聞いて

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聞いて
Listen
ドクター・フー』のエピソード
幼少期のダニーとベッドの下の影
話数シーズン8
第4話
監督ダグラス・マッキノン英語版
脚本スティーヴン・モファット
制作ピーター・ベネット英語版
音楽マレイ・ゴールド
初放送日イギリスの旗 2014年9月13日
アメリカ合衆国の旗 2014年9月13日
エピソード前次回
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シャーウッドの森のロボット
次回 →
銀行強盗
ドクター・フーのエピソード一覧

聞いて」(きいて、原題: "Listen")は、イギリスSFドラマドクター・フー』の第8シリーズ第4話。スティーヴン・モファットが脚本、ダグラス・マッキノン英語版が監督を担当し、2014年9月13日に BBC One で初放送された。イギリスでの視聴者数は701万人で、脚本・演出・演技が批評家から称賛された。

本作では、異星人のタイムトラベラー12代目ドクター(演:ピーター・カパルディ)が、完璧に身を隠す能力を持つ生物を捜索する。彼のコンパニオンであるクララ・オズワルド(演:ジェナ・ルイーズ・コールマン)は、元兵士の同僚教師ダニー・ピンク英語版(演:サミュエル・アンダーソン英語版)とのデートに苦心する。

連続性[編集]

ドクターの時」(2013年)でウォードクター(演:ジョン・ハート)がモメントの起動場所に選んだ納屋は彼が幼少期にガリフレイで暮らしていた納屋であることが明かされた[1]

12代目ドクターはターディスで目を覚ました際に "Sontarans perverting the course of human history" とオーソン・ピンクに述べており、これは「ロボットの反逆」(1974年 - 1975年)で4代目ドクターが最初に喋った台詞の繰り返しである[2]。台詞自体は3代目ドクターの The Time Warrior(1973年 - 1974年)に対応するものであった[3]。12代目ドクターが何も聞こえないと主張した際の台詞 "not a click or a tick" は Death to the Daleks(1974年)での3代目ドクターの台詞であり、クララが幼少期のドクターに囁いた "Fear makes companions of us all" は初代ドクターが An Unearthly Child(1963年)の第3エピソードで述べた台詞である[2]

ダグラス・マッキノンが初代ドクター役俳優ウィリアム・ハートネル英語版の少年時代の写真を発見し、ヘアスタイル担当チームが少年ドクター役の俳優の髪形をハートネルに似せた[4]

製作[編集]

スティーヴン・モファットはインタビューで「私の衝動は、『何もすることがないときに彼は何をするのか?』という疑問に端を発している。彼はビルを降りる時に面白いと思えば飛び降りもする人だ。彼は何にでも魅了される。そして何もすることがないとき、彼は何かに噛まれるまで棒で突くだけなんだ。それは面白いことじゃないか?スリルを求める者の側面がある」と述べた[5]Doctor Who Magazine のインタビューでは、モファットは予算のかからない室内劇を書いたことがなく、自分でもそれを実際に書けることを示したいと思い、第8シリーズの中盤にそのようなエピソードを製作することにしたと明かした[6]

台本の読み合わせは2014年2月11日に行われ、撮影は2月17日に[3]ポース・コール英語版の The Rest で開始された[7]。2月24日と25日にはカーディフ湾英語版マーメイド埠頭英語版に位置するミモザレストランで撮影が行われた[7][8]。撮影はカーディフのウィットチャーチ英語版ビュート・パーク英語版でも行われた[3]。幼少期のドクターを演じた俳優はエピソードでは明らかにされなかったが、後に Doctor Who Magazine にてマイケル・ジョーンズであることが明かされた[9]

流出[編集]

「聞いて」はマイアミBBCワールドワイドサーバーから脚本が流出したエピソード5本のうち1本であった[10]。さらに8月23日には視覚効果と吹替のないエピソード本編が流出した[11]。この流出事件は「深呼吸」、「ダーレクの中へ」、「シャーウッドの森のロボット」や次話「銀行強盗」に続くものであった[12]

放送と反応[編集]

放送[編集]

イギリスでの当夜の視聴者数は481万人、視聴占拠率は23.5%を記録した[13]。リアルタイム以外での視聴者を合わせると視聴者数は合計701万人に達し[14]、その週のテレビ番組では『ブリティッシュ ベイクオフ』と『Xファクター』、『コロネーション・ストリート』に次ぐ結果を残した[15]

アメリカ合衆国では合計113万人が本放送を視聴した[16]

批評家の反応[編集]

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
The A.V. Club英語版A[17]
SFX4.5/5stars[18]
TV Fanatic5/5stars[19]
CultBox5/5stars[20]
IndieWireA[21]
IGN7.1[22]
ニューヨーク・マガジン5/5stars[23]
デジタル・スパイ英語版5/5stars[24]
デイリー・テレグラフ5/5stars[25]
デイリー・ミラー4/5stars[26]

「聞いて」は批評家から絶賛され、数多くの批評家がモファットの脚本やマッキノンの演出およびカパルディやコールマンおよびアンダーソンの演技を称賛した。Appreciation Index は82を記録した[14]

インデペンデント紙のニーラ・デブナスは本作を「今までのスティーヴン・モファットの作品でおそらく最も怖ろしいエピソードである」と評価し、感動的な部分と怖ろしい部分を高く評価した。彼女はコールマンの演技を称賛して本作でクララが最高点に返り咲いたとも主張した[27]デジタル・スパイ英語版は本作を称賛して5点満点の評価を付けた。「スマートで怖ろしくそして見事だ」と纏め、モファットの脚本とクララのキャラクター性の発達を称賛した。「知性的でロマンチックかつ怖ろしい『聞いて』は超常現象についての閉塞的な物語か、自分自身を騙して支配する心の能力を巧みに反映している物語だが、いずれにせよ素晴らしい作品である」としてレビューは締め括られた[24]ラジオ・タイムズは本作を『ドクター・フー』史上最も概念的なエピソードであるとし、「私たちを驚かせてくれるな、モファット」と主張した[28]ガーディアン紙のダン・マーティンは本作が「並外れて良い」と評価し、本作の脚本がモファットの最高傑作であるとも考えた[6]

The A.V. Club英語版は本作にAの評価を付け、「長年で最高のエピソード」であると評価し、「このエピソードには最上級の言葉が尽きるかもしれない」とも述べた。モファットが『ドクター・フー』で書いたエピソードとしては「11番目の時間」以来であり、51年間で最も誠実なドクターの掘り下げだったとの論評がなされた[17]デイリー・ミラー紙は本作を5点満点中4点と評価し、「『ドクター・フー』は恐怖心に訴えかけ、ソファのクッションの後ろに隠れるようにするものであるべきだ。そして、『聞いて』はこれを見事に実現している」と述べた[26]

Slate誌のマック・ロジャースは「聞いて」を長年の『ドクター・フー』で最高のエピソードだとし、「巧みに展開されていて『ドクター・フー』が何でもできることを証明している」と評価した[29]。同様に、脚本家ポール・コーネル英語版[注 1]もドクターのキャラクター性への問いかけやシリーズの決まり文句の逆転を称賛し、「史上最高の『ドクター・フー』の物語かもしれない」とコメントした[30]

本作は2015年にブラム・ストーカー賞にノミネートされ、初めてブラム・ストーカー賞にノミネートされた『ドクター・フー』のエピソードとなった[31]。また、2015年ヒューゴー賞映像部門短編部門にもノミネートされた。受賞は『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』のエピソード「カストール」が受賞した[32]

注釈[編集]

  1. ^ 『ドクター・フー』では「ジョン・スミスの恋」「ファミリーと永遠の命」などを手掛けている。

出典[編集]

  1. ^ Mulkern, Patrick (2014年9月13日). “Doctor Who Listen review: "A classy, creepy study of fear and loneliness"”. ラジオ・タイムズ. 2014年9月14日閲覧。
  2. ^ a b In Case You Missed It: Listen”. doctorwho.tv. BBCワールドワイド (2014年9月16日). 2014年9月18日閲覧。
  3. ^ a b c Listen: Fact File”. Doctor Who. BBC One. 2014年9月13日閲覧。
  4. ^ Mackinnon, Douglas [@drmuig] (2020年5月20日). "I found this photo of William Hartnell as a child and got our hair team to match the hair of this little boy. #FearIsASuperpower @StevenWMoffat". X(旧Twitter)より2020年9月22日閲覧
  5. ^ Rob Leane (2014年8月27日). “Doctor Who update: Jenna Coleman on Clara, Moffat on Listen”. Den of Geek. 2014年8月30日閲覧。
  6. ^ a b Martin, Dan (2014年9月13日). “Doctor Who recap: series 34, episode four – Listen”. ガーディアン. https://www.theguardian.com/tv-and-radio/tvandradioblog/2014/sep/13/doctor-who-recap-series-34-episode-four-listen 2015年3月17日閲覧。 
  7. ^ a b Autumn 2014 Series: Series 8”. Doctor Who Spoilers. 2014年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月22日閲覧。
  8. ^ Series 8 Filming: A Night Out”. Doctor Who TV (2014年2月26日). 2014年8月29日閲覧。
  9. ^ Cook, Benjamin (16 November 2017). “Double Bill”. Doctor Who Magazine (519): 16. 
  10. ^ Ben Dowell (2014年7月7日). “Please don't share secrets of Doctor Who series 8 – BBC Worldwide "sorry" for five leaked scripts”. Radio Times. 2014年8月29日閲覧。
  11. ^ Doctor Who Series 8 Leak Update: Episode 4 Listen Now Available”. Combom (2014年8月23日). 2014年8月29日閲覧。
  12. ^ Doctor Who Series 8 Leak Update: Episode 5 Time Heist (But NOT Ep 4) Now Available”. Combom (2014年8月21日). 2014年8月29日閲覧。
  13. ^ Louis – TGT (2014年9月14日). “The Gallifrey Times – Bringing you the latest Doctor Who news daily!: Doctor Who: Listen – Overnight UK Viewing Figures”. thegallifreytimes.co.uk. 2015年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月22日閲覧。
  14. ^ a b Doctor Who Series 8 (2014) UK Ratings Accumulator”. doctorwhotv.co.uk. 2020年9月22日閲覧。
  15. ^ @DWMtweets (2014年9月22日). "With 7.01m viewers, Doctor Who: Listen was the seventh most watched TV show of the week, behind only Bake Off, X Factor (x2) & Corrie (x3)". X(旧Twitter)より2020年9月22日閲覧
  16. ^ SHOWBUZZDAILY's Top 25 Saturday Cable Originals: 9.13.2014”. showbuzzdaily.com. 2020年9月22日閲覧。
  17. ^ a b Wilkins, Alasdair (2014年9月13日). “Doctor Who: "Listen"”. The A.V. Club. 2014年9月14日閲覧。
  18. ^ Farley, Jordan (2014年9月13日). “Doctor Who S8.04 - Listen Review”. SFX. 2018年11月5日閲覧。
  19. ^ Pavlica, Carissa (2014年9月13日). “Doctor Who Review: The Constant Companion”. TV Fanatic. 2018年11月5日閲覧。
  20. ^ Stewart, Malcolm (2014年9月13日). “'Doctor Who' review: 'Listen'”. CultBox. 2018年11月5日閲覧。
  21. ^ Welsh, Kaite (2014年9月13日). “Review: 'Doctor Who' Season 8 Episode 4, 'Listen,' Celebrates the Power of Fear (And Bad Dates)”. IndieWire. 2018年11月5日閲覧。
  22. ^ Risley, Matt (2014年9月13日). “Doctor Who: "Listen" Review”. IGN. 2018年11月5日閲覧。
  23. ^ Ruediger, Ross (2014年9月14日). “Doctor Who Recap: Fear Makes Friends of Us All”. Vulture.com. 2018年11月5日閲覧。
  24. ^ a b Jeffery, Morgan (2014年9月13日). “Doctor Who series 8 'Listen' recap: smart, scary, superb”. Digital Spy. 2014年9月14日閲覧。
  25. ^ Hogan, Michael (2014年9月13日). “Doctor Who: Listen, review: 'bravery and brio'”. デイリー・テレグラフ. 2018年11月5日閲覧。
  26. ^ a b Pyke, Chris (2014年9月13日). “Doctor Who Listen review: Peter Capaldi, Jenna Coleman and now Samuel Anderson on top form”. デイリー・ミラー. 2014年9月14日閲覧。
  27. ^ Doctor Who, Listen, review: Possibly Steven Moffat's most terrifying episode”. インデペンデント. 2020年9月22日閲覧。
  28. ^ Jonathan Holmes. “Doctor Who series 8 episode 4 Listen: Is the monster real?”. ラジオ・タイムズ. 2020年9月22日閲覧。
  29. ^ Rogers, Mac (2014年9月16日). “How Steven Moffat Made the Best Doctor Who Episode in Years”. Slate. http://www.slate.com/blogs/browbeat/2014/09/16/doctor_who_listen_is_the_best_episode_in_years.html 2014年9月18日閲覧。 
  30. ^ Cornell, Paul (2014年9月15日). “Five Brilliant Things About Doctor who – Series 8 Episode 4”. torbooks.co.uk. 2014年9月15日閲覧。
  31. ^ Kanchan, Suman (2015年2月25日). “Doctor Who: Listen Nominated For Bram Stoker Award”. The Gallifrey Times. 2015年2月26日閲覧。
  32. ^ 2015 Hugo Awards”. The Hugo Awards (2015年4月4日). 2015年4月5日閲覧。

外部リンク[編集]