カンキツグリーニング病
カンキツグリーニング病(カンキツグリーニングびょう、英:Citrus Greenig Disease (CG))は、柑橘類に致命的な被害を与える病害。中国名の黄龍病(Huanglongbing, 略称HLB)、台湾名の立枯病(リクビン、Likubin)でも呼ばれる。
感染するとまず葉に黄色い斑が生じ、枝とともに変形していく。果実は成熟しても小さく、表面に緑色の斑が残り、苦い。進行すると徐々に衰弱して枝の先端から枯れていき、最終的には枯死する。2008年現在では、感染した樹木を伐採除去する以外の有効な対抗策がなく、世界各地の柑橘類生産に深刻な影響を及ぼしている。
原因 [編集]
キジラミによる媒介や接ぎ木によって、柑橘類の師管に原因病原体 Candidatus Liberibacter が感染することで罹患する。Ca. Liberibacter には、アジア型 Ca. Liberibacter asiaticus、アフリカ型 Ca. Liberobacter africanus、アメリカ型 Ca. Liberibacter americanus の3種が知られている。なお、この病原体の正体は現在グラム陰性菌という点を除いて未確定であるため、候補名としてCandidatusが付けられている。
アジア型は暑さに強く、30°C 以上の気温でも感染力を持つ。アジアを中心に、アフリカ、アメリカ、オセアニアなどで感染が確認されている。ミカンキジラミ Diaphorina citri によって媒介される。
アフリカ型は暑さに弱く、22-25°C の範囲の気候区域で感染する。亜種の Ca. Liberobacter africanus capensis とともに、アフリカ諸国で発見されている。ミカントガリキジラミ Trioza erytreae によって媒介される。
アメリカ型は南米の一部で確認されている。
歴史 [編集]
19世紀後半の台湾ならびにインドでは、すでに同様の症状を示す病害が確認されていた。1919年に Reinking が中国南部で発見し、初めて学術的に報告した。1921年にはフィリピン、1928年には南アフリカで感染が確認された。
1960年代にはタイ王国北部のタンジェリン農園に感染が広がり、以降毎年果樹の10分の1が枯死している。1980年代には7年間でレユニオン島の柑橘類果樹のうち65%が失われた。
日本では1988年に西表島で初めて感染が確認され、以後、徳之島以南の南西諸島に感染が拡大している。1990年代後半には、アジアで5300万本、アフリカで1000万本の果樹が HLB に感染していたものと概算されている。
アメリカ大陸では、1998年にミカンキジラミの侵入が確認された。2004年にはブラジルで初めて感染が確認され、以降2008年までに80万本の果樹が失われている。翌2005年にはフロリダ半島で感染が確認された。
アメリカ合衆国では、農業テロに利用される懸念から、2002年に農務省の選択病原菌リスト (Select Agent/ Toxin List) に掲載され、厳重な管理のもとでしか取り扱うことができなくなっている。
参考文献 [編集]
- J.M. Bové, "Huanglongbing: a destructive, newly emerging, century-old disease of citrus", J. Plant Pathol. 88, 7-37 (2006). [1]
- Ewen Callaway, "Bioterror: The green menace", Nature 452, 148-150 (2008).doi:10.1038/452148a
- 独立行政法人 国際農林水産研究センター プレスリリース, 「カンキツグリーニング病防除に関する国際ワークショップを開催」, 2007年1月18日
- 篠原和孝・湯田達也・西本周代・濱島朗子・橋元祥一・時村金愛・佐藤哲治, "奄美諸島におけるカンキツグリーニング病の発生調査", 九病虫研会報 52, 6 (2006). [2]
- 農林水産省植物防疫所「移動規制対象病害虫」 - カンキツグリーニング病の樹木およびミカンキジラミの写真がある。
- 農林水産省「鹿児島県喜界島におけるカンキツグリーニング病菌の根絶の達成について」、2012年3月19日