「カンキツグリーニング病」の版間の差分
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[[キジラミ]]による[[媒介者|媒介]]や[[接ぎ木]]によって、柑橘類の[[師部|師管]]に原因[[病原体]] ''[[Candidatus]]'' Liberibacter が感染することで罹患する。''Ca.'' Liberibacter には、アジア型 ''Ca.'' Liberibacter asiaticus、アフリカ型 ''Ca.'' Liberobacter africanus、アメリカ型 ''Ca.'' Liberibacter americanus の3種が知られている。なお、この病原体の正体は現在[[グラム陰性菌]]という点を除いて未確定であるため、候補名としてCandidatusが付けられている。 |
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アジア型は暑さに強く、 |
アジア型は暑さに強く、30℃ 以上の気温でも感染力を持つ。アジアを中心に、アフリカ、アメリカ、オセアニアなどで感染が確認されている。[[ミカンキジラミ]] ''Diaphorina citri'' によって媒介される。 |
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アフリカ型は暑さに弱く、22-25℃ の範囲の気候区域で感染する。[[亜種]]の ''Ca.'' Liberobacter africanus capensis とともに、アフリカ諸国で発見されている。[[ミカントガリキジラミ]] ''Trioza erytreae'' によって媒介される。 |
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アメリカ型は南米の一部で確認されている。 |
アメリカ型は南米の一部で確認されている。 |
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現在、抵抗性品種は存在しないが発病度には品種差があり、[[ポンカン]]やダンカン[[グレープフルーツ]]では激しい黄化症状が現れる。台木として広く用いられている[[カラタチ]]は感染しても被害が軽微であるが、保毒樹に接ぎ木をすると穂木品種が発病する<ref>https:// |
現在、抵抗性品種は存在しないが発病度には品種差があり、[[ポンカン]]やダンカン[[グレープフルーツ]]では激しい黄化症状が現れる。台木として広く用いられている[[カラタチ]]は感染しても被害が軽微であるが、保毒樹に接ぎ木をすると穂木品種が発病する<ref>{{Cite journal|和書|author=宮川経邦 |title=実験条件下におけるカンキツリクビン(citrus greening disease)の宿主域とその病徴 |journal=日本植物病理学会報 |issn=0031-9473 |publisher=日本植物病理學會 |year=1980 |volume=46 |issue=2 |pages=224-230 |naid=110002740601 |doi=10.3186/jjphytopath.46.224 |url=https://doi.org/10.3186/jjphytopath.46.224}}</ref>。 |
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[[オキシテトラサイクリン]]などの抗生物質剤の散布により発病を一時的に抑制することができるが、根本的な治療にはならない<ref>{{Cite journal|和書|author=藤原和樹, 藤川貴史 |title=ミカンが黄色く熟さない?!遺伝子を大幅に欠落した篩管に潜む奇妙な細菌:共存細菌叢が病原菌を守る |journal=化学と生物 |issn=0453-073X |publisher=日本農芸化学会 |year=2019 |volume=57 |issue=9 |pages=522-524 |naid=130007893905 |doi=10.1271/kagakutoseibutsu.57.522 |url=https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu.57.522}}</ref>。グリーニング病の被害が急増しているアメリカでは、[[遺伝子組み換え作物|遺伝子組み換え]]による抵抗性品種の開発が進められている。 |
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グリーニング病の被害が急増しているアメリカでは、[[遺伝子組み換え作物|遺伝子組み換え]]による抵抗性品種の開発が進められている。 |
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== 歴史 == |
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19世紀後半の[[台湾]]ならびに[[インド]]では、すでに同様の症状を示す病害が確認されていた。1919年に Reinking が中国南部で発見し、初めて学術的に報告した。1921年には[[フィリピン]]、1928年には[[南アフリカ]]で感染が確認された。 |
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1960年代には[[タイ王国]]北部の[[タンジェリン]]農園に感染が広がり、以降毎年果樹の10分の1が枯死している。1980年代には7年間で[[レユニオン|レユニオン島]]の柑橘類果樹のうち |
1960年代には[[タイ王国]]北部の[[タンジェリン]]農園に感染が広がり、以降毎年果樹の10分の1が枯死している。1980年代には7年間で[[レユニオン|レユニオン島]]の柑橘類果樹のうち65%が失われた。 |
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日本では1988年に[[西表島]]で初めて感染が確認され、以後、[[徳之島]]以南の[[南西諸島]]に感染が拡大している。1990年代後半には、アジアで5300万本、アフリカで1000万本の果樹が HLB に感染していたものと概算されている。 |
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* [http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/120319_1.html 農林水産省「鹿児島県喜界島におけるカンキツグリーニング病菌の根絶の達成について」、2012年3月19日] |
* [http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/120319_1.html 農林水産省「鹿児島県喜界島におけるカンキツグリーニング病菌の根絶の達成について」、2012年3月19日] |
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2021年7月1日 (木) 11:00時点における版
カンキツグリーニング病(カンキツグリーニングびょう、英: Citrus Greening Disease (CG))は、柑橘類に致命的な被害を与える病害。中国名の黄竜病(黃龍病 / 黄龙病 / huánglóngbìng, 略称HLB)、台湾名の立枯病(リクビン、lìkūbìng)でも呼ばれる。
感染するとまず葉に黄色い斑が生じ、枝とともに変形していく。果実は成熟しても小さく、表面に緑色の斑が残り、苦い。進行すると徐々に衰弱して枝の先端から枯れていき、最終的には枯死する。2008年現在では、感染した樹木を伐採除去する以外の有効な対抗策がなく、世界各地の柑橘類生産に深刻な影響を及ぼしている。
原因
キジラミによる媒介や接ぎ木によって、柑橘類の師管に原因病原体 Candidatus Liberibacter が感染することで罹患する。Ca. Liberibacter には、アジア型 Ca. Liberibacter asiaticus、アフリカ型 Ca. Liberobacter africanus、アメリカ型 Ca. Liberibacter americanus の3種が知られている。なお、この病原体の正体は現在グラム陰性菌という点を除いて未確定であるため、候補名としてCandidatusが付けられている。
アジア型は暑さに強く、30℃ 以上の気温でも感染力を持つ。アジアを中心に、アフリカ、アメリカ、オセアニアなどで感染が確認されている。ミカンキジラミ Diaphorina citri によって媒介される。
アフリカ型は暑さに弱く、22-25℃ の範囲の気候区域で感染する。亜種の Ca. Liberobacter africanus capensis とともに、アフリカ諸国で発見されている。ミカントガリキジラミ Trioza erytreae によって媒介される。
アメリカ型は南米の一部で確認されている。
現在、抵抗性品種は存在しないが発病度には品種差があり、ポンカンやダンカングレープフルーツでは激しい黄化症状が現れる。台木として広く用いられているカラタチは感染しても被害が軽微であるが、保毒樹に接ぎ木をすると穂木品種が発病する[1]。
対策
オキシテトラサイクリンなどの抗生物質剤の散布により発病を一時的に抑制することができるが、根本的な治療にはならない[2]。グリーニング病の被害が急増しているアメリカでは、遺伝子組み換えによる抵抗性品種の開発が進められている。
歴史
19世紀後半の台湾ならびにインドでは、すでに同様の症状を示す病害が確認されていた。1919年に Reinking が中国南部で発見し、初めて学術的に報告した。1921年にはフィリピン、1928年には南アフリカで感染が確認された。
1960年代にはタイ王国北部のタンジェリン農園に感染が広がり、以降毎年果樹の10分の1が枯死している。1980年代には7年間でレユニオン島の柑橘類果樹のうち65%が失われた。
日本では1988年に西表島で初めて感染が確認され、以後、徳之島以南の南西諸島に感染が拡大している。1990年代後半には、アジアで5300万本、アフリカで1000万本の果樹が HLB に感染していたものと概算されている。
アメリカ大陸では、1998年にミカンキジラミの侵入が確認された。2004年にはブラジルで初めて感染が確認され、以降2008年までに80万本の果樹が失われている。翌2005年にはフロリダ半島で感染が確認された。2014年には30年ぶりの規模で病害が発生し、アメリカのオレンジ収穫に打撃を与えた[3]。
アメリカ合衆国では、農業テロに利用される懸念から、2002年に農務省の選択病原菌リスト (Select Agent/ Toxin List) に掲載され、厳重な管理のもとでしか取り扱うことができなくなっている。
脚注
- ^ 宮川経邦「実験条件下におけるカンキツリクビン(citrus greening disease)の宿主域とその病徴」『日本植物病理学会報』第46巻第2号、日本植物病理學會、1980年、224-230頁、doi:10.3186/jjphytopath.46.224、ISSN 0031-9473、NAID 110002740601。
- ^ 藤原和樹, 藤川貴史「ミカンが黄色く熟さない?!遺伝子を大幅に欠落した篩管に潜む奇妙な細菌:共存細菌叢が病原菌を守る」『化学と生物』第57巻第9号、日本農芸化学会、2019年、522-524頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu.57.522、ISSN 0453-073X、NAID 130007893905。
- ^ Juliette MICHEL (2014年4月18日). “米オレンジ農家に病害拡大、ジュース価格高騰”. AFP. AFPBB News 2014年4月18日閲覧。
参考文献
- J.M. Bové, "Huanglongbing: a destructive, newly emerging, century-old disease of citrus", J. Plant Pathol. 88, 7-37 (2006). [1]
- Ewen Callaway, "Bioterror: The green menace", Nature 452, 148-150 (2008).doi:10.1038/452148a
- 独立行政法人 国際農林水産研究センター プレスリリース, 「カンキツグリーニング病防除に関する国際ワークショップを開催」, 2007年1月18日
- 篠原和孝・湯田達也・西本周代・濱島朗子・橋元祥一・時村金愛・佐藤哲治, "奄美諸島におけるカンキツグリーニング病の発生調査", 九病虫研会報 52, 6 (2006). [2]
- 農林水産省植物防疫所「移動規制対象病害虫」 - カンキツグリーニング病の樹木およびミカンキジラミの写真がある。
- 農林水産省「鹿児島県喜界島におけるカンキツグリーニング病菌の根絶の達成について」、2012年3月19日