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「ごみ収集車」の版間の差分

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回転板式車は粗大ごみや剪定枝などの回収には不向きで、しばしば停止することが見られる。
回転板式車は粗大ごみや剪定枝などの回収には不向きで、しばしば停止することが見られる。

== 歴史 ==
何世紀にも渡り、廃棄物を運搬するため[[ワゴン]]や他の手段が用いられてきたが、世界初となる自走式ゴミ収集車は[[1897年]]、[[イギリス]]の[[チジック]]地区評議会から{{仮リンク|ソニークロフト|en|Thornycroft}}に対し発注されたものがその一つとされている。これは埃とゴミの収集に特化したデザインを採用した[[蒸気|蒸気式]][[ダンプ|ティッパー車]]であった<ref>"Motor-Cars for Dust Collection", The Automotor and Horseless Carriage Journal, February 1897, p192</ref>。

[[1920年]]代には、初となるオープントップ式の[[貨物自動車|トラック]]が使用されたが、悪臭と廃棄物の飛散により、直ぐに屋根付き車両が一般的に採用されている。これら蓋付きのトラックは、当時、人口密度の高い[[欧州]]地域に於いて初導入されており、次いで[[北米]]地域で導入されているが、直ぐに世界中で使用されている。

開発に関する問題点として、車に積み込むために[[ごみ収集作業員]]が廃棄物を肩の高さまで持ち上げる必要に駆られる点であった。そこで、1920年代後半、この問題を解決するため開発された方法は、車両後部に別室を設け、そこに螺旋状の回転体を取り付ける方法であった。その後、より効率的な方法として[[1929年]]に開発されたティッパー車の登場であった。ティッパー車には車体に箱を引き込むための[[ケーブル]]が取り付けられており、集積場の箱(コンテナ)毎ケーブルで車両に引き込む方式が採用されている。

[[1937年]]、アメリカ人ビジネスマンであった{{仮リンク|ジョージ・デンプスター|en|George Roby Dempster}}は「デンプスター=ダンプスターシステム(''Dempster-Dumpster system'')」を開発。この方式は車輪が取り付けられた廃棄物コンテナを車両に傾けゴミを車両に搭載する方法であった。デンプスターが開発したコンテナは現在{{仮リンク|ダンプスター|en|Dumpster}}(''Dumpster'')として一般的に認知されており、今日「Dumpster(ゴミ箱)」という言語として使用されている。

[[1938年]]に[[ミシガン州]]の自動車メーカーであった{{仮リンク|ガーウッド・ロード・パッカー|en|Garwood Load Packer}}は圧縮機(コンパクター)を開発。これをトラックに組み込むことで業界に革命を齎している。最初のコンパクターは従来の2倍の容積を積載することが可能であり、定期的に圧縮する[[油圧]]プレスを利用することで容積を増やすことが可能となった。

[[1955年]]、世界初となるフロントローダー(前方搭載)方式のゴミ収集車「デンプスター=ダンプスター」をアメリカの{{仮リンク|デンプスター・ブラザース|en|Dempster Brothers}}が開発。しかし、[[1970年代]]まで一般的ではなかった。これは、1970年代に{{仮リンク|ウィリー・ビン|en|wheelie bin}}として一般的に認識されている移動式ゴミ箱が登場しており、ウィリー・ビンを専門に収集する車両が登場しており。積載効率を上げるため、圧縮メカニズムに様々な改良が加えられている。このほか1970年代半ばには、アメリカのピーターセン・インダスリーズ(''Petersen Industries'')が都市ゴミ用[[グラップル (建設機械のアタッチメント)|グラップル]]([[鉤爪]])トラックの開発を行っている。

[[1969年]]、[[アリゾナ州]]、[[スコッツデール (アリゾナ州)|スコッツデール]]市は世界初となる全自動サイドローダー式収集車を導入。この新型は運転手が運転席から離れることなく30秒サイクルで300[[ガロン]](約1,136[[ℓ]])のゴミを回収することが可能となっている<ref>{{cite web|url=http://www.classicrefusetrucks.com/albums/albumpool/CS.html|title=City of Scottsdale, Arizona, Solid Waste Management Division|publisher=Classic Refuse Trucks|accessdate=2020-06-26}}</ref>。

[[1997年]]、ピーターセン・インダスリーズは新型車両「リー・ラスバン(''Lee Rathbun'')」を発表、ライトニング・リア・ステアー・システム(''Lightning Rear Steer System'')。と名付けられた新方式は、トラックの後部に収集用[[クレーン]]を搭載し、運転手とクレーンオペレーター2名で収集を行い、トラック後部に牽引したバケットにゴミを搭載して行く方式である。これにより運転手は運転に集中することができ、クレーンオペレーターは継続的にウィリービンの回収を行うことが可能となる。

== 収集方式 ==
=== フロントローダー ===
[[File:Mcneilus Front Loader Refuse Collection Truck.jpg|thumb|200|[[ミネソタ州]]での収集車 フロントローダー方式]]
北米の都市部、事業系、産業系ゴミの収集方式として一般的な方法である<ref>{{cite web|last1=Geroux|first1=Zachary|last2=Voytko|first2=Eric|title=The Ever Expanding History of the Front Load Refuse Truck|url=http://www.classicrefusetrucks.com/albums/FL/FL01.html|accessdate=2020-06-26}}</ref>。一般的に「ダンプスター」として知られる車輪と蓋付きの大型コンテナゴミ収集ボックスを車両前部に取り付けられた電動油圧式リフトを用いてコンテナごと持ち上げ回収する。収集コンテナの両脇にはリフトの差し込み口が設けられており、運転手は収集車の位置を合わせた後、運転席に取り付けられた操作用ジョイスティックを操作し水平を保ちながらコンテナを回収する。また、コンテナは上昇後、投入口(ホッパー)上で上下反転する様、リフトに反転機構が取り付けられている。投入されたゴミは前後に振動を加えながら油圧壁によって後部で圧縮される<ref>{{cite web|url=http://www.classicrefusetrucks.com/albums/FL/FL01.html|title=Classic Refuse Trucks FRONT LOADERS|website=www.classicrefusetrucks.com|accessdate=2020-06-26}}</ref>。

近年の車両では「''pack-on-the-go hydraulics''」システムが備わっており<ref>{{cite web|url=https://www.fleetowner.com/news/article/21661139/heil-expands-operateatidle-offering|title=Heil expands operate-at-idle offering|publisher=Freet Owner|date=2005-02-04|accessdate=2020-06-26}}</ref>、これにより位置合わせと収集の2工程であったものが、移動中にゴミ収集が可能となっており、このシステムにより、より早く回収することで、より多くの集積所を周ることが可能となった。車体一杯にゴミが回収されると圧縮壁が最後部まで移動し、テールゲートより排出が行われる。この他、リフトに差し込み使用するサイドローダー付き収集バケットであるキュロットカン(''Curotto Can'')アタッチメントが存在する。

=== サイドローダー ===
[[File:Mountain View Waste Collection 5.jpg|thumb|200px|ウィリービンを2つ掴んだ機械式アーム]]
フロントローダーの側面方式である。手動ローダーまたは自動式のクローフック(爪)が取り付けられた機械式アームにより側面からウィリービンを積み込む方式である。アームで持ち上げた後、ホッパー内で回転または横転させることでゴミを排出する。アームは運転席に取り付けらたジョイスティックにより操作される。

==== 手動サイドローダー ====
車両側面に機械式ローダーが取り付けられているが、このローダーは上下運動とホッパーに投入するだけであり、ボタン操作を必要とし、車両までは人によって運ばれる。積み込みに関して後部ローダー方式に比べ作業時間が長くなる欠点があるが、サイドローダーが両側に取り付けられた車両の場合、道路の両側で同時に収集作業を行うことで相殺される利点も持ち合わせている。

==== 自動サイドローダー ====
[[File:Garbage collection by an automatic side loader during autumn in Kelowna.webm|thumb|210px|[[カナダ]]、[[ブリティッシュコロンビア州]]で収集作業中の自動サイドローダー]]
機械式アームが取り付けられており、主にウィリービンを掴み持ち上げた後、ホッパー内で回転しゴミが排出される<ref>{{cite web|url=http://www.madehow.com/Volume-3/Garbage-Truck.html|title=How garbage truck is made - material, used, parts, components, steps, industry, machine|website=www.madehow.com|accessdate=2020-06-26}}</ref>。従来2-3人を要する手作業の後部ローダー方式に比べ<ref>{{cite web|url=https://eagledumpsterrental.com/automated-garbage-collection.html|title=Automated Garbage Collection|publisher=(プレスリリース)フィラデルフィア州|date=2014-04-03|accessdate=2020-06-26}}</ref>、怪我に遭う確率が減り、一人で作業が可能であるため近年需要が高まっている。しかし、ゴミ箱に関しある程度互換性のある車輪付きウィリービンの使用が求められる<ref>{{cite web|author=Marc J. Rogoff|title=Solid waste collection automation in the United States|url=https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/0734242X14558164|accessdate=2020-06-26}}</ref>
。上部ホッパーに折り畳み式粉砕プレートが取り付けられた車両もあり、大きなゴミや堅いゴミが投入された場合に使用される。

==== 手動/自動サイドローダー ====
基本的に自動サイドローダーと同じ機構であり、アームを用いた収集が行えない場合、側面に取り付けられた手動サイドローダーでの収集が行われる。新型である高価な自動サイドローダー車両を購入する必要が無く、アームのみを後から既存車両に取り付けることが可能であり、費用面でメリットがある。

==== 半自動サイドローダー ====
機構は自動サイドローダー方式であるが、収集に関しゴミ箱の位置をアームに合わせる必要があるため、運転手は車両を降りて作業する必要がある<ref>{{cite web|url=http://big-ben.co/blog/the-evolution-of-21st-century-garbage-trucks.html|title=The Evolution of 21st Century Garbage Trucks|website=big-ben.co|accessdate=2020-06-26}}</ref>。

=== 後部ローダー ===
[[File:Tømning af vippecontainer.JPG|thumb|200px|[[コペンハーゲン]]で稼働する自動収集式後部ローダー。]]
日本で一般的な方式。トラック後部に開口部がありそこからゴミを投入する。海外では後部ローダー用コンテナが使用されており、コンテナは車両後部に合う様設計されており、コンテナを垂直にするためトラックには[[チェーン]]ないしケーブルが取り付けられており、収集者が一切触ることなく自動で投入する。

収集車は可動プレートないしシャベルを備えており、後部に投入されたゴミを救い上げて移動壁に押し付け圧縮する。また、この圧縮機の構造は多種多様であり、「スイープ・アンド・スライド式」と「スイング式」が現在の主流となっている。連続式の圧縮機は[[1960年]]代と[[1970年]]代に人気があり、[[ドイツ]]では[[ミキサー車]]と同じ原理となる、[[アルキメディアン・スクリュー]]の原理を利用した車両の開発を行っており、ゴミを粉砕しながら圧縮する方法が採られている。油圧壁は一定圧で強制開放されるか人為的に操作ボタンを押すことにより移動する。また、安全面での懸念と燃料消費量の増加傾向から小型な後部ローダー式の需要は年々下がっている。ドイツで開発された方式は農作物など[[有機廃棄物]]を効果的に[[堆肥]]化させることができるため、[[ニッチ]]な需要を保っている。

=== 吸引式 ===
[[File:Skraldesuger.JPG|thumb|200px|[[デンマーク]]で稼働する吸引式トラック]]
吸引機能の付いたホースが取り付けられたクレーンアームが車両に取り付けられている。この機構により遠方や高所、地下などへのアクセスが可能となり、伸ばした先で廃棄物を吸引する。駐車車両や天候、その他の障壁下での収集作業に関し利点がある。主に排出を行う車両は[[コンクリートポンプ車]]となり、アームが無い車両は[[バキュームカー]]となる。

=== グラップル ===
[[File:Grapple truck.png|thumb|200px|グラップルアームが取り付けられた小型トラック]]
クレーンや[[ショベルカー]]で使用されるアタッチメントの一種である鉤爪が取り付けられたクレーントラック。主に[[産業廃棄物]]処理や林業、建築現場で使用されており、この爪により大型の廃棄物や重要物の収集が可能であり、種類によっては爪を使用した解体も行うことが可能。

=== ロールオフ ===
車両に長方形のバケットを搭載しており、車両に取り付けられたアームによってバケットその物を地面に卸す(ロールオフ)ことが出来る機構。日本では一般的にアームロールと呼ばれる。工場やイベントなどではゴミ箱として使用され、産業廃棄物の収集にも使用されている。これにより手作業を介すことなく自動で収集が可能となる<ref>{{cite web | url=http://www.truckworld.com.au/Blogs/Waste-Truck-Collection-Systems | title=Waste Truck Collection Systems | publisher=TruckWorld.com.au | date=11 February 2015 | accessdate=2020-06-26}}</ref>。

=== ビンディッパー ===
リフト機構や上下反転機構のみを独立させた産業用機械<ref>{{cite web|url=https://solusgrp.com/blog/bin-tippers-from-solus-group-on-display-at-wasteexpo-trade-show.html|title=Bin Tippers From Solus Group On Display At WasteExpo Trade Show|website=solusgrp.com|accessdate=2020-06-26}}</ref>。[[パレット]]や小型コンテナに積まれた物を他の産業機械などに移動させる場合に使用される。
アメリカではゴミ収集車に搭載された時期もあった。近年、重量物を手作業で扱うことにより筋骨格系障害の原因になる研究結果がでており<ref>{{cite web|url=https://osha.europa.eu/en/tools-and-publications/publications/reports/TERO09009ENC|title=Work-related musculoskeletal disorders in the EU —
Facts and figures|publisher=欧州労働安全衛生機関|date=2010|accessdate=2020-06-26}}</ref><ref>{{cite journal | pmc= 4493964 | pmid=26155300 | doi=10.1186/s12995-015-0065-6 | volume=10 | title=Health status and health-related quality of life of municipal waste collection workers - a cross-sectional survey | journal=J Occup Med Toxicol | page=22 | last1 = Velasco Garrido | first1 = M | last2 = Bittner | first2 = C | last3 = Harth | first3 = V | last4 = Preisser | first4 = AM| year=2015 }}</ref> 、アメリカの政府機関<ref>{{Cite web |url=http://education.qld.gov.au/health/pdfs/healthsafety/waste-management-factsheet.pdf |title=Archived copy |access-date=2017-10-04 |archive-url=https://web.archive.org/web/20160705145225/http://education.qld.gov.au/health/pdfs/healthsafety/waste-management-factsheet.pdf|publisher=クイーンズランド州政府 |archive-date=2016-07-05|link dead=2020-06-26}}</ref>や学校s<ref>{{cite web|url=http://www.gaps.qld.edu.au/Discover%20Us/Documents/Manual-Handling-of-Wheelie-Bins.pdf|title=Safety ALERT |publisher=Occupational Health and Safety Section |date=2005|accessdate=2020-06-26}}</ref>、企業では手作業で行うことを禁止しており、健康と安全面から他業界でも採用する機会が増えている<ref>{{cite web|url=https://ccsbestpractice.org.uk/entries/dumpmaster-used-to-reduce-manual-handling/|title= Dumpmaster used to reduce manual handling Best Practice Hub|website=ccsbestpractice.org.uk|accessdate=2020-06-26}}</ref>。


== 主な用途 ==
== 主な用途 ==
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* [https://web.archive.org/web/20130501235844/http://www.kyokuto.com/product/buturyu/syusyu/ ごみ収集車] - 極東開発工業
* [https://web.archive.org/web/20130501235844/http://www.kyokuto.com/product/buturyu/syusyu/ ごみ収集車] - 極東開発工業
* [https://web.archive.org/web/20110717030710/http://www.morita-econos.com/garbage/dump/index.html 回転ダンプ式塵芥収集車(パックマスター)] - モリタエコノス
* [https://web.archive.org/web/20110717030710/http://www.morita-econos.com/garbage/dump/index.html 回転ダンプ式塵芥収集車(パックマスター)] - モリタエコノス

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2020年6月26日 (金) 05:58時点における版

ごみ収集車

ごみ収集車(ごみしゅうしゅうしゃ)とは、ごみを収集して処分施設まで運搬する目的に特化した業務用車両である。

日本においては、国土交通省による区分(特種用途自動車を参照)では塵芥車と称されるほか、通称として、塵芥収集車パッカー車清掃車集塵車などと称されることもある。

概要

台風被災地でのごみ収集
助手席ドアがスライドドアに改造されたごみ収集車

日本で最も普及している機械式ごみ収集車で、厨芥などの収集ごみを自動的に荷箱に押し込み圧縮する装置を備えている。

家庭ごみの収集には、住宅街の路地の奥まで入ることから2トン車が多く多く用いられるが、事業所等に出入りする4tトラック車体を用いる大容量のものもある。実積載量はごみの質による差はあるものの、2t車体で1トンから1.4トン程度とされる。回転板で押込む方式のプレス機構により減容しながら箱型の容器に積み込むので、ごみの飛散を防ぎ、積載効率を向上することができる。プレス機構は強力であり、普通の家具などは難なく押しつぶすパワーを持っている(自動販売機や大型冷蔵庫なども圧縮する力も持っている)。一方、操作員が詰まったゴミを排除しようとした際などに誤って巻き込まれる事故も発生している。

生ごみなどを含むごみを回収する際に悪臭を生ずる場合があり、この原因となる水分を垂れ流さないため車体の下部には汚水タンクが取り付けられている。また、香水の原理(濃いと悪臭となりうる成分を香りの成分中にごくわずかに含ませる程度であればいい香りと感じること。低濃度なら花の香りだが濃ければ便臭がする具体的な成分の例としてインドールスカトールなど)を応用し悪臭を甘い香りに変えるごみ収集車用の消臭剤も発売されている[1]

収集車は不燃ごみや粗大ごみの収集にも使われるが、石油ファンヒーターやガスボンベ、スプレー缶などがプレス板に押し潰される際に爆発し、最悪の場合は箱型容器から出火する例もある。

ごみの積み込みは人力で行うが、主に都市部では収集コンテナを置き、コンテナを収集車後部にあるリフトに接続して反転し、テールゲート内へ投入することもある。荷下ろしの方法はダンプ式または押出式(荷箱内の押出板が後方へスライド)である。

一部の車両は助手席からの乗降を容易にするため、助手席側のドアがスライドドアに改造されている。また、日本の一部の地方自治体アジア諸国などでは、周りの人々に気付いてもらいやすいように、電子音のメロディを鳴らしながらごみを回収する事例もある。台湾では「エリーゼのために」もしくは「乙女の祈り」がゴミ収集車の合図として広く知られている(なお、台湾の場合は低速走行しながらメロディを流す収集車にゴミを投げ込む方式となっている)。

アメリカではアーム付ごみ収集車もある、garbage truckやtrash truckと呼ばれている。アメリカの道路は広いので、一般に日本のものより大型車を採用している。圧縮機能も強力で、乗用車の車体を圧縮するパワーを持つ車両もある。

回転板式車は粗大ごみや剪定枝などの回収には不向きで、しばしば停止することが見られる。

歴史

何世紀にも渡り、廃棄物を運搬するためワゴンや他の手段が用いられてきたが、世界初となる自走式ゴミ収集車は1897年イギリスチジック地区評議会からソニークロフト英語版に対し発注されたものがその一つとされている。これは埃とゴミの収集に特化したデザインを採用した蒸気式ティッパー車であった[2]

1920年代には、初となるオープントップ式のトラックが使用されたが、悪臭と廃棄物の飛散により、直ぐに屋根付き車両が一般的に採用されている。これら蓋付きのトラックは、当時、人口密度の高い欧州地域に於いて初導入されており、次いで北米地域で導入されているが、直ぐに世界中で使用されている。

開発に関する問題点として、車に積み込むためにごみ収集作業員が廃棄物を肩の高さまで持ち上げる必要に駆られる点であった。そこで、1920年代後半、この問題を解決するため開発された方法は、車両後部に別室を設け、そこに螺旋状の回転体を取り付ける方法であった。その後、より効率的な方法として1929年に開発されたティッパー車の登場であった。ティッパー車には車体に箱を引き込むためのケーブルが取り付けられており、集積場の箱(コンテナ)毎ケーブルで車両に引き込む方式が採用されている。

1937年、アメリカ人ビジネスマンであったジョージ・デンプスター英語版は「デンプスター=ダンプスターシステム(Dempster-Dumpster system)」を開発。この方式は車輪が取り付けられた廃棄物コンテナを車両に傾けゴミを車両に搭載する方法であった。デンプスターが開発したコンテナは現在ダンプスター英語版Dumpster)として一般的に認知されており、今日「Dumpster(ゴミ箱)」という言語として使用されている。

1938年ミシガン州の自動車メーカーであったガーウッド・ロード・パッカー英語版は圧縮機(コンパクター)を開発。これをトラックに組み込むことで業界に革命を齎している。最初のコンパクターは従来の2倍の容積を積載することが可能であり、定期的に圧縮する油圧プレスを利用することで容積を増やすことが可能となった。

1955年、世界初となるフロントローダー(前方搭載)方式のゴミ収集車「デンプスター=ダンプスター」をアメリカのデンプスター・ブラザース英語版が開発。しかし、1970年代まで一般的ではなかった。これは、1970年代にウィリー・ビン英語版として一般的に認識されている移動式ゴミ箱が登場しており、ウィリー・ビンを専門に収集する車両が登場しており。積載効率を上げるため、圧縮メカニズムに様々な改良が加えられている。このほか1970年代半ばには、アメリカのピーターセン・インダスリーズ(Petersen Industries)が都市ゴミ用グラップル鉤爪)トラックの開発を行っている。

1969年アリゾナ州スコッツデール市は世界初となる全自動サイドローダー式収集車を導入。この新型は運転手が運転席から離れることなく30秒サイクルで300ガロン(約1,136)のゴミを回収することが可能となっている[3]

1997年、ピーターセン・インダスリーズは新型車両「リー・ラスバン(Lee Rathbun)」を発表、ライトニング・リア・ステアー・システム(Lightning Rear Steer System)。と名付けられた新方式は、トラックの後部に収集用クレーンを搭載し、運転手とクレーンオペレーター2名で収集を行い、トラック後部に牽引したバケットにゴミを搭載して行く方式である。これにより運転手は運転に集中することができ、クレーンオペレーターは継続的にウィリービンの回収を行うことが可能となる。

収集方式

フロントローダー

ミネソタ州での収集車 フロントローダー方式

北米の都市部、事業系、産業系ゴミの収集方式として一般的な方法である[4]。一般的に「ダンプスター」として知られる車輪と蓋付きの大型コンテナゴミ収集ボックスを車両前部に取り付けられた電動油圧式リフトを用いてコンテナごと持ち上げ回収する。収集コンテナの両脇にはリフトの差し込み口が設けられており、運転手は収集車の位置を合わせた後、運転席に取り付けられた操作用ジョイスティックを操作し水平を保ちながらコンテナを回収する。また、コンテナは上昇後、投入口(ホッパー)上で上下反転する様、リフトに反転機構が取り付けられている。投入されたゴミは前後に振動を加えながら油圧壁によって後部で圧縮される[5]

近年の車両では「pack-on-the-go hydraulics」システムが備わっており[6]、これにより位置合わせと収集の2工程であったものが、移動中にゴミ収集が可能となっており、このシステムにより、より早く回収することで、より多くの集積所を周ることが可能となった。車体一杯にゴミが回収されると圧縮壁が最後部まで移動し、テールゲートより排出が行われる。この他、リフトに差し込み使用するサイドローダー付き収集バケットであるキュロットカン(Curotto Can)アタッチメントが存在する。

サイドローダー

ウィリービンを2つ掴んだ機械式アーム

フロントローダーの側面方式である。手動ローダーまたは自動式のクローフック(爪)が取り付けられた機械式アームにより側面からウィリービンを積み込む方式である。アームで持ち上げた後、ホッパー内で回転または横転させることでゴミを排出する。アームは運転席に取り付けらたジョイスティックにより操作される。

手動サイドローダー

車両側面に機械式ローダーが取り付けられているが、このローダーは上下運動とホッパーに投入するだけであり、ボタン操作を必要とし、車両までは人によって運ばれる。積み込みに関して後部ローダー方式に比べ作業時間が長くなる欠点があるが、サイドローダーが両側に取り付けられた車両の場合、道路の両側で同時に収集作業を行うことで相殺される利点も持ち合わせている。

自動サイドローダー

カナダブリティッシュコロンビア州で収集作業中の自動サイドローダー

機械式アームが取り付けられており、主にウィリービンを掴み持ち上げた後、ホッパー内で回転しゴミが排出される[7]。従来2-3人を要する手作業の後部ローダー方式に比べ[8]、怪我に遭う確率が減り、一人で作業が可能であるため近年需要が高まっている。しかし、ゴミ箱に関しある程度互換性のある車輪付きウィリービンの使用が求められる[9] 。上部ホッパーに折り畳み式粉砕プレートが取り付けられた車両もあり、大きなゴミや堅いゴミが投入された場合に使用される。

手動/自動サイドローダー

基本的に自動サイドローダーと同じ機構であり、アームを用いた収集が行えない場合、側面に取り付けられた手動サイドローダーでの収集が行われる。新型である高価な自動サイドローダー車両を購入する必要が無く、アームのみを後から既存車両に取り付けることが可能であり、費用面でメリットがある。

半自動サイドローダー

機構は自動サイドローダー方式であるが、収集に関しゴミ箱の位置をアームに合わせる必要があるため、運転手は車両を降りて作業する必要がある[10]

後部ローダー

コペンハーゲンで稼働する自動収集式後部ローダー。

日本で一般的な方式。トラック後部に開口部がありそこからゴミを投入する。海外では後部ローダー用コンテナが使用されており、コンテナは車両後部に合う様設計されており、コンテナを垂直にするためトラックにはチェーンないしケーブルが取り付けられており、収集者が一切触ることなく自動で投入する。

収集車は可動プレートないしシャベルを備えており、後部に投入されたゴミを救い上げて移動壁に押し付け圧縮する。また、この圧縮機の構造は多種多様であり、「スイープ・アンド・スライド式」と「スイング式」が現在の主流となっている。連続式の圧縮機は1960年代と1970年代に人気があり、ドイツではミキサー車と同じ原理となる、アルキメディアン・スクリューの原理を利用した車両の開発を行っており、ゴミを粉砕しながら圧縮する方法が採られている。油圧壁は一定圧で強制開放されるか人為的に操作ボタンを押すことにより移動する。また、安全面での懸念と燃料消費量の増加傾向から小型な後部ローダー式の需要は年々下がっている。ドイツで開発された方式は農作物など有機廃棄物を効果的に堆肥化させることができるため、ニッチな需要を保っている。

吸引式

デンマークで稼働する吸引式トラック

吸引機能の付いたホースが取り付けられたクレーンアームが車両に取り付けられている。この機構により遠方や高所、地下などへのアクセスが可能となり、伸ばした先で廃棄物を吸引する。駐車車両や天候、その他の障壁下での収集作業に関し利点がある。主に排出を行う車両はコンクリートポンプ車となり、アームが無い車両はバキュームカーとなる。

グラップル

グラップルアームが取り付けられた小型トラック

クレーンやショベルカーで使用されるアタッチメントの一種である鉤爪が取り付けられたクレーントラック。主に産業廃棄物処理や林業、建築現場で使用されており、この爪により大型の廃棄物や重要物の収集が可能であり、種類によっては爪を使用した解体も行うことが可能。

ロールオフ

車両に長方形のバケットを搭載しており、車両に取り付けられたアームによってバケットその物を地面に卸す(ロールオフ)ことが出来る機構。日本では一般的にアームロールと呼ばれる。工場やイベントなどではゴミ箱として使用され、産業廃棄物の収集にも使用されている。これにより手作業を介すことなく自動で収集が可能となる[11]

ビンディッパー

リフト機構や上下反転機構のみを独立させた産業用機械[12]パレットや小型コンテナに積まれた物を他の産業機械などに移動させる場合に使用される。 アメリカではゴミ収集車に搭載された時期もあった。近年、重量物を手作業で扱うことにより筋骨格系障害の原因になる研究結果がでており[13][14] 、アメリカの政府機関[15]や学校s[16]、企業では手作業で行うことを禁止しており、健康と安全面から他業界でも採用する機会が増えている[17]

主な用途

ごみ収集の他にも、古紙回収業者がオフィス町内会等から古段ボールや新聞古紙などを回収したり、造園業者が剪定後の小枝の運搬用とするなど積荷を限定して使用することもある。

最近では弾力が大きいペットボトル積込に対応した機種も発売されている。

最新式のパッカー車は計量装置(自重計)を装備し、ゴミの重量をおおむね正確に計量することが可能である。

種類

ごみ収集車(パッカー車)の内部構造
  • 回転板式車(パッカー車)
    • テールゲート底部にある回転板でごみをかき上げ、上部にある押込板で荷箱内へ積み込む。ほとんどがダンプカーのように荷台を持ち上げて排出する。
    • プレス機構と違って飛び散りが少なく、生ごみや缶・瓶などの回収に適している。
  • 圧縮板式車
    • テールゲート内に上下する圧縮板があり、ごみをプレスしてからかき上げて荷箱内へ積み込む。センターパネル(ゴミ逆流防止装置)を装備するものもある。大半が荷台を持ち上げずに荷箱内の排出板で押し出して排出する。一般ごみはもちろん、家具や冷蔵庫、自転車までもつぶす力を持っている。産業廃棄物処理用に使われることもある。
      • メーカーによると、圧力は150〜160kg/cm²くらいだという。
荷箱回転式のごみ収集車
  • 荷箱回転式車
    • 円形のドラムを回転させながら、ごみを巻き込んで荷箱内へ積み込む。ロータリー式とも呼ばれ、コンクリートミキサー車のごみ収集車版みたいなものである。大半が荷台を少し傾けてドラムを逆回転さして排出する。中はコンクリートミキサー車のようなスクリューがある。
    • 狭い路地に対応の軽自動車版も登場している。

日本のメーカーにおける呼称(商品名)は以下の通り。

  • 極東開発工業 - プレス式:プレスパック、回転板式:パックマン
  • 新明和工業 - プレス式:G-PX・タウンパック、回転板式:G-RX・ルートパッカー
    シキボウとの共同開発による香水の原理を応用した臭気対策剤および機材を同グループの新明和商事において販売[1]
    なお、同じくグループの東邦車輛では同社製バキュームカー向けに同種の真空ポンプ用潤滑油も販売している。
    • 富士重工業(現:SUBARU) - フジマイティー(プレス式:G-PX、回転板式:G-RX) ※2012年末をもって製造を終了、2013年に新明和に事業譲渡した。
  • 富士車輌 - プレス式:プレスローダー、回転板式:クリーンパッカー、荷箱回転式:ロータリープレス
  • モリタエコノス - プレス式:プレスマスター、回転板式:パックマスター

主な使用されている車種

小型トラック

中型トラック

歴史

日本で現在のように使われ始めたのは、1960年代後半からである。

脚注

  1. ^ a b 塵芥車用臭気対策剤 「デオマジック 香り de まじっく」 および 専用噴霧装置を 発売 | 特装車 | 新明和工業株式会社 - 新明和工業 2017年5月17日
  2. ^ "Motor-Cars for Dust Collection", The Automotor and Horseless Carriage Journal, February 1897, p192
  3. ^ City of Scottsdale, Arizona, Solid Waste Management Division”. Classic Refuse Trucks. 2020年6月26日閲覧。
  4. ^ The Ever Expanding History of the Front Load Refuse Truck”. 2020年6月26日閲覧。
  5. ^ Classic Refuse Trucks FRONT LOADERS”. www.classicrefusetrucks.com. 2020年6月26日閲覧。
  6. ^ Heil expands operate-at-idle offering”. Freet Owner (2005年2月4日). 2020年6月26日閲覧。
  7. ^ How garbage truck is made - material, used, parts, components, steps, industry, machine”. www.madehow.com. 2020年6月26日閲覧。
  8. ^ Automated Garbage Collection”. (プレスリリース)フィラデルフィア州 (2014年4月3日). 2020年6月26日閲覧。
  9. ^ Marc J. Rogoff. “Solid waste collection automation in the United States”. 2020年6月26日閲覧。
  10. ^ The Evolution of 21st Century Garbage Trucks”. big-ben.co. 2020年6月26日閲覧。
  11. ^ Waste Truck Collection Systems”. TruckWorld.com.au (2015年2月11日). 2020年6月26日閲覧。
  12. ^ Bin Tippers From Solus Group On Display At WasteExpo Trade Show”. solusgrp.com. 2020年6月26日閲覧。
  13. ^ “[https://osha.europa.eu/en/tools-and-publications/publications/reports/TERO09009ENC Work-related musculoskeletal disorders in the EU — Facts and figures]”. 欧州労働安全衛生機関 (2010年). 2020年6月26日閲覧。
  14. ^ Velasco Garrido, M; Bittner, C; Harth, V; Preisser, AM (2015). “Health status and health-related quality of life of municipal waste collection workers - a cross-sectional survey”. J Occup Med Toxicol 10: 22. doi:10.1186/s12995-015-0065-6. PMC 4493964. PMID 26155300. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4493964/. 
  15. ^ Archived copy”. クイーンズランド州政府. 2016年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月4日閲覧。
  16. ^ Safety ALERT”. Occupational Health and Safety Section (2005年). 2020年6月26日閲覧。
  17. ^ Dumpmaster used to reduce manual handling Best Practice Hub”. ccsbestpractice.org.uk. 2020年6月26日閲覧。

関連項目

外部リンク