ラウンドアップ

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グリホサート から転送)
ラウンドアップの構造式

ラウンドアップ (Roundup) は、1970年アメリカ企業のモンサント社が開発した除草剤農薬の一種)。

有効成分名はグリホサートイソプロピルアミン塩 (glyphosate-isopropylammonium)、Chemical Abstructs名 N-(Phosphonomethyl)glycine, isopropylamine salt、IUPAC名ではイソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル)グリシナート (isopropylammonium N-(phosphonomethyl)glycinate) である。CAS登録番号は38641-94-0。グリシンの窒素原子上にホスホノメチル基が置換した構造を持つ。イソプロピルアンモニウム塩ではないグリホサート自体の分子量は169.07で、CAS登録番号は1071-83-6である。

5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS, EC 2.5.1.19反応)阻害剤で、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate)の合成を阻害し、ひいてはアミノ酸トリプトファンフェニルアラニンチロシン)やこれらのアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成を阻害する(シキミ酸経路参照)。(茎葉)吸収移行型(接触した植物の全体を枯らす)で、ほとんどの植物にダメージを与える(非選択型)。

日本での商標権と生産・販売権は、2002年に日本モンサントから日産化学工業へ譲渡され、保有している。

目次

[編集] 主なシリーズ商品

  • ラウンドアップ(液剤、スプレー、粒剤など)
  • ラウンドアップハイロード:有効成分はグリホサートアンモニウム塩(CAS登録番号 40465-66-5)。
  • ラウンドアップマックスロード:有効成分はグリホサートカリウム塩
  • ランドマスター:専用散布機で散布する、ラウンドアップのAL剤。(現在は製造・販売されていない)

[編集] ラウンドアップ耐性作物

[編集] ラウンドアップ耐性作物の種類

遺伝子操作により分子育種されたラウンドアップに耐性を有する作物(遺伝子組み換え作物)が主流であるが、変異体もある。遺伝子操作により、ラウンドアップに耐性を有する遺伝子組み換え作物ラウンドアップレディー (Roundup Ready) と総称され、ダイズトウモロコシナタネワタが栽培されている。

[編集] ラウンドアップ耐性作物の世界における栽培状況

ラウンドアップ・レディーのような非選択性除草剤に対して耐性を有する遺伝子組換え作物の栽培面積が現在急速に拡大している。これは農家の雑草管理が楽という面だけでなく、土壌流出を大幅に防ぐことのできる不耕起農法(不耕起栽培)を適応できるからである。現在、ダイズの主要生産国である北米や南米諸国では表土流出が大問題となっている。前作の植物残渣を放置できるため、植物残渣がマルチとなって風雨から土壌流出を防ぎ、土壌を耕すことによって土壌が流亡しやすくなることを不耕起農法によって防ぐことができる。即ち、除草剤耐性作物は環境保全と持続的農業に貢献している、という主張が組換え作物推進派にはある。その他、有毒雑草の収穫物への混入を減らせるとの主張もある。2007年の全世界で遺伝子組換え作物の栽培面積は1億1430万ヘクタールであり、その約8割は除草剤耐性作物である。

[編集] ラウンドアップ耐性化機構と導入遺伝子

遺伝子工学を用いて、ラウンドアップに対して植物を耐性化させる機構として、様々な機構が利用可能である。その中で、現在は主にラウンドアップ(グリホサート)に非感受性のEPSPSの遺伝子とラウンドアップ分解・解毒酵素の遺伝子が用いられている。

  • 非感受性のEPSPSの利用:植物のEPSPSは核DNAにコードされ、細胞質で合成されプラスチドに移行するタンパク質である。一方、原核生物であるバクテリアにもEPSPSは存在し、その多くのものはグリホサートで阻害される。しかし、細菌であるアグロバクテリウム・ツメファシエンス Agrobacterium tumefaciens CP4株のEPSPSはグリホサートで阻害されないため、このバクテリアのEPSPS遺伝子を利用して植物にグリホサート耐性能を付与することになった。そこで、問題になったことが植物のEPSPSはプラスチドに存在するが、バクテリアのものは細胞質に存在することである。そのため、A. tumefaciens CP4株由来のEPSPS遺伝子にプラスチドに移行させるための輸送ペプチド (transit peptide) 部分のDNAを融合させたものを植物に導入して、バクテリア由来のEPSPSをプラスチドに輸送させてラウンドアップに植物を耐性化させている。(薬剤とその標的との親和性の低下による耐性化)
  • グリホサート酸化還元酵素の利用:自然界に広く存在する酵素、グリホサート酸化還元酵素 (glyphosate oxidoreductase: GOX) を用いてグリホサートを2つの無毒な化合物アミノメチルホスホン酸 (AMPA) とグリオキシル酸に分解する手法でも耐性化されている。この酵素の遺伝子 goxv247 は土壌細菌 Ochrobactrum anthropi より単離され、プラスチドに移行させるための輸送ペプチド部分のDNAを融合させたものが植物に導入されている。その結果、薬剤の分解によるラウンドアップ耐性化と残留ラウンドアップ(グリホサート)の除去に役立つ。(薬剤の分解・修飾による無毒化)
  • グリホサート N-アセチル基転移酵素の利用:バクテリアの一種であるBacillus licheniformisの3つの株(ST401株、B6株及びDS3株)由来のN-アセチル基転移酵素(N-acetyltransferase)遺伝子を基に、変異が導入されて作製された改変型グリホサート N-アセチル基転移酵素遺伝子(改変gatgat4621遺伝子と表記) (Castle et al., 2004、GenBank Accession No: CS022547)は、グリホサートをN-アセチル化して解毒する酵素(改変GAT:GAT4621)をコードしているので、これを用いることもある。このgat4621遺伝子を植物に導入し発現させると、ラウンドアップ(グリホサート)に耐性となる。(薬剤の分解・修飾による無毒化)

[編集] ラウンドアップ耐性作物の食品としての安全性

遺伝子組換え作物は、様々な安全性審査を受け、合格してから初めて上市される。それでも、多世代にわたる摂取による安全性が確認されていないと非難する意見が、組換え食品反対派にある。そこで、遺伝子組換えによって分子育種されたラウンドアップレディー大豆の安全性に関しては、多世代の動物飼育実験により、客観的・科学的検証がなされた。例えば、サウスダコタ大学のグループは4世代にわたってマウスにラウンドアップレディー大豆を給餌しても、何ら悪影響を見いだすことができなかった[1]。また、東京都の健康安全研究センターも2世代にわたるラットへの給餌試験を行ったが何ら有意差を見いだせなかった[2]。同様な研究は多数ある。そのため、少なくとこれらの世代数では危険性を見いだすことができなかったといえる。

[編集] ジェネリック品

ラウンドアップの成分グリホサートは特許で保護される期間を過ぎているため、他社から同成分もしくは類似成分の除草剤が販売されている(ジェネリック剤)。これらは比較的安価で効果もほぼ同等である。大きく分けて、農薬登録を取得したものと、取得していないため非農耕地向けの2種類がある(農薬登録がないものを農耕地に使った場合には農薬取締法等に抵触する)。

農薬登録を取得したおもな製品は以下のとおり。

  • グリホサートイソプロピルアミン塩
    • ポラリス
    • クサトリキング
    • 三共の草枯らし
    • クサクリーン
    • エイトアップ
    • ターンアウト液剤
    • ラウンドアップ
    • サンフーロン液剤
    • グリホス
    • ネコソギAL
    • グリホキング
    • グリホキングシャワー
    • グリホエキス
    • マイター液剤
    • ラムロード
    • ランドマスター液剤
    • クサトローゼ
    • 草退治シャワー
    • サンダーボルト007(但し、他剤も含有)
    • ネコソギクイックプロFL(但し、他剤も含有)
    • サブゾーン液剤(但し、他剤も含有)
  • グリホサートアンモニウム塩
    • ラウンドアップハイロード
    • ラウンドアップドライ
    • 草当番
  • グリホサートカリウム塩
    • ラウンドアップマックスロード
    • タッチダウンiQ
    • ザッソージエース
    • ネコソギWクイック微粒剤(但し、他剤も含有)
  • グリホサートトリメシウム塩
    • タッチダウン
    • サンダーボルト(但し、他剤も含有)
  • グリホサートナトリウム塩
    • ラウンドアップライトロード
    • インパルス(但し、他剤も含有)

[編集] 備考

以下の番組でテレビのスポンサーとなっている。

[編集] 参考文献

  1. ^ Brake, D. G.; Evenson, D. P. (2004). “A generational study of glyphosate-tolerant soybeans on mouse fetal, postnatal, pubertal and adult testicular development”. Food and Chemical Toxicology 42: 29–36. PMID 14630127.
  2. ^ くらしの健康(第8号)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク