「インド政府」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
ページ「Government of India」の翻訳により作成
(相違点なし)

2020年9月9日 (水) 13:29時点における版

インド政府(インドせいふ、英語: Government of India)はインド中央政府インド憲法によって設置され、28のと8つの連邦直轄領をまとめている。首都ニューデリーに政府機能がある。

基本構造

州をまとめるためにウェストミンスター・システムを採用している[1]。連邦政府は行政府立法府司法府の3部門で構成されており、憲法によって行政権首相立法権国会司法権最高裁判所に付与されている。大統領は国会の上下両院議員と州議員の投票によって選出され、国家元首インド軍最高指揮官を務めるが、政治の実権はない[2]。一方、首相は行政府の長として国会に対して責任を持つ[3]議院内閣制)。国会は二院制を採用しており、上院ラージヤ・サバーが250議席、下院ローク・サバーが545議席である[4]。裁判所は最高裁判所の下に24の高等裁判所、その下に複数の地方裁判所があり、特別裁判所は設けられていない[5]

法令分野は憲法によって連邦政府リスト、州政府リスト、連邦政府および州政府リストの3つに分けられており[6]民法刑法民事訴訟法刑事手続法などは連邦政府リストに載せられている[7]。イギリスの植民地であった背景から、法体系にはコモン・ローを採用しているが、重要法令については成文法で定められている[6]

立法府

ニューデリーにある国会議事堂

国会は、インド政府の立法府である。ラージヤ・サバー上院)とローク・サバー下院)からなる両院制をとっている。ラージヤ・サバーは州代表としての性格を持ち、議員は大統領による指名または州議会による選出によって任命される。一方、ローク・サバーは人民の代表としての性格を持つ[8][9]

この国会は議会主権を持っているわけではなく、法案は最高裁判所による司法審査を受ける必要がある[10]。その一方、議院内閣制を採用しているために、内閣を通じて行政権に影響を与えることができる[11]。インド憲法では、内閣は下院ローク・サバーに対して責任を持つ[12]。下院には解散があり、上院には解散がない。下院議員の任期は5年、上院議員の任期は6年であり、上院議員は2年ごとに3分の1が改選される[13][14]

行政府

行政に関して、市民の日常生活に関わる部分は州政府が担っており連邦政府との権力分立が図られている[15]

大統領

憲法53条1項は、名目上行政権を主として大統領に与えている。実質的な行政権は首相が保持しており、大統領は首相の助言に従って執政を行う。

行政権は閣僚会議(内閣)に属するが、首相と閣僚の任命は大統領が行う。一方で、閣僚会議は下院に対して連帯して責任を負う。もし仮に大統領が自らの意思によって閣僚会議を解散させようとするならば、憲政の危機となる。そのため実務上、閣僚会議は政権与党が下院の多数派を占めている限りは解散されない。

大統領には、政府内で高官を指名する責任を付与されている。例えば、29州の州知事や最高裁判所判事の任命、最高裁判事の助言に基づく高等裁判所判事の任命、司法長官の任命、全国選挙管理委員長と管理委員の任命などが大統領の任務とされている[16][17]

また、国家元首として他国の特命全権大使からの信任状の奉呈を受ける。一方、他のコモンウェルス諸国の高等弁務官からの信任状の奉呈は首相が受ける。

また、インド軍の憲法上の最高指揮官でもある[18]

さらに、犯罪者に対する恩赦も行うことができる。この恩赦の決定は大統領が首相・議会から独立して行うことができる。しかし、実際には首相の助言によって行われる[19]。2020年現在の大統領はラーム・ナート・コーヴィンドである。

副大統領

副大統領は、インド政府第2位の官職であり、大統領不在のときには代理を務める。また、上院ラージヤ・サバーの議長を務めることが憲法上定められている[20]。副大統領は議会両院による選出委員会による秘密選挙によって選出される。

首相

大統領官邸ラシュトラパティ・バワンと、隣接する首相官邸、内閣官房、国防省庁舎。

首相インド憲法によって行政府の長と定められ、大統領を補佐し、閣僚会議(内閣)を率いる。基本的には、議会多数派の政権与党党首が務める。

議院内閣制において行政権を担う内閣の長として、首相は他の大臣の任命、罷免を行うことができる。また、内閣の長として議会に提出する法案の内容に責任を持つ。首相が辞任または任期中に死亡した場合、内閣は解散する。

首相の任命は大統領が行い、首相は大統領の執務を補佐する。

内閣、大臣、その他の行政組織

閣僚会議(内閣)は、首相と各大臣によって構成される[21]。全ての大臣が国会議員であることが憲法上定められている。内閣の長は首相であり、官房長官が補佐する。首相以外の各大臣は内閣を構成すると同時に、省庁の長でもある。

司法府

インドの司法制度はイギリス植民地時代のものを踏襲した英米法体系を使用している。最高裁判所は主席裁判官と30名の判事によって構成され、最高裁判事は主席裁判官の助言によって大統領が任命する。

アメリカ合衆国とは異なり、インドの司法体系は全国で統一されており、州裁判所は存在しない。そのため、裁判所の管轄権は全国を管轄する最高裁、州を管轄する高等裁判所、州より下の行政単位を管轄する地方裁判所となっている。

最高裁判所

Building of the Supreme Court of India.
インド最高裁判所

最高裁判所は首都ニューデリーに位置する。

最高裁判所は憲法に定められた終審裁判所であり、違憲審査権が付与されている。

州と地方自治体

インドの州にはそれぞれ州政府がおかれ、州知事が州政府の長を務める。州議会は5つの州で両院制、その他の州では一院制を採用している。州議会議員の任期は国会議員と同じく、下院が5年、上院が6年でうち3分の1が2年ごとに改選である。

脚注

  1. ^ Subramanian, K. (2014年6月17日). “A prime ministerial form of government”. The Hindu. ISSN 0971-751X. OCLC 13119119. http://www.thehindu.com/opinion/op-ed/a-prime-ministerial-form-of-government/article6120400.ece 2018年3月9日閲覧。 
  2. ^ 総務省大臣官房企画課. “インドの行政”. 2020年9月8日閲覧。
  3. ^ Government of India, Structure of Government of India”. www.elections.in. 2020年9月7日閲覧。
  4. ^ インド基礎データ”. 外務省. 2020年9月7日閲覧。
  5. ^ Constitution of India's definition of India”. Indiagovt.in. 2019年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  6. ^ a b 琴浦諒. “インドの法制度の概要/インド企業と契約する場合の留意点”. アンダーソン・毛利・友常法律事務所. 2020年9月7日閲覧。
  7. ^ Legal services India on Criminal laws in India”. Legal Services India. 2018年4月11日閲覧。
  8. ^ 山田悠生 (2016年7月28日). “インドの議会と複雑な政党政治システム”. 大和総研グループ. 2020年9月8日閲覧。
  9. ^ Arnull, Elaine; Fox, Darrell (29 June 2016). Cultural Perspectives on Youth Justice: Connecting Theory, Policy and International Practise. p. 186. ISBN 978-1-137-43397-8. https://books.google.com/books?isbn=1137433973 2017年5月10日閲覧。 
  10. ^ “Parliament's actions subject to judicial review: court”. The Hindu. http://www.thehindu.com/todays-paper/tp-national/Parliaments-actions-subject-to-judicial-review-court/article14704694.ece 2017年7月19日閲覧。 
  11. ^ “Indian Constitution And Parliamentary Government | Law Teacher”. https://www.lawteacher.net/free-law-essays/administrative-law/indian-constitution-and-parliamentary-government-administrative-law-essay.php 2017年7月20日閲覧。 
  12. ^ Laxmikanth (英語). Governance in India. Tata McGraw-Hill Education. ISBN 978-0-07-107466-7. https://books.google.com/books?id=DY1CAQAAQBAJ&pg=SA5-PA9&dq=parliament+control+executive#v=onepage 
  13. ^ 山田悠生 (2016年7月28日). “インドの議会と複雑な政党政治システム”. 大和総研グループ. 2020年9月8日閲覧。
  14. ^ Our Parliament”. webcache.googleusercontent.com. 2017年7月20日閲覧。
  15. ^ Arnull, Elaine; Fox, Darrell (29 June 2016) (英語). Cultural Perspectives on Youth Justice: Connecting Theory, Policy and International Practice. Springer. ISBN 978-1-137-43397-8. https://books.google.com/books?id=Rn2QDAAAQBAJ&pg=PA186&lpg=PA186&dq=The+Executive+Branch+of+government+of+India+is+the+one+that+has+sole+authority+and+responsibility+for+the+daily+administration+of+the+state+bureaucracy.+The+division+of+power+into+separate+branches+of+government+is+central+to+the+republican+idea+of+the+separation+of+powers.+President#v=onepage 
  16. ^ Pratiyogita Darpan (March 2007). Pratiyogita Darpan. Pratiyogita Darpan. p. 60. https://books.google.com/books?id=5ugDAAAAMBAJ&pg=PT60 
  17. ^ Bakshi, Parvinrai Mulwantrai (2010). The Constitution of India (10th ed.). New Delhi: Universal Law Pub. Co. p. 48. ISBN 978-8175348400. OCLC 551377953 
  18. ^ Oldenburg, Philip (2010). India, Pakistan, and Democracy: Solving the Puzzle of Divergent Paths. Taylor & Francis. p. 71. ISBN 978-0-415-78018-6. https://books.google.com/books?id=V6nras7L790C&pg=PA71 
  19. ^ Kumar; Rajesh. Universal's Guide to the Constitution of India Pg no. 72.
  20. ^ Important India functions of vicepresident”. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  21. ^ Cabinet Ministers (as on 26 May 2014). Cabsec.nic.in. Retrieved 6 December 2013. Archived 27 May 2014 at the Wayback Machine.

出典

外部リンク