送付)」(C-end Rule (CendR)、CendRは英語で"sender"と同じ発音)効果と命名した。また、組織内に入るRGDペプチドを「iRGD」(internalizing-RGD)と命名した[7]

略歴[編集]

  • 1940年 - フィンランド、プーマラに生まれる
  • 1961年 - ヘルシンキ大学 (フィンランド)学士号取得(医学専攻)
  • 1965年 - ヘルシンキ大学 (フィンランド)医師免許取得
  • 1967年 - ヘルシンキ大学 (フィンランド)博士号取得(免疫学)
  • 1970年 - ヘルシンキ大学 (フィンランド)血清細菌学教室・助教授、臨時準教授
  • 1975年 - トゥルク大学(フィンランド)、細菌血清学教室・教授
  • 1976年 - 米国・国立医療センター・シティー・オブ・ホープ、免疫部・上級研究員
  • 1979年 - 米国・バーナム研究所(旧ラホヤ癌研究財団)・副部長
  • 1980年 - 米国・バーナム研究所・部長
  • 1980年 - カリフォルニア大学サンディエゴ校・病理学部臨時教授(2004年まで)
  • 1982年 - 米国・バーナム研究所・副所長・兼最高経営責任者
  • 1989年 - 米国・バーナム研究所・所長・兼最高経営責任者(2001年まで)
  • 2002年 - バーナム研究所・教授。後、所属名変更で、 サンフォード‐バーナム医学研究所・教授(2013年8月現在に至る)
  • 2003年 - 米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校・生物工学部・臨時教授
  • 200?年-2013年8月現在、米国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校・教授

賞勲栄誉歴[編集]

主な著作[編集]

弟子[編集]

日本人を中心にリストする。この節、網羅的ではない。

  • 鈴木信太郎‐関西学院大学・理工学部・教授
  • 福島大吉‐小野薬品工業・会長、元社長
  • 菅原一樹(Sugahara Kazuki)‐米国・サンフォード‐バーナム医学研究所・助教授

脚注・引用文献[編集]

  1. ^ Erkki Ruoslahti”. Sanford Burnham Medical Research Institute. 2013年3月14日閲覧。
  2. ^ Ruoslahti E, Vaheri A, Kuusela P, Linder E (Oct 1973). “Fibroblast surface antigen: a new serum protein”. Biochim Biophys Acta 322 (2): 352-358. PMID 4203032. 
  3. ^ Kuusela P, Ruoslahti E, Engvall E, Vaheri A (Aug 1976). “Immunological interspecies cross-reactions of fibroblast surface antigen (fibronectin)”. Immunochemistry 13 (8): 639-642. PMID 61165. 
  4. ^ Pierschbacher, M.D., Ruoslahti, E. (1984). “Cell attachment activity of fibronectin can be duplicated by small synthetic fragments of the molecule”. Nature 309: 30-33. doi:10.1038/309030a0. 
  5. ^ Pytela R, Pierschbacher MD, Ruoslahti E. (Jan 1985). “Identification and isolation of a 140 kd cell surface glycoprotein with properties expected of a fibronectin receptor”. Cell 40 (1): 191-198. PMID 3155652. 
  6. ^ Suzuki S, Argraves WS, Pytela R, Arai H, Krusius T, Pierschbacher MD, Ruoslahti E. (Nov 1986). “cDNA and amino acid sequences of the cell adhesion protein receptor recognizing vitronectin reveal a transmembrane domain and homologies with other adhesion protein receptors”. Proc Natl Acad Sci U S A 83 (22): 8614-8618. PMID 2430295. 
  7. ^ a b Sugahara KN, Teesalu T, Karmali PP, Kotamraju VR, Agemy L, Girard OM, Hanahan D, Mattrey RF, Ruoslahti E (Dec 2009). “Tissue-penetrating delivery of compounds and nanoparticles into tumors”. Cancer Cell 16 (6): 510-520. doi:10.1016/j.ccr.2009.10.013.. PMID 19962669. 
  8. ^ Sugahara, K.N., Teesalu, T, Karmali, P.P., Kotamraju V.R., Agemy, L. Greenwald, D.R. and Ruoslahti E (2010). “Co-administration of a Tumor-Penetrating Peptide Enhances the Efficacy of Cancer Drugs”. Science 328: 1031-1035. 
  9. ^ Couzin-Frankel, Jennifer (2010年4月8日). “New Peptide Helps Cancer Drugs Break Into Tumors”. ScienceNOW . http://news.sciencemag.org/sciencenow/2010/04/new-peptide-helps-cancer-drugs-b.html 2013年8月8日閲覧。 
  10. ^ Erkki Ruoslahti”. United States National Academy of Sciences. 2013年8月7日閲覧。
  11. ^ 公益財団法人 国際科学技術財団:日本国際賞/Japan Prize 2005年受賞者 エルキ・ルースラーティ(E. Ruoslahti) 2013年8月7日閲覧

参考文献[編集]

外部リンク[編集]