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セント・ジョーンズ・ワート''Hypericum perforatum''は黄色い花を咲かせる根茎性の[[多年草]]の[[ハーブ]]であり、ヨーロッパに自生し、後にアメリカへも伝搬し多くの草地で野生化している。 [[聖ヨハネの日]]([[6月24日]])の頃までに花が咲き、伝統的にその日に収穫されたためその名が付いた。地上部全体が刈られ乾燥させられ[[ハーブティー]]として用いられる。 そのハーブティーは若干苦いものの[[嗜好品]]としてまたその薬理的性質のため長い間愛好されてきた。学名の''perforatum''は光にかざすと見える葉にある小さな窓(油点)に由来する。''Hypericum''(オトギリソウ属)はオトギリソウ科(分類体系により''Hypericaceae''、''Clusiaceae''、または''Guttiferae''の呼び方がある)に置かれている。
セント・ジョーンズ・ワート''Hypericum perforatum''は黄色い花を咲かせる根茎性の[[多年草]]の[[ハーブ]]であり、ヨーロッパに自生し、後にアメリカへも伝搬し多くの草地で野生化している。 [[聖ヨハネの日]]([[6月24日]])の頃までに花が咲き、伝統的にその日に収穫されたためその名が付いた。地上部全体が刈られ乾燥させられ[[ハーブティー]]として用いられる。 そのハーブティーは若干苦いものの[[嗜好品]]としてまたその薬理的性質のため長い間愛好されてきた。学名の''perforatum''は光にかざすと見える葉にある小さな窓(油点)に由来する。''Hypericum''(オトギリソウ属)はオトギリソウ科(分類体系により''Hypericaceae''、''Clusiaceae''、または''Guttiferae''の呼び方がある)に置かれている。
セント・ジョーンズ・ワート''Hypericum perforatum'' が商業的に栽培されている地域はあるものの20以上の国では[[毒草]]としてリストされている。[[家畜]]による摂取は 光過敏感反応、中枢神経抑圧、流産または最悪死をもたらす場合もある。 セント・ジョーンズ・ワートの[[除草剤]]には [[2,4-D]]、ピクロラム、[[グリホサート]]が有効である。 [[生物的駆除]]の目的で、オトギリソウ類を食べることで知られる3種の[[甲虫]]([[ハムシ科]]・ヨモギハムシ属の2種:''Chrysolina quadrigemina''と''Chrysolina hyperici''、および[[タマムシ科]]の1種:''Agrilus hyperici'')が北米西部で使われている。
セント・ジョーンズ・ワート''Hypericum perforatum'' が商業的に栽培されている地域はあるものの20以上の国では[[毒草]]としてリストされている。[[家畜]]による摂取は 光過敏感反応、中枢神経抑圧、流産または最悪死をもたらす場合もある。 セント・ジョーンズ・ワートの[[除草剤]]には [[2,4-ジクロロフェノキシ酢酸|2,4-D]]、ピクロラム、[[グリホサート]]が有効である。 [[生物的駆除]]の目的で、オトギリソウ類を食べることで知られる3種の[[甲虫]]([[ハムシ科]]・ヨモギハムシ属の2種:''Chrysolina quadrigemina''と''Chrysolina hyperici''、および[[タマムシ科]]の1種:''Agrilus hyperici''が北米西部で使われている。
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== ハーブとしての利用 ==
== ハーブとしての利用 ==
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現代医学において標準的なセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は[[うつ病]]や[[不安障害]]の一般的な処置として用いられている。[[ホメオパシー]]においては多くの医学的な問題に対する処置として用いられるが、その効果の程は正確には記載されていない。歴史的にはセント・ジョーンズ・ワートの花や茎は赤や黄色の色素を作るために用いられてきた。
現代医学において標準的なセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は[[うつ病]]や[[不安障害]]の一般的な処置として用いられている。[[ホメオパシー]]においては多くの医学的な問題に対する処置として用いられるが、その効果の程は正確には記載されていない。歴史的にはセント・ジョーンズ・ワートの花や茎は赤や黄色の色素を作るために用いられてきた。


今日セント・ジョーンズ・ワートはうつ病への処置法(あるいはその可能性)として最も知られている。ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の[[抗うつ薬]]より広く処方されている。標準的な抽出物は[[錠剤|タブレット]]、[[カプセル剤|カプセル]]、[[ティー・バッグ]]として一般の薬局等で購入することが可能である。
今日セント・ジョーンズ・ワートはうつ病への処置法(あるいはその可能性)として最も知られている。ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の[[抗うつ薬]]より広く処方されている<ref name="pmid16553540">{{cite journal|title=Antidepressant use in children and adolescents in Germany|journal=J. Child Adolesc. Psychopharmacol.|volume=16|issue=1-2|pages=197–206|year=2006|pmid=16553540|doi=10.1089/cap.2006.16.197|author=Fegert JM, Kölch M, Zito JM, Glaeske G, Janhsen K}}</ref>。標準的な抽出物は[[錠剤|タブレット]]、[[カプセル剤|カプセル]]、[[ティー・バッグ]]として一般の薬局等で購入することが可能である。


日本においては、薬事法上、薬効を標榜しない限りは「食品」扱いであり、ハーブとして市販されている。しかし、多くの薬物と相互作用をするので、厚生労働省からも注意が必要であると喚起されている<ref>[http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1205/h0510-1_15.html セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用について] ([[厚生労働省]]</ref>。
日本においては、薬事法上、薬効を標榜しない限りは「食品」扱いであり、ハーブとして市販されている。しかし、多くの薬物と相互作用をするので、厚生労働省からも注意が必要であると喚起されている<ref>{{cite web|url=http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1205/h0510-1_15.html|title=セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用について|author=[[厚生労働省]]|date=2000-05-10|accessdate=2010-10-06}}</ref>。


== 臨床的効果についての研究 ==
== 臨床的効果についての研究 ==
セント・ジョーンズ・ワートについての臨床研究は、うつ病に対する効果を調査したものが多い。その結論は現在のところ成否さまざまである。軽度から中程度のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、[[偽薬|プラセボ]]以上の効果は見られないとする研究もある。
セント・ジョーンズ・ワートについての臨床研究は、うつ病に対する効果を調査したものが多い。その結論は現在のところ成否さまざまである。軽度から中程度のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、[[偽薬|プラセボ]]以上の効果は見られないとする研究もある。

[[コクランレビュー]]による2008年の報告<ref name="pmid18843608">{{cite journal|journal=Cochrane Database Syst. Rev.|year= 2008|volume=4|pages=CD000448|title=St John's wort for major depression|author=Linde K, Berner MM, Kriston L|pmid=18843608| url = http://onlinelibrary.wiley.com/o/cochrane/clsysrev/articles/CD000448/frame.html}}</ref>によると、これまでのエビデンスから
#重度のうつ病患者に対してプラセボ群より優れた効果を示す。
#標準的な抗うつ薬と同等に効果がある。
#標準的な抗うつ薬と比較して副作用が小さい。
ことが示唆されるとしている。
しかしながら、
#厳密な臨床試験ではプラセボ群に対する優位性が、より質の低い臨床試験に比べ小さくなること
#[[ドイツ語圏]]からの報告では他の国々からより、セント・ジョーンズ・ワートに効果があるとする報告が多いこと
などの論点が結果の解釈を複雑にしている、と述べている。


=== 効果があるとする報告 ===
=== 効果があるとする報告 ===
:初期の[[メタ解析]]ではセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は軽度から中程度のうつ病に対してプラセボより有意に有効であると報告された(Linde et al ., 1996) 。この研究は、23個のより小規模な先行研究をメタ解析したものである。おそらく製造業者やセント・ジョーンズ・ワート支持者により最も頻繁に引用されている文献であろう
初期の[[メタ解析]]ではセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は軽度から中程度のうつ病に対してプラセボより有意に有効であると報告された<ref name ='linde96'>{{cite journal|author=Linde K, Ramirez G, Mulrow CD, Pauls A, Weidenhammer W, Melchart D year=1996|url=http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/313/7052/253?view=full&pmid=8704532 |title=St John's wort for depression – an overview and meta-analysis of randomised clinical trials|journal=Br. Med. J.|volume=313|pages= 253–258|pmid=8704532}}</ref>。この研究は、23個のより小規模な先行研究をメタ解析したものである<ref>製造業者やセント・ジョーンズ・ワート支持者により最も頻繁に引用されている文献と考えられる。</ref>


:このメタ解析は後に全部で27の研究を含めるように改訂され、[[コクランレビュー]]へ掲載された。この改訂されたレビューはセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は プラセボに 有意に勝り([[率比]]2.47: 95%[[信頼区間]]1.69 から 3.61)標準的な抗うつ薬と同様に効果的であるとした(単独使用 1.01:0.87 から 1.16、複合使用1.52:0.78から2.94) (Linde & Mulrow, 2003) 。
このメタ解析は後に全部で27の研究を含めるように改訂され、[[コクランレビュー]]へ掲載された。この改訂されたレビューはセント・ジョーンズ・ワートの抽出物はプラセボに有意に勝り([[率比]]2.47: 95%[[信頼区間]]1.69から3.61)、標準的な抗うつ薬と同様に効果的であるとした(単独使用 1.01:0.87 から 1.16、複合使用1.52:0.78から2.94)<ref name='linde03'>{{cite book|author=Linde K, Mulrow CD |year=2003|chaptor= St John's wort for depression (Cochrane Review)|title=The Cochrane Library| volume =3 |location= Chichester, UK|publisher= John Wiley & Sons, Ltd.}}</ref>


:包含する研究をより厳密な基準により選んだ別のメタ解析では、セント・ジョーンズ・ワートはプラセボより効果があり (奏功率73.2 対 37.9%、 相対危険率 1.48: 95% 信頼区間 1.03–1.92) 、三環系抗うつ剤と同等の効果がある一方で、悪影響が少ないことを見いだした(64 対 66.4%, 相対危険率 1.11 95% 信頼区間 0.92–1.29). (Kim et al ., 1999)。より最近の治験でも、プラセボ以上の有効性、標準的抗うつ剤と同等の効果、より少ない[[副作用]]などを示している(Laakman et al ., 1998; Harrer et al ., 1999; Philipp et al ., 1999)
包含する研究をより厳密な基準により選んだ別のメタ解析では、セント・ジョーンズ・ワートはプラセボより効果があり奏功率73.2 対 37.9%、 相対危険率 1.48: 95% 信頼区間 1.03–1.92)、三環系抗うつ剤と同等の効果がある一方で、悪影響が少ないことを見いだした(64 対 66.4%, 相対危険率 1.11 95% 信頼区間 0.92–1.29) <ref>{{cite journal|journal=J. Nerv. Ment. Dis.|year= 1999 |volume=187|issue=9|pages=532-538|title=St. John's wort for depression: a meta-analysis of well-defined clinical trials|author=Kim HL, Streltzer J, Goebert D|pmid=10496508}}</ref>。より最近の治験でも、プラセボ以上の有効性、標準的抗うつ剤と同等の効果、より少ない[[副作用]]などを示している<ref>{{cite journal|journal=Pharmacopsychiatry|year= 1998|volume=31 Suppl 1|pages=54-59|title=St. John's wort in mild to moderate depression: the relevance of hyperforin for the clinical efficacy|author=Laakmann G, Schüle C, Baghai T, Kieser M|pmid=9684948|doi=10.1055/s-2007-979346}}</ref><ref>{{cite journal|journal=Arzneimittelforschung.|year= 1999 |volume=49|number=4|pages= 289-296|title=Comparison of equivalence between the St. John's wort extract LoHyp-57 and fluoxetine|author=Harrer G, Schmidt U, Kuhn U, Biller A|pmid=10337446}}</ref><ref>{{cite journal|journal=Br. Med. J.|year= 1999 |volume=319|number=7224|pages=1534-1538|title=Hypericum extract versus imipramine or placebo in patients with moderate depression: randomised multicentre study of treatment for eight weeks|author=Philipp M, Kohnen R, Hiller KO|pmid=10591711|url=http://www.bmj.com/content/319/7224/1534.long}}</ref>


=== 効果がないとする報告 ===
=== 効果がないとする報告 ===
[[アメリカ国立衛生研究所|米国国立衛生研究所]] (NIH) により資金的にサポートされた大規模な研究では、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病の治療には効果がないとしている<ref>{{cite journal|journal=JAMA|year= 2002|volume=287|number=14|pages=1807-1814|title=Effect of ''Hypericum perforatum'' (St John's wort) in major depressive disorder: a randomized controlled trial|author=Hypericum Depression Trial Study Group|pmid=11939866|url=http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/287/14/1807}}</ref>。この研究は、[[DSM-IV]]に基いて大うつ病性障害と診断された340人の患者を対象に、ハミルトンうつ病評価尺度 (HAM-D) と 臨床全般印象尺度 (CGI) を症状評価尺度として用いた、多施設[[根拠に基づいた医療|無作為二重盲検プラセボ対照試験]]である。対照として、セルトラリン(SSRIの一種)とプラセボを用いている。その結果、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病に対して、プラセボに比べて有効性があることは示されなかった。より軽度のうつ病における効果の調査がNIHにより計画されている。


[[代替医療]]についての他の多くの研究と同様に、これらの多くは方法論や研究デザインが不十分であり、有効性について結論づけることができない状態である。有効性を報告している研究者の一人も、今後より精密な調査が必要であることを論文中で述べている<ref name='linde03'/>
:米国[[NIH]]により資金的にサポートされた大規模な研究では、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病の治療には効果がないとしている(Hypericum Depression Trial Study Group, 2002)。この研究は、[[DSM-IV]]に基いて大うつ病性障害と診断された340人の患者を対象に、ハミルトンうつ病評価尺度 (HAM-D) と 臨床全般印象尺度 (CGI) を症状評価尺度として用いた、多施設[[根拠に基づいた医療|無作為二重盲検プラセボ対照試験]]である。対照として、セルトラリン(SSRIの一種)とプラセボを用いている。その結果、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病に対して、プラセボに比べて有効性があることは示されなかった。 より軽度のうつ病における効果の調査がNIHにより計画されている。


DSM-IV基準を満たした注意欠陥多動性障害[[注意欠陥・多動性障害|ADHD]]の小児および青年に対して、セント・ジョーンズ・ワート300mgによる改善効果を検討した無作為比較試験では臨床的に有効な改善効果は認められなかった<ref>{{cite journal|journal=JAMA|yera= 2008 |volume=299|number=22|pages=2633-2641|title=''Hypericum perforatum'' (St John's wort) for attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents: a randomized controlled trial|author=Weber W, Vander Stoep A, McCarty RL, Weiss NS, Biederman J, McClellan J|pmid=18544723|url=http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/299/22/2633}}</ref>。
:[[代替医療]]についての他の多くの研究と同様に、これらの多くは方法論や研究デザインが不十分であり、有効性について結論づけることができない状態である。有効性を報告している研究者の一人も、今後より精密な調査が必要であることを論文中で述べている(Linde & Mulrow, 2003)

:DSM-IV基準を満たした注意欠陥多動性障害[[注意欠陥・多動性障害|ADHD]]の小児び青年に対して、セント・ジョーンズ・ワート300mgによる改善効果を検討した無作為比較試験では臨床的に有効な改善効果は認められなかった。(Weber W et al. Hypericum perforatum (St John's wort) for attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents: A randomized controlled trial. JAMA 2008 Jun 11; 299:2633)


== 薬理学 ==
== 薬理学 ==
セント・ジョーンズ・ワートが機能する機構は正確には不明であるが、従来の[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬|SSRI]]系の抗うつ薬と同様に[[セロトニン]]の再吸収を阻害することが関係すると信じられている。
セント・ジョーンズ・ワートが機能する機構は正確には不明であるが、従来の[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]] (SSRI) 系の抗うつ薬と同様に[[セロトニン]]の再吸収を阻害することが関係すると信じられている。


セント・ジョーンズ・ワートの主要な有効成分は[[ハイパフォリン]]と[[ヒペリシン]]だと考えられているが、[[フラボノイド]]や[[タンニン]]のような他の[[生理活性物質]]が関与している可能性もある(Nahrstedt & Butterweck, 1997)
セント・ジョーンズ・ワートの主要な有効成分は[[ハイパフォリン]]と[[ヒペリシン]]だと考えられているが、[[フラボノイド]]や[[タンニン]]のような他の[[生理活性物質]]が関与している可能性もある<ref>{{cite journal|journal=Pharmacopsychiatry|year= 1997|volume=30 Suppl 2|pages=129-134|title=Biologically active and other chemical constituents of the herb of ''Hypericum perforatum'' L.|author=Nahrstedt A, Butterweck V|pmid=9342774|doi=10.1055/s-2007-979533}}</ref>


ハイパフォリンは抗うつ作用の主要な有効成分だと信じられており、[[セロトニン]]、[[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[γ-アミノ酪酸]] (GABA)、[[グルタミン酸]]の取込みを阻害することが示されている(Chatterjee et al., 1998a)。 [[用量反応関係]]の不一致からハイパフォリン以外の成分の関与も示唆されている(Chatterjee et al., 1998b)
ハイパフォリンは抗うつ作用の主要な有効成分だと信じられており、セロトニン、[[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[γ-アミノ酪酸]] (GABA)、[[グルタミン酸]]の取込みを阻害することが示されている<ref>{{cite journal|journal=Life Sci.|year= 1998|volume=63|number=6|pages=499-510|title=Hyperforin as a possible antidepressant component of hypericum extracts|author=Chatterjee SS, Bhattacharya SK, Wonnemann M, Singer A, Müller WE|pmid=9718074|doi=10.1016/S0024-3205(98)00299-9}}</ref>。[[用量反応関係]]の不一致からハイパフォリン以外の成分の関与も示唆されている<ref>{{cite journal|journal=Pharmacopsychiatry|year= 1998 |volume=31 Suppl 1|pages=7-15|title=Antidepressant activity of ''hypericum perforatum'' and hyperforin: the neglected possibility|author=Chatterjee SS, Nöldner M, Koch E, Erdelmeier C|pmid=9684942|doi=10.1055/s-2007-979340
}}</ref>。


=== 投与/処方 ===
=== 投与/処方 ===
セント・ジョーンズ・ワートの投与量は処方間で大きく隔たりがあり、それは植物原料と調整過程の違いによるものである。臨床試験で一般的に用いられる投与量は一日当たり350から1800mgである(これはヒペレリンで0.4から2.7mgに相当する)(Linde & Mulrow, 2003)
セント・ジョーンズ・ワートの投与量は処方間で大きく隔たりがあり、それは植物原料と調整過程の違いによるものである。臨床試験で一般的に用いられる投与量は一日当たり350から1800mgである(これはヒペレリンで0.4から2.7mgに相当する)<ref name='linde03'/>


英国ハーブ医学連合科学委員会により推薦されている様々な形態のセント・ジョーンズ・ワートの用量は以下の通りである (1983)
英国ハーブ医学連合科学委員会により推薦されている様々な形態のセント・ジョーンズ・ワートの用量は以下の通りである <ref>{{cite book|author=British Herbal Medicine Association Scientific Committee|year=1983|title=British Herbal Pharmacopoeia|location= West Yorkshire|publisher= British Herbal Medicine Association|isbn= 0-903032-07-4}}</ref>


*'''乾燥ハーブ''' - 2-4 g または煎じ薬として1日3回
*'''乾燥ハーブ''' - 2-4 g または煎じ薬として1日3回
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=== 副作用 ===
=== 副作用 ===
セント・ジョーンズ・ワートは一般に良好な耐容性を示し、プラセボと同程度の副作用しか示さない(Ernst et al ., 1998)。報告されている最も一般的な副作用は胃腸症状、目まい、意識混濁、けん怠、鎮静(Barnes et al ., 2002)。また 通常では起こさない状況でも日焼けを起こす 光過敏性を起こすことが知られているが、それが起きることは非常に稀である(Ernst et al ., 1998)
セント・ジョーンズ・ワートは一般に良好な耐容性を示し、プラセボと同程度の副作用しか示さない<ref name="ernst98">{{cite journal|journal=Eur. J. Clin. Pharmacol. |year=1998 |volume=54|number=8|pages=589-594|title=Adverse effects profile of the herbal antidepressant St. John's wort (''Hypericum perforatum'' L.)|author=Ernst E, Rand JI, Barnes J, Stevinson C|pmid=9860144|doi=10.1007/s002280050519}}</ref>。報告されている最も一般的な副作用は胃腸症状、目まい、意識混濁、けん怠、鎮静<ref>{{cite book|author=Barnes J, Anderson LA, Phillipson JD |year=2002|title= Herbal Medicines: A guide for healthcare professionals |edition=2 |location=London|publisher= Pharmaceutical Press|isbn= 0-85369-474-5}}</ref>。また 通常では起こさない状況でも日焼けを起こす 光過敏性を起こすことが知られているが、それが起きることは非常に稀である<ref name="ernst98"/>


=== 薬物相互作用 ===
=== 薬物相互作用 ===
セント・ジョーンズ・ワートは、[[シトクロームP450]]酵素 CYP3A4を誘導することで、[[ジゴキシン]](強心薬)、[[シクロスポリン]](免疫抑制薬)、[[テオフィリン]](気管支拡張薬)、[[インジナビル]](抗HIV薬)、[[ワルファリン]](血液凝固防止薬)など、いくつもの薬物相互作用をすることが知られている。ハイパフォリンが主要な原因物質で、それが有効成分でもある。
セント・ジョーンズ・ワートは、[[シトクロームP450]]酵素 CYP3A4を誘導することで、[[ジゴキシン]](強心薬)、[[シクロスポリン]](免疫抑制薬)、[[テオフィリン]](気管支拡張薬)、[[インジナビル]](抗HIV薬)、[[ワルファリン]](血液凝固防止薬)など、いくつもの薬物相互作用をすることが知られている。ハイパフォリンが主要な原因物質で、それが有効成分でもある。


セント・ジョーンズ・ワートは、ある種の薬物の量を体の中で減少させる作用があり、そのためその薬物の効果を減じさせる。他の抗うつ薬([[選択的セロトニン再取り込み阻害薬|SSRI]]や[[三環系抗うつ薬]])、[[避妊薬]]、[[高脂血治療薬]]等<ref name="hfnet">[http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail85.html 健康食品等の素材情報データベース (セイヨウオトギリソウ 2007/10/02)] 独立行政法人 国立健康・栄養研究所</ref>[[抗てんかん薬]]<ref>[http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly6/01080110.pdf 医薬品安全性情報 Vol.6 No.01 2008/01/10 )]国立医薬品食品衛生研究所</ref>。
セント・ジョーンズ・ワートは、ある種の薬物の量を体の中で減少させる作用があり、そのためその薬物の効果を減じさせる。他の抗うつ薬([[選択的セロトニン再取り込み阻害薬|SSRI]]や[[三環系抗うつ薬]])、[[避妊薬]]、[[高脂血治療薬]]等<ref name="hfnet">{{cite web|url=http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail85.html |work=健康食品等の素材情報データベース |title=セイヨウオトギリソウ|date=2010-08-25 |author=独立行政法人 国立健康・栄養研究所|accessdate=2010-10-06}}</ref>[[抗てんかん薬]]<ref>{{cite web|url=http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly6/01080110.pdf |title=医薬品安全性情報 Vol.6 No.01 |date= 2008/01/10|author=国立医薬品食品衛生研究所|filetype=PDF|accessdate=2010-10-06}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{reflist|2}}
<references />

== 参考文献 ==
*Barnes J, Anderson LA, Phillipson JD (2002). ''Herbal Medicines: A guide for healthcare professionals'' (2 ed.) London: Pharmaceutical Press. ISBN 0-85369-474-5
*British Herbal Medicine Association Scientific Committee (1983). ''British Herbal Pharmacopoeia''. West Yorkshire: British Herbal Medicine Association. ISBN 0-903032-07-4
*Chatterjee SS, Bhattacharya SK, Wonnemann M, Singer A, Muller WE (1998a). Hyperforin as a possible antidepressant component of hypericum extracts. ''Life Sci'' '''63''' (6), 499-510.
*Chatterjee SS, Noldner M, Koch E, Erdelmeier C (1998b). Antidepressant activity of hypericum perforatum and hyperforin: the neglected possibility. ''Pharmacopsychiatry'' '''31''' (Suppl 1), 7-15.
*Ernst E, Rand JI, Barnes J, Stevinson C (1998). Adverse effects profile of the herbal antidepressant St. John's wort (Hypericum perforatum L.). ''Eur J Clin Pharmacol'' '''54''' (8), 589-94.
*Harrer G, Schmidt U, Kuhn U, Biller A (1999). Comparison of equivalence between the St. John's wort extract LoHyp-57 and fluoxetine. ''Arzneimittelforschung'' '''49''' (4), 289-96.
*Hypericum Depression Trial Study Group (2002). [http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/287/14/1807 Effect of Hypericum perforatum (St John's Wort) in Major Depressive Disorder.] ''JAMA'' '''287''' (14), 1807-1814.
*Kim HL, Streltzer J, Goebert D (1999). St. John's Wort for Depression: A Meta-Analysis of Well-Defined Clinical Trials. ''J Ment Nerv Dis'' '''187''' (9), 532-538.
*Laakmann G, Schule C, Baghai T, Kieser M (1998). St. John's wort in mild to moderate depression: the relevance of hyperforin for the clinical efficacy. ''Pharmacopsychiatry'' '''31''' (Suppl 1), 54-9.
*Linde K, Ramirez G, Mulrow CD, Pauls A, Weidenhammer W, Melchart D (1996). [http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/313/7052/253?view=full&pmid=8704532 St John’s wort for depression – an overview and meta-analysis of randomised clinical trials.] ''Br Med J'' '''313''', 253–258.
*Linde K, Mulrow CD (2003). St John's wort for depression (Cochrane Review). In: ''The Cochrane Library'', Issue 3, 2004. Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd.
*Nahrstedt A, Butterweck V (1997). Biologically active and other chemical constituents of the herb of Hypericum perforatum L. ''Pharmacopsychiatry'' '''30''' (Suppl 2), 129-34.
*Philipp M, Kohnen R, Hiller KO (1999). Hypericum extract versus imipramine or placebo in patients with moderate depression: randomised multicentre study of treatment for eight weeks. ''Br Med J'' '''319''' (7224), 1534-8.


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2010年10月6日 (水) 07:27時点における版

セント・ジョーンズ・ワート
Hypericum perforatum
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キントラノオ目 Malpighiales
: オトギリソウ科 Guttiferae
: オトギリソウ属 Hypericum
: セイヨウオトギリソウ H. perforatum
学名
Hypericum perforatum L.

セント・ジョーンズ・ワート: St. John's wort)は、一般的にセイヨウオトギリソウHypericum perforatum西洋弟切草、英語では Klamath weed、Goat weedとも呼ばれる)という植物のことを指す。また、様々な修飾語とともに、オトギリソウ Hypericum 属に属する他の種のことを指すこともあり、英語ではそれらと区別するために、H. perforatum を Common St. John's wort と呼ぶ場合もある。近年うつ病治療の観点から注目を集めているハーブである。

植物

セント・ジョーンズ・ワートHypericum perforatumは黄色い花を咲かせる根茎性の多年草ハーブであり、ヨーロッパに自生し、後にアメリカへも伝搬し多くの草地で野生化している。 聖ヨハネの日(6月24日)の頃までに花が咲き、伝統的にその日に収穫されたためその名が付いた。地上部全体が刈られ乾燥させられハーブティーとして用いられる。 そのハーブティーは若干苦いものの嗜好品としてまたその薬理的性質のため長い間愛好されてきた。学名のperforatumは光にかざすと見える葉にある小さな窓(油点)に由来する。Hypericum(オトギリソウ属)はオトギリソウ科(分類体系によりHypericaceaeClusiaceae、またはGuttiferaeの呼び方がある)に置かれている。

セント・ジョーンズ・ワートHypericum perforatum が商業的に栽培されている地域はあるものの20以上の国では毒草としてリストされている。家畜による摂取は 光過敏感反応、中枢神経抑圧、流産または最悪死をもたらす場合もある。 セント・ジョーンズ・ワートの除草剤には 2,4-D、ピクロラム、グリホサートが有効である。 生物的駆除の目的で、オトギリソウ類を食べることで知られる3種の甲虫ハムシ科・ヨモギハムシ属の2種:Chrysolina quadrigeminaChrysolina hyperici、およびタマムシ科の1種:Agrilus hyperici)が北米西部で使われている。

ハーブとしての利用

セント・ジョーンズ・ワートの医療的利用の最初の記録は古代ギリシアにまでさかのぼり、以来利用されてきている。 またネイティブアメリカンも人工妊娠中絶薬 抗炎症剤、収斂剤 消毒剤として使用してきた。

現代医学において標準的なセント・ジョーンズ・ワートの抽出物はうつ病不安障害の一般的な処置として用いられている。ホメオパシーにおいては多くの医学的な問題に対する処置として用いられるが、その効果の程は正確には記載されていない。歴史的にはセント・ジョーンズ・ワートの花や茎は赤や黄色の色素を作るために用いられてきた。

今日セント・ジョーンズ・ワートはうつ病への処置法(あるいはその可能性)として最も知られている。ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている[1]。標準的な抽出物はタブレットカプセルティー・バッグとして一般の薬局等で購入することが可能である。

日本においては、薬事法上、薬効を標榜しない限りは「食品」扱いであり、ハーブとして市販されている。しかし、多くの薬物と相互作用をするので、厚生労働省からも注意が必要であると喚起されている[2]

臨床的効果についての研究

セント・ジョーンズ・ワートについての臨床研究は、うつ病に対する効果を調査したものが多い。その結論は現在のところ成否さまざまである。軽度から中程度のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、プラセボ以上の効果は見られないとする研究もある。

コクランレビューによる2008年の報告[3]によると、これまでのエビデンスから

  1. 重度のうつ病患者に対してプラセボ群より優れた効果を示す。
  2. 標準的な抗うつ薬と同等に効果がある。
  3. 標準的な抗うつ薬と比較して副作用が小さい。

ことが示唆されるとしている。 しかしながら、

  1. 厳密な臨床試験ではプラセボ群に対する優位性が、より質の低い臨床試験に比べ小さくなること
  2. ドイツ語圏からの報告では他の国々からより、セント・ジョーンズ・ワートに効果があるとする報告が多いこと

などの論点が結果の解釈を複雑にしている、と述べている。

効果があるとする報告

初期のメタ解析ではセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は軽度から中程度のうつ病に対してプラセボより有意に有効であると報告された[4]。この研究は、23個のより小規模な先行研究をメタ解析したものである[5]

このメタ解析は後に全部で27の研究を含めるように改訂され、コクランレビューへ掲載された。この改訂されたレビューはセント・ジョーンズ・ワートの抽出物はプラセボに有意に勝り(率比2.47: 95%信頼区間1.69から3.61)、標準的な抗うつ薬と同様に効果的であるとした(単独使用 1.01:0.87 から 1.16、複合使用1.52:0.78から2.94)[6]

包含する研究をより厳密な基準により選んだ別のメタ解析では、セント・ジョーンズ・ワートはプラセボより効果があり(奏功率73.2 対 37.9%、 相対危険率 1.48: 95% 信頼区間 1.03–1.92)、三環系抗うつ剤と同等の効果がある一方で、悪影響が少ないことを見いだした(64 対 66.4%, 相対危険率 1.11 95% 信頼区間 0.92–1.29) [7]。より最近の治験でも、プラセボ以上の有効性、標準的抗うつ剤と同等の効果、より少ない副作用などを示している[8][9][10]

効果がないとする報告

米国国立衛生研究所 (NIH) により資金的にサポートされた大規模な研究では、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病の治療には効果がないとしている[11]。この研究は、DSM-IVに基いて大うつ病性障害と診断された340人の患者を対象に、ハミルトンうつ病評価尺度 (HAM-D) と 臨床全般印象尺度 (CGI) を症状評価尺度として用いた、多施設無作為二重盲検プラセボ対照試験である。対照として、セルトラリン(SSRIの一種)とプラセボを用いている。その結果、セント・ジョーンズ・ワートは中程度のうつ病に対して、プラセボに比べて有効性があることは示されなかった。より軽度のうつ病における効果の調査がNIHにより計画されている。

代替医療についての他の多くの研究と同様に、これらの多くは方法論や研究デザインが不十分であり、有効性について結論づけることができない状態である。有効性を報告している研究者の一人も、今後より精密な調査が必要であることを論文中で述べている[6]

DSM-IV基準を満たした注意欠陥多動性障害ADHDの小児および青年に対して、セント・ジョーンズ・ワート300mgによる改善効果を検討した無作為比較試験では臨床的に有効な改善効果は認められなかった[12]

薬理学

セント・ジョーンズ・ワートが機能する機構は正確には不明であるが、従来の選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) 系の抗うつ薬と同様にセロトニンの再吸収を阻害することが関係すると信じられている。

セント・ジョーンズ・ワートの主要な有効成分はハイパフォリンヒペリシンだと考えられているが、フラボノイドタンニンのような他の生理活性物質が関与している可能性もある[13]

ハイパフォリンは抗うつ作用の主要な有効成分だと信じられており、セロトニン、ドーパミンノルアドレナリンγ-アミノ酪酸 (GABA)、グルタミン酸の取込みを阻害することが示されている[14]用量反応関係の不一致からハイパフォリン以外の成分の関与も示唆されている[15]

投与/処方

セント・ジョーンズ・ワートの投与量は処方間で大きく隔たりがあり、それは植物原料と調整過程の違いによるものである。臨床試験で一般的に用いられる投与量は一日当たり350から1800mgである(これはヒペレリンで0.4から2.7mgに相当する)[6]

英国ハーブ医学連合科学委員会により推薦されている様々な形態のセント・ジョーンズ・ワートの用量は以下の通りである [16]

  • 乾燥ハーブ - 2-4 g または煎じ薬として1日3回
  • 液体抽出物 - 2-4 mL (1対1 25% アルコール中) 1日3回
  • チンキ剤 - 2-4 mL (1対10 45% アルコール中) 1日3回

標準化された抽出物を入手できない市場では、物によってその強度が大きく異なる。薬局で手に入る某ブランドのものは、他のものより強い場合がある。また同じブランドでも、バッチが異なると用量が異なる場合がある。 標準化されたものが手に入る場所でも、へパフォリンが主要な活性成分だと考えられているため、ヒペリシンを基準に用いるのには議論がある。

他の抗うつ薬と同様に、セント・ジョーンズ・ワートの効果を適切に評価するためには、最低4週間は取り続けなければならない。

副作用

セント・ジョーンズ・ワートは一般に良好な耐容性を示し、プラセボと同程度の副作用しか示さない[17]。報告されている最も一般的な副作用は胃腸症状、目まい、意識混濁、けん怠、鎮静[18]。また 通常では起こさない状況でも日焼けを起こす 光過敏性を起こすことが知られているが、それが起きることは非常に稀である[17]

薬物相互作用

セント・ジョーンズ・ワートは、シトクロームP450酵素 CYP3A4を誘導することで、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、インジナビル(抗HIV薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)など、いくつもの薬物相互作用をすることが知られている。ハイパフォリンが主要な原因物質で、それが有効成分でもある。

セント・ジョーンズ・ワートは、ある種の薬物の量を体の中で減少させる作用があり、そのためその薬物の効果を減じさせる。他の抗うつ薬(SSRI三環系抗うつ薬)、避妊薬高脂血治療薬[19]抗てんかん薬[20]

脚注

  1. ^ Fegert JM, Kölch M, Zito JM, Glaeske G, Janhsen K (2006). “Antidepressant use in children and adolescents in Germany”. J. Child Adolesc. Psychopharmacol. 16 (1-2): 197–206. doi:10.1089/cap.2006.16.197. PMID 16553540. 
  2. ^ 厚生労働省 (2000年5月10日). “セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用について”. 2010年10月6日閲覧。
  3. ^ Linde K, Berner MM, Kriston L (2008). “St John's wort for major depression”. Cochrane Database Syst. Rev. 4: CD000448. PMID 18843608. http://onlinelibrary.wiley.com/o/cochrane/clsysrev/articles/CD000448/frame.html. 
  4. ^ Linde K, Ramirez G, Mulrow CD, Pauls A, Weidenhammer W, Melchart D year=1996. “St John's wort for depression – an overview and meta-analysis of randomised clinical trials”. Br. Med. J. 313: 253–258. PMID 8704532. http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/313/7052/253?view=full&pmid=8704532. 
  5. ^ 製造業者やセント・ジョーンズ・ワート支持者により最も頻繁に引用されている文献と考えられる。
  6. ^ a b c Linde K, Mulrow CD (2003). The Cochrane Library. 3. Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd. 
  7. ^ Kim HL, Streltzer J, Goebert D (1999). “St. John's wort for depression: a meta-analysis of well-defined clinical trials”. J. Nerv. Ment. Dis. 187 (9): 532-538. PMID 10496508. 
  8. ^ Laakmann G, Schüle C, Baghai T, Kieser M (1998). “St. John's wort in mild to moderate depression: the relevance of hyperforin for the clinical efficacy”. Pharmacopsychiatry 31 Suppl 1: 54-59. doi:10.1055/s-2007-979346. PMID 9684948. 
  9. ^ Harrer G, Schmidt U, Kuhn U, Biller A (1999). “Comparison of equivalence between the St. John's wort extract LoHyp-57 and fluoxetine”. Arzneimittelforschung. 49 (4): 289-296. PMID 10337446. 
  10. ^ Philipp M, Kohnen R, Hiller KO (1999). “Hypericum extract versus imipramine or placebo in patients with moderate depression: randomised multicentre study of treatment for eight weeks”. Br. Med. J. 319 (7224): 1534-1538. PMID 10591711. http://www.bmj.com/content/319/7224/1534.long. 
  11. ^ Hypericum Depression Trial Study Group (2002). “Effect of Hypericum perforatum (St John's wort) in major depressive disorder: a randomized controlled trial”. JAMA 287 (14): 1807-1814. PMID 11939866. http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/287/14/1807. 
  12. ^ Weber W, Vander Stoep A, McCarty RL, Weiss NS, Biederman J, McClellan J. Hypericum perforatum (St John's wort) for attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents: a randomized controlled trial”. JAMA 299 (22): 2633-2641. PMID 18544723. http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/299/22/2633. 
  13. ^ Nahrstedt A, Butterweck V (1997). “Biologically active and other chemical constituents of the herb of Hypericum perforatum L.”. Pharmacopsychiatry 30 Suppl 2: 129-134. doi:10.1055/s-2007-979533. PMID 9342774. 
  14. ^ Chatterjee SS, Bhattacharya SK, Wonnemann M, Singer A, Müller WE (1998). “Hyperforin as a possible antidepressant component of hypericum extracts”. Life Sci. 63 (6): 499-510. doi:10.1016/S0024-3205(98)00299-9. PMID 9718074. 
  15. ^ Chatterjee SS, Nöldner M, Koch E, Erdelmeier C (1998). “Antidepressant activity of hypericum perforatum and hyperforin: the neglected possibility”. Pharmacopsychiatry 31 Suppl 1: 7-15. doi:10.1055/s-2007-979340. PMID 9684942. 
  16. ^ British Herbal Medicine Association Scientific Committee (1983). British Herbal Pharmacopoeia. West Yorkshire: British Herbal Medicine Association. ISBN 0-903032-07-4 
  17. ^ a b Ernst E, Rand JI, Barnes J, Stevinson C (1998). “Adverse effects profile of the herbal antidepressant St. John's wort (Hypericum perforatum L.)”. Eur. J. Clin. Pharmacol. 54 (8): 589-594. doi:10.1007/s002280050519. PMID 9860144. 
  18. ^ Barnes J, Anderson LA, Phillipson JD (2002). Herbal Medicines: A guide for healthcare professionals (2 ed.). London: Pharmaceutical Press. ISBN 0-85369-474-5 
  19. ^ 独立行政法人 国立健康・栄養研究所 (2010年8月25日). “セイヨウオトギリソウ”. 健康食品等の素材情報データベース. 2010年10月6日閲覧。
  20. ^ 国立医薬品食品衛生研究所 (2008年1月10日). “医薬品安全性情報 Vol.6 No.01”. 2010年10月6日閲覧。

外部リンク