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'''マイケル・ストーンブレーカー'''(Michael Stonebraker, [[1943年]][[10月11日]]<ref>{{cite web |url= http://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?arnumber=04309174 |filetype=pdf |accessdate=2011-01-05 |publisher=IEEE |work=TRANSACTIONS ON SYSTEMS, MAN, AND CYBERNETICS, |title=Contributors |year=1972 |month=Sept}}</ref> - )は[[データベース]]の研究開発で知られた[[計算機科学者]]。[[リレーショナルデータベース]]業界に多大な影響を与えた。[[Ingres]]、[[Illustra]]、Cohera、[[:en:StreamBase Systems|StreamBase]] といったシステム構築に携わり、かつては[[Informix]]の[[最高技術責任者|CTO]]も務めた。また、''Readings in Database Systems'' の著者としても知られている。


== 経歴 ==
[[1965年]]、[[プリンストン大学]]で学士号を取得し、[[ミシガン大学]]で修士号(1967年)と博士号(1971年)を取得した。[[フォン・ノイマンメダル]]、[[Special Interest Group on Management of Data|SIGMOD]] [[エドガー・F・コッド]]発明賞を受賞している。現在は[[マサチューセッツ工科大学]] (MIT) の準教授である。
[[1965年]]、[[プリンストン大学]]で学士号を取得し、[[ミシガン大学]]で修士号(1967年)と博士号(1971年)を取得した<ref name="brakerphd">{{Cite thesis |degree=PhD |first=Michael Ralph |last=Stonebraker |title=The Reduction of Large Scale Markov Models for Random Chains |publisher=University of Michigan |date=1971 |url= http://dl.acm.org/citation.cfm?id=905670&preflayout=tabs}}</ref>。[[IEEE]][[フォン・ノイマンメダル]]、[[Special Interest Group on Management of Data|SIGMOD]] [[エドガー・F・コッド]]発明賞などを受賞している。1994年、[[Association for Computing Machinery]] (ACM) の[[フェロー]]に選ばれた<ref>{{Cite web |url= http://portal.acm.org/author_page.cfm?id=81337493529 |title=Michael Ralph Stonebraker - ACM author profile page |format= |work= |accessdate=2011-07-27}}</ref>。1997年、[[全米技術アカデミー]]会員となった。


29年間[[カリフォルニア大学バークレー校]]で計算機科学の教授を務め、そこで[[Ingres]]や[[PostgreSQL|Postgres]]という関係データベースシステムを開発した。2013年現在は[[マサチューセッツ工科大学]] (MIT) の準教授であり、Aurora<ref>{{Cite journal | last1 = Abadi | first1 = D. J. | last2 = Carney | first2 = D. | last3 = Çetintemel | first3 = U. | last4 = Cherniack | first4 = M. | last5 = Convey | first5 = C. | last6 = Lee | first6 = S. | last7 = Stonebraker | first7 = M. | last8 = Tatbul | first8 = N. | last9 = Zdonik | first9 = S. | doi = 10.1007/s00778-003-0095-z | title = Aurora: A new model and architecture for data stream management | journal = The VLDB Journal the International Journal on Very Large Data Bases | volume = 12 | issue = 2 | pages = 120 | year = 2003 }}</ref>、[[C-Store]]、[[:en:H-Store|H-Store]]、Morpheus、SciDB といったシステム開発に参加している。
== Ingres ==
1973年、ストーンブレーカーと同僚の Eugene Wong は[[IBM]]が発表した一連の論文を読み、[[リレーショナルデータベース]]システム ([[RDBMS]]) の研究を開始した。1970年代中盤、彼らは学生プログラマを使って '''[[Ingres]]''' と呼ばれる実用可能なシステムを完成させた。Ingres は[[デジタル・イクイップメント・コーポレーション|DEC]]のマシンの[[UNIX]]上で動作するものだったため、[[メインフレーム]]で動作する IBM の [[System R]] に比較すると[[ローエンド]]であると見なされた。


== 主なプロジェクト ==
しかし1980年代初め、それらローエンド機の性能と機能は IBM のメインフレームに迫るようになり、Ingres も立派な商用アプリケーションと見られるようになったのである。Ingres は[[BSD License]]の派生のようなライセンス条件で低料金で提供され、すぐさま複数の企業がこれをベースとした Ingres 派生製品を作るようになった。
ストーンブレーカーの経歴は、バークレーでの関係データベース開発とMITでの新たなデータ管理システム開発に大きく分けられる。


=== バークレー時代 (1971&ndash;2000) ===
ストーンブレーカー自身も1982年にバークレーを離れ、'''Ingres Corporation''' を設立。同社は後に [[CA Inc.|コンピュータ・アソシエイツ]] (CA) に買収されたが、2005年に独立企業として再設立された。1994年に買収された際にストーンブレーカーはバークレーに戻った。
1971年、カリフォルニア大学バークレー校 (UCB) の助教授となった。そこで Ingres と Postgres という先駆的な関係データベースを開発した。


== Postgres ==
==== Ingres ====
1973年、ストーンブレーカーと同僚の Eugene Wong は[[エドガー・F・コッド]]が発表した一連の論文を読み、[[リレーショナルデータベース]]システム ([[RDBMS]]) の研究を開始した。当初そのプロジェクトは [[Ingres|INGRES]] (Interactive Graphics and Retrieval System) と称し<ref name="ingres">{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | last2 = Held | first2 = G. | last3 = Wong | first3 = E. | last4 = Kreps | first4 = P. | title = The design and implementation of INGRES | doi = 10.1145/320473.320476 | journal = ACM Transactions on Database Systems | volume = 1 | issue = 3 | pages = 189 | year = 1976 }}</ref>、[[IBM]]の [[System R]] と共に[[関係モデル]]の実用的かつ効率的な実装が可能であることを知らしめたシステムとなった。[[B木]]の採用、[[レプリケーション]]、[[データ完全性]]を保証する制約など、INGRESで導入されたアイデアはその後の[[関係データベース管理システム|RDBMS]]で広く採用された。また、[[トランザクション処理]]性能を保てる[[ロック (情報工学)|ロック機構]]について様々な実験を行った<ref>{{Cite web |url= http://redbook.cs.berkeley.edu/redbook3/lec2.html |accessdate=2009-11-24 |publisher=Joseph Hellerstein |title=Relational Roots |year=1998}}</ref>。
バークレーに戻ったストーンブレーカーは、[[関係モデル]] (リレーショナルモデル) の限界に着目した Ingres の後継システム(post-ingres)開発を開始し、そのプロジェクトを '''Postgres''' と名づけた。Postgres では、[[データベース]]が中身のデータを「理解」する様々な機能が備わっており、プログラムしやすさが格段に向上している。Postgres も BSD 風ライセンスで配布され、そのコードは今日の[[フリーソフトウェア]] [[PostgreSQL]] の基盤となった。


1970年代中盤、学生プログラマを使って実用可能なシステムを完成させた。INGRES は[[デジタル・イクイップメント・コーポレーション|DEC]]のマシンの[[UNIX]]上で動作するものだったため、[[メインフレーム]]で動作する IBM の [[System R]] に比較すると[[ローエンド]]であると見なされた。
1992年、ストーンブレーカーは新たに開発した '''[[Illustra]]''' のコードを商業化するため、バークレーを再び離れた。当初、その製品は市場には受け入れられなかったが、1995年にリリースしたバージョンで導入した '''DataBlades''' と呼ばれるプラグイン機能が好評を博した。そのため Informix 社が Illustra を即座に買収し、彼らの主要製品にそれを組み込んだのである。


しかし1980年代初め、それらローエンド機の性能と機能は IBM のメインフレームに迫るようになり、INGRES も立派な商用アプリケーションと見られるようになった。INGRES は[[BSDライセンス]]の派生ライセンス条件で低料金で提供され、すぐさま複数の企業がこれをベースとした製品を作るようになった。
== Cohera ==
バークレーに戻ったストーンブレーカーは、広域[[分散データベース]]を研究する [[Mariposa]] プロジェクトを開始した。これを商業化するため、1990年代後半、ストーンブレーカーは Cohera Software 社を設立した。Cohera は企業に分散するデータベースを統合するためのミドルウェアであり、複数のデータベースのデータを統合し、仮想的にあたかも一つのデータベースに見せるための機能を有していた。
この機能は、B2BサイトやEマーケットプレイスなどに受け入れられ、Cohera E-Catalog Systemとして、分散したカタログ統合などに導入される場合が多かった。
しかしEマーケットプレイスのコンセプトも大きくは伸びず、[[連合データベース]]市場は1999年から2000年のころにはあまり大きくないと予想されたため、Cohera は統合エンジンに業種固有の機能を提供する方向に転換した。Cohera は最終的に2001年8月に[[ピープルソフト]]に買収された。


ストーンブレーカー自身も1982年に '''Ingres Corporation''' を設立。同社は後に [[CAテクノロジーズ|コンピュータ・アソシエイツ]] (CA) に買収されたが、2005年に独立企業として再設立された。INGRESをベースとして設立された他の企業としては、ストーンブレーカーの下で学んだ Robert Epstein が創業した[[Sybase]]などがある。Sybaseのソフトウェアは後に [[Microsoft SQL Server]] のベースとなった<ref>{{Cite web |url= http://redbook.cs.berkeley.edu/redbook3/lec1.html |accessdate=2009-11-24 |publisher=Joseph Hellerstein |title=Motivation & DBMS Architecture Overview |year=1998}}</ref>。
== StreamBase ==
1990年代末ごろ、ストーンブレーカーは[[マサチューセッツ工科大学]] (MIT) に移り、'''Aurora'''と呼ばれるプロジェクトを開始した[http://www.cs.brown.edu/research/aurora/]。Aurora はストリーミングのためのデータ管理システムであり、SQL から派生した '''[[StreamSQL]]''' を使用する。ストーンブレーカーは、これを商用化する目的で '''StreamBase Systems'''社を設立した[http://www.streambase.com]。


== C-Store と Vertica ==
==== Postgres ====
Ingres創業後ストーンブレーカーは、[[関係モデル]] (リレーショナルモデル) の限界に着目した Ingres の後継システム開発を開始し、そのプロジェクトを '''POSTGRES''' (POST-inGRES) と名づけた<ref>{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | last2 = Rowe | first2 = L. A. | doi = 10.1145/16856.16888 | title = The design of POSTGRES | journal = ACM SIGMOD Record | volume = 15 | issue = 2 | pages = 340 | year = 1986 }}</ref>。POSTGRES では複雑な[[データ型]]をサポートするよう設計し、最終的な性能も向上させている。Postgresは各フィールドが複雑なデータ型を扱える[[オブジェクト関係データベース|オブジェクト関係]]プログラミングモデルを提供し、ユーザーは新たなデータ型を作り、それを扱う関数をプログラミング可能となっていた。また様々な拡張が可能で、[[クエリ最適化]]、クエリ言語そのもの、索引フレームワークなど様々な部分の改造・拡張容易になっていた。これにより使いやすさと性能が向上し、[[地理情報システム]]の機能や[[時系列]]処理の機能をデータベース内に組み込む応用も生まれた。これは商用データベース市場を大きく広げることに貢献している。
ストーンブレーカーが関与するもう1つのプロジェクトがカラム指向DBMS [[C-Store]]である。その技術は[http://www.vertica.com Vertica Systems]が商業化している。同社の創設にはストーンブレーカーも関わり、CTO を務めている。

Postgres も BSD 風ライセンスで配布され、そのコードは今日の[[フリーソフトウェア]] [[PostgreSQL]] の基盤となった。PostgreSQLをベースとして創業した企業としては、[[:en:Aster Data Systems|Aster Data Systems]]、[[EnterpriseDB]]、[[:en:Greenplum|Greenplum]] などがある。ストーンブレーカー自身もそのコードの商業化を目指し '''Illustra''' を創業。1996年、[[Informix]]がIllustraを買収した。ストーンブレーカーはInformixのCTOとなり、2000年9月までその役職を務めていた。InformixはIllustraの[[オブジェクト関係マッピング|O-Rマッピング]]と[[:en:DataBlade|DataBlade]]機能を主力製品に組み込んだ。

==== Mariposa と Cohera ====
その後、広域[[分散データベース]]を研究する Mariposa プロジェクトを開始した<ref>{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | last2 = Aoki | first2 = P. M. | last3 = Litwin | first3 = W. | last4 = Pfeffer | first4 = A. | last5 = Sah | first5 = A. | last6 = Sidell | first6 = J. | last7 = Staelin | first7 = C. | last8 = Yu | first8 = A. | doi = 10.1007/s007780050015 | title = Mariposa: A wide-area distributed database system | journal = The VLDB Journal the International Journal on Very Large Data Bases | volume = 5 | pages = 48 | year = 1996 }}</ref>。これを商業化するため、1990年代後半、Cohera 社を設立した。Mariposaの背後にある考え方は、資源取引の経済モデルにおいて、様々な組織に分散して存在するデータを統合し、1つの関係インタフェースから問い合わせられるよう[[連合データベース]]を構築するというものだった。

Coheraは当初Mariposaプロジェクトのアイデアの商業化を目的としていたが、その連合データ統合エンジン上に実装された[[企業間取引|B2B]]のカタログ管理アプリケーションに注力するようになっていった。Cohera の知的資産は最終的に2001年8月に[[ピープルソフト]]に買収され、同社の Enterprise Catalog Management の基盤となった。その後ピープルソフトは2004年に[[オラクル (企業)|オラクル]]に買収された。

=== MIT時代 (2001&ndash; ) ===
2001年に[[マサチューセッツ工科大学]] (MIT) に移ると、新たに一連の研究プロジェクトを開始し、いくつかの企業も創業している。

==== Aurora と StreamBase ====
Auroraプロジェクト<ref>[http://www.cs.brown.edu/research/aurora/ Aurora Project]</ref>では、[[ブランダイス大学]]および[[ブラウン大学]]と共同で、新たなデータモデルとクエリ言語を使った[[ストリーミング]]データのためのデータ管理に注力している。データをレコード単位で取り出して処理する関係データベースとは異なり、外部データ源から非同期に到着するデータ(株価情報、ニュース、センサからの情報など)を扱うことに主眼を置いている。

ストーンブレーカーは、これを商用化する目的で [[:en:StreamBase Systems|StreamBase Systems]] 社を設立した。

==== C-Store と Vertica ====
2005年に開始した[[C-Store]]プロジェクトでは、[[ブランダイス大学]]、[[ブラウン大学]]、{{仮リンク|マサチューセッツ・ボストン大学|en|University of Massachusetts Bostonn}}と共に[[データウェアハウス]]向けの並列・[[シェアード・ナッシング・アーキテクチャ|非共有型]]・[[列指向データベースマネジメントシステム|列指向DBMS]]を開発した。C-Storeでは列(カラム)に分けてデータを格納することでI/Oを削減し、通常のデータベースよりもデータ格納密度を高めている。

2005年、C-Storeを商業化すべく[[Vertica]]を創業した。

==== Morpheus と Goby ====
2006年、[[フロリダ大学]]と共に Morpheus プロジェクトを開始。Morpheusは複数のデータ源間のデータ変換を調停する{{仮リンク|データ統合|en|data integration}}システムである。ウェブサイトやウェブサービスでのインタフェースを提供することを意図しており、複数のサービスの統合インタフェースを提供したり、複数のサービスの検索を可能にしたりといった用途がある。

2009年、Morpheusのアイデアに基づいた{{仮リンク|ローカル検索|en|Local search (Internet)}}会社 Goby を創業した<ref>{{Citation | url = http://www.goby.com/ | title = Goby}}.</ref>。

==== H-Store と VoltDB ====
2007年、[[ブラウン大学]]、[[イェール大学]]と共同で H-Store プロジェクトを開始<ref>[http://hstore.cs.brown.edu/ H-Store]</ref>。非常に高スループットな分散[[インメモリデータベース|インメモリ型]][[オンライントランザクション処理|OLTP]]システムである。

2009年、H-Storeのアイデアに基づいた [[VoltDB]] を創業。CTOを務めている。

==== SciDB ====
2008年、[[ブラウン大学]]、[[ポートランド州立大学]]、[[SLAC国立加速器研究所|SLAC]]、[[ワシントン大学 (ワシントン州)|ワシントン大学]]、[[ウィスコンシン大学マディソン校]]と共同で [[:en:SciDB|SciDB]] プロジェクトを開始<ref name="scidb">{{Cite journal | last1 = Brown | first1 = P. G. | chapter = Overview of sciDB | doi = 10.1145/1807167.1807271 | title = Proceedings of the 2010 international conference on Management of data - SIGMOD '10 | pages = 963 | year = 2010 | isbn = 9781450300322 }}</ref><ref name="scidb2">{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | last2 = Brown | first2 = P. | last3 = Poliakov | first3 = A. | last4 = Raman | first4 = S. | chapter = The Architecture of SciDB | doi = 10.1007/978-3-642-22351-8_1 | title = Scientific and Statistical Database Management | series = Lecture Notes in Computer Science | volume = 6809 | pages = 1 | year = 2011 | isbn = 978-3-642-22350-1 }}</ref>。科学研究むけに特化したオープンソースのDBMSを開発している<ref>{{Cite news | url= http://www.theregister.co.uk/2010/09/13/michael_stonebraker_interview/ | title=SciDB: Relational daddy answers Google, Hadoop, NoSQL | work=The Register | author= | date=2010-09-13 | accessdate=2012-01-11 }}</ref>。

==== NoSQL ====
2010年から2011年にかけては、[[NoSQL]]運動の評論家のような活動もしている<ref>{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | title = SQL databases v. NoSQL databases | doi = 10.1145/1721654.1721659 | journal = Communications of the ACM | volume = 53 | issue = 4 | pages = 10 | year = 2010 }}</ref><ref>{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | title = Stonebraker on NoSQL and enterprises | doi = 10.1145/1978542.1978546 | journal = Communications of the ACM | volume = 54 | issue = 8 | pages = 10 | year = 2011 }}</ref><ref>{{Cite journal | last1 = Stonebraker | first1 = M. | last2 = Abadi | first2 = D. | last3 = Dewitt | first3 = D. J. | last4 = Madden | first4 = S. | last5 = Paulson | first5 = E. | last6 = Pavlo | first6 = A. | last7 = Rasin | first7 = A. | title = MapReduce and parallel DBMSs | doi = 10.1145/1629175.1629197 | journal = Communications of the ACM | volume = 53 | pages = 64 | year = 2010 }}</ref>。

== 指導した学生 ==
ストーンブレーカーは学界や産業界へ貢献しているだけでなく、彼の指導した多くの学生が学界や産業界で活躍している。主な人物を以下に挙げる<ref name="mathgene">{{MathGenealogy |id=31091}}</ref>。

* Robert Epstein - [[Sybase]]創業者の1人
* [[:en:Diane Greene|Diane Greene]] - [[VMWare]]創業者の1人で、元CEO
* Paula Hawthorn - [[Informix]]の技術担当副社長を務めていた
* Gerald Held - [[オラクル (企業)|オラクル]]の技術担当副社長を務めていた
* [[:en:Joseph M. Hellerstein|Joseph M. Hellerstein]] - UCBの教授
* Anant Jhingran - [[IBM]]情報管理部門の副社長兼CTO
* [[:en:Margo Seltzer|Margo Seltzer]] - [[ハーバード大学]]の計算機科学の教授
* [[:en:Dale Skeen|Dale Skeen]] - {{仮リンク|ティブコソフトウェア|en|Tibco Software}}、[http://www.vitria.com/ Vitria] を創業


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{Reflist|2}}
<references />


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{Cite web |url= http://s2k-ftp.cs.berkeley.edu/nasa_e2e/mike.html |date=1995-12-23 |title=Michael Stonebraker | publisher = University of California | location = Berkeley, CA, USA |accessdate=2009-07-14}}
* [http://www.csail.mit.edu/biographies/PI/bioprint.php?PeopleID=883 Stonebraker's home page at MIT]
* {{Cite web |url= http://www.csail.mit.edu/user/1547 |title=Michael Stonebraker |work=User Profiles |publisher=MIT | location = MA, USA |date=2009-07-09 |accessdate=2009-07-14}}
* {{Citation | url = http://www.dbms2.com/category/michael-stonebraker/ | chapter = Michael Stonebraker | title = DBMS2 | last = Monash | first = Curt}}
* {{Cite web |url= http://publications.csail.mit.edu/abstracts/abstracts07/stonebraker-abstract1/stonebraker-abstract1.html |title=Morpheus: A Data Integration Toolkit |work= CSAIL Research Abstracts | publisher = MIT | location = MA, USA |accessdate=2009-11-22}}


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2013年3月12日 (火) 04:17時点における版

マイケル・ストーンブレーカー
UCBでのマイケル。ストーンブレーカー (2009)
生誕 (1943-10-11) 1943年10月11日(80歳)
研究機関 カリフォルニア大学バークレー校
ミシガン大学
マサチューセッツ工科大学
出身校 プリンストン大学
ミシガン大学
論文 The Reduction of Large Scale Markov Models for Random Chains (1971年)
博士課程
指導教員
Arch Waugh Naylor
主な業績 IngresPostgresVerticaStreambaseIllustraVoltDBSciDB
公式サイト
csail.mit.edu/user/1547
プロジェクト:人物伝
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マイケル・ストーンブレーカー(Michael Stonebraker, 1943年10月11日[1] - )はデータベースの研究開発で知られた計算機科学者リレーショナルデータベース業界に多大な影響を与えた。IngresIllustra、Cohera、StreamBase といったシステム構築に携わり、かつてはInformixCTOも務めた。また、Readings in Database Systems の著者としても知られている。

経歴

1965年プリンストン大学で学士号を取得し、ミシガン大学で修士号(1967年)と博士号(1971年)を取得した[2]IEEEフォン・ノイマンメダルSIGMOD エドガー・F・コッド発明賞などを受賞している。1994年、Association for Computing Machinery (ACM) のフェローに選ばれた[3]。1997年、全米技術アカデミー会員となった。

29年間カリフォルニア大学バークレー校で計算機科学の教授を務め、そこでIngresPostgresという関係データベースシステムを開発した。2013年現在はマサチューセッツ工科大学 (MIT) の準教授であり、Aurora[4]C-StoreH-Store、Morpheus、SciDB といったシステム開発に参加している。

主なプロジェクト

ストーンブレーカーの経歴は、バークレーでの関係データベース開発とMITでの新たなデータ管理システム開発に大きく分けられる。

バークレー時代 (1971–2000)

1971年、カリフォルニア大学バークレー校 (UCB) の助教授となった。そこで Ingres と Postgres という先駆的な関係データベースを開発した。

Ingres

1973年、ストーンブレーカーと同僚の Eugene Wong はエドガー・F・コッドが発表した一連の論文を読み、リレーショナルデータベースシステム (RDBMS) の研究を開始した。当初そのプロジェクトは INGRES (Interactive Graphics and Retrieval System) と称し[5]IBMSystem R と共に関係モデルの実用的かつ効率的な実装が可能であることを知らしめたシステムとなった。B木の採用、レプリケーションデータ完全性を保証する制約など、INGRESで導入されたアイデアはその後のRDBMSで広く採用された。また、トランザクション処理性能を保てるロック機構について様々な実験を行った[6]

1970年代中盤、学生プログラマを使って実用可能なシステムを完成させた。INGRES はDECのマシンのUNIX上で動作するものだったため、メインフレームで動作する IBM の System R に比較するとローエンドであると見なされた。

しかし1980年代初め、それらローエンド機の性能と機能は IBM のメインフレームに迫るようになり、INGRES も立派な商用アプリケーションと見られるようになった。INGRES はBSDライセンスの派生ライセンス条件で低料金で提供され、すぐさま複数の企業がこれをベースとした製品を作るようになった。

ストーンブレーカー自身も1982年に Ingres Corporation を設立。同社は後に コンピュータ・アソシエイツ (CA) に買収されたが、2005年に独立企業として再設立された。INGRESをベースとして設立された他の企業としては、ストーンブレーカーの下で学んだ Robert Epstein が創業したSybaseなどがある。Sybaseのソフトウェアは後に Microsoft SQL Server のベースとなった[7]

Postgres

Ingres創業後ストーンブレーカーは、関係モデル (リレーショナルモデル) の限界に着目した Ingres の後継システム開発を開始し、そのプロジェクトを POSTGRES (POST-inGRES) と名づけた[8]。POSTGRES では複雑なデータ型をサポートするよう設計し、最終的な性能も向上させている。Postgresは各フィールドが複雑なデータ型を扱えるオブジェクト関係プログラミングモデルを提供し、ユーザーは新たなデータ型を作り、それを扱う関数をプログラミング可能となっていた。また様々な拡張が可能で、クエリ最適化、クエリ言語そのもの、索引フレームワークなど様々な部分の改造・拡張容易になっていた。これにより使いやすさと性能が向上し、地理情報システムの機能や時系列処理の機能をデータベース内に組み込む応用も生まれた。これは商用データベース市場を大きく広げることに貢献している。

Postgres も BSD 風ライセンスで配布され、そのコードは今日のフリーソフトウェア PostgreSQL の基盤となった。PostgreSQLをベースとして創業した企業としては、Aster Data SystemsEnterpriseDBGreenplum などがある。ストーンブレーカー自身もそのコードの商業化を目指し Illustra を創業。1996年、InformixがIllustraを買収した。ストーンブレーカーはInformixのCTOとなり、2000年9月までその役職を務めていた。InformixはIllustraのO-RマッピングDataBlade機能を主力製品に組み込んだ。

Mariposa と Cohera

その後、広域分散データベースを研究する Mariposa プロジェクトを開始した[9]。これを商業化するため、1990年代後半、Cohera 社を設立した。Mariposaの背後にある考え方は、資源取引の経済モデルにおいて、様々な組織に分散して存在するデータを統合し、1つの関係インタフェースから問い合わせられるよう連合データベースを構築するというものだった。

Coheraは当初Mariposaプロジェクトのアイデアの商業化を目的としていたが、その連合データ統合エンジン上に実装されたB2Bのカタログ管理アプリケーションに注力するようになっていった。Cohera の知的資産は最終的に2001年8月にピープルソフトに買収され、同社の Enterprise Catalog Management の基盤となった。その後ピープルソフトは2004年にオラクルに買収された。

MIT時代 (2001– )

2001年にマサチューセッツ工科大学 (MIT) に移ると、新たに一連の研究プロジェクトを開始し、いくつかの企業も創業している。

Aurora と StreamBase

Auroraプロジェクト[10]では、ブランダイス大学およびブラウン大学と共同で、新たなデータモデルとクエリ言語を使ったストリーミングデータのためのデータ管理に注力している。データをレコード単位で取り出して処理する関係データベースとは異なり、外部データ源から非同期に到着するデータ(株価情報、ニュース、センサからの情報など)を扱うことに主眼を置いている。

ストーンブレーカーは、これを商用化する目的で StreamBase Systems 社を設立した。

C-Store と Vertica

2005年に開始したC-Storeプロジェクトでは、ブランダイス大学ブラウン大学マサチューセッツ・ボストン大学英語版と共にデータウェアハウス向けの並列・非共有型列指向DBMSを開発した。C-Storeでは列(カラム)に分けてデータを格納することでI/Oを削減し、通常のデータベースよりもデータ格納密度を高めている。

2005年、C-Storeを商業化すべくVerticaを創業した。

Morpheus と Goby

2006年、フロリダ大学と共に Morpheus プロジェクトを開始。Morpheusは複数のデータ源間のデータ変換を調停するデータ統合英語版システムである。ウェブサイトやウェブサービスでのインタフェースを提供することを意図しており、複数のサービスの統合インタフェースを提供したり、複数のサービスの検索を可能にしたりといった用途がある。

2009年、Morpheusのアイデアに基づいたローカル検索英語版会社 Goby を創業した[11]

H-Store と VoltDB

2007年、ブラウン大学イェール大学と共同で H-Store プロジェクトを開始[12]。非常に高スループットな分散インメモリ型OLTPシステムである。

2009年、H-Storeのアイデアに基づいた VoltDB を創業。CTOを務めている。

SciDB

2008年、ブラウン大学ポートランド州立大学SLACワシントン大学ウィスコンシン大学マディソン校と共同で SciDB プロジェクトを開始[13][14]。科学研究むけに特化したオープンソースのDBMSを開発している[15]

NoSQL

2010年から2011年にかけては、NoSQL運動の評論家のような活動もしている[16][17][18]

指導した学生

ストーンブレーカーは学界や産業界へ貢献しているだけでなく、彼の指導した多くの学生が学界や産業界で活躍している。主な人物を以下に挙げる[19]

脚注

  1. ^ Contributors”. TRANSACTIONS ON SYSTEMS, MAN, AND CYBERNETICS,. IEEE (1972年9月). 2011年1月5日閲覧。
  2. ^ Stonebraker, Michael Ralph (1971). The Reduction of Large Scale Markov Models for Random Chains (PhD thesis). University of Michigan.
  3. ^ Michael Ralph Stonebraker - ACM author profile page”. 2011年7月27日閲覧。
  4. ^ Abadi, D. J.; Carney, D.; Çetintemel, U.; Cherniack, M.; Convey, C.; Lee, S.; Stonebraker, M.; Tatbul, N. et al. (2003). “Aurora: A new model and architecture for data stream management”. The VLDB Journal the International Journal on Very Large Data Bases 12 (2): 120. doi:10.1007/s00778-003-0095-z. 
  5. ^ Stonebraker, M.; Held, G.; Wong, E.; Kreps, P. (1976). “The design and implementation of INGRES”. ACM Transactions on Database Systems 1 (3): 189. doi:10.1145/320473.320476. 
  6. ^ Relational Roots”. Joseph Hellerstein (1998年). 2009年11月24日閲覧。
  7. ^ Motivation & DBMS Architecture Overview”. Joseph Hellerstein (1998年). 2009年11月24日閲覧。
  8. ^ Stonebraker, M.; Rowe, L. A. (1986). “The design of POSTGRES”. ACM SIGMOD Record 15 (2): 340. doi:10.1145/16856.16888. 
  9. ^ Stonebraker, M.; Aoki, P. M.; Litwin, W.; Pfeffer, A.; Sah, A.; Sidell, J.; Staelin, C.; Yu, A. (1996). “Mariposa: A wide-area distributed database system”. The VLDB Journal the International Journal on Very Large Data Bases 5: 48. doi:10.1007/s007780050015. 
  10. ^ Aurora Project
  11. ^ Goby, http://www.goby.com/ .
  12. ^ H-Store
  13. ^ Brown, P. G. (2010). “Overview of sciDB”. Proceedings of the 2010 international conference on Management of data - SIGMOD '10. pp. 963. doi:10.1145/1807167.1807271. ISBN 9781450300322. 
  14. ^ Stonebraker, M.; Brown, P.; Poliakov, A.; Raman, S. (2011). “The Architecture of SciDB”. Scientific and Statistical Database Management. Lecture Notes in Computer Science. 6809. pp. 1. doi:10.1007/978-3-642-22351-8_1. ISBN 978-3-642-22350-1. 
  15. ^ “SciDB: Relational daddy answers Google, Hadoop, NoSQL”. The Register. (2010年9月13日). http://www.theregister.co.uk/2010/09/13/michael_stonebraker_interview/ 2012年1月11日閲覧。 
  16. ^ Stonebraker, M. (2010). “SQL databases v. NoSQL databases”. Communications of the ACM 53 (4): 10. doi:10.1145/1721654.1721659. 
  17. ^ Stonebraker, M. (2011). “Stonebraker on NoSQL and enterprises”. Communications of the ACM 54 (8): 10. doi:10.1145/1978542.1978546. 
  18. ^ Stonebraker, M.; Abadi, D.; Dewitt, D. J.; Madden, S.; Paulson, E.; Pavlo, A.; Rasin, A. (2010). “MapReduce and parallel DBMSs”. Communications of the ACM 53: 64. doi:10.1145/1629175.1629197. 
  19. ^ マイケル・ストーンブレーカー - Mathematics Genealogy Project

外部リンク