「デンキウナギ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
名前の書き方が間違っていたので修正します
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集
タグ: サイズの大幅な増減 曖昧さ回避ページへのリンク
1行目: 1行目:
{{ページ番号|date=2013年1月}}
{{言葉を濁さない|date=2014年2月}}
{{生物分類表
{{生物分類表
|名称 = デンキウナギ
|名称 = デンキウナギ
13行目: 11行目:
|学名 = ''Electrophorus electricus''<br />({{AUY|Linnaeus|1766}})
|学名 = ''Electrophorus electricus''<br />({{AUY|Linnaeus|1766}})
|英名 = Electric eel}}
|英名 = Electric eel}}
'''デンキウナギ'''(電気鰻、[[学名]]:''Electrophorus electricus''、[[英語]]名:Electric eel)は、デンキウナギ目ギュムノートゥス科デンキウナギ属に分類される[[硬骨魚類]]の一種。[[南アメリカ]]の[[アマゾン川]]・[[オリノコ川]]両水系に分布する大型魚で、強力な[[電気]]を起こす[[電気魚]]である。多くの人間にとって、この電気は危険である。'''デンキウナギ属''' は1属3種が分類されている。


'''デンキウナギ'''(電気鰻、英:Electric eels)は、[[デンキウナギ目]][[ギュムノートゥス科]][[デンキウナギ属]]に分類される[[魚類]]の総称、もしくはそのうちの1種{{Snamei|Electrophorus electricus}}を指す。[[南アメリカ大陸]]北部[[アマゾン川]]、[[オリノコ川]]両水系に分布する大型魚で、熱帯[[淡水魚]]に分類される。最大860[[ボルト]]にもなる強力な電気を発生させて獲物を気絶させて狩りを行う[[電気魚]]の1種として知られている。その電気魚としての形質は1775年に初めて研究対象となり、その後の1800年の[[電池]]の発明に繋がることとなる。本項では種としてのデンキウナギ({{Snamei||Electrophorus electricus}})だけでなく、同種が分類されている属である'''デンキウナギ属'''(学名:{{Snamei||Electrophorus}})およびそれに分類されている1属3種の魚類全般についても扱う。
== 生物的特徴 ==
成魚は全長2.5mに達し、デンキウナギ目の魚の中では最大種である<ref name="fishbase">[http://www.fishbase.org/Summary/SpeciesSummary.php?ID=4535 ''Electrophorus electricus''] - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2009.[[FishBase]].World Wide Web electronic publication.www.fishbase.org, version (08/2009)</ref>。[[和名]]にも英名にも「[[ウナギ]]」が入っており、体形は細長い円筒形であるが、ウナギとは体の構造や生活史が異なり、全く別の仲間に分類される。


和名にも英名にも「ウナギ (eel)」の名が付いているが、[[ウナギ目]]({{Snamei|Anguilliformes}})との直接的な関係は無く、むしろナマズの仲間に近い。2019年にデンキウナギ種が3種に分割されるまで、デンキウナギ属には{{Snamei|Electrophorus electricus}}(デンキウナギ)のみが単独で属していた。
大型個体は丸太のような体形であるが、頭部は上下に、尾部は左右に平たい。全身はほぼ灰褐色で白っぽいまだら模様があり、尾に行くにしたがって斑点が小さくなる。[[喉]]から腹にかけては体色が淡く、橙色を帯びる。[[目|眼]]は小さく[[退化]]しているが<ref name="内田">内田亨監修 『学生版 日本動物図鑑』 [[北隆館]]、1948年初版・2000年重版 {{ISBN2|4832600427}}</ref>、[[側線]]が発達しており、これで水流を感じ取って周囲の様子を探る。[[肛門]]は[[えら|鰓蓋(えらぶた)]]直下にあり、他の魚よりもかなり前方に偏る。鰭は胸鰭と尻鰭しかなく、長く発達した尻鰭を波打たせて泳ぐ。なお、デンキウナギ目の魚は前だけでなく後ろにも泳ぐことができる。


夜行性で、[[空気呼吸]]を行う。視力は乏しいが、代わりに電気定位により補われている。食性は肉食で、他の魚類などを食べる。オスはメスより大型。寿命は長く、捕獲された個体の中には20歳以上のものもあった。
=== 分類 ===
分類上は1属1種で{{仮リンク|ギュムノートゥス科|en|Gymnotidae}}に組み込まれているが<ref name="fishbase" />、他に独立した[[科 (分類学)|科]] '''デンキウナギ科''' ( Electrophoridae ) を設けてその下位に置く分類説もある。ウィキスピーシーズの情報<ref>更新・改訂される可能性あり。2009年11月閲覧</ref>は前者説を、ITIS の情報<ref>[[ITIS]](統合分類学情報システム)データベース - [http://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=163322 ''Electrophorus electricus'' (Linnaeus, 1766)] 更新・改訂される可能性あり。2009年11月閲覧</ref>は後者説を支持している。


=== 生態 ===
== 系統と進化 ==
{{生物分類表
[[南アメリカ|南米]]北部の[[アマゾン川]]・[[オリノコ川]]両水系に分布し<ref name="fishbase" />、この水域では[[頂点捕食者]]の一つとなっている。池や流れの緩い[[川]]に生息する。[[夜行性]]で、昼間は物陰や泥底に潜む。夜になると動きだし、主に小魚や小型[[哺乳類]]を捕食する<ref name="Fukui">福井篤監修『講談社の動く図鑑move 魚』、[[講談社]]、[[2012年]]、176頁</ref>。
|色 = 動物界
|名称 = デンキウナギ属
|画像 =
|画像キャプション =
|省略 = 条鰭綱
|目 = [[デンキウナギ目]] {{sname||Gymnotiformes}}
|亜目 = デンキウナギ亜目 Gymnotoidei
|科 = [[ギュムノートゥス科]] {{sname||Gymnotidae}}
|属 = デンキウナギ属 <br />''Electrophorus'' {{AUY|Gill|1864}}
|学名 = ''{{Sname||Electrophorus}}'' <br>{{AUY|Gill|1864}}
|和名 = デンキウナギ属
|下位分類名 = [[種 (分類学)|種]]
|下位分類 =
*[[デンキウナギ]] {{Snamei||Electrophorus electricus}}
* {{Snamei||Electrophorus varii}}
* {{Snamei||Electrophorus voltai}}
}}


=== 分類史 ===
また[[空気呼吸]]をする魚でもあり、鰓があるにもかかわらずたまに水面に口を出して息継ぎをしないと死んでしまう。逆に言えば水の交換が起こらない池や淀みでも酸欠にならず、生きていくことができる。これは温度が上がるほど[[溶存酸素量]]が少なくなる熱帯の水域に適応した結果と言える。
1776年に[[カール・リンネ]]は、当時南アメリカで行われていたヨーロッパ人による現地調査や、ヨーロッパに移送されてきた標本資料に基づいて、こんにち{{Snamei|Electrophorus electricus}}(デンキウナギ)と定義されている種について言及を行った<ref name="de Asúa 2008">{{cite journal |last=de Asúa |first=Miguel |title=The Experiments of Ramón M. Termeyer SJ on the Electric Eel in the River Plate Region (c. 1760) and other Early Accounts of Electrophorus electricus |journal=Journal of the History of the Neurosciences |volume=17 |issue=2 |date=9 April 2008 |doi=10.1080/09647040601070325 |pages=160–174 |pmid=18421634}}</ref><ref name="Edwards 2021">{{cite web |last=Edwards |first=Paul J. |title=A Correction to the Record of Early Electrophysiology Research on the 250th Anniversary of a Historic Expedition to Île de Ré |url=https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-03423498/document |publisher=HAL open-access archive |access-date=6 May 2022 |date=10 November 2021 |id=hal-03423498}}</ref><ref name="Hunter 1775">{{cite journal |last=Hunter |first=John |author-link=ジョン・ハンター (外科医) |year=1775 |title=An account of the ''Gymnotus electricus'' |journal=Philosophical Transactions of the Royal Society of London |issue=65 |pages=395–407 |url=https://archive.org/details/philtrans01229060}}</ref>。このとき彼は、同種を{{Snamei|Gymnotus electricus}}と名付け、{{Snamei|Gymnotus carapo}}(こんにちの{{仮リンク|バンデッド・ナイフフィッシュ|en|Banded knifefish}})と同じ属に分類し<ref name="Linnaeus 1766">{{cite book |last=Linnaeus |first=Carl |author-link=カール・フォン・リンネ |title=Systema Naturae |date=1766 |publisher=Laurentius Salvius |location=Stockholm |pages=427–428 |edition=12th |oclc=65020711 |language=la}}</ref><ref name="Jordan 1963">{{cite book |last=Jordan |first=D. S. |author-link=デイビッド・スター・ジョーダン |year=1963 |title=The Genera of Fishes and a Classification of Fishes |url=https://archive.org/details/generaoffishesan0000jord |url-access=registration |page=[https://archive.org/details/generaoffishesan0000jord/page/330 330] |publisher=Stanford University Press}}</ref><ref name=Sleen2017>{{cite book |editor1-last=van der Sleen |editor1-first=P. |editor2-last=Albert |editor2-first=J. S. |year=2017 |title=Field Guide to the Fishes of the Amazon, Orinoco, and Guianas |publisher=[[Princeton University Press]] |pages=330–334 |isbn=978-0-691-17074-9}}</ref>、また、同種が[[スリナム]]の淡水で生息していたこと、痛みを伴うショックを引き起こすこと、そして頭部に小さな穴があることも記録した<ref name="Linnaeus 1766"/>。


1864年、{{仮リンク|セオドア・ジル|en|Theodore Gill}}はデンキウナギを従来の属から独立させ、新設した属である{{Snamei|Electrophorus}}に分類し直した<ref name="Jordan 1963"/>。新たな属名は、ギリシア語のήλεκτρον(ḗlektron、「(静電気を生み出す)琥珀」の意)とφέρω(phérō、「運ぶ」の意)に由来するもので、合わせて「電気を運ぶ者」という意である<ref name="Froese Pauly Fishbase">{{cite web |last1=Froese |first1=R. |last2=Pauly |first2=D. |website=Fishbase<!--the 'Cite WoRMS link *failed* for no obvious reason (non-marine?), so using Cite web instead--> |year=2022 |title=''Electrophorus'' |id=269052 |url=https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=269052 |access-date=8 October 2022}}</ref><ref name="Harris">{{cite book |last=Harris |first=William Snow |title=A Treatise on Frictional Electricity in Theory and Practice |year=1867 |publisher=Virtue & Co. |location=London |page=[https://archive.org/details/atreatiseonfric00tomlgoog/page/n123 86] |url=https://archive.org/details/atreatiseonfric00tomlgoog}}</ref>。さらにジルは1872年、デンキウナギは独立した[[科 (分類学)|科]]に属するだけの特性を持っていると結論付けた<ref>{{cite book |last1=Van der Laan |first1=Richard |last2=Eschmeyer |first2=William N. |last3=Fricke |first3=Ronald |title=Zootaxa: Family-group names of Recent fishes |date=11 November 2014 |publisher=Magnolia Press |location=Auckland, New Zealand |isbn=978-1-77557-573-3 |page=57 |url=https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/download/zootaxa.3882.1.1/54259}}</ref>。その後1998年、ジェームズ・S・アルバートとカンポス・ダ・パズは、デンキウナギ属をギュムノートゥス属が属するギュムノートゥス科に分類するべきとした<ref name="Albert Crampton 2005">{{cite book |last1=Albert |first1=James S. |last2=Crampton |first2=William G. R. |title=Electroreception |chapter=Diversity and Phylogeny of Neotropical Electric Fishes (Gymnotiformes) |publisher=Springer |year=2005 |isbn=978-0-387-23192-1 |doi=10.1007/0-387-28275-0_13 |pages=360–409 |url=https://www.researchgate.net/publication/226533338}}</ref>。2017年にはC・J・フェラーリの研究チームも同様の結論を出した<ref name=Sleen2017>{{cite book |editor1-last=van der Sleen |editor1-first=P. |editor2-last=Albert |editor2-first=J. S. |year=2017 |title=Field Guide to the Fishes of the Amazon, Orinoco, and Guianas |publisher=[[Princeton University Press]] |pages=330–334 |isbn=978-0-691-17074-9}}</ref><ref name="Ferraris de Santana 2017">{{cite journal |last1=Ferraris |first1=C. J. Jr |last2=de Santana |first2=C. D. |last3=Vari |first3=R. P. |year=2017 |title=Checklist of Gymnotiformes (Osteichthyes: Ostariophysi) and catalogue of primary types |journal=Neotropical Ichthyology |volume=15 |issue=1 |doi=10.1590/1982-0224-20160067 |doi-access=free}}</ref>。
=== 発電の仕組みと効力 ===
デンキウナギの[[発電]]器官は、[[筋肉]]の[[細胞]]が「発電板」という細胞に変化したものである。数千個の発電板が並んだ発電器官は体長の5分の4ほどあり、頭部側に位置する[[肛門]]から後ろはほとんど発電器官と言ってよい<ref>[[檜山義夫]]監修 『野外観察図鑑4 魚』 [[旺文社]] 1985年初版・1998年改訂版 {{ISBN2|4010724242}}</ref>。この発電器官は頭側が[[電極|プラス極]]、尾の方が[[電極|マイナス極]]になっている([[デンキナマズ]]は逆)。発生する[[電圧]]は発電板1つにつき約0.15 [[ボルト (単位)|V]] にすぎないが、数千個の発電板が一斉に発電することにより、最高[[電圧]]は600Vから800V・[[電流]]は1[[アンペア|A]] にも達する強力な電気を発生させることができる。ただし、この高電圧は約1000分の1秒ほどしか持続しない。デンキウナギはもっと弱い電流の電場を作ることもでき、弱い[[電場]]を作ることにより、濁った水中で障害物や獲物を探知していると考えられている。
しかし、1分以上も電気を発生させ噛み付いてきた[[カイマン亜科|カイマン]]を感電死させたという報告もされている。<ref>https://karmanima.net/archives/32669</ref>


2019年、C・デビッド・デ・サンタナのチームは、従来1つの種であった{{Snamei|Electrophorus electricus}}を、DNA分岐や生態、生息地、電気的形質などの差異に基づいて、{{Snamei||Electrophorus electricus}}(従来より狭義の種として)、{{Snamei||Electrophorus varii}}(新種)、そして{{Snamei||Electrophorus voltai}}(新種)の3種に分割した<ref name="de Santana 2019">{{Cite journal |last1=de Santana |first1=C. David |last2=Crampton |first2=William G. R. |last3=Dillman |first3=Casey B. |last4=Frederico |first4=Renata G. |last5=Sabaj |first5=Mark H. |last6=Covain |first6=Raphaël |last7=Ready |first7=Jonathan |last8=Zuanon |first8=Jansen |last9=de Oliveira |first9=Renildo R. |last10=Mendes-Júnior |first10=Raimundo N. |last11=Bastos |first11=Douglas A. |date=10 September 2019 |title=Unexpected species diversity in electric eels with a description of the strongest living bioelectricity generator |journal=[[Nature Communications]] |volume=10 |issue=1 |page=4000 |doi=10.1038/s41467-019-11690-z |pmc=6736962 |pmid=31506444 |bibcode=2019NatCo..10.4000D |display-authors=2}}</ref>。
「実際に[[感電]]するのは体に触れたときであり、デンキウナギがいる水槽にヒトがそっと手を入れるくらいであれば深刻な感電はしない」などといった俗説は事実ではなく、実際に水族館では水槽に電圧計を設置し観客に見せているところも多い。電圧計は900Vに達する場合もある<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=R_-Ps9l7JrE 【動画】寺泊水族館 デンキウナギ]</ref>。
発電するには筋肉を動かすのと同じく[[神経]]からの指令を受け、[[アデノシン三リン酸|ATP]] を消費する。そのため、疲れたり年老いたりしている個体ではうまく発電できない場合もある。またそれは、疲労した状態に追い込めば比較的安全に捕獲できるということでもあり、水面を棒などで叩いてデンキウナギを刺激して発電させ、疲れて発電できなくなったところを捕獲する漁法がある<ref>[http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/060800206/ 【動画】馬も倒す?デンキウナギの「水上攻撃」]</ref>。


=== 系統樹 ===
デンキウナギのほかにも多種多様の発電魚が知られているが、これらの発電の主目的はおもに身辺に[[電場]]を作って周囲の様子を探ることにある。ただし、デンキウナギは他の発電魚よりも強力な電気を起こせるため、[[捕食]]と自衛にも電気を用いることができる<ref name="内田" />。獲物の小魚を見つけると体当たりして感電させ、麻痺したところを捕食する。また、大きな動物が体に触れたときも発電して麻痺させ、その間に逃げる。渡河する[[人間]]や[[ウマ]]がうっかりデンキウナギを踏みつけて感電する事故が時折起こるが<ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1606/09/news117.html 馬も倒せる? デンキウナギは水面から飛び出して敵に攻撃することが判明]</ref>、なかには[[心室細動]]を起こした例もあるという。ウマは[[感電死]]することがあるが人間が[[死亡]]するほどの強さではない<ref>[[今泉忠明]]監修『危険生物大図鑑』、株式会社カンゼン、2014年、135頁</ref>。水中で感電すれば[[溺死]]の原因となりえ、いずれにせよ危険ではある。
デンキウナギ属は、[[デンキウナギ目]]の中で強[[電気魚]]の[[分岐群]]を構成している<ref name="de Santana 2019"/>。名称に「ウナギ」と付いているが、[[ウナギ目]]({{Snamei|Anguilliformes}})と近縁であるわけではない<ref>{{cite web |last=Matthews |first=Robert |title=How do electric eels generate voltage? |url=https://www.sciencefocus.com/nature/how-do-electric-eels-generate-voltage/ |publisher=[[BBC]] |access-date=17 September 2022}}</ref>。現在のデンキウナギ属の系統は、[[中生代]][[白亜紀]]のある時点で、[[姉妹群|姉妹属]]であるギュムノートゥス属から分岐したと推定されている<ref name="Lavoué Miya Arnegard 2012"/>。ほとんどのデンキウナギ目の魚は、弱い電気を持ち、活発に電気定位を行うが、獲物を気絶させるほどの電力は有していない{{sfn|Bullock|Bodznick|Northcutt|1983|p=37}} 。


以下の図は、[[ミトコンドリアDNA]]を分析することによって得られた、デンキウナギ目に分類される魚とその関連種の系統樹である<ref name="Elbassiouny Schott Waddell 2016">{{cite journal |last1=Elbassiouny |first1=Ahmed A. |last2=Schott |first2=Ryan K. |last3=Waddell |first3=Joseph C. |last4=Kolmann |first4=Matthew A. |last5=Lehmberg |first5=Emma S. |last6=Van Nynatten |first6=Alexander |last7=Crampton |first7=William G. R. |last8=Chang |first8=Belinda S. W. |last9=Lovejoy |first9=Nathan R. |display-authors=3 |title=Mitochondrial genomes of the South American electric knifefishes (Order Gymnotiformes) |journal=Mitochondrial DNA Part B |volume=1 |issue=1 |date=1 January 2016 |doi=10.1080/23802359.2016.1174090 |pages=401–403 |pmid=33473497 |pmc=7799549}}</ref><ref name="Alda Tagliacollo Bernt 2018">{{cite journal |last1=Alda |first1=Fernando |last2=Tagliacollo |first2=Victor A. |last3=Bernt |first3=Maxwell J. |last4=Waltz |first4=Brandon T. |last5=Ludt |first5=William B. |last6=Faircloth |first6=Brant C. |last7=Alfaro |first7=Michael E. |last8=Albert |first8=James S. |last9=Chakrabarty |first9=Prosanta |title=Resolving Deep Nodes in an Ancient Radiation of Neotropical Fishes in the Presence of Conflicting Signals from Incomplete Lineage Sorting |journal=Systematic Biology |volume=68 |issue=4 |date=6 December 2018 |doi=10.1093/sysbio/syy085 |pages=573–593 |pmid=30521024}}</ref>。黄色の稲妻マーク [[File:Farm-Fresh lightning.png|13px|alt=symbol for electrolocating fish]] が与えられている種は弱い電気で電気定位を行う種、赤色の稲妻マーク [[File:Lightning Symbol.svg|11px|alt=symbol for strongly electric fish]] が与えられている種は獲物に強い電気ショックを与えて狩りを行う種である<ref name="Lavoué Miya Arnegard 2012">{{Cite journal |last1=Lavoué |first1=Sébastien |last2=Miya |first2=Masaki |last3=Arnegard |first3=Matthew E. |last4=Sullivan |first4=John P. |last5=Hopkins |first5=Carl D. |last6=Nishida |first6=Mutsumi |date=14 May 2012 |editor-last=Murphy |editor-first=William J. |title=Comparable Ages for the Independent Origins of Electrogenesis in African and South American Weakly Electric Fishes |journal=PLOS ONE |volume=7 |issue=5 |pages=e36287 |doi=10.1371/journal.pone.0036287 |pmc=3351409 |pmid=22606250 |bibcode=2012PLoSO...736287L |doi-access=free}}</ref><ref name="Bullock Bodznick Northcutt 1983">{{cite journal |last1=Bullock |first1=Theodore H. |author1-link= |last2=Bodznick |first2=D. A. |last3=Northcutt |first3=R. G. |date=1983 |title=The phylogenetic distribution of electroreception: Evidence for convergent evolution of a primitive vertebrate sense modality |journal=Brain Research Reviews |volume=6 |issue=1 |pages=25–46 |doi=10.1016/0165-0173(83)90003-6 |pmid=6616267 |hdl=2027.42/25137 |s2cid=15603518 |url=https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/2027.42/25137/1/0000573.pdf |hdl-access=free}}</ref><ref name="Lavoué Miya 2012">{{cite journal |last1=Lavoué |first1=Sébastien |last2=Miya |first2=Masaki |last3=Arnegard |first3=Matthew E. |last4=Sullivan |first4=John P. |last5=Hopkins |first5=Carl D. |last6=Nishida |first6=Mutsumi |title=Comparable Ages for the Independent Origins of Electrogenesis in African and South American Weakly Electric Fishes |journal=PLOS ONE |volume=7 |issue=5 |date=14 May 2012 |doi=10.1371/journal.pone.0036287 |page=e36287 |pmid=22606250 |pmc=3351409 |bibcode=2012PLoSO...736287L |doi-access=free}}</ref>。
19世紀の博物学者[[アレクサンダー・フォン・フンボルト]]は1807年、南米旅行時に目撃した馬を用いた先住民のデンキウナギ漁について学術雑誌『''[[アナーレン・デア・フィジーク|ANNALEN DER PHYSIK]]''』に報告を寄せている<ref name="ann">A. Ann. Phys. 25, 34–43 (1807).</ref>。これによれば先住民は数頭の馬をデンキウナギの生息する沼に追い込み、放電して弱ったデンキウナギを捕獲するという手法であった<ref name="ann" />。しかしながら、こうしたデンキウナギの攻撃手法について科学的な裏付けがなされなかったこともあり、フンボルトの報告は長い間信じられていなかった<ref>natureダイジェスト: [https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v13/n8/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE%E3%81%AE%E8%B7%B3%E8%BA%8D%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF/77032 デンキウナギの跳躍アタック]</ref>。ところが2016年に入り、アメリカ合衆国テネシー州バンダービルト大学の生物学者[[ケネス・C・カターニア]]により『''Proceedings of the National Academy of Sciences''』にひとつの論文と動画が発表され、水上から近づいてきた敵に対して飛び上がって放電を行うというデンキウナギの習性が学術的に初めて明らかにされた<ref>PNAS:[https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1604009113 Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt’s account of a battle with horses]</ref>。


{{clade
なお、発電時にはデンキウナギ自身もわずかながら感電している。しかし、体内に豊富に蓄えられた[[脂肪組織]]が絶縁体の役割を果たすため、自らが感電死することはない。
|label1={{Snamei||Otophysi}}
|1={{clade
|1={{Snamei||Siluriformes}}([[ナマズ目]])(''数種が'' [[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Lightning Symbol.svg|12px|alt=symbol for strongly electric fish]]) [[File:FMIB 51852 Electric Catfish, Torpedo electricus (Gmelin) Congo River.jpeg|120px|alt=image of catfish]]
|2={{clade
|label1={{Snamei||Gymnotiformes}}
|1={{clade
|1={{Snamei||Apteronotidae}}(アプテロノートゥス科)[[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Sternarchorhynchus oxyrhynchus.jpg|140px|alt=image of ghost knifefish]]
|2={{clade
|1={{clade
|label1=<!--{{Snamei||Rhamphichthyoidea}}-->
|1={{clade
|1={{Snamei||Hypopomidae}}[[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Hypopomidae Steatogenys elgans (cropped).jpg|140px|alt=image of bluntnose knifefish]]
|2={{Snamei||Rhamphichthyidae}} [[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Rhamphichthys marmoratus.jpg|100px|alt=image of sand knifefish]]
}}
|label2={{Snamei||Gymnotidae}}
|2={{clade
|1={{Snamei||Gymnotus}}[[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Gymnotus sp.jpg|120px|alt=image of banded knifefish]]
|2='''{{Snamei||Electrophorus}}(デンキウナギ属)'''[[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Lightning Symbol.svg|12px|alt=symbol for strongly electric fish]] [[File:Lateral view of Electrophorus electricus.png|160px|alt=image of electric eel]]
}}
}}
|2={{Snamei||Sternopygidae}}[[File:Farm-Fresh lightning.png|15px|alt=symbol for electrolocating fish]] [[File:Sternopygidae Eigenmannia sp (white background).jpg|120px|alt=image of glass knifefish]]
}}
}}
|label2={{Snamei||Characiformes}}
|2=([[テトラ]]、[[ピラニア]]の仲間など)[[File:Exodon paradoxus Castelnau.jpg|80px|alt=image of non-electric fish]]
}}
}}
}}


== 他の発電魚 ==
=== 下位分類 ===
デンキウナギ属には以下の3つの種が属しているが、外見に大きな差異は無い<ref name="de Santana 2019"/>。
本種以外で比較的よく知られている発電魚を挙げる<ref name="sug">{{Cite journal|和書|author=菅原美子 |date=1996 |title=電気感覚系の比較生物学 I 電気器官と発電機構の多様性 |url=https://doi.org/10.3330/hikakuseiriseika.13.34 |journal=比較生理生化学 |ISSN=0916-3786 |publisher=日本比較生理生化学会 |volume=13 |issue=1 |pages=34-47 |doi=10.3330/hikakuseiriseika.13.34}}</ref>。
* {{Snamei||Electrophorus electricus}}([[デンキウナギ]]) - [[タイプ (分類学)|タイプ種]]。U字型の頭部に平らな[[頭蓋骨]]と[[擬鎖骨]]を持つ。最大電圧は480ボルトほどで、3種の中では最も弱い<ref name="de Santana 2019"/>。
* {{Snamei||Electrophorus voltai}} - デンキウナギ属内に留まらず、自然界の中でも最も強力な生体発電能力を有し、生じさせられる電圧は860ボルトにも上る。''E. electricus''と同様に平らな頭蓋骨と擬鎖骨を持つが、頭部は卵形に近い形状をしている<ref name="de Santana 2019"/>。
* {{Snamei||Electrophorus varii}} - 他の2種と異なり、頭蓋骨は厚く、頭部の形状はさまざまである。最大電圧は572ボルトほど<ref name="de Santana 2019"/>。


[[File:Anguilles électriques 3 espèces Nature 10 sept 2019 C. David de Santana et al.png|thumb|center|upright=3|デンキウナギ属に分類される3種、それぞれ左から{{Snamei||Electrophorus electricus|E. electricus}}、{{Snamei||Electrophorus voltai|E. voltai}}、{{Snamei||Electrophorus varii|E. varii}}<ref name="de Santana 2019"/>の頭部の形状の差異。|alt=デンキウナギ属3種の頭部X線写真]]
* [[ガンギエイ目]](''Batoidae'')
** [[シビレエイ科]](''Torpedinoids'') - [[シビレエイ]]はエイの一[[タクソン|分類群]]。太平洋、大西洋、インド洋などに生息し、咽頭筋由来の発電器官を持ち、60ボルトの発電を行う<ref name="sug2">菅原美子 - [http://square.umin.ac.jp/wpj/ysuga/ef-world-2.html 電気魚の種属]</ref>。
** [[ガンギエイ科]](''Rajoids'') - [[スケイト]]、[[カスベ]]などで、尾部に0.25から1ボルト程度の発電器官を持つ<ref name="sug2" />。
* [[ナマズ目]](''Siluriformes'')
** [[デンキナマズ科]](''Malapteruridae'') - コンゴ川、ナイル川流域の淡水生ナマズ。350ボルト程度の発電器官を持つ<ref name="sug2" />。
* [[ジムノテイ目]](''Gymnotiformes'')
** [[ステルノピギド科]](''Sternopygidae'')
** [[ナイフフィッシュ科]](''Rhamphichthyidae'') - アマゾン川に生息する弱電気を放つ淡水魚<ref name="sug2" />。発電魚としてはSternopygus、Eigenmannia、Hypopomus、Rhamphichysなどの4種が知られている<ref name="sug2" />。
** [[ハイポポミド科]](''Hypopomidae'')
** [[アプテロノティド科]](''Apteronotidae'') - 南アメリカに生息する淡水魚で、1から3ボルト程度の電圧を発する<ref name="sug2" />。
** [[ジムノティド科]](''Gymnotidae'') - [[カラポ]]を代表とする中部アメリカ、南アメリカに生息する淡水魚<ref name="sug2" />。
** [[デンキウナギ科]](''Electrophoridae'') - 本稿で記述。
* [[スズキ目]](''Perciformes'')
** [[ミシマオコゼ科]](''Uranoscopidae'')
* [[モルミリ目]](''Mormyriformes'')
** [[ジムナルキド科]](''Gymnarchidae'')([[ギュムナルクス科]]) - アフリカ、ナイル川に生息する[[ジムナーカス]]などが、1から2ボルト程度の弱い発電ができる<ref name="sug2" />。
** [[モルミリド科]](''Mormyridae'')([[モルミルス科]]) - アフリカ、ナイル川に生息する[[エレファントノーズフィッシュ]]などが、2から5ボルト程度の弱い発電ができる<ref name="sug2" />。


{{multiple image
== 写真 ==
|align=center
|direction=vertical
|total_width=500px
|image1=Lateral view of Electrophorus electricus.png
|image2=Lateral view of Electrophorus voltai.png
|image3=Lateral view of Electrophorus varii.png
|footer=上から''E. electricus''、''E. voltai''、''E. varii''の身体図<ref name="de Santana 2019"/>
|alt=デンキウナギ属3種の身体図
}}

{{Snamei|E. varii}}は[[中新世]]後期の710万年前ごろに、{{Snamei|E. electricus}}と{{Snamei|E. voltai}}は[[鮮新世]]中期の360万年前ごろにそれぞれ分岐したと推定されている<ref name="de Santana 2019"/>。

== 分布と生態 ==
3種は[[南アメリカ]]北部にほとんど互いに重複せずに分布している。{{Snamei|E. electricus}}は全体的に分布地は[[ギアナ楯状地]]の[[オリノコ川水系]]周辺に収束している一方、{{Snamei|E. voltai}}はその南側の[[ブラジル楯状地]]の北部にわたって広く分布している。この2種が高原の水域に生息している一方、{{Snamei|E. varii}}は両者の分布地の間の、比較的低地である草地や渓谷、湖沼に渡る広範囲に分布している<ref name="de Santana 2019"/>。{{Snamei|E. varii}}の生息地は変化に富み、[[雨季]]と[[乾季]]とでは水位が大きく変化する<ref name="Bastos 2020"/>。3種はすべて濁りの多い河川の川底や沼地に生息し、深部の日陰の環境を好む。[[空気呼吸]]を行うために水面まで泳げるように、酸素濃度の低い環境でも耐えられるようになっている<ref name="fishbase">[http://www.fishbase.org/Summary/SpeciesSummary.php?ID=4535 ''Electrophorus electricus''] - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2009.[[FishBase]].World Wide Web electronic publication.www.fishbase.org, version (08/2009)</ref><ref name="ADW">{{cite web |title=Electrophorus electricus: Electric eel |url=https://animaldiversity.org/accounts/Electrophorus_electricus/ |website=Animal Diversity Web |access-date=15 July 2022}}</ref>。

[[File:Carte du nord de l'Amérique du sud avec répartition de spécimens de 3 espèces d'anguilles électriques electrophorus.png|thumb|upright=2|center|南アメリカ大陸北部におけるデンキウナギ属1属3種の分布図。赤が{{Snamei|E. electricus}}、青が{{Snamei|E. voltai}}、黄が{{Snamei|E. varii}}<ref name="de Santana 2019"/>。|alt=南アメリカ大陸北部におけるデンキウナギ属1属3種の分布図]]

デンキウナギ属のほとんどは[[夜行性]]で、、昼間は物陰や泥底に潜み、夜になると動きだして主に小魚や小型[[哺乳類]]を捕食する<ref name="Fukui">福井篤監修『講談社の動く図鑑move 魚』、[[講談社]]、[[2012年]]、176頁</ref>{{sfn|Moller|1995|p=346}}。{{Snamei|E. voltai}}は主に{{Snamei||Megalechis thoracata}}などの魚類を餌とする<ref name="Oliveira 2019">{{Cite journal |last1=Oliveira |first1=Marcos S. B. |last2=Mendes‐Júnior |first2=Raimundo N. G. |last3=Tavares‐Dias |first3=Marcos |date=10 September 2019 |title=Diet composition of the electric eel Electrophorus voltai (Pisces: Gymnotidae) in the Brazilian Amazon region |journal=Journal of Fish Biology |volume=97 |issue=4 |pages=1220–1223 |doi=10.1111/jfb.14413 |pmid=32463115 |s2cid=218976160}}</ref>。標本の胃からは[[アシナシイモリ]]や{{Snamei||Typhlonectes compressicauda}}が検出されており、これは同種がアシナシイモリらの表皮の毒に耐性があることを示唆するものとなっている<ref>{{cite journal |last1=Oliveira |first1=Marcos Sidney Brito |last2=Esteves-Silva |first2=Pedro Hugo |last3=Santos |first3=Alfredo P. Jr. |last4=Kawashita-Ribeiro |first4=Ricardo A. |last5=Tavares-Dias |first5=Marcos |display-authors=3 |title=Predation on Typhlonectes compressicauda Duméril & Bibron, 1841 (Gymnophiona: Typhlonectidae) by Electrophorus electricus Linnaeus, 1766 (Pisces: Gymnotidae) and a new distributional record in the Amazon basin |journal=Herpetology Notes |volume=12 |year=2019 |pages=1141–1143 |url=https://www.biotaxa.org/hn/article/download/50611/58397}}</ref>。また、{{Snamei|E. voltai}}は群れで狩りをし、[[テトラ]]の群れを複数匹で襲う様子が観察されている<ref>{{cite journal |last1=Bastos |first1=Douglas A. |last2=Zuanon |first2=Jansen |last3=Rapp Py‐Daniel |first3=Lúcia |last4=Santana |first4=Carlos David |title=Social predation in electric eels |journal=Ecology and Evolution |volume=11 |issue=3 |date=14 January 2021 |doi=10.1002/ece3.7121 |pages=1088–1092 |pmid=33598115 |pmc=7863634}}</ref>。{{Snamei|E. varii}}も魚食で、主に[[カリクティス科]]({{Snamei||Callichthyidae}})や[[シクリッド|カワスズメ科]]({{Snamei||Cichlidae}})の魚類を捕食する<ref name="Mendes-Júnior 2020">{{cite journal |last1=Mendes-Júnior |first1=Raimundo Nonato Gomes |last2=Sá-Oliveira |first2=Júlio César |last3=Vasconcelos |first3=Huann Carllo Gentil |last4=Costa-Campos |first4=Carlos Eduardo |last5=Araújo |first5=Andrea Soares |display-authors=3 |title=Feeding ecology of electric eel Electrophorus varii (Gymnotiformes: Gymnotidae) in the Curiaú River Basin, Eastern Amazon |journal=Neotropical Ichthyology |volume=18 |issue=3 |year=2020 |doi=10.1590/1982-0224-2019-0132 |s2cid=226489479|doi-access=free }}</ref>。

== 形態 ==
=== 基本的な構造 ===
[[File:Electrophorus electricus - squelette MNHN (cropped).JPG|thumb|upright=1.7|デンキウナギの骨格。長い背骨を持っていることが分かる。下にあるのは鰭条。]]

デンキウナギ属は長く恰幅のあるウナギに似た体をしており、前方部はやや円筒形の形状をしているが、尾ひれに向かうにつれて胴体は平らになっていく。{{Snamei|E. electricus}}は大きい個体で全長2メートル、体重は20キログラムにまで達し、[[デンキウナギ目]]の魚では最大種である。口は鼻の前にあり、上を向いている。皮膚は滑らかで厚く、全体的に黒色から褐色、下腹部は黄色から赤色の色をしていて、[[鱗]]は無い<ref name="fishbase"/><ref name="de Santana 2019"/><ref name="Albert 2001"/><ref name=Berra2007>{{cite book |last=Berra |first=Tim M. |year=2007 |title=Freshwater Fish Distribution |publisher=[[University of Chicago Press]] |pages=246–248 |isbn=978-0-226-04442-2}}</ref>。胸びれ先端には小さな骨が放射状に8つ付いている<ref name="Albert 2001"/>。他のギュムノートゥス科の魚は最大でも51個なのに対し、デンキウナギ属は100個以上もの尾前[[椎骨]]を持っており、椎骨全体ではその個数は300個を超え得るとされている<ref name="Albert Crampton 2005">{{cite book |last1=Albert |first1=James S. |last2=Crampton |first2=William G. R. |title=Electroreception |chapter=Diversity and Phylogeny of Neotropical Electric Fishes (Gymnotiformes) |publisher=Springer |year=2005 |isbn=978-0-387-23192-1 |doi=10.1007/0-387-28275-0_13 |pages=360–409 |url=https://www.researchgate.net/publication/226533338}}</ref>。尾びれと尻ひれとの間に明確な境界は無い。尻びれは下側の体長の大部分にわたって付いており、[[鰭 (魚類)|鰭条]]の数は400以上を数える<ref name="de Santana 2019"/><ref>{{cite journal |last1=de Santana |first1=C. D. |last2=Vari |first2=R. P. |last3=Wosiacki |first3=W. B. |year=2013 |title=The untold story of the caudal skeleton in the electric eel (Ostariophysi: Gymnotiformes: Electrophorus) |journal=PLOS ONE |volume=8 |issue=7 |page=e68719 |doi=10.1371/journal.pone.0068719 |pmid=23894337 |pmc=3722192 |bibcode=2013PLoSO...868719D |doi-access=free}}</ref>。デンキウナギ属は、その長い尻びれを波打つように動かして、水中を進む<ref>{{cite journal |last1=Sfakiotakis |first1=M. |last2=Lane |first2=D. M. |last3=Davies |first3=B. C. |year=1999 |title=Review of fish swimming modes for aquatic locomotion |journal=Journal of Oceanic Engineering |volume=24 |issue=2 |pages=237–252 |doi=10.1109/48.757275 |bibcode=1999IJOE...24..237S |s2cid=17226211}}</ref> 。

デンキウナギ属は、口腔を使用して[[空気呼吸]]を行うことによって、体内に大部分の酸素を取り入れている<ref name=Berra2007/><ref name="Kramer Lindsey Moodie Stevens 1978"/>。これによって、河川や湖沼、プールなど、酸素濃度が大きく異なる場所でも生息することができるようになっている<ref name="Kramer Lindsey Moodie Stevens 1978">{{cite journal |last1=Kramer |first1=D. L. |last2=Lindsey |first2=C. C. |last3=Moodie |first3=G. E. E. |last4=Stevens |first4=E. D. |title=The fishes and the aquatic environment of the central Amazon basin, with particular reference to respiratory patterns |journal=Canadian Journal of Zoology |date=1978 |volume=56 |issue=4 |pages=717–729 |doi=10.1139/z78-101 |url=https://www.researchgate.net/publication/237980361}}</ref>{{rp|719–720}}。また、ギュムノートゥス科の中では独特で、[[口腔]]内はしわ状の[[粘膜]]で覆われており、そこに血管が通っているため、口腔内で直接[[気体交換]]を行うことも可能になっている<ref name="Albert Crampton 2005"/><ref name="Johansen Lenfant Schmidt-Nielsen Petersen 1968 pp. 137–163"/>。呼吸は約2分ごとに行われ、口から空気を取り込むと当時に、[[鰓]]ぶたから空気を排出している<ref name="Johansen Lenfant Schmidt-Nielsen Petersen 1968 pp. 137–163">{{cite journal |last1=Johansen |first1=Kjell |last2=Lenfant |first2=Claude |last3=Schmidt-Nielsen |first3=Knut |author3-link=|last4=Petersen |first4=Jorge A. |title=Gas exchange and control of breathing in the electric eel, Electrophorus electricus |journal=Zeitschrift für Vergleichende Physiologie |volume=61 |issue=2 |year=1968 |doi=10.1007/bf00341112 |pages=137–163 |s2cid=22364103}}</ref>。空気呼吸を行う魚は他にも存在するが、空気を取り込むときに鰓ぶたを使わないのは、鰓が小さいデンキウナギ属独特の性質である。合成された[[二酸化炭素]]の大部分は[[皮膚呼吸|皮膚から排出]]される<ref name=Berra2007/>。皮膚が乾燥していなければ、デンキウナギ属は陸上でも数時間は生存し続けられる{{sfn|Moller|1995|p=462}}。

デンキウナギ属は目が小さく、視力も弱い<ref name=Berra2007/><ref>{{cite book |last=Plotkin |first=Mark J. |year=2020 |title=The Amazon What Everyone Needs to Know |publisher=Oxford University Press |page=91 |isbn=978-0-19-066829-7}}</ref>。聴力は、[[ウェーバー器官]]によって司られている{{sfn|Moller|1995|pp=361–362}}。全長の前半部20パーセントに動物としての重要な器官が集中しており、電気器官とは隔離された構造になっている<ref name="Kisia 2016">{{cite book |last=Kisia |first=S. M. |year=2016 |title=Vertebrates: Structures and Functions |publisher=[[CRC Press]] |page=151 |isbn=978-1-4398-4052-8}}</ref>。肛門も頭部側の鰓の下に位置し、その後ろは全て電気器官である<ref>[[檜山義夫]]監修 『野外観察図鑑4 魚』 [[旺文社]] 1985年初版・1998年改訂版 {{ISBN2|4010724242}}</ref>。

=== 電気発生の仕組み ===
{{further|[[電気魚]]|{{仮リンク|電気感覚と電気発生|en|Electroreception and electrogenesis}}}}

[[File:Electrophorus electricus showing lateral line pits.jpg|thumb|upright|alt=デンキウナギの頭部の写真|[[側線]]管に繋がる穴は、頭部と胴体の上部と側面とに列をなして並んでいる。側線管は、機械感覚性受容体と電気受容体とを兼ねている<ref name="Verçoza Shibuya Bastos Zuanon 2021"/>。]]

デンキウナギ属の魚類は、頭部の[[側線]]器官から発達した電気受容体を使用して、獲物の位置を電気定位する。側線自体は機械感覚性の器官で、近くの動物の動きを水の動きを介して察知することができる。側線管は皮膚の下にあり、表皮に斑点状に分布している小さな穴の連なりに沿って存在している<ref name="Verçoza Shibuya Bastos Zuanon 2021">{{cite journal |last1=Verçoza |first1=Gabriel |last2=Shibuya |first2=Akemi |last3=Bastos |first3=Douglas A. |last4=Zuanon |first4=Jansen |last5=Rapp Py-Daniel |first5=Lúcia H. |title=Organization of the cephalic lateral-line canals in Electrophorus varii de Santana, Wosiacki, Crampton, Sabaj, Dillman, Mendes-Júnior & Castro e Castro, 2019 (Gymnotiformes: Gymnotidae) |journal=Neotropical Ichthyology |volume=19 |issue=2 |year=2021 |doi=10.1590/1982-0224-2020-0075 |s2cid=236645742|doi-access=free }}</ref>。この高度な感受性を持つ器官を用いて、デンキウナギは獲物を狩っている<ref name="Froese Pauly Fishbase"/>。

[[File:Biotechnology, systems biology, artificial cells (5940428301).jpg|thumb|center|upright=1.5|デンキウナギの組織解剖図<br>右上拡大図 - [[魚類用語#発電器官|電気器官]]を司る電気細胞の組織。<br>左下拡大図 - 個々の電気細胞の[[細胞膜]]、および[[イオンチャンネル]]とイオンポンプ。[[神経細胞]]の軸索終末から[[神経伝達物質]]が放出され、電気活動が引き起こされる。<br>右下拡大図 - イオンチャンネル内の鎖状[[タンパク質]]。]]

[[File:Electric organs.png|thumb|396x396px|デンキウナギの3つの電気器官、すなわち主器官(黄色)、ハンター器官(褐色)、サックス器官(水色)それぞれの位置。]]

デンキウナギの電気器官は主器官、ハンター器官、そしてサックス器官とからなる。これらの器官の働きにより、デンキウナギは高電圧と低電圧との二種類の強さの電気を生み出すことができるようになっている<ref name="de Santana 2019"/>。電気器官は[[筋肉]]細胞から変化した電気細胞によって組織されている<ref name="Xu Lavan 2008">{{cite journal |last1=Xu |first1=J. |last2=Lavan |first2=D. A. |title=Designing artificial cells to harness the biological ion concentration gradient |journal=[[Nature Nanotechnology]] |volume=3 |issue=11 |pages=666–670 |date=November 2008 |pmid=18989332 |pmc=2767210 |doi=10.1038/nnano.2008.274 |bibcode=2008NatNa...3..666X}}</ref><ref name="Markham 2013">{{cite journal |last=Markham |first=Michael R. |title=Electrocyte physiology: 50 years later |journal=Journal of Experimental Biology |volume=216 |issue=13 |year=2013 |pages=2451–2458 |doi=10.1242/jeb.082628 |pmid=23761470 |doi-access=free}}</ref>。電気細胞は筋肉細胞と同様に、[[アクチン]]タンパク質と[[デスミン]]タンパク質の2つのタンパク質から成るが、本来の筋原線維は緻密な構造をとるのに対し、電気細胞は比較的緩い組織構造から成っている。筋肉細胞の場合では通常2または3であるのに対し、電気細胞は5つの異なる形態のデスミンを持っているが<ref name="Mermelstein 2000">{{cite journal |last1=Mermelstein |first1=Claudia Dos Santos |last2=Costa |first2=Manoel Luis |last3=Moura Neto |first3=Vivaldo |title=The cytoskeleton of the electric tissue of Electrophorus electricus, L. |journal=Anais da Academia Brasileira de Ciências |volume=72 |issue=3 |year=2000 |doi=10.1590/s0001-37652000000300008 |pages=341–351 |pmid=11028099|doi-access=free }}</ref>、電気細胞におけるデスミンの機能は2017年に詳細が明らかにされるまで不明とされていた<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017">{{cite journal |last1=Traeger |first1=Lindsay L. |last2=Sabat |first2=Grzegorz |last3=Barrett-Wilt |first3=Gregory A. |last4=Wells |first4=Gregg B. |last5=Sussman |first5=Michael R. |title=A tail of two voltages: Proteomic comparison of the three electric organs of the electric eel |journal=Science Advances |volume=3 |issue=7 |date=7 July 2017 |pages=e1700523 |doi=10.1126/sciadv.1700523 |pmid=28695212 |pmc=5498108 |bibcode=2017SciA....3E0523T}}</ref>。

デンキウナギの発電を担うイオンチャンネルの一つであるカリウムチャンネルタンパク質には、[[KCNA1]]、[[KCNH6]]、[[KCNJ12]]などがあるが、デンキウナギの電気器官を構成する3つの器官の間で、その分布量は異なる。これらのタンパク質のうちの大部分は、主器官に最も豊富に存在する一方、KCNH6に関してはサックス器官に最も豊富に存在する<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/>。また、[[カルモジュリン]]は電気器官の中でカルシウムイオンの量の制御を担うタンパク質で、主器官やハンター器官に豊富に含まれる。カルモジュリンとカルシウムは発電を担う電位依存性[[ナトリウムチャネル]]の調節を助けるはたらきをする<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/><ref name="Gotter Kaetzel Dedman 2012 pp. 855–869">{{cite book |last1=Gotter |first1=Anthony L. |last2=Kaetzel |first2=Marcia A. |last3=Dedman |first3=John R. |chapter=Electrocytes of Electric Fish |editor=Nicholas Sperelakis |title=Cell Physiology Source Book |publisher=[[Elsevier]] |year=2012 |doi=10.1016/b978-0-12-387738-3.00048-2 |pages=855–869 |isbn=978-0-12-387738-3}}</ref>。さらに、これらの電気器官には、細胞膜内外に電位差を生じさせる役割を担うイオンポンプである[[Na+/K+-ATPアーゼ|ナトリウムポンプ]]も豊富に存在する<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/><ref>{{cite journal |last1=Ching |first1=Biyun |last2=Woo |first2=Jia M. |last3=Hiong |first3=Kum C. |last4=Boo |first4=Mel V. |last5=Choo |first5=Celine Y. L. |last6=Wong |first6=Wai P. |last7=Chew |first7=Shit F. |last8=Ip |first8=Yuen K. |display-authors=3 |title=Na+/K+-ATPase α-subunit (nkaα) isoforms and their mRNA expression levels, overall Nkaα protein abundance, and kinetic properties of Nka in the skeletal muscle and three electric organs of the electric eel, Electrophorus electricus |journal=PLOS One |volume=10 |issue=3 |pages=e0118352 |date=20 March 2015 |pmid=25793901 |pmc=4368207 |doi=10.1371/journal.pone.0118352 |bibcode=2015PLoSO..1018352C |doi-access=free}}</ref>。

デンキウナギの発電力は電気魚中最強で、主器官からは最大600ボルトが放電される<ref name="Catania 2015"/>。[[シビレエイ目]]のような海洋性電気魚ははるかに低い電圧でも強い電流を与えられるのに対し、デンキウナギが生息するような淡水は、[[電気抵抗]]が大きく、他の動物に強いショックを与えるためには相当の電圧が必要なのである。デンキウナギは約500ヘルツほどの速さで非常に急速に強力な放電を行うことができる一方、各ショックは1回あたり約2ミリ秒しか続かない<ref name="Kramer 2008">{{Cite book |last=Kramer |first=Bernd |chapter=Electric Organ; Electric Organ Discharge |publisher=Springer |isbn=978-3-540-23735-8 |pages=1050–1056 |editor=Marc D. Binder |editor2=Nobutaka Hirokawa |editor3=Uwe Windhorst |title=Encyclopedia of Neuroscience |location=Berlin, Heidelberg |date=2008 |chapter-url=http://epub.uni-regensburg.de/124/}}</ref>。デンキウナギは主器官に1つ当たり約0.15ボルトの電圧を発生させる電気細胞を6000個ほど直列に配列させ、更に胴体にそれを横に35個ほど並列させることによって、高い電圧の電気を生じさせている<ref name="Kramer 2008"/>。このような高電圧、高周波のパルスを生じさせる能力は、動きの素早い動物を捉えるのにも役立っている<ref name="Catania 2015 high-voltage">{{cite journal |last1=Catania |first1=Kenneth C. |title=Electric eels use high-voltage to track fast-moving prey |journal=Nature Communications |date=20 October 2015 |volume=6 |page=8638 |doi=10.1038/ncomms9638 |pmid=26485580 |pmc=4667699 |bibcode=2015NatCo...6.8638C}}</ref>。各パルスの総電流は1アンペアに達することもある<ref name="UWA 2015">{{cite web |title=Fact Sheet: Electric eels |url=https://www.uwa.edu.au/study/-/media/Faculties/Science/Docs/Electric-eels.pdf |publisher=[[西オーストラリア大学]] |access-date=26 September 2022 |orig-date=2010 |date=February 2015}}</ref>。

[[File:Impedance matching in electric fishes.svg|thumb|center|upright=2.6|alt=なぜ淡水性電気魚が海洋性電気魚より高い電圧を生じさせる必要があるのかの解説図|海洋性電気魚は電気細胞を並列に並べて弱い電圧を生じさせても強い電流を与えられるのに対し、淡水性電気魚は電気細胞を直列に並べて強い電圧を生じさせなければ強い電流を与えることができない<ref name="Kramer 2008"/>。]]

デンキウナギは3種類の発電器官が発達しているのにも関わらず、放電タイプには電気定位と獲物へのショックとの2種類しかない理由は不明とされていた。2021年、Jun Xuらの研究チームは、ハンター器官が38.5から56.5ボルトほどの中程度の電圧で第3のタイプの放電を行うとした。Xuらによれば、この放電は、サックス器官が弱い電流で電気定位を行った後、主器官が強い放電で獲物に電気ショックを与える前の2ミリ秒未満の間に、1度だけ行われることが観察されたという。Xuらは、この中程度の放電は獲物に電気ショックを与えるのには使われるのではなく、むしろデンキウナギの体内における電荷バランスを調整する役割を担っているのではないかと考察した上で、さらなる研究が必要だとした<ref name="Xu Cui Zhang 2021"/>。

[[File:Electric-eels-use-high-voltage-to-track-fast-moving-prey-ncomms9638-s10.ogv|thumb|right|デンキウナギが実際に狩りをする様子。獲物に体当たりをし、電気ショックを与えて気絶させたところを捕食している。]]

デンキウナギが獲物を認識すると、脳は電気器官に電気信号を送る<ref name="Kramer 2008"/>。神経細胞は電気細胞に対し神経伝達物質[[アセチルコリン]]を放出し、放電を促す<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/>。すると電気細胞の細胞膜にあるイオンチャンネルが開き、ナトリウムイオンが細胞内に侵入し、細胞内外の極性が一時的に逆転する<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/>。その後また別のタイプのイオンチャンネルから今度はカリウムイオンが細胞外に流出することで、放電が完了する<ref name="Traeger Sabat Barrett-Wilt 2017"/>。細胞の内と外に電位差を急速に生じさせることによって電流が生まれ、さらに電気細胞が直列に重ね合わせられることによって、適確な電圧の電気を生み出される<ref name="Xu Lavan 2008"/>。

電気器官のうち、サックス器官は電気定位に用いられ、電圧10ボルト、周波数25ヘルツで放電を行う。それに対し、主器官は、ハンター器官の助けを受けながら、狩りや捕食回避などのために相手に強い電気ショックを与える役割を担っている<ref name="Froese Pauly Fishbase"/><ref name="Catania 2015">{{cite journal |last=Catania |first=Kenneth C. |title=Electric Eels Concentrate Their Electric Field to Induce Involuntary Fatigue in Struggling Prey |journal=[[Current Biology]] |volume=25 |issue=22 |pages=2889–2898 |date=November 2015 |pmid=26521183 |doi=10.1016/j.cub.2015.09.036 |doi-access=free}}</ref>。

デンキウナギは捕食の際に、胴体を丸めて獲物と2点で接触することによって、より集中的に電気ショックを与え、獲物を気絶させることができるようにしている<ref name="Catania 2015"/>。電気ショックを獲物に与えることによって、獲物の神経系と筋肉のはたらきを阻害し、獲物の逃走を防いだり、獲物がその場から動かないようにしたりできるとされている<ref>{{cite journal |last=Catania |first=K. C. |title=The shocking predatory strike of the electric eel |journal=[[Science (journal)|Science]] |volume=346 |issue=6214 |pages=1231–1234 |date=December 2014 |pmid=25477462 |doi=10.1126/science.1260807 |bibcode=2014Sci...346.1231C |s2cid=14371418}}</ref>が、これには異論もある<ref name="Xu Cui Zhang 2021"/>。さらに、[[捕食回避]]の点においても電気ショックは有用で、デンキウナギが脅威を感じた動物に対して、水上に飛び跳ねて感電させる様子が観察されたこともある<ref name="Catania 2016">{{cite journal |last=Catania |first=K. C. |title=Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt's account of a battle with horses |journal=[[PNAS]] |volume=113 |issue=25 |pages=6979–6984 |date=June 2016 |pmid=27274074 |pmc=4922196 |doi=10.1073/pnas.1604009113 |bibcode=2016PNAS..113.6979C |doi-access=free}}</ref>。この電気ショックは、馬のような大きな動物ですら感電死させるほどの強さである一方、人間が感電死することは無いとされている<ref>{{cite journal |last=Catania |first=K. C. |title=Power Transfer to a Human during an Electric Eel's Shocking Leap |journal=[[Current Biology]] |volume=27 |issue=18 |pages=2887–2891.e2 |date=September 2017 |pmid=28918950 |doi=10.1016/j.cub.2017.08.034 |doi-access=free}}</ref><ref>[[今泉忠明]]監修『危険生物大図鑑』、株式会社カンゼン、2014年、135頁</ref>。

== 生活史 ==
デンキウナギの繁殖期は9月から12月頃までの乾季である。この間、水位が下がった河川、湖沼などでオスとメスのつがいを観察することができる。オスは自分の唾液を用いて巣を形成し、メスは[[受精]]のために1200個ほどの卵を産む。メスが産んだ卵は7日後に孵化する。メスは繁殖期を通じて定期的に産卵をする{{sfn|Moller|1995|pp=292–293}}。孵化した稚魚は体長が15ミリメートルほどに達する頃には卵内の栄養を消費し終え、9センチメートルほどに達すると他の餌を摂り始める{{sfn|Moller|1995|pp=297, 300}}。

デンキウナギ属の魚は[[性的二形]]を持つ。オスはメスより大きく、体長1.2メートルほどで成魚になるのに対し、メスは70センチメートルで成魚になる。親魚は4か月ほど稚魚の世話をする。一方、急峻な河川に生息する{{Snamei|E. electricus}}と{{Snamei|E. voltai}}の稚魚は、そこまで親魚に守られることはないとされる<ref name="Bastos 2020">{{cite book |last=Bastos |first=Douglas Aviz |url=https://repositorio.inpa.gov.br/handle/1/38283 |title=História Natural de Poraquês (Electrophorus spp.), Gymnotiformes: Gymnotidae |date=November 2020 |publisher=Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia (PhD Thesis) |location=[[マナウス]] |pages=10, 60, 63, and throughout |language=pt}} Abstracts in English.</ref>。また、オスは稚魚と巣の両方を守る役割を担っている{{sfn|Moller|1995|p=293}}。デンキウナギの寿命は長く、20年以上生きた個体が捕獲されたこともある<ref name="Albert 2001"/>。

デンキウナギは生育するにつれ、背骨の椎骨が徐々に増えていく<ref name="Albert 2001">{{cite journal |last=Albert |first=J. S. |year=2001 |title=Species diversity and phylogenetic systematics of American knifefishes (Gymnotiformes, Teleostei) |journal=Miscellaneous Publications |publisher=University of Michigan Museum of Zoology |issue=190 |page=66 |hdl=2027.42/56433}}</ref>。デンキウナギの電気器官のうち、主器官が最初に発達する器官で、次にサックス器官、そして最後にハンター器官が発達する。体長が23センチメートルに達するまでには、全ての電気器官の分化が開始される。体長が7センチメートルほどの小さな段階でも、デンキウナギは放電を行うことができる{{sfn|Moller|1995|pp=297, 300}}。

== 人間との関わり ==
=== 研究史 ===

[[フランス領ギアナ]]のフランス軍外科医であったベルトラン・バジョンと、リバープレート盆地の[[イエズス会]]員であった{{仮リンク|ラモン・M・テルマイヤー|pl|Ramón María Termeyer}}は、1760年代に最初にデンキウナギの放電に関する実験を行った<ref name="de Asúa 2008">{{cite journal |last=de Asúa |first=Miguel |title=The Experiments of Ramón M. Termeyer SJ on the Electric Eel in the River Plate Region (c. 1760) and other Early Accounts of Electrophorus electricus |journal=Journal of the History of the Neurosciences |volume=17 |issue=2 |date=9 April 2008 |doi=10.1080/09647040601070325 |pages=160–174 |pmid=18421634}}</ref>。また、1775年には、{{仮リンク|ジョン・ウォルシュ|en|John Walsh (scientist)}}によってシビレエイの研究が行われていた<ref name="Edwards 2021"/>。そして両方の魚について解剖・調査を行った外科医の[[ジョン・ハンター (外科医)|ジョン・ハンター]]は、[[王立協会]]に対して、デンキウナギを解剖・観察した結果として「{{Snamei|Gymnotus Electricus}}は……見た目は非常にウナギに似ている。……しかし実のところはウナギ特有の性質は一切持ち合わせていない<ref name="Hunter 1775"/>。」と報告している<ref name="Edwards 2021"/><ref name="Hunter 1775"/>。さらに、デンキウナギは「大小2つの[電気]器官[主器官とハンター器官]を、両サイドに1つずつ」有しており、「恐らく体の[体積の]3分の1以上」をこれらの器官がしめているだろうとした<ref name="Hunter 1775"/>。また、ハンターは、電気細胞の集積である電気器官の構造を「非常に単純かつ規則的で、隔膜とそれらが交差してできる内側の部分とで構成されている」と説明した<ref name="Hunter 1775"/>。加えてハンターは、電気細胞1個当たりの厚さが、主器官においては約17分の1インチ(1.5ミリメートル)、ハンター器官においては約56分の1インチ(0.45ミリメートル)であることも測定した<ref name="Hunter 1775"/>。

<gallery mode="packed" heights="160">
File:John Hunter with skull attributed to Zoffany.jpg|デンキウナギの解剖を行った外科医[[ジョン・ハンター (外科医)|ジョン・ハンター]]|alt=ジョン・ハンターの肖像画
File:Electric eel John Hunter 1775.jpg|thumb|ハンターの描いたデンキウナギの図解(腹側、および背側より)。ハンターは図解に報告書の4ページを割いた<ref name="Hunter 1775"/>。|alt=デンキウナギ全体の図解
File:Hunter Electric Eel 1775 cross-section.jpg|断面図:C - 背筋、H - 主器官、I - ハンター器官|alt=デンキウナギの断面図
File:Hunter Electric Eel Dissection 1775.jpg|体内の電気器官を解剖した図。図右側、皮膚をめくるとハンター器官の上部に主器官があることが分かる。|alt=デンキウナギの解剖図
</gallery>

同じく1775年、ハンターの共同研究者で、米国の医師・政治家であった[[ヒュー・ウィリアムソン]]<ref name="VanderVeer 2011">{{cite journal |last=VanderVeer |first=Joseph B. |title=Hugh Williamson: Physician, Patriot, and Founding Father |journal=Journal of the American Medical Association |volume=306 |issue=1 |date=6 July 2011 |doi=10.1001/jama.2011.933}}</ref>も「デンキウナギ、{{Snamei|Gymnotus Electricus}}の実験と観察」と題した論文を王立協会にて発表した。論文の記述によれば、ウィリアムソンが行った実験のうちの一つは「(ウィリアムソンが以前の実験で)デンキウナギに触れた時と同じ程度の放電で、デンキウナギは魚を感電死させるのかどうかを調べるために、ウナギから少し離れた水の中に手を入れ」、「別のナマズを水中に投げ込む」という内容のもので、その結果、「ウナギがナマズに近づいていき、……電気ショックを与えると、ナマズは腹をひっくり返したまま動かなくなると同時に、(水中に手を入れていたウィリアムソンは、前の)実験の時と同じような感覚を指の関節に受けた」という。さらに、「ウナギから離れたの水中に手を入れる代わりに、(ウィリアムソンは)ウナギを刺激しないようにその尾に触れ、助手は粗雑にウナギの頭に触れた結果、両者とも相当量のショックを受けた」という<ref>{{cite journal |last=Williamson |first=Hugh |author-link=ヒュー・ウィリアムソン |date=1775 |title=Experiments and observations on the ''Gymnotus electricus'', or electric eel |journal=Philosophical Transactions of the Royal Society |volume=65 |issue=65 |pages=94–101 |doi=10.1098/rstl.1775.0011 |s2cid=186211272 |url=https://royalsocietypublishing.org/doi/epdf/10.1098/rstl.1775.0011}}</ref>。

ウィリアムソン、ウォルシュ、ハンターらによるデンキウナギの研究は、後の[[ルイージ・ガルバーニ]]や[[アレッサンドロ・ボルタ]]らの考え方に影響を与えていくこととなる。後にガルバーニは[[電気生理学]]を創始して、カエルの足の痙攣と電気との関係に関する「ガルバーニの発見」をすることに、ボルタは[[電気化学]]を創始して、[[電池]]の発明をすることになるのである<ref name="Edwards 2021">{{cite web |last=Edwards |first=Paul J. |title=A Correction to the Record of Early Electrophysiology Research on the 250th Anniversary of a Historic Expedition to Île de Ré |url=https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-03423498/document |publisher=HAL open-access archive |access-date=6 May 2022 |date=10 November 2021 |id=hal-03423498}}</ref><ref name="Alexander 1969">{{cite journal |last=Alexander |first=Mauro |title=The role of the voltaic pile in the Galvani-Volta controversy concerning animal vs. metallic electricity |journal=Journal of the History of Medicine and Allied Sciences |year=1969 |volume=XXIV |issue=2 |pages=140–150 |doi=10.1093/jhmas/xxiv.2.140 |pmid=4895861}}</ref>。

1800年、探検家の[[アレクサンダー・フォン・フンボルト]]は、先住民のグループが馬を追い立ててデンキウナギ漁をするところを目撃した。馬たちが追い立てられて水たまりの中に進入したところ、馬の蹄の振動で刺激された全長最大1.5メートルほどの魚が水面の上へ飛び上がり、馬に対して電気ショックを与えた結果、2頭の馬が気絶し、そのまま溺死していった。馬にショックを与えたデンキウナギが、電力と体力を回復させるために水たまりの岸までぎこちなく泳いでくると、先住民たちは縄を括りつけた銛を使って容易にこれを捕獲した。先住民らはデンキウナギが与える電気ショックを恐れているために、通常の方法ではこれを捕獲しようとはせず、また電気器官の部位を食べようとはしないことを、フンボルトは記録している<ref name="von Humboldt 1859">{{cite book |last=von Humboldt |first=Alexander |author-link=Alexander von Humboldt |title=Alexander von Humboldt's Reise in die Aequinoctial-Gegenden des neuen Continents |language=de |trans-title=Alexander von Humboldt's Journey in the Equinoctial Regions of the New Continent |volume=1 |publisher=J. G. Cotta'scher Verlag |location=Stuttgart |year=1859 |pages=404–406 |url=http://www.gutenberg.org/files/24746/24746-h/24746-h.html}}</ref>。このフンボルトの記録は長らく科学的証拠をもって裏付けられることは無かったが、2016年に米国の生物学者ケニス・カタニアが再現実験を行い、デンキウナギが水上から飛び跳ねて敵に対して電気ショックを与えようとする習性を持っていることが明らかにされた<ref>PNAS:[https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1604009113 Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt’s account of a battle with horses]</ref><ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1606/09/news117.html 馬も倒せる? デンキウナギは水面から飛び出して敵に攻撃することが判明]</ref>。

1839年、化学者の[[マイケル・ファラデー]]は、スリナムから輸入されたデンキウナギの電気的特性を広く調べる様々な実験を行った。ファラデーは4か月間かけて、銅製のパドルとサドルを用いて標本を調べ、デンキウナギが生成する電流の測定をした。この実験により、ファラデーはデンキウナギに流れる電流の向きと大きさを定量化することに成功し、[[検流計]]で偏位を測定することで、デンキウナギが起こすショックが電気的なものであることを証明した。また彼は、デンキウナギが獲物に巻き付くことで、獲物の魚を「コイルの芯」に相当する位置に置き、与えるショックを増大させていることも観察した。彼はデンキウナギが放電する電荷を「両面を2万3000平方センチメートルのガラスで覆った[[ライデン瓶]]15個に満タンまで溜め込んだ電気の量」に例えている<ref name="Faraday 1839">{{cite journal |last=Faraday |first=Michael |author-link=マイケル・ファラデー |year=1839 |title=Experimental Researches in Electricity, Fifteenth Series |journal=Philosophical Transactions of the Royal Society |volume=129 |pages=1–12 |doi=10.1098/rstl.1839.0002 |doi-access=free}}</ref>。

ドイツの動物学者{{仮リンク|カール・サックス|en|Carl Sachs}}は、デンキウナギ研究のため生理学者[[エミール・デュ・ボア=レーモン]]によって南米に派遣された<ref name="Veitch 1879">{{cite journal |last=Veitch |first=J. |title=Hume |journal=Nature |volume=19 |issue=490 |year=1879 |doi=10.1038/019453b0 |pages=453–456 |bibcode=1879Natur..19..453V |s2cid=244639967 |url=https://zenodo.org/record/2084677}}</ref>。サックスは検流計と電極を用意して魚の放電量を測定し<ref name="Sachs 1877"/>、またゴム手袋を付けることによって魚の電気ショックを受けずにデンキウナギを捕獲することに成功したため、現地の住民を驚かせることとなった。1877年、サックスはこんにちサックス器官と呼ばれているもう一つの電気器官の発見を含む研究成果を発表した<ref name="Xu Cui Zhang 2021">{{cite journal |last1=Xu |first1=Jun |last2=Cui |first2=Xiang |last3=Zhang |first3=Huiyuan |title=The third form electric organ discharge of electric eels |journal=[[Scientific Reports]] |volume=11 |issue=1 |date=18 March 2021 |page=6193 |doi=10.1038/s41598-021-85715-3 |pmid=33737620 |pmc=7973543}}</ref><ref name="Sachs 1877">{{cite journal |last=Sachs |first=Carl |author-link= |title=Beobachtungen und versuche am südamerikanischen zitteraale (Gymnotus electricus) |language=de |trans-title=Observations and research on the South American electric eel (Gymnotus electricus) |journal=Archives of Anatomy and Physiology |pages=66–95 |year=1877 |url=https://digitalesammlungen.uni-weimar.de/viewer/image/lit1058/4/}}</ref>。

<gallery mode="packed" heights="225px">
File:Gymnoten-Humboldt battle with horses.jpg|[[アレクサンダー・フォン・フンボルト]]が1859年に自著『''Journey to the Equinoctial Regions of the New Continent''』で語った、1800年に目撃した先住民による馬の群れを使用したデンキウナギ漁を描いたイラスト<ref name="von Humboldt 1859"/>。原画:{{仮リンク|ジェームズ・ホープ・スチュワート|en|James Hope Stewart}}、版画:{{仮リンク|ウィリアム・ホーム・リザーズ|en|William Home Lizars}}。|alt=馬の群れを用いたデンキウナギ漁を描いた版画
File:Faraday Gymnotus 1838.png|[[マイケル・ファラデー]]が1838年に行った実験の配置図。円形の木製の桶の中にデンキウナギがいる。ファラデーは、図中の地点1と地点8、つまり魚の頭部と尾に当たるところに両手、もしくは銅製のパドルを入れた時に、最も強いショックを受けたという<ref name="Faraday 1839"/>。|alt=ファラデーが行ったデンキウナギに関する実験の配置図
File:Sachs on Electric Eel 1877.png|サックス器官(図中6番)および放電パターンのいくつか(図中4、5、8番)を記したサックスによるスケッチ図。|alt=サックスによるスケッチ図
</gallery>

=== 電気細胞の人工製作 ===
デンキウナギは電気器官の中に大量の電気細胞を有しているため、研究者らは細胞の中に含まれる電位依存性[[ナトリウムチャネル]]について詳細にこれを研究することができた。このイオンチャネル自体は、デンキウナギに限らず多くの生物が有しており、主に[[筋肉]]の収縮など重要なはたらきを担っている一方で、各個体に含まれるチャネルの量は微量であったため、デンキウナギ以外では研究は困難であった<ref name="Markham 2013"/>。2008年、Jian Xuとデビッド・ラバンは、デンキウナギの電気細胞のはたらきを人工的に再現した人工細胞を設計した。この人工細胞には[[ナノ]]スケールで計算・選別された導体が用いられており、電気細胞と同様にイオン輸送体が含まれ、[[電力密度]]が高く、より効率的にエネルギーの変換を行うことができるようになっているという。Xuとラバンらは、この人工電気細胞が、人工網膜などのような医療用[[インプラント]]の開発において、その電源として利用できるのではないかという可能性を示唆している。彼らは、これらの研究は、「電気密度とエネルギー変換効率との双方を向上させるような電気細胞の設計の変更を計画した」ものだとコメントしている<ref name="Xu Lavan 2008"/>。2009年、彼らは鉛蓄電池の約20分の1の電気密度と10パーセントほどのエネルギー変換効率を持つ人工細胞を制作した<ref name="Xu Sigworth Lavan 2010">{{cite journal |last1=Xu |first1=Jian |last2=Sigworth |first2=Fred J. |last3=Lavan |first3=David A. |title=Synthetic Protocells to Mimic and Test Cell Function |journal=Advanced Materials |volume=22 |issue=1 |date=5 January 2010 |doi=10.1002/adma.200901945 |pages=120–127 |pmid=20217710 |pmc=2845179|bibcode=2010AdM....22..120X }}</ref>。

2016年、Hao Sunらの研究チームは、デンキウナギの細胞の仕組みを応用して、高電圧の化学[[コンデンサ]]として機能する次世代型のデバイスを考案した。考案されたデバイスは、織物にも編み込めるような順応性のある繊維で作られており、Sunらはこの種のデバイスが[[電子時計]]や[[発光ダイオード]]のような電気製品の電源として利用できる可能性を示唆している<ref name="Sun Fu Xie Jiang 2016">{{cite journal |last1=Sun |first1=Hao |last2=Fu |first2=Xuemei |last3=Xie |first3=Songlin |last4=Jiang |first4=Yishu |last5=Peng |first5=Huisheng |display-authors=3 |title=Electrochemical Capacitors with High Output Voltages that Mimic Electric Eels |journal=Advanced Materials |volume=28 |issue=10 |date=14 January 2016 |doi=10.1002/adma.201505742 |pages=2070–2076 |pmid=26766594 |bibcode=2016AdM....28.2070S |s2cid=205266646}}</ref>。

== ギャラリー ==
<gallery>
<gallery>
画像:Electrophorus_001.jpg|成魚(140cm)
画像:Electrophorus_001.jpg|成魚(140cm)
71行目: 196行目:


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
=== 出典 ===
{{Reflist}}
{{Reflist}}


== 外部リンク ==
== 参考文献 ==
* {{cite book |last=Moller |first=P. |year=1995 |title=Electric Fishes: History and Behavior |publisher=Springer |isbn=978-0-412-37380-0}}
* {{Kotobank}}


== 外部リンク ==
{{Commonscat|Electrophorus electricus}}
* {{Commons category inline|Electrophorus|デンキウナギ属}}
{{Wiktionary|en:electric eel}}
* {{Wikispecies-inline|Electrophorus|デンキウナギ属}}
{{Taxonbar|from=Q201235}}
{{Taxonbar|from=Q201235}}



2023年11月15日 (水) 07:38時点における版

デンキウナギ
デンキウナギ Kakarotto
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: デンキウナギ目 Gymnotiformes
亜目 : デンキウナギ亜目 Gymnotoidei
: ギュムノートゥス科 Gymnotidae
もしくは* デンキウナギ科 Electrophoridae
: デンキウナギ属
Electrophorus Gill1864
: デンキウナギ E. electricus
学名
Electrophorus electricus
(Linnaeus1766)
英名
Electric eel

デンキウナギ(電気鰻、英:Electric eels)は、デンキウナギ目ギュムノートゥス科デンキウナギ属に分類される魚類の総称、もしくはそのうちの1種Electrophorus electricusを指す。南アメリカ大陸北部アマゾン川オリノコ川両水系に分布する大型魚で、熱帯淡水魚に分類される。最大860ボルトにもなる強力な電気を発生させて獲物を気絶させて狩りを行う電気魚の1種として知られている。その電気魚としての形質は1775年に初めて研究対象となり、その後の1800年の電池の発明に繋がることとなる。本項では種としてのデンキウナギ(Electrophorus electricus)だけでなく、同種が分類されている属であるデンキウナギ属(学名:Electrophorus)およびそれに分類されている1属3種の魚類全般についても扱う。

和名にも英名にも「ウナギ (eel)」の名が付いているが、ウナギ目Anguilliformes)との直接的な関係は無く、むしろナマズの仲間に近い。2019年にデンキウナギ種が3種に分割されるまで、デンキウナギ属にはElectrophorus electricus(デンキウナギ)のみが単独で属していた。

夜行性で、空気呼吸を行う。視力は乏しいが、代わりに電気定位により補われている。食性は肉食で、他の魚類などを食べる。オスはメスより大型。寿命は長く、捕獲された個体の中には20歳以上のものもあった。

系統と進化

デンキウナギ属
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: デンキウナギ目 Gymnotiformes
亜目 : デンキウナギ亜目 Gymnotoidei
: ギュムノートゥス科 Gymnotidae
: デンキウナギ属
Electrophorus Gill1864
学名
Electrophorus
Gill1864
和名
デンキウナギ属

分類史

1776年にカール・リンネは、当時南アメリカで行われていたヨーロッパ人による現地調査や、ヨーロッパに移送されてきた標本資料に基づいて、こんにちElectrophorus electricus(デンキウナギ)と定義されている種について言及を行った[1][2][3]。このとき彼は、同種をGymnotus electricusと名付け、Gymnotus carapo(こんにちのバンデッド・ナイフフィッシュ英語版)と同じ属に分類し[4][5][6]、また、同種がスリナムの淡水で生息していたこと、痛みを伴うショックを引き起こすこと、そして頭部に小さな穴があることも記録した[4]

1864年、セオドア・ジル英語版はデンキウナギを従来の属から独立させ、新設した属であるElectrophorusに分類し直した[5]。新たな属名は、ギリシア語のήλεκτρον(ḗlektron、「(静電気を生み出す)琥珀」の意)とφέρω(phérō、「運ぶ」の意)に由来するもので、合わせて「電気を運ぶ者」という意である[7][8]。さらにジルは1872年、デンキウナギは独立したに属するだけの特性を持っていると結論付けた[9]。その後1998年、ジェームズ・S・アルバートとカンポス・ダ・パズは、デンキウナギ属をギュムノートゥス属が属するギュムノートゥス科に分類するべきとした[10]。2017年にはC・J・フェラーリの研究チームも同様の結論を出した[6][11]

2019年、C・デビッド・デ・サンタナのチームは、従来1つの種であったElectrophorus electricusを、DNA分岐や生態、生息地、電気的形質などの差異に基づいて、Electrophorus electricus(従来より狭義の種として)、Electrophorus varii(新種)、そしてElectrophorus voltai(新種)の3種に分割した[12]

系統樹

デンキウナギ属は、デンキウナギ目の中で強電気魚分岐群を構成している[12]。名称に「ウナギ」と付いているが、ウナギ目Anguilliformes)と近縁であるわけではない[13]。現在のデンキウナギ属の系統は、中生代白亜紀のある時点で、姉妹属であるギュムノートゥス属から分岐したと推定されている[14]。ほとんどのデンキウナギ目の魚は、弱い電気を持ち、活発に電気定位を行うが、獲物を気絶させるほどの電力は有していない[15]

以下の図は、ミトコンドリアDNAを分析することによって得られた、デンキウナギ目に分類される魚とその関連種の系統樹である[16][17]。黄色の稲妻マーク symbol for electrolocating fish が与えられている種は弱い電気で電気定位を行う種、赤色の稲妻マーク symbol for strongly electric fish が与えられている種は獲物に強い電気ショックを与えて狩りを行う種である[14][18][19]

Otophysi

Siluriformesナマズ目)(数種が symbol for electrolocating fish symbol for strongly electric fish) image of catfish

Gymnotiformes

Apteronotidae(アプテロノートゥス科)symbol for electrolocating fish image of ghost knifefish

Hypopomidaesymbol for electrolocating fish image of bluntnose knifefish

Rhamphichthyidae symbol for electrolocating fish image of sand knifefish

Gymnotidae

Gymnotussymbol for electrolocating fish image of banded knifefish

Electrophorus(デンキウナギ属)symbol for electrolocating fish symbol for strongly electric fish image of electric eel

Sternopygidaesymbol for electrolocating fish image of glass knifefish

Characiformes

テトラピラニアの仲間など)image of non-electric fish

下位分類

デンキウナギ属には以下の3つの種が属しているが、外見に大きな差異は無い[12]

  • Electrophorus electricusデンキウナギ) - タイプ種。U字型の頭部に平らな頭蓋骨擬鎖骨を持つ。最大電圧は480ボルトほどで、3種の中では最も弱い[12]
  • Electrophorus voltai - デンキウナギ属内に留まらず、自然界の中でも最も強力な生体発電能力を有し、生じさせられる電圧は860ボルトにも上る。E. electricusと同様に平らな頭蓋骨と擬鎖骨を持つが、頭部は卵形に近い形状をしている[12]
  • Electrophorus varii - 他の2種と異なり、頭蓋骨は厚く、頭部の形状はさまざまである。最大電圧は572ボルトほど[12]
デンキウナギ属3種の頭部X線写真
デンキウナギ属に分類される3種、それぞれ左からE. electricusE. voltaiE. varii[12]の頭部の形状の差異。
上からE. electricusE. voltaiE. variiの身体図[12]

E. varii中新世後期の710万年前ごろに、E. electricusE. voltai鮮新世中期の360万年前ごろにそれぞれ分岐したと推定されている[12]

分布と生態

3種は南アメリカ北部にほとんど互いに重複せずに分布している。E. electricusは全体的に分布地はギアナ楯状地オリノコ川水系周辺に収束している一方、E. voltaiはその南側のブラジル楯状地の北部にわたって広く分布している。この2種が高原の水域に生息している一方、E. variiは両者の分布地の間の、比較的低地である草地や渓谷、湖沼に渡る広範囲に分布している[12]E. variiの生息地は変化に富み、雨季乾季とでは水位が大きく変化する[20]。3種はすべて濁りの多い河川の川底や沼地に生息し、深部の日陰の環境を好む。空気呼吸を行うために水面まで泳げるように、酸素濃度の低い環境でも耐えられるようになっている[21][22]

南アメリカ大陸北部におけるデンキウナギ属1属3種の分布図
南アメリカ大陸北部におけるデンキウナギ属1属3種の分布図。赤がE. electricus、青がE. voltai、黄がE. varii[12]

デンキウナギ属のほとんどは夜行性で、、昼間は物陰や泥底に潜み、夜になると動きだして主に小魚や小型哺乳類を捕食する[23][24]E. voltaiは主にMegalechis thoracataなどの魚類を餌とする[25]。標本の胃からはアシナシイモリTyphlonectes compressicaudaが検出されており、これは同種がアシナシイモリらの表皮の毒に耐性があることを示唆するものとなっている[26]。また、E. voltaiは群れで狩りをし、テトラの群れを複数匹で襲う様子が観察されている[27]E. variiも魚食で、主にカリクティス科Callichthyidae)やカワスズメ科Cichlidae)の魚類を捕食する[28]

形態

基本的な構造

デンキウナギの骨格。長い背骨を持っていることが分かる。下にあるのは鰭条。

デンキウナギ属は長く恰幅のあるウナギに似た体をしており、前方部はやや円筒形の形状をしているが、尾ひれに向かうにつれて胴体は平らになっていく。E. electricusは大きい個体で全長2メートル、体重は20キログラムにまで達し、デンキウナギ目の魚では最大種である。口は鼻の前にあり、上を向いている。皮膚は滑らかで厚く、全体的に黒色から褐色、下腹部は黄色から赤色の色をしていて、は無い[21][12][29][30]。胸びれ先端には小さな骨が放射状に8つ付いている[29]。他のギュムノートゥス科の魚は最大でも51個なのに対し、デンキウナギ属は100個以上もの尾前椎骨を持っており、椎骨全体ではその個数は300個を超え得るとされている[10]。尾びれと尻ひれとの間に明確な境界は無い。尻びれは下側の体長の大部分にわたって付いており、鰭条の数は400以上を数える[12][31]。デンキウナギ属は、その長い尻びれを波打つように動かして、水中を進む[32]

デンキウナギ属は、口腔を使用して空気呼吸を行うことによって、体内に大部分の酸素を取り入れている[30][33]。これによって、河川や湖沼、プールなど、酸素濃度が大きく異なる場所でも生息することができるようになっている[33]:719–720。また、ギュムノートゥス科の中では独特で、口腔内はしわ状の粘膜で覆われており、そこに血管が通っているため、口腔内で直接気体交換を行うことも可能になっている[10][34]。呼吸は約2分ごとに行われ、口から空気を取り込むと当時に、ぶたから空気を排出している[34]。空気呼吸を行う魚は他にも存在するが、空気を取り込むときに鰓ぶたを使わないのは、鰓が小さいデンキウナギ属独特の性質である。合成された二酸化炭素の大部分は皮膚から排出される[30]。皮膚が乾燥していなければ、デンキウナギ属は陸上でも数時間は生存し続けられる[35]

デンキウナギ属は目が小さく、視力も弱い[30][36]。聴力は、ウェーバー器官によって司られている[37]。全長の前半部20パーセントに動物としての重要な器官が集中しており、電気器官とは隔離された構造になっている[38]。肛門も頭部側の鰓の下に位置し、その後ろは全て電気器官である[39]

電気発生の仕組み

デンキウナギの頭部の写真
側線管に繋がる穴は、頭部と胴体の上部と側面とに列をなして並んでいる。側線管は、機械感覚性受容体と電気受容体とを兼ねている[40]

デンキウナギ属の魚類は、頭部の側線器官から発達した電気受容体を使用して、獲物の位置を電気定位する。側線自体は機械感覚性の器官で、近くの動物の動きを水の動きを介して察知することができる。側線管は皮膚の下にあり、表皮に斑点状に分布している小さな穴の連なりに沿って存在している[40]。この高度な感受性を持つ器官を用いて、デンキウナギは獲物を狩っている[7]

デンキウナギの組織解剖図
右上拡大図 - 電気器官を司る電気細胞の組織。
左下拡大図 - 個々の電気細胞の細胞膜、およびイオンチャンネルとイオンポンプ。神経細胞の軸索終末から神経伝達物質が放出され、電気活動が引き起こされる。
右下拡大図 - イオンチャンネル内の鎖状タンパク質
デンキウナギの3つの電気器官、すなわち主器官(黄色)、ハンター器官(褐色)、サックス器官(水色)それぞれの位置。

デンキウナギの電気器官は主器官、ハンター器官、そしてサックス器官とからなる。これらの器官の働きにより、デンキウナギは高電圧と低電圧との二種類の強さの電気を生み出すことができるようになっている[12]。電気器官は筋肉細胞から変化した電気細胞によって組織されている[41][42]。電気細胞は筋肉細胞と同様に、アクチンタンパク質とデスミンタンパク質の2つのタンパク質から成るが、本来の筋原線維は緻密な構造をとるのに対し、電気細胞は比較的緩い組織構造から成っている。筋肉細胞の場合では通常2または3であるのに対し、電気細胞は5つの異なる形態のデスミンを持っているが[43]、電気細胞におけるデスミンの機能は2017年に詳細が明らかにされるまで不明とされていた[44]

デンキウナギの発電を担うイオンチャンネルの一つであるカリウムチャンネルタンパク質には、KCNA1KCNH6KCNJ12などがあるが、デンキウナギの電気器官を構成する3つの器官の間で、その分布量は異なる。これらのタンパク質のうちの大部分は、主器官に最も豊富に存在する一方、KCNH6に関してはサックス器官に最も豊富に存在する[44]。また、カルモジュリンは電気器官の中でカルシウムイオンの量の制御を担うタンパク質で、主器官やハンター器官に豊富に含まれる。カルモジュリンとカルシウムは発電を担う電位依存性ナトリウムチャネルの調節を助けるはたらきをする[44][45]。さらに、これらの電気器官には、細胞膜内外に電位差を生じさせる役割を担うイオンポンプであるナトリウムポンプも豊富に存在する[44][46]

デンキウナギの発電力は電気魚中最強で、主器官からは最大600ボルトが放電される[47]シビレエイ目のような海洋性電気魚ははるかに低い電圧でも強い電流を与えられるのに対し、デンキウナギが生息するような淡水は、電気抵抗が大きく、他の動物に強いショックを与えるためには相当の電圧が必要なのである。デンキウナギは約500ヘルツほどの速さで非常に急速に強力な放電を行うことができる一方、各ショックは1回あたり約2ミリ秒しか続かない[48]。デンキウナギは主器官に1つ当たり約0.15ボルトの電圧を発生させる電気細胞を6000個ほど直列に配列させ、更に胴体にそれを横に35個ほど並列させることによって、高い電圧の電気を生じさせている[48]。このような高電圧、高周波のパルスを生じさせる能力は、動きの素早い動物を捉えるのにも役立っている[49]。各パルスの総電流は1アンペアに達することもある[50]

なぜ淡水性電気魚が海洋性電気魚より高い電圧を生じさせる必要があるのかの解説図
海洋性電気魚は電気細胞を並列に並べて弱い電圧を生じさせても強い電流を与えられるのに対し、淡水性電気魚は電気細胞を直列に並べて強い電圧を生じさせなければ強い電流を与えることができない[48]

デンキウナギは3種類の発電器官が発達しているのにも関わらず、放電タイプには電気定位と獲物へのショックとの2種類しかない理由は不明とされていた。2021年、Jun Xuらの研究チームは、ハンター器官が38.5から56.5ボルトほどの中程度の電圧で第3のタイプの放電を行うとした。Xuらによれば、この放電は、サックス器官が弱い電流で電気定位を行った後、主器官が強い放電で獲物に電気ショックを与える前の2ミリ秒未満の間に、1度だけ行われることが観察されたという。Xuらは、この中程度の放電は獲物に電気ショックを与えるのには使われるのではなく、むしろデンキウナギの体内における電荷バランスを調整する役割を担っているのではないかと考察した上で、さらなる研究が必要だとした[51]

デンキウナギが実際に狩りをする様子。獲物に体当たりをし、電気ショックを与えて気絶させたところを捕食している。

デンキウナギが獲物を認識すると、脳は電気器官に電気信号を送る[48]。神経細胞は電気細胞に対し神経伝達物質アセチルコリンを放出し、放電を促す[44]。すると電気細胞の細胞膜にあるイオンチャンネルが開き、ナトリウムイオンが細胞内に侵入し、細胞内外の極性が一時的に逆転する[44]。その後また別のタイプのイオンチャンネルから今度はカリウムイオンが細胞外に流出することで、放電が完了する[44]。細胞の内と外に電位差を急速に生じさせることによって電流が生まれ、さらに電気細胞が直列に重ね合わせられることによって、適確な電圧の電気を生み出される[41]

電気器官のうち、サックス器官は電気定位に用いられ、電圧10ボルト、周波数25ヘルツで放電を行う。それに対し、主器官は、ハンター器官の助けを受けながら、狩りや捕食回避などのために相手に強い電気ショックを与える役割を担っている[7][47]

デンキウナギは捕食の際に、胴体を丸めて獲物と2点で接触することによって、より集中的に電気ショックを与え、獲物を気絶させることができるようにしている[47]。電気ショックを獲物に与えることによって、獲物の神経系と筋肉のはたらきを阻害し、獲物の逃走を防いだり、獲物がその場から動かないようにしたりできるとされている[52]が、これには異論もある[51]。さらに、捕食回避の点においても電気ショックは有用で、デンキウナギが脅威を感じた動物に対して、水上に飛び跳ねて感電させる様子が観察されたこともある[53]。この電気ショックは、馬のような大きな動物ですら感電死させるほどの強さである一方、人間が感電死することは無いとされている[54][55]

生活史

デンキウナギの繁殖期は9月から12月頃までの乾季である。この間、水位が下がった河川、湖沼などでオスとメスのつがいを観察することができる。オスは自分の唾液を用いて巣を形成し、メスは受精のために1200個ほどの卵を産む。メスが産んだ卵は7日後に孵化する。メスは繁殖期を通じて定期的に産卵をする[56]。孵化した稚魚は体長が15ミリメートルほどに達する頃には卵内の栄養を消費し終え、9センチメートルほどに達すると他の餌を摂り始める[57]

デンキウナギ属の魚は性的二形を持つ。オスはメスより大きく、体長1.2メートルほどで成魚になるのに対し、メスは70センチメートルで成魚になる。親魚は4か月ほど稚魚の世話をする。一方、急峻な河川に生息するE. electricusE. voltaiの稚魚は、そこまで親魚に守られることはないとされる[20]。また、オスは稚魚と巣の両方を守る役割を担っている[58]。デンキウナギの寿命は長く、20年以上生きた個体が捕獲されたこともある[29]

デンキウナギは生育するにつれ、背骨の椎骨が徐々に増えていく[29]。デンキウナギの電気器官のうち、主器官が最初に発達する器官で、次にサックス器官、そして最後にハンター器官が発達する。体長が23センチメートルに達するまでには、全ての電気器官の分化が開始される。体長が7センチメートルほどの小さな段階でも、デンキウナギは放電を行うことができる[57]

人間との関わり

研究史

フランス領ギアナのフランス軍外科医であったベルトラン・バジョンと、リバープレート盆地のイエズス会員であったラモン・M・テルマイヤーポーランド語版は、1760年代に最初にデンキウナギの放電に関する実験を行った[1]。また、1775年には、ジョン・ウォルシュによってシビレエイの研究が行われていた[2]。そして両方の魚について解剖・調査を行った外科医のジョン・ハンターは、王立協会に対して、デンキウナギを解剖・観察した結果として「Gymnotus Electricusは……見た目は非常にウナギに似ている。……しかし実のところはウナギ特有の性質は一切持ち合わせていない[3]。」と報告している[2][3]。さらに、デンキウナギは「大小2つの[電気]器官[主器官とハンター器官]を、両サイドに1つずつ」有しており、「恐らく体の[体積の]3分の1以上」をこれらの器官がしめているだろうとした[3]。また、ハンターは、電気細胞の集積である電気器官の構造を「非常に単純かつ規則的で、隔膜とそれらが交差してできる内側の部分とで構成されている」と説明した[3]。加えてハンターは、電気細胞1個当たりの厚さが、主器官においては約17分の1インチ(1.5ミリメートル)、ハンター器官においては約56分の1インチ(0.45ミリメートル)であることも測定した[3]

同じく1775年、ハンターの共同研究者で、米国の医師・政治家であったヒュー・ウィリアムソン[59]も「デンキウナギ、Gymnotus Electricusの実験と観察」と題した論文を王立協会にて発表した。論文の記述によれば、ウィリアムソンが行った実験のうちの一つは「(ウィリアムソンが以前の実験で)デンキウナギに触れた時と同じ程度の放電で、デンキウナギは魚を感電死させるのかどうかを調べるために、ウナギから少し離れた水の中に手を入れ」、「別のナマズを水中に投げ込む」という内容のもので、その結果、「ウナギがナマズに近づいていき、……電気ショックを与えると、ナマズは腹をひっくり返したまま動かなくなると同時に、(水中に手を入れていたウィリアムソンは、前の)実験の時と同じような感覚を指の関節に受けた」という。さらに、「ウナギから離れたの水中に手を入れる代わりに、(ウィリアムソンは)ウナギを刺激しないようにその尾に触れ、助手は粗雑にウナギの頭に触れた結果、両者とも相当量のショックを受けた」という[60]

ウィリアムソン、ウォルシュ、ハンターらによるデンキウナギの研究は、後のルイージ・ガルバーニアレッサンドロ・ボルタらの考え方に影響を与えていくこととなる。後にガルバーニは電気生理学を創始して、カエルの足の痙攣と電気との関係に関する「ガルバーニの発見」をすることに、ボルタは電気化学を創始して、電池の発明をすることになるのである[2][61]

1800年、探検家のアレクサンダー・フォン・フンボルトは、先住民のグループが馬を追い立ててデンキウナギ漁をするところを目撃した。馬たちが追い立てられて水たまりの中に進入したところ、馬の蹄の振動で刺激された全長最大1.5メートルほどの魚が水面の上へ飛び上がり、馬に対して電気ショックを与えた結果、2頭の馬が気絶し、そのまま溺死していった。馬にショックを与えたデンキウナギが、電力と体力を回復させるために水たまりの岸までぎこちなく泳いでくると、先住民たちは縄を括りつけた銛を使って容易にこれを捕獲した。先住民らはデンキウナギが与える電気ショックを恐れているために、通常の方法ではこれを捕獲しようとはせず、また電気器官の部位を食べようとはしないことを、フンボルトは記録している[62]。このフンボルトの記録は長らく科学的証拠をもって裏付けられることは無かったが、2016年に米国の生物学者ケニス・カタニアが再現実験を行い、デンキウナギが水上から飛び跳ねて敵に対して電気ショックを与えようとする習性を持っていることが明らかにされた[63][64]

1839年、化学者のマイケル・ファラデーは、スリナムから輸入されたデンキウナギの電気的特性を広く調べる様々な実験を行った。ファラデーは4か月間かけて、銅製のパドルとサドルを用いて標本を調べ、デンキウナギが生成する電流の測定をした。この実験により、ファラデーはデンキウナギに流れる電流の向きと大きさを定量化することに成功し、検流計で偏位を測定することで、デンキウナギが起こすショックが電気的なものであることを証明した。また彼は、デンキウナギが獲物に巻き付くことで、獲物の魚を「コイルの芯」に相当する位置に置き、与えるショックを増大させていることも観察した。彼はデンキウナギが放電する電荷を「両面を2万3000平方センチメートルのガラスで覆ったライデン瓶15個に満タンまで溜め込んだ電気の量」に例えている[65]

ドイツの動物学者カール・サックス英語版は、デンキウナギ研究のため生理学者エミール・デュ・ボア=レーモンによって南米に派遣された[66]。サックスは検流計と電極を用意して魚の放電量を測定し[67]、またゴム手袋を付けることによって魚の電気ショックを受けずにデンキウナギを捕獲することに成功したため、現地の住民を驚かせることとなった。1877年、サックスはこんにちサックス器官と呼ばれているもう一つの電気器官の発見を含む研究成果を発表した[51][67]

電気細胞の人工製作

デンキウナギは電気器官の中に大量の電気細胞を有しているため、研究者らは細胞の中に含まれる電位依存性ナトリウムチャネルについて詳細にこれを研究することができた。このイオンチャネル自体は、デンキウナギに限らず多くの生物が有しており、主に筋肉の収縮など重要なはたらきを担っている一方で、各個体に含まれるチャネルの量は微量であったため、デンキウナギ以外では研究は困難であった[42]。2008年、Jian Xuとデビッド・ラバンは、デンキウナギの電気細胞のはたらきを人工的に再現した人工細胞を設計した。この人工細胞にはナノスケールで計算・選別された導体が用いられており、電気細胞と同様にイオン輸送体が含まれ、電力密度が高く、より効率的にエネルギーの変換を行うことができるようになっているという。Xuとラバンらは、この人工電気細胞が、人工網膜などのような医療用インプラントの開発において、その電源として利用できるのではないかという可能性を示唆している。彼らは、これらの研究は、「電気密度とエネルギー変換効率との双方を向上させるような電気細胞の設計の変更を計画した」ものだとコメントしている[41]。2009年、彼らは鉛蓄電池の約20分の1の電気密度と10パーセントほどのエネルギー変換効率を持つ人工細胞を制作した[68]

2016年、Hao Sunらの研究チームは、デンキウナギの細胞の仕組みを応用して、高電圧の化学コンデンサとして機能する次世代型のデバイスを考案した。考案されたデバイスは、織物にも編み込めるような順応性のある繊維で作られており、Sunらはこの種のデバイスが電子時計発光ダイオードのような電気製品の電源として利用できる可能性を示唆している[69]

ギャラリー

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b de Asúa, Miguel (9 April 2008). “The Experiments of Ramón M. Termeyer SJ on the Electric Eel in the River Plate Region (c. 1760) and other Early Accounts of Electrophorus electricus”. Journal of the History of the Neurosciences 17 (2): 160–174. doi:10.1080/09647040601070325. PMID 18421634. 
  2. ^ a b c d Edwards, Paul J. (2021年11月10日). “A Correction to the Record of Early Electrophysiology Research on the 250th Anniversary of a Historic Expedition to Île de Ré”. HAL open-access archive. 2022年5月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g Hunter, John (1775). “An account of the Gymnotus electricus. Philosophical Transactions of the Royal Society of London (65): 395–407. https://archive.org/details/philtrans01229060. 
  4. ^ a b Linnaeus, Carl (1766) (ラテン語). Systema Naturae (12th ed.). Stockholm: Laurentius Salvius. pp. 427–428. OCLC 65020711 
  5. ^ a b Jordan, D. S. (1963). The Genera of Fishes and a Classification of Fishes. Stanford University Press. p. 330. https://archive.org/details/generaoffishesan0000jord 
  6. ^ a b van der Sleen, P.; Albert, J. S., eds (2017). Field Guide to the Fishes of the Amazon, Orinoco, and Guianas. Princeton University Press. pp. 330–334. ISBN 978-0-691-17074-9 
  7. ^ a b c Electrophorus”. Fishbase (2022年). 2022年10月8日閲覧。
  8. ^ Harris, William Snow (1867). A Treatise on Frictional Electricity in Theory and Practice. London: Virtue & Co.. p. 86. https://archive.org/details/atreatiseonfric00tomlgoog 
  9. ^ Van der Laan, Richard; Eschmeyer, William N.; Fricke, Ronald (11 November 2014). Zootaxa: Family-group names of Recent fishes. Auckland, New Zealand: Magnolia Press. p. 57. ISBN 978-1-77557-573-3. https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/download/zootaxa.3882.1.1/54259 
  10. ^ a b c Albert, James S.; Crampton, William G. R. (2005). “Diversity and Phylogeny of Neotropical Electric Fishes (Gymnotiformes)”. Electroreception. Springer. pp. 360–409. doi:10.1007/0-387-28275-0_13. ISBN 978-0-387-23192-1. https://www.researchgate.net/publication/226533338 
  11. ^ Ferraris, C. J. Jr; de Santana, C. D.; Vari, R. P. (2017). “Checklist of Gymnotiformes (Osteichthyes: Ostariophysi) and catalogue of primary types”. Neotropical Ichthyology 15 (1). doi:10.1590/1982-0224-20160067. 
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n de Santana, C. David; Crampton, William G. R. et al. (10 September 2019). “Unexpected species diversity in electric eels with a description of the strongest living bioelectricity generator”. Nature Communications 10 (1): 4000. Bibcode2019NatCo..10.4000D. doi:10.1038/s41467-019-11690-z. PMC 6736962. PMID 31506444. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6736962/. 
  13. ^ Matthews, Robert. “How do electric eels generate voltage?”. BBC. 2022年9月17日閲覧。
  14. ^ a b Lavoué, Sébastien; Miya, Masaki; Arnegard, Matthew E.; Sullivan, John P.; Hopkins, Carl D.; Nishida, Mutsumi (14 May 2012). Murphy, William J.. ed. “Comparable Ages for the Independent Origins of Electrogenesis in African and South American Weakly Electric Fishes”. PLOS ONE 7 (5): e36287. Bibcode2012PLoSO...736287L. doi:10.1371/journal.pone.0036287. PMC 3351409. PMID 22606250. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3351409/. 
  15. ^ Bullock, Bodznick & Northcutt 1983, p. 37.
  16. ^ Elbassiouny, Ahmed A.; Schott, Ryan K.; Waddell, Joseph C. et al. (1 January 2016). “Mitochondrial genomes of the South American electric knifefishes (Order Gymnotiformes)”. Mitochondrial DNA Part B 1 (1): 401–403. doi:10.1080/23802359.2016.1174090. PMC 7799549. PMID 33473497. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7799549/. 
  17. ^ Alda, Fernando; Tagliacollo, Victor A.; Bernt, Maxwell J.; Waltz, Brandon T.; Ludt, William B.; Faircloth, Brant C.; Alfaro, Michael E.; Albert, James S. et al. (6 December 2018). “Resolving Deep Nodes in an Ancient Radiation of Neotropical Fishes in the Presence of Conflicting Signals from Incomplete Lineage Sorting”. Systematic Biology 68 (4): 573–593. doi:10.1093/sysbio/syy085. PMID 30521024. 
  18. ^ Bullock, Theodore H.; Bodznick, D. A.; Northcutt, R. G. (1983). “The phylogenetic distribution of electroreception: Evidence for convergent evolution of a primitive vertebrate sense modality”. Brain Research Reviews 6 (1): 25–46. doi:10.1016/0165-0173(83)90003-6. hdl:2027.42/25137. PMID 6616267. https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/2027.42/25137/1/0000573.pdf. 
  19. ^ Lavoué, Sébastien; Miya, Masaki; Arnegard, Matthew E.; Sullivan, John P.; Hopkins, Carl D.; Nishida, Mutsumi (14 May 2012). “Comparable Ages for the Independent Origins of Electrogenesis in African and South American Weakly Electric Fishes”. PLOS ONE 7 (5): e36287. Bibcode2012PLoSO...736287L. doi:10.1371/journal.pone.0036287. PMC 3351409. PMID 22606250. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3351409/. 
  20. ^ a b Bastos, Douglas Aviz (November 2020) (ポルトガル語). História Natural de Poraquês (Electrophorus spp.), Gymnotiformes: Gymnotidae. マナウス: Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia (PhD Thesis). pp. 10, 60, 63, and throughout. https://repositorio.inpa.gov.br/handle/1/38283  Abstracts in English.
  21. ^ a b Electrophorus electricus - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2009.FishBase.World Wide Web electronic publication.www.fishbase.org, version (08/2009)
  22. ^ Electrophorus electricus: Electric eel”. Animal Diversity Web. 2022年7月15日閲覧。
  23. ^ 福井篤監修『講談社の動く図鑑move 魚』、講談社2012年、176頁
  24. ^ Moller 1995, p. 346.
  25. ^ Oliveira, Marcos S. B.; Mendes‐Júnior, Raimundo N. G.; Tavares‐Dias, Marcos (10 September 2019). “Diet composition of the electric eel Electrophorus voltai (Pisces: Gymnotidae) in the Brazilian Amazon region”. Journal of Fish Biology 97 (4): 1220–1223. doi:10.1111/jfb.14413. PMID 32463115. 
  26. ^ Oliveira, Marcos Sidney Brito; Esteves-Silva, Pedro Hugo; Santos, Alfredo P. Jr. et al. (2019). “Predation on Typhlonectes compressicauda Duméril & Bibron, 1841 (Gymnophiona: Typhlonectidae) by Electrophorus electricus Linnaeus, 1766 (Pisces: Gymnotidae) and a new distributional record in the Amazon basin”. Herpetology Notes 12: 1141–1143. https://www.biotaxa.org/hn/article/download/50611/58397. 
  27. ^ Bastos, Douglas A.; Zuanon, Jansen; Rapp Py‐Daniel, Lúcia; Santana, Carlos David (14 January 2021). “Social predation in electric eels”. Ecology and Evolution 11 (3): 1088–1092. doi:10.1002/ece3.7121. PMC 7863634. PMID 33598115. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7863634/. 
  28. ^ Mendes-Júnior, Raimundo Nonato Gomes; Sá-Oliveira, Júlio César; Vasconcelos, Huann Carllo Gentil et al. (2020). “Feeding ecology of electric eel Electrophorus varii (Gymnotiformes: Gymnotidae) in the Curiaú River Basin, Eastern Amazon”. Neotropical Ichthyology 18 (3). doi:10.1590/1982-0224-2019-0132. 
  29. ^ a b c d Albert, J. S. (2001). “Species diversity and phylogenetic systematics of American knifefishes (Gymnotiformes, Teleostei)”. Miscellaneous Publications (University of Michigan Museum of Zoology) (190): 66. hdl:2027.42/56433. 
  30. ^ a b c d Berra, Tim M. (2007). Freshwater Fish Distribution. University of Chicago Press. pp. 246–248. ISBN 978-0-226-04442-2 
  31. ^ de Santana, C. D.; Vari, R. P.; Wosiacki, W. B. (2013). “The untold story of the caudal skeleton in the electric eel (Ostariophysi: Gymnotiformes: Electrophorus)”. PLOS ONE 8 (7): e68719. Bibcode2013PLoSO...868719D. doi:10.1371/journal.pone.0068719. PMC 3722192. PMID 23894337. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3722192/. 
  32. ^ Sfakiotakis, M.; Lane, D. M.; Davies, B. C. (1999). “Review of fish swimming modes for aquatic locomotion”. Journal of Oceanic Engineering 24 (2): 237–252. Bibcode1999IJOE...24..237S. doi:10.1109/48.757275. 
  33. ^ a b Kramer, D. L.; Lindsey, C. C.; Moodie, G. E. E.; Stevens, E. D. (1978). “The fishes and the aquatic environment of the central Amazon basin, with particular reference to respiratory patterns”. Canadian Journal of Zoology 56 (4): 717–729. doi:10.1139/z78-101. https://www.researchgate.net/publication/237980361. 
  34. ^ a b Johansen, Kjell; Lenfant, Claude; Schmidt-Nielsen, Knut; Petersen, Jorge A. (1968). “Gas exchange and control of breathing in the electric eel, Electrophorus electricus”. Zeitschrift für Vergleichende Physiologie 61 (2): 137–163. doi:10.1007/bf00341112. 
  35. ^ Moller 1995, p. 462.
  36. ^ Plotkin, Mark J. (2020). The Amazon What Everyone Needs to Know. Oxford University Press. p. 91. ISBN 978-0-19-066829-7 
  37. ^ Moller 1995, pp. 361–362.
  38. ^ Kisia, S. M. (2016). Vertebrates: Structures and Functions. CRC Press. p. 151. ISBN 978-1-4398-4052-8 
  39. ^ 檜山義夫監修 『野外観察図鑑4 魚』 旺文社 1985年初版・1998年改訂版 ISBN 4010724242
  40. ^ a b Verçoza, Gabriel; Shibuya, Akemi; Bastos, Douglas A.; Zuanon, Jansen; Rapp Py-Daniel, Lúcia H. (2021). “Organization of the cephalic lateral-line canals in Electrophorus varii de Santana, Wosiacki, Crampton, Sabaj, Dillman, Mendes-Júnior & Castro e Castro, 2019 (Gymnotiformes: Gymnotidae)”. Neotropical Ichthyology 19 (2). doi:10.1590/1982-0224-2020-0075. 
  41. ^ a b c Xu, J.; Lavan, D. A. (November 2008). “Designing artificial cells to harness the biological ion concentration gradient”. Nature Nanotechnology 3 (11): 666–670. Bibcode2008NatNa...3..666X. doi:10.1038/nnano.2008.274. PMC 2767210. PMID 18989332. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2767210/. 
  42. ^ a b Markham, Michael R. (2013). “Electrocyte physiology: 50 years later”. Journal of Experimental Biology 216 (13): 2451–2458. doi:10.1242/jeb.082628. PMID 23761470. 
  43. ^ Mermelstein, Claudia Dos Santos; Costa, Manoel Luis; Moura Neto, Vivaldo (2000). “The cytoskeleton of the electric tissue of Electrophorus electricus, L.”. Anais da Academia Brasileira de Ciências 72 (3): 341–351. doi:10.1590/s0001-37652000000300008. PMID 11028099. 
  44. ^ a b c d e f g Traeger, Lindsay L.; Sabat, Grzegorz; Barrett-Wilt, Gregory A.; Wells, Gregg B.; Sussman, Michael R. (7 July 2017). “A tail of two voltages: Proteomic comparison of the three electric organs of the electric eel”. Science Advances 3 (7): e1700523. Bibcode2017SciA....3E0523T. doi:10.1126/sciadv.1700523. PMC 5498108. PMID 28695212. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5498108/. 
  45. ^ Gotter, Anthony L.; Kaetzel, Marcia A.; Dedman, John R. (2012). “Electrocytes of Electric Fish”. In Nicholas Sperelakis. Cell Physiology Source Book. Elsevier. pp. 855–869. doi:10.1016/b978-0-12-387738-3.00048-2. ISBN 978-0-12-387738-3 
  46. ^ Ching, Biyun; Woo, Jia M.; Hiong, Kum C. et al. (20 March 2015). “Na+/K+-ATPase α-subunit (nkaα) isoforms and their mRNA expression levels, overall Nkaα protein abundance, and kinetic properties of Nka in the skeletal muscle and three electric organs of the electric eel, Electrophorus electricus”. PLOS One 10 (3): e0118352. Bibcode2015PLoSO..1018352C. doi:10.1371/journal.pone.0118352. PMC 4368207. PMID 25793901. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4368207/. 
  47. ^ a b c Catania, Kenneth C. (November 2015). “Electric Eels Concentrate Their Electric Field to Induce Involuntary Fatigue in Struggling Prey”. Current Biology 25 (22): 2889–2898. doi:10.1016/j.cub.2015.09.036. PMID 26521183. 
  48. ^ a b c d Kramer, Bernd (2008). “Electric Organ; Electric Organ Discharge”. In Marc D. Binder; Nobutaka Hirokawa; Uwe Windhorst. Encyclopedia of Neuroscience. Berlin, Heidelberg: Springer. pp. 1050–1056. ISBN 978-3-540-23735-8. http://epub.uni-regensburg.de/124/ 
  49. ^ Catania, Kenneth C. (20 October 2015). “Electric eels use high-voltage to track fast-moving prey”. Nature Communications 6: 8638. Bibcode2015NatCo...6.8638C. doi:10.1038/ncomms9638. PMC 4667699. PMID 26485580. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4667699/. 
  50. ^ Fact Sheet: Electric eels”. 西オーストラリア大学 (2015年2月). 2022年9月26日閲覧。
  51. ^ a b c Xu, Jun; Cui, Xiang; Zhang, Huiyuan (18 March 2021). “The third form electric organ discharge of electric eels”. Scientific Reports 11 (1): 6193. doi:10.1038/s41598-021-85715-3. PMC 7973543. PMID 33737620. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7973543/. 
  52. ^ Catania, K. C. (December 2014). “The shocking predatory strike of the electric eel”. Science 346 (6214): 1231–1234. Bibcode2014Sci...346.1231C. doi:10.1126/science.1260807. PMID 25477462. 
  53. ^ Catania, K. C. (June 2016). “Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt's account of a battle with horses”. PNAS 113 (25): 6979–6984. Bibcode2016PNAS..113.6979C. doi:10.1073/pnas.1604009113. PMC 4922196. PMID 27274074. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4922196/. 
  54. ^ Catania, K. C. (September 2017). “Power Transfer to a Human during an Electric Eel's Shocking Leap”. Current Biology 27 (18): 2887–2891.e2. doi:10.1016/j.cub.2017.08.034. PMID 28918950. 
  55. ^ 今泉忠明監修『危険生物大図鑑』、株式会社カンゼン、2014年、135頁
  56. ^ Moller 1995, pp. 292–293.
  57. ^ a b Moller 1995, pp. 297, 300.
  58. ^ Moller 1995, p. 293.
  59. ^ VanderVeer, Joseph B. (6 July 2011). “Hugh Williamson: Physician, Patriot, and Founding Father”. Journal of the American Medical Association 306 (1). doi:10.1001/jama.2011.933. 
  60. ^ Williamson, Hugh (1775). “Experiments and observations on the Gymnotus electricus, or electric eel”. Philosophical Transactions of the Royal Society 65 (65): 94–101. doi:10.1098/rstl.1775.0011. https://royalsocietypublishing.org/doi/epdf/10.1098/rstl.1775.0011. 
  61. ^ Alexander, Mauro (1969). “The role of the voltaic pile in the Galvani-Volta controversy concerning animal vs. metallic electricity”. Journal of the History of Medicine and Allied Sciences XXIV (2): 140–150. doi:10.1093/jhmas/xxiv.2.140. PMID 4895861. 
  62. ^ a b von Humboldt, Alexander (1859) (ドイツ語). Alexander von Humboldt's Reise in die Aequinoctial-Gegenden des neuen Continents [Alexander von Humboldt's Journey in the Equinoctial Regions of the New Continent]. 1. Stuttgart: J. G. Cotta'scher Verlag. pp. 404–406. http://www.gutenberg.org/files/24746/24746-h/24746-h.html 
  63. ^ PNAS:Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt’s account of a battle with horses
  64. ^ 馬も倒せる? デンキウナギは水面から飛び出して敵に攻撃することが判明
  65. ^ a b Faraday, Michael (1839). “Experimental Researches in Electricity, Fifteenth Series”. Philosophical Transactions of the Royal Society 129: 1–12. doi:10.1098/rstl.1839.0002. 
  66. ^ Veitch, J. (1879). “Hume”. Nature 19 (490): 453–456. Bibcode1879Natur..19..453V. doi:10.1038/019453b0. https://zenodo.org/record/2084677. 
  67. ^ a b Sachs, Carl (1877). “Beobachtungen und versuche am südamerikanischen zitteraale (Gymnotus electricus) [Observations and research on the South American electric eel (Gymnotus electricus)]” (ドイツ語). Archives of Anatomy and Physiology: 66–95. https://digitalesammlungen.uni-weimar.de/viewer/image/lit1058/4/. 
  68. ^ Xu, Jian; Sigworth, Fred J.; Lavan, David A. (5 January 2010). “Synthetic Protocells to Mimic and Test Cell Function”. Advanced Materials 22 (1): 120–127. Bibcode2010AdM....22..120X. doi:10.1002/adma.200901945. PMC 2845179. PMID 20217710. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2845179/. 
  69. ^ Sun, Hao; Fu, Xuemei; Xie, Songlin et al. (14 January 2016). “Electrochemical Capacitors with High Output Voltages that Mimic Electric Eels”. Advanced Materials 28 (10): 2070–2076. Bibcode2016AdM....28.2070S. doi:10.1002/adma.201505742. PMID 26766594. 

参考文献

外部リンク