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英名のCuvier's Beaked Whale(キュヴィエのアカボウクジラ)は、キュヴィエの名前に由来する。別の英名としてGoose-beaked Whale([[ガチョウ]]のようなくちばしのクジラ)があるが、これはアカボウクジラの口吻の形状がガチョウのくちばしに似ていることに由来する。事実、[[中世]]におけるアカボウクジラの目撃例は、[[魚類|魚]]のような胴に[[フクロウ]]のような頭を持つ怪物として伝えられている。 |
英名のCuvier's Beaked Whale(キュヴィエのアカボウクジラ)は、キュヴィエの名前に由来する。別の英名としてGoose-beaked Whale([[ガチョウ]]のようなくちばしのクジラ)があるが、これはアカボウクジラの口吻の形状がガチョウのくちばしに似ていることに由来する。事実、[[中世]]におけるアカボウクジラの目撃例は、[[魚類|魚]]のような胴に[[フクロウ]]のような頭を持つ怪物として伝えられている。 |
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和名のアカボウ(赤坊)は、アカボウクジラの顔が人間の「[[赤ちゃん|赤ん坊]]」に似ているからであるとされる。 |
和名のアカボウ(赤坊)は、アカボウクジラの顔が人間の「[[赤ちゃん|赤ん坊]]」に似ているからであるとされる。別の和名としてカジッポという呼び名もある。 |
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別の和名としてカジッポという呼び名もある。 |
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成体の体長はオスが約6.6mでメスが約6.9m。体重は2tから3tである。アカボウクジラの口[[吻]]は[[アカボウクジラ科]]の他の[[種 (分類学)|種]]に比べると短く、[[ガチョウ]]の[[嘴]]を思わせる形状である。また、下顎の下に深い皺が二本ある。雄は下顎の先端に円錐状の歯を1対のみもち、雌は歯をもたない。[[メロン (動物学)|メロン]]のある前頭部は若干膨らんでおり緩やかに前方へと傾斜している。色は白あるいはクリーム色であり、顎から鼻先、[[背びれ]]に向かって2/3程度の位置まで白い線状の模様がある。その他の部分の体色は個体による違いが大きいが、大雑把には濃い灰青色あるいは赤褐色である。また多くの個体は[[ダルマザメ]] ([[w:Cookiecutter shark|Cookiecutter shark]]) や他のアカボウクジラに咬まれた跡である白い傷跡や斑点を有する。胸びれは小さく、脇腹にはこれを収める窪みが存在する。ここに鰭を収め、高速遊泳や潜水を行うと推定される |
成体の体長はオスが約6.6mでメスが約6.9m。体重は2tから3tである。アカボウクジラの口[[吻]]は[[アカボウクジラ科]]の他の[[種 (分類学)|種]]に比べると短く、[[ガチョウ]]の[[嘴]]を思わせる形状である。また、下顎の下に深い皺が二本ある。雄は下顎の先端に円錐状の歯を1対のみもち、雌は歯をもたない。[[メロン (動物学)|メロン]]のある前頭部は若干膨らんでおり緩やかに前方へと傾斜している。色は白あるいはクリーム色であり、顎から鼻先、[[背びれ]]に向かって2/3程度の位置まで白い線状の模様がある。その他の部分の体色は個体による違いが大きいが、大雑把には濃い灰青色あるいは赤褐色である。また多くの個体は[[ダルマザメ]] ([[w:Cookiecutter shark|Cookiecutter shark]]) や他のアカボウクジラに咬まれた跡である白い傷跡や斑点を有する。胸びれは小さく、脇腹にはこれを収める窪みが存在する。ここに鰭を収め、高速遊泳や潜水を行うと推定される<ref>『世界哺乳類図鑑』 198頁</ref>。[[背びれ]]の形状は三角形あるいは鎌状。尾ひれは幅広く、尾の部分の長さは体長のほぼ1/4である。 |
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海上において、[[オウギハクジラ属]]のクジラとの識別を行うことは困難である。 |
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寿命は約40年である。 |
寿命は約40年である。 |
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クジラの中でも最も深く潜水する種類の一つとされる。2014年の科学誌『[[PLOS ONE|プロスワン]]』で公表された研究結果{{ |
クジラの中でも最も深く潜水する種類の一つとされる。2014年の科学誌『[[PLOS ONE|プロスワン]]』で公表された研究結果<ref>{{Cite journal|last=Schorr|first=Gregory S.|last2=Falcone|first2=Erin A.|last3=Moretti|first3=David J.|last4=Andrews|first4=Russel D.|date=2014-03-26|title=First Long-Term Behavioral Records from Cuvier’s Beaked Whales (Ziphius cavirostris) Reveal Record-Breaking Dives|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3966784/|journal=PLoS ONE|volume=9|issue=3|pages=e92633|doi=10.1371/journal.pone.0092633|issn=1932-6203|pmid=24670984|pmc=3966784}}</ref>によると、アカボウクジラは137.5分間にわたり潜水したり、2,992メートルの深さまで潜ったりしたと測定された。哺乳類最長の潜水記録とされる<ref>{{cite news| url=https://www.afpbb.com/articles/-/3028937| newspaper=AFPBP news| date=2014年10月15日| title=くちばし持つ希少クジラ、豪海岸に漂着| publisher=AFP| accessdate=2015-10-28}}</ref>。2020年には、潜水時間が3時間42分に達した個体が確認された<ref>{{Cite news |title=Mysterious beaked whale smashes mammal diving record |url=https://www.bbc.com/news/science-environment-54268040 |work=BBC News |date=2020-09-24 |access-date=2023-02-09 |language=en-GB}}</ref>。 |
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==生息域と生息数== |
==生息域と生息数== |
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アカボウクジラの分布は主に座礁(ストランディング)の記録に基づいて理解されており、[[大西洋]]、[[太平洋]]、[[インド洋]]に広く棲息している。 |
アカボウクジラの分布は主に座礁(ストランディング)の記録に基づいて理解されており、[[大西洋]]、[[太平洋]]、[[インド洋]]に広く棲息している。個体が観察された北限は[[シェトランド諸島]]、南限は[[フエゴ島]]である。水深の深い遠洋を好み、冷たい海域でも、温暖な海域でもどちらでも良い。深所に生息する[[魚類]]や[[頭足類]]などを食べ、時に[[甲殻類]]も餌にするとされる。 |
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個体が観察された北限は[[シェトランド諸島]]、南限は[[フエゴ島]]である。 |
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水深の深い遠洋を好み、冷たい海域でも、温暖な海域でもどちらでも良い。 |
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深所に生息する[[魚類]]や[[頭足類]]などを食べ、時に[[甲殻類]]も餌にするとされる。 |
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頻繁に見られる場所というわけではないが、スペインとフランスにまたがる[[ビスケー湾]]における研究が有名であり、日本国内においては例えば[[駿河湾]]に良好な生息地があることが判明している<ref>{{cite journal|author=大泉 宏|year=2014|title=『 駿河湾のクジラたち 』|url=http://www.siip.jp/assets/files/sangaku90.pdf|format=PDF|accessdate=2015年10月15日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150116120640/http://www.siip.jp/assets/files/sangaku90.pdf|archivedate=2015年1月16日|deadlinkdate=2018年3月}}</ref>。海上における識別が困難であるため、全生息数は不明である。 |
頻繁に見られる場所というわけではないが、スペインとフランスにまたがる[[ビスケー湾]]における研究が有名であり、日本国内においては例えば[[駿河湾]]に良好な生息地があることが判明している<ref>{{cite journal|author=大泉 宏|year=2014|title=『 駿河湾のクジラたち 』|url=http://www.siip.jp/assets/files/sangaku90.pdf|format=PDF|accessdate=2015年10月15日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150116120640/http://www.siip.jp/assets/files/sangaku90.pdf|archivedate=2015年1月16日|deadlinkdate=2018年3月}}</ref>。海上における識別が困難であるため、全生息数は不明である。 |
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[[日本]]においては、かつてはアカボウクジラは捕鯨の対象であった。 |
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他の[[クジラ目]]のクジラやイルカと同じく[[刺し網]]などによる混獲の被害に遭う個体が多数いるものと考えられている。 |
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==脚注== |
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2023年2月9日 (木) 04:29時点における版
アカボウクジラ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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アカボウクジラの全身骨格
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Ziphius cavirostris Cuvier, 1823 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
アカボウクジラ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Cuvier's Beaked Whale |
アカボウクジラ(赤坊鯨、Ziphius cavirostris)はハクジラ亜目アカボウクジラ科アカボウクジラ属に属する中型のクジラである。
アカボウクジラ属 (Ziphius) はアカボウクジラ科に属する属の一つで、アカボウクジラただ1種のみが属する。
概要
アカボウクジラ科の中では最も広範囲な海域に棲息する。
1804年にフランスで発見された頭蓋骨の一部に基づき、1823年、フランスの動物学者キュヴィエによって新種として報告された。学名は、ギリシア語の ziphos(ξίφος:剣の意)で、アカボウクジラの雄がもつ円錐形の歯の形に因む。種小名のcavirostrisはラテン語の cavi(穴・くぼみ)+ rostris(嘴・吻)に由来する。
英名のCuvier's Beaked Whale(キュヴィエのアカボウクジラ)は、キュヴィエの名前に由来する。別の英名としてGoose-beaked Whale(ガチョウのようなくちばしのクジラ)があるが、これはアカボウクジラの口吻の形状がガチョウのくちばしに似ていることに由来する。事実、中世におけるアカボウクジラの目撃例は、魚のような胴にフクロウのような頭を持つ怪物として伝えられている。
和名のアカボウ(赤坊)は、アカボウクジラの顔が人間の「赤ん坊」に似ているからであるとされる。別の和名としてカジッポという呼び名もある。
身体
成体の体長はオスが約6.6mでメスが約6.9m。体重は2tから3tである。アカボウクジラの口吻はアカボウクジラ科の他の種に比べると短く、ガチョウの嘴を思わせる形状である。また、下顎の下に深い皺が二本ある。雄は下顎の先端に円錐状の歯を1対のみもち、雌は歯をもたない。メロンのある前頭部は若干膨らんでおり緩やかに前方へと傾斜している。色は白あるいはクリーム色であり、顎から鼻先、背びれに向かって2/3程度の位置まで白い線状の模様がある。その他の部分の体色は個体による違いが大きいが、大雑把には濃い灰青色あるいは赤褐色である。また多くの個体はダルマザメ (Cookiecutter shark) や他のアカボウクジラに咬まれた跡である白い傷跡や斑点を有する。胸びれは小さく、脇腹にはこれを収める窪みが存在する。ここに鰭を収め、高速遊泳や潜水を行うと推定される[1]。背びれの形状は三角形あるいは鎌状。尾ひれは幅広く、尾の部分の長さは体長のほぼ1/4である。
海上において、オウギハクジラ属のクジラとの識別を行うことは困難である。
寿命は約40年である。
クジラの中でも最も深く潜水する種類の一つとされる。2014年の科学誌『プロスワン』で公表された研究結果[2]によると、アカボウクジラは137.5分間にわたり潜水したり、2,992メートルの深さまで潜ったりしたと測定された。哺乳類最長の潜水記録とされる[3]。2020年には、潜水時間が3時間42分に達した個体が確認された[4]。
生息域と生息数
アカボウクジラの分布は主に座礁(ストランディング)の記録に基づいて理解されており、大西洋、太平洋、インド洋に広く棲息している。個体が観察された北限はシェトランド諸島、南限はフエゴ島である。水深の深い遠洋を好み、冷たい海域でも、温暖な海域でもどちらでも良い。深所に生息する魚類や頭足類などを食べ、時に甲殻類も餌にするとされる。 頻繁に見られる場所というわけではないが、スペインとフランスにまたがるビスケー湾における研究が有名であり、日本国内においては例えば駿河湾に良好な生息地があることが判明している[5]。海上における識別が困難であるため、全生息数は不明である。
保護
日本においては、かつてはアカボウクジラは捕鯨の対象であった。他のクジラ目のクジラやイルカと同じく刺し網などによる混獲の被害に遭う個体が多数いるものと考えられている。また、アカボウクジラは雑音に対して敏感であると考えられている。地中海のような騒々しい海域において、座礁(ストランディング)が多数記録されている。
脚注
- ^ 『世界哺乳類図鑑』 198頁
- ^ Schorr, Gregory S.; Falcone, Erin A.; Moretti, David J.; Andrews, Russel D. (2014-03-26). “First Long-Term Behavioral Records from Cuvier’s Beaked Whales (Ziphius cavirostris) Reveal Record-Breaking Dives”. PLoS ONE 9 (3): e92633. doi:10.1371/journal.pone.0092633. ISSN 1932-6203. PMC 3966784. PMID 24670984 .
- ^ “くちばし持つ希少クジラ、豪海岸に漂着”. AFPBP news (AFP). (2014年10月15日) 2015年10月28日閲覧。
- ^ “Mysterious beaked whale smashes mammal diving record” (英語). BBC News. (2020年9月24日) 2023年2月9日閲覧。
- ^ 大泉 宏 (2014) (PDF). 『 駿河湾のクジラたち 』. オリジナルの2015年1月16日時点におけるアーカイブ。 2015年10月15日閲覧。.
参考文献・外部リンク
- Thomas A. Jefferson, "Cuvier's Beaked Whale" in the Encyclopedia of Marine Mammals (1998). ISBN 0125513402
- Reeves et al., National Audubon Society Guide to Marine Mammals of the World (2002). ISBN 0375411410
- Carwardine, Whales, Dolphins and Porpoises (1995). ISBN 0751327816
- 海棲哺乳類図鑑「アカボウクジラ」[リンク切れ] 国立科学博物館 動物研究部
- 哺乳類頭蓋骨データベース「アカボウクジラ(雌)」[リンク切れ] 国立科学博物館 動物研究部
- ジュリエット・クラットン・ブロック『世界哺乳類図鑑』ダン・E・ウィルソン、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、198 - 199頁頁。ISBN 4-7875-8533-9。