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[[File:DM-SD-05-09841.jpg|thumb|レスリングにおけるフロント・ネックチャンスリー]]
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'''フロント・ネックチャンスリー'''''Front Neck-Chancery''は、[[アマチュアレスリング|レスリング]]や[[プロレス]]で用いられる[[関節技]]の一種である。'''フロント・ネックロック'''(''Front Neck Rock'')とも呼ばれる。
'''フロント・ネックチャンスリー''' ('''front neck-chancery''') は、主に[[プロレス]]で使れる[[関節技]]。首を攻める技だが[[絞め技]]ではなく、[[椎骨]]を極める首関節技である。


== かけ方 ==
== 概要 ==
向かい合った状態の相手を前屈みにさせ相手の頭部を自の[[腋の下]]に抱え込、相手を抱える腕の手首で相手の[[頬骨]]をこするようにして相手の頭を自の腹で90度回転させの腹部を前方へと突き出すように体を反らせ相手の首げて[[頸椎]]る。
向かい合った状態の相手を前屈みにさせ相手の頭部を自の[[腋の下]]に抱え込む。このとき、相手を抱える腕の手首で相手の[[頬骨]]をこするようにして相手の頭を自の腹で90度回転させる。同時に、の腹部を前方突き出すように体を反らせると、相手の首がり[[頸椎]]る。

'''フロント・ネックロック'''の別称でも呼ばれるが、最近はその名称は首を絞める絞め技である[[フロントチョーク]](フロントスリーパーホールド)の別称としても使われており、[[総合格闘技]]の人気上昇や、[[秋山準]]がこの名称でフロントスリーパーを得意技として使用し始めたことにより、後者のほうが使用頻度が高い。


== 類似技 ==
== 類似技 ==
見た目が酷似している技に以下のものがあり、実際によく混同される。
見た目が酷似している技に以下のものがあり、実際によく混同される。
; [[フロントチョーク|フロント・チョーク]]
: フロント・ネックチャンスリーが[[頸椎]]へのダメージを狙う首関節技であるのに対して、こちらは前方から首を固め、[[気管]]もしくは[[頚動脈]]を圧迫する。
; フロントヘッドロック
: フロント・ネックチャンスリーの体勢から腋や上腕に力を入れて相手の頭蓋骨を締め上げる。
; フロントフェイスロック
: フロント・ネックチャンスリーの体勢から前腕部に力を入れて相手の顔面を締め上げる。


== フロント・ネックンスリーロップ ==
; フロントチョーク(フロスリーパーホール
'''フロント・ネックチャンスリー・ドロップ'''(''Front Neck-Chancery Drop'')は、[[プロレス技]]の一種である。
: フロント・ネックチャンスリーが頸椎へのダメージを狙う首関節技であるのに対し、こちら前方から首を固め、[[気管]]もしくは[[頚動脈]]を圧迫す[[絞め技]]{{Main|フロントチョーク}}
=== 概要 ===
相手の首を[[フロントチョーク|フロント・ネックロック]]の要領で捕らえて体を[[ブリッジ (運動)|ブリッジ]]させる勢いで相手を後方へと反り投げて背中を叩きつける。


; フロントヘッドロック
日本での初公開は1963年3月23日、[[日本プロレス]]の蔵前国技館大会において、[[サンダー・ザボー]]が対[[アントニオ猪木]]戦で使用して、この技で猪木から[[ピンフォール]]を奪っている。1966年3月21日、猪木は日本プロレスを一時離脱して4月23日に入団した[[東京プロレス]]で'''アントニオ・ドライバー'''の名称で使用していた。他の使い手としては[[アンドレ・ザ・ジャイアント]]がいる。
: フロント・ネックチャンスリーの体勢から腋や上腕に力を入れて相手の頭蓋骨を締め上げるヘッドロックの派生技。{{Main|ヘッドロック}}


; フロントフェイスロック
見た目以上に全身の筋力を要する技ともいわれており、猪木はこの技を多用した影響で腰を痛めたため、使用していた時期は東京レス時代限られいる。また、アンドレも使用していた時期は体力的に充実していた全盛期に限られている。
: フロント・ネックチャンスリーの体勢から前腕部に力を入れて相手の顔面を締め上げる技。[[フェイスロック]]の派生技


== フロント・ネックチャンスリー・ドロップ ==
この技を[[ブレーンバスター]]の原型とする説があるがブレーンバスターの開発者である[[キラー・カール・コックス]]否定している。
=== 概要 ===
: フロント・ネックチャンスリーの体勢から、相手の首を支点にして後方へ[[ブリッジ (運動)|ブリッジ]]し投げる技である。日本マット界でこの技を初公開したのは、元[[歴代NWA世界ヘビー級王者|世界王者]]の[[サンダー・ザボー]]であり、[[1963年]]に来日したザボーとの対戦で、[[アントニオ猪木]]はこの技でピンフォールを取られている。その後、猪木は[[東京プロレス]]時代にこの技を、'''アントニオ・ドライバー'''という名称で使用していた。他の使い手としては、[[中嶋勝彦]]や[[アンドレ・ザ・ジャイアント]]らの名前がしばしば挙げられる。アンドレの場合は後記のハーフハッチに近い投げ方で、自身は完全に反り返らずに捻りを加えて半身の状態で仕掛けていた。
: 見た目以上に全身の筋力を要する技ともいわれており、猪木はこの技を多用した影響で腰を痛め、徐々に相手の片腕を自身の首に回してタイツを掴んで投げるバーティカル・スープレックの形フォームが変わっ行き、数年で封印した。また、アンドレも使用していた時期は体力的に充実していた全盛期に限られる。
: この技を[[ブレーンバスター]]の原型とする説があるがブレーンバスターの開発者である[[キラー・カール・コックス]]本人が否定している。


=== 派生技 ===
=== 派生及び類似技 ===
:; ハーフハッチスープレックス
; タイガードライバー<ref>[[佐山聡|初代タイガーマスク]]のタイガードライバーは実況アナウサーの[[古舘伊知郎]]が名付けた名であるが一般に浸透せず、マスコミは通常通りの項目名の技名を使用していたことが多かった。</ref>
:: フロント・ネックチャンスリーの体勢から、頭を抱えてない方の腕で、相手の片腕(上腕部付近)を下から掬い上げるようにして抱え込んで、後方へ反り投げる。投げた後、相手を離さず、自分はブリッジしたままの状態で[[ピンフォール]]するホールド式も存在する。単にハーフハッチと呼ぶこともある。[[西村修]]、[[棚橋弘至]]らが得意とし、特に若手時代に多用した。
: '''タイガー・ネックチャンスリー'''とも呼ばれる。[[佐山聡]]が[[タイガーマスク (プロレスラー)#初代|初代タイガーマスク]]の時代に開発したオリジナル技。片足を振り上げた勢いを生かして相手を後方へと反り投げて背中を叩きつける。
:;タイガードライバー<ref>佐山のタイガードライバーは、[[ワールドプロレスリグ]]の[[古舘伊知郎]]がけた名であるが一般に浸透せず、マスコミは通常通りの項目名の技名を使用していたことが多。</ref>
: 同名の技で[[三沢光晴]]が[[タイガーマスク (プロレスラー)#2代目|2代目タイガーマスク]]の時代に開発した[[パワーボム#タイガー・ドライバー|タイガー・ドライバー]]があり、現在では三沢式の方が著名と思われるが全く別の技である。テレビゲーム『[[ファイヤープロレスリング]]シリーズ』では佐山の独特のモーションを再現した'''タイガー・ネックチャンスリー・ドロップ'''という技がある。
:: [[佐山聡|初代タイガーマスク]]時代の[[佐山聡]]が使用。相手の首をロックした状態から、自らの片足を振り子のように蹴り上げることで反動をつける独特のモーションが特徴。上記ハーフハッチのフォームで放たれることもあった。[[DDT (プロレス技)|DDT]]のように脳天をマットに突き刺してしまう恐れもある危険性の高い技で、佐山以外には付き人を務めた[[山崎一夫 (プロレスラー)|山崎一夫]]が受け継いで一時期使用していた。同名の技に[[三沢光晴]]が考案した[[パワーボム#ジャンピング系|タイガードライバー]]があり、現在では三沢版の方が著名と思われるが全く別の技である。
; ハーフハッチスープレックス
:: なお、TVゲーム『[[ファイヤープロレスリング]]』シリーズでは佐山の独特のモーションを再現した「タイガー・ネックチャンスリー・ドロップ」という技が登場する。
: 前屈みになった相手の首の後ろに正面から左腕を回し、相手の左脇の方から差し込んだ右手を相手の背中に添えて相手を抱えたまま体を[[ブリッジ (運動)|ブリッジ]]させる勢いで相手を後方へと反り投げて背中を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。
; 魔神風車固め
:; 魔神風車固め
: '''マシン・スープレックス'''とも呼ばれる。[[平田淳嗣|スーパー・ストロング・マシ]]のオリジナル技。前屈みになっ相手左腕を左手で折り曲げて相手の左脇に胸方から差込み、右手で相手の腕を掴み、自由になった左手を相手の首の後ろに回し、体をブリッジさせる勢いで相手を後方へ反り投げて背中叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う
:: [[平田淳嗣]]がスーパー・ストロング・マシン時代に考案したオリジナル技で、別名はマシン・スープレックスハーフハッチと[[ダブルアーム・スープレックス]]を複合し技。フロント・ネックチャンスリー・ドロップ体勢抱え込だとき時、頭を抱えない方の腕で、相手の下を通相手のの手首を掴み、相手の背面で相手の腕「く」の字型に曲げて固定。その状態のまま後方へ反り投げ、そのまま相手放さずブリッジ状態のままフォールする。基本はホールド式だが、稀に投げ捨て式も見せる。[[丸藤正道]]は、垂直落下式使用したことがある
; あすなろスープレックス
: [[獣神サンダー・ライガー|山田恵一]]のオリジナル技。前屈みになった相手の首の後ろに正面から左腕を回し、相手の左腕を抱き込むような感じで相手の胸の方に右腕を回し、右手で相手の右肘あたりを掴み、掴んだ腕を相手の胸の方に折り曲げて体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて背中を叩きつけてフォールを奪う。
; 天龍稲妻落とし
: [[天龍源一郎]]のオリジナル技。[[フロントチョーク|フロント・ネックロック]]の要領で相手の首を捕らえて相手を持ち上げて背中から倒れ込み、相手の顔面のあたりを叩きつける。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
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* [[プロレス技]]
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2018年10月4日 (木) 08:47時点における版

フロント・ネックチャンスリー(・ドロップ)

フロント・ネックチャンスリー (front neck-chancery) は、主にプロレスで使用される関節技。首を攻める技だが絞め技ではなく、椎骨を極める首関節技である。

概要

向かい合った状態の相手を前屈みにさせ、相手の頭部を自らの腋の下に抱え込む。このとき、相手を抱える腕の手首で相手の頬骨をこするようにして、相手の頭を自分の腹で約90度回転させる。同時に、自分の腹部を前方に突き出すように体を反らせると、相手の首が曲がり頸椎が極まる。

フロント・ネックロックの別称でも呼ばれるが、最近はその名称は首を絞める絞め技であるフロントチョーク(フロントスリーパーホールド)の別称としても使われており、総合格闘技の人気上昇や、秋山準がこの名称でフロントスリーパーを得意技として使用し始めたことにより、後者のほうが使用頻度が高い。

類似技

見た目が酷似している技に以下のものがあり、実際によく混同される。

フロントチョーク(フロントスリーパーホールド)
フロント・ネックチャンスリーが頸椎へのダメージを狙う首関節技であるのに対し、こちらは前方から首を固め、気管もしくは頚動脈を圧迫する絞め技
フロントヘッドロック
フロント・ネックチャンスリーの体勢から、腋や上腕に力を入れて、相手の頭蓋骨を締め上げる技。ヘッドロックの派生技。
フロントフェイスロック
フロント・ネックチャンスリーの体勢から、前腕部に力を入れて、相手の顔面を締め上げる技。フェイスロックの派生技。

フロント・ネックチャンスリー・ドロップ

概要

フロント・ネックチャンスリーの体勢から、相手の首を支点にして後方へブリッジし投げる技である。日本マット界でこの技を初公開したのは、元世界王者サンダー・ザボーであり、1963年に来日したザボーとの対戦で、アントニオ猪木はこの技でピンフォールを取られている。その後、猪木は東京プロレス時代にこの技を、アントニオ・ドライバーという名称で使用していた。他の使い手としては、中嶋勝彦アンドレ・ザ・ジャイアントらの名前がしばしば挙げられる。アンドレの場合は後記のハーフハッチに近い投げ方で、自身は完全に反り返らずに捻りを加えて半身の状態で仕掛けていた。
見た目以上に全身の筋力を要する技ともいわれており、猪木はこの技を多用した影響で腰を痛め、徐々に相手の片腕を自身の首に回してタイツを掴んで投げるバーティカル・スープレックスの形にフォームが変わって行き、数年で封印した。また、アンドレも使用していた時期は体力的に充実していた全盛期に限られる。
この技をブレーンバスターの原型とする説があるが、ブレーンバスターの開発者であるキラー・カール・コックス本人が否定している。

派生及び類似技

ハーフハッチスープレックス
フロント・ネックチャンスリーの体勢から、頭を抱えてない方の腕で、相手の片腕(上腕部付近)を下から掬い上げるようにして抱え込んで、後方へ反り投げる。投げた後、相手を離さず、自分はブリッジしたままの状態でピンフォールするホールド式も存在する。単にハーフハッチと呼ぶこともある。西村修棚橋弘至らが得意とし、特に若手時代に多用した。
タイガードライバー[1]
初代タイガーマスク時代の佐山聡が使用。相手の首をロックした状態から、自らの片足を振り子のように蹴り上げることで反動をつける独特のモーションが特徴。上記ハーフハッチのフォームで放たれることもあった。DDTのように脳天をマットに突き刺してしまう恐れもある危険性の高い技で、佐山以外には付き人を務めた山崎一夫が受け継いで一時期使用していた。同名の技に三沢光晴が考案したタイガードライバーがあり、現在では三沢版の方が著名と思われるが全く別の技である。
なお、TVゲーム『ファイヤープロレスリング』シリーズでは佐山の独特のモーションを再現した「タイガー・ネックチャンスリー・ドロップ」という技が登場する。
魔神風車固め
平田淳嗣がスーパー・ストロング・マシン時代に考案したオリジナル技で、別名はマシン・スープレックス。ハーフハッチとダブルアーム・スープレックスを複合した技。フロント・ネックチャンスリー・ドロップの体勢で抱え込んだとき時、頭を抱えてない方の腕で、相手の腋の下を通して相手の片腕の手首を掴み、相手の背面で相手の腕を「く」の字型に曲げて固定。その状態のまま後方へ反り投げ、そのまま相手を放さずブリッジ状態のままフォールする。基本はホールド式だが、稀に投げ捨て式も見せる。丸藤正道は、垂直落下式を使用したことがある。

脚注

  1. ^ 佐山のタイガードライバーは、ワールドプロレスリング古舘伊知郎がつけた名称であるが、一般に浸透せず、マスコミ等は通常通りの項目名の技名を使用していたことが多い。

関連項目