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== 毒針毛とかぶれ ==
== 毒針毛とかぶれ ==
チャドクガの目視できる体毛そのものに毒はないが、2齢幼虫以降の幼虫の体に生えている長さ0.1-0.2mmほどの毒針毛中に[[ヒスタミン]]等の毒があり、とても抜け易いため幼虫の体毛にも付着している<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛">もとは[[:w:Euproctis|Euproctis]]属に分類されていた近縁種の[[ドクガ|ドクガ(種)]]の毒針毛が人体に作用するメカニズムを解説しているWebサイト。{{citeweb|url=http://www.iph.pref.hokkaido.jp/dokuga/framepage1.htm |title=北海道のドクガ 皮膚炎の原因 毒針毛 |publisher=北海道立衛生研究所 |date=2004|accessdate=2016-04-24}}</ref>。また、毒針毛の表面には小さなトゲがあり皮膚に付くと抜けにくい構造になっている<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛"/>。終齢幼虫の毒針毛は繭・メス成虫・卵塊・1齢幼虫と次々と受け継がれる<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛"/>。<ref>[[#幼虫図鑑|[幼虫図鑑]]] p.179 「Euproctis属の特徴」 Euproctis属共通の特徴。</ref>
チャドクガの目視できる体毛そのものに毒はないが、2齢幼虫以降の幼虫の体に生えている長さ0.1-0.2mmほどの毒針毛中に[[ヒスタミン]]等の毒があり、とても抜け易いため幼虫の体毛にも付着している<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛">もとは[[:w:Euproctis|Euproctis]]属に分類されていた近縁種の[[ドクガ|ドクガ(種)]]の毒針毛が人体に作用するメカニズムを解説しているWebサイト。{{citeweb|url=http://www.iph.pref.hokkaido.jp/dokuga/framepage1.htm |title=北海道のドクガ 皮膚炎の原因 毒針毛 |publisher=北海道立衛生研究所 |date=2004|accessdate=2016-04-24}}</ref>。また、毒針毛の表面には小さなトゲがあり皮膚に付くと抜けにくい構造になっている<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛"/>。終齢幼虫の抜けた毒針毛は繭・メス成虫・卵塊・1齢幼虫と成長過程すべてで付着して受け継がれる<ref name="北海道立衛生研究所毒針毛"/>。<ref>[[#幼虫図鑑|[幼虫図鑑]]] p.179 「Euproctis属の特徴」 Euproctis属共通の特徴。</ref>


俗に「ケムシに刺された」というがケムシは[[カ]]や[[ハチ]]のように自分から積極的に人を刺すものではない。チャドクガは生涯を通じて毒針毛をもち、触れると[[かぶれ]]を生じる。一度その被害にあった人はそれが[[抗原]]になって2回目以降、個人差はあるが[[アレルギー]]反応を起こすことがある。毒蛾の毛虫1匹にある毒針毛は50万本から600万本といわれている。ガやその幼虫であるケムシは[[チョウ]]に比べて著しくイメージが悪いが、理由のひとつがこれである。しかし毒針毛を持つ種類はドクガ科全体のごく一部である<ref>ドクガ科以外には[[カレハガ科]]、[[ヤネホソバ|ヒトリガ科の一部]]などがあり、また[[マイマイガ]]のように1齢幼虫の時期しか毒針毛をもたない種や、[[ヒメシロモンドクガ]]、[[スギドクガ]]、[[エルモンドクガ]]、[[ダイセツドクガ]]、[[カシワマイマイ]]などのようにドクガ科でありながら毒針毛を一切持たない種もある。</ref><ref name="北海道立衛生研究所有毒種">「ドクガ科は日本から50種あまりが知られており、そのうちドクガ属(Euproctis属)は10種類ほど」で「ドクガ科の中でも激しい皮膚炎を起こす原因である毒針毛を持っている<small>(編注:生成する)</small>のは、ドクガ属のガの幼虫だけ」とする。{{citeweb|url=http://www.iph.pref.hokkaido.jp/dokuga/dokuganituite_flame.htm |title=北海道のドクガ ドクガって? |publisher=北海道立衛生研究所 |date=2004|accessdate=2016-04-24}}</ref><ref name="原色日本蛾類図鑑">[[#蛾類図鑑|[蛾類図鑑]]] Euproctis属は「従来 Euproctis 及び Porthesia の2属に分け」られており「将来いくつかの属に細分すべきである」「この属のなかには毒毛をもっているため、皮膚に炎症やかゆみを与えるものが多い」(p.31)とし、[[モンシロドクガ]],[[トラサンドクガ]],[[ゴマフリドクガ]],[[キドクガ]],[[ドクガ]],チャドクガ,[[フタホシドクガ]],[[マガリキドクガ]]の8種を挙げる(p.32-34)。</ref>。
俗に「ケムシに刺された」というがケムシは[[カ]]や[[ハチ]]のように自分から積極的に人を刺すものではない。チャドクガは生涯を通じて毒針毛をもち、触れると[[かぶれ]]を生じる。一度その被害にあった人はそれが[[抗原]]になって2回目以降、個人差はあるが[[アレルギー]]反応を起こすことがある。毒蛾の毛虫1匹にある毒針毛は50万本から600万本といわれているが、毒針毛を持つ種類はドクガ科全体のごく一部である<ref>ドクガ科以外には[[カレハガ科]]、[[ヤネホソバ|ヒトリガ科の一部]]などがあり、また[[マイマイガ]]のように1齢幼虫の時期しか毒針毛をもたない種や、[[ヒメシロモンドクガ]]、[[スギドクガ]]、[[エルモンドクガ]]、[[ダイセツドクガ]]、[[カシワマイマイ]]などのようにドクガ科でありながら毒針毛を一切持たない種もある。</ref><ref name="北海道立衛生研究所有毒種">「ドクガ科は日本から50種あまりが知られており、そのうちドクガ属(Euproctis属)は10種類ほど」で「ドクガ科の中でも激しい皮膚炎を起こす原因である毒針毛を持っている<small>(編注:生成する)</small>のは、ドクガ属のガの幼虫だけ」とする。{{citeweb|url=http://www.iph.pref.hokkaido.jp/dokuga/dokuganituite_flame.htm |title=北海道のドクガ ドクガって? |publisher=北海道立衛生研究所 |date=2004|accessdate=2016-04-24}}</ref><ref name="原色日本蛾類図鑑">[[#蛾類図鑑|[蛾類図鑑]]] Euproctis属は「従来 Euproctis 及び Porthesia の2属に分け」られており「将来いくつかの属に細分すべきである」「この属のなかには毒毛をもっているため、皮膚に炎症やかゆみを与えるものが多い」(p.31)とし、[[モンシロドクガ]],[[トラサンドクガ]],[[ゴマフリドクガ]],[[キドクガ]],[[ドクガ]],チャドクガ,[[フタホシドクガ]],[[マガリキドクガ]]の8種を挙げる(p.32-34)。</ref>。


毒針毛は非常に細かく、長袖でも夏服などは繊維のすきまから入り込む。直接触れなくても木の下を通ったり、風下にいるだけで被害にあうことがある。またハチの毒などと違って幼虫自身の生死に関わらず発症するので、幼虫の[[脱皮]]殻や、[[殺虫剤]]散布後の死骸にも注意が必要である。被害にあったときに着ていた衣服は毒針毛が付着しているので、取扱いに注意する。成虫にも毒針毛が付着しており、[[卵塊]]は成虫の体毛に覆われているので、幼虫の時期のみでなく年間通じて注意が必要である。
毒針毛は非常に細かく、長袖でも夏服などは繊維のすきまから入り込む。直接触れなくても木の下を通ったり、風下にいるだけで被害にあうことがある。またハチの毒などと違って幼虫自身の生死に関わらず発症するので、幼虫の[[脱皮]]殻や、[[殺虫剤]]散布後の死骸にも注意が必要である。被害にあったときに着ていた衣服は毒針毛が付着しているので、取扱いに注意する。成虫にも毒針毛が付着しており、[[卵塊]]は成虫の体毛に覆われているので、幼虫の時期のみでなく年間通じて注意が必要である。

2016年12月27日 (火) 20:22時点における版

チャドクガ

(上)サザンカを食害する幼虫 (下)成虫
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 鱗翅目 Lepidoptera
: ドクガ科 Lymantriidae
: ドクガ属 Euproctis
: チャドクガ E. pseudoconspersa
学名
Euproctis pseudoconspersa
(Strand, 1914)
和名
チャドクガ
英名
tea tussock moth

チャドクガ(茶毒蛾)はチョウ目ドクガ科昆虫本州以南の日本各地に分布。年2回発生、越冬。日本では代表的な毒蛾である。園芸植物に被害をおよぼすほか、「刺されて」被害にあう人が後を絶たない。

生態

幼虫(いわゆるケムシ)は4月から10月にかけて年2回発生する。淡黄褐色で成長すると25mm程度。チャノキツバキサザンカなどツバキ科の植物の葉を食害する。

幼虫は若齢のうちは一箇所に固まっていることが多く、数十匹が頭を揃えて並び、葉を食べている。ひとつの枝の葉を食べつくすとまるで誰かが指揮でもしているかのように一列に並んで隣の枝に移動していく。何らかの刺激があると、思い出したように頭を上げ左右に振るのを見ることが出来る。数十匹の幼虫がいっせいに同じリズムで頭を振る姿はユーモラスである。この行動については1)同時に同じリズムで動くことで体の大きな生物だと思わせ天敵を威嚇している、2)体を揺らすことで抜けた毒針毛(どくしんもう)を風に乗せ、天敵を攻撃している、などの説があるが、本当のところはまだ明らかになっていない。

成長するにしたがって木全体に拡散する。食欲旺盛でほうっておくと木が一本まる裸にされてしまうこともある。成虫)は昼間は薄暗い場所の木の幹などに頭を下にしてじっとしていることが多い。ツバキの葉の裏などに産卵する。卵塊は成虫の体毛に覆われている。

天敵としてはスズメバチ類が知られている。

毒針毛とかぶれ

チャドクガの目視できる体毛そのものに毒はないが、2齢幼虫以降の幼虫の体に生えている長さ0.1-0.2mmほどの毒針毛中にヒスタミン等の毒があり、とても抜け易いため幼虫の体毛にも付着している[1]。また、毒針毛の表面には小さなトゲがあり皮膚に付くと抜けにくい構造になっている[1]。終齢幼虫の抜けた毒針毛は繭・メス成虫・卵塊・1齢幼虫と成長過程すべてで付着して受け継がれる[1][2]

俗に「ケムシに刺された」というがケムシはハチのように自分から積極的に人を刺すものではない。チャドクガは生涯を通じて毒針毛をもち、触れるとかぶれを生じる。一度その被害にあった人はそれが抗原になって2回目以降、個人差はあるがアレルギー反応を起こすことがある。毒蛾の毛虫1匹にある毒針毛は50万本から600万本といわれているが、毒針毛を持つ種類はドクガ科全体のごく一部である[3][4][5]

毒針毛は非常に細かく、長袖でも夏服などは繊維のすきまから入り込む。直接触れなくても木の下を通ったり、風下にいるだけで被害にあうことがある。またハチの毒などと違って幼虫自身の生死に関わらず発症するので、幼虫の脱皮殻や、殺虫剤散布後の死骸にも注意が必要である。被害にあったときに着ていた衣服は毒針毛が付着しているので、取扱いに注意する。成虫にも毒針毛が付着しており、卵塊は成虫の体毛に覆われているので、幼虫の時期のみでなく年間通じて注意が必要である。

症状

触れてから2 - 3時間して赤くはれ上がり痒くなる。高齢の庭師農家で、若いころは痒くなったが今はならない、という者もいるがまれな例である。一度この毒針毛に接触すると、抗体が形成され、2度目以降アレルギー反応を引き起こす。したがって1回目より2回目、3回目の方が症状が重くなる。毒針毛が皮膚に付着したあと擦ると皮膚に刺さり[1]、内部の毒が注入されるため、痒みを感じて掻き毟ることで炎症が広がり、また毒針毛はあらゆる隙間に入り込み腕全体や体の広範囲に発疹が生じる場合が多く予防も困難である。毒針毛の知識をもたず、単に蚊に刺された程度と軽く考え、ほうっておくとだんだん全身におよび、痛痒感で眠れなくなる。発熱めまいを生ずることもあり、そのままにしておくと長期に亘ってかゆみが続くので、速やかに医師の診察を受けたほうが良い。

治療

ハチ毒のような劇症性は少ないものの、かゆみが長期(長くて半年近く)にわたり厄介な毒である。触れたときは気がつかず、後で発疹のような大量のかぶれが生じ、ひりひりしてわかることが多い。毒針毛は微細構造で刺さると抜けにくい構造のうえ毒が封入されているため、乱雑に払ったり掻いたりすると症状が全身に拡大したりする。気がついたらさわらずに衣服についた毒針毛をガムテープなどを貼って丁寧に除去する。洗濯機などでの水洗いはほとんど効果がなく、洗濯槽を介して他の衣料品に毒毛針を拡散させるので避ける。チャドクガの毒成分はたんぱく質で熱に弱いので、50℃以上のお湯で洗濯したり、スチームアイロンをかけると良い。[6] 皮膚は流水で時間をかけて洗い流し、ステロイド抗ヒスタミン薬軟膏などの処方を受け塗る。蚊に刺されたときに使用する市販のクール系のぬり薬は効果がなく症状を悪化させることがある。一般市販薬ではまず効果はみられないので、症状が重くなる前に迷わず医師の診察を受け処方薬を使用するのがよい。

駆除

ツバキやサザンカは人気のある園芸植物であり、小学校公園などにもよく植えられている。園芸的被害も甚大だが毒針毛によって生垣の下を通った子供が被害にあう例もある。しばしば放し飼いにしているネコやイヌの体毛に毒針毛が付着してしまい、間接的に被害をうける場合がある。

予防策としては、早い段階で剪定を行うことで、風通しを良くしておき、卵塊を見つけたら葉ごと切除しておく。発生しても若齢のうちは葉の裏に群生していてわかりにくいので、食害された葉が白く透けてくることで気が付くことが多い。この時期に枝ごと切除するのが効果的である。このとき、うっかり触って驚かせるといっせいに糸を吐いてぶら下がり、拡散してしまうので気をつける。成長して拡散してしまったら殺虫剤で駆除するしかない。[7]

脚注

  1. ^ a b c d もとはEuproctis属に分類されていた近縁種のドクガ(種)の毒針毛が人体に作用するメカニズムを解説しているWebサイト。北海道のドクガ 皮膚炎の原因 毒針毛”. 北海道立衛生研究所 (2004年). 2016年4月24日閲覧。
  2. ^ [幼虫図鑑] p.179 「Euproctis属の特徴」 Euproctis属共通の特徴。
  3. ^ ドクガ科以外にはカレハガ科ヒトリガ科の一部などがあり、またマイマイガのように1齢幼虫の時期しか毒針毛をもたない種や、ヒメシロモンドクガスギドクガエルモンドクガダイセツドクガカシワマイマイなどのようにドクガ科でありながら毒針毛を一切持たない種もある。
  4. ^ 「ドクガ科は日本から50種あまりが知られており、そのうちドクガ属(Euproctis属)は10種類ほど」で「ドクガ科の中でも激しい皮膚炎を起こす原因である毒針毛を持っている(編注:生成する)のは、ドクガ属のガの幼虫だけ」とする。北海道のドクガ ドクガって?”. 北海道立衛生研究所 (2004年). 2016年4月24日閲覧。
  5. ^ [蛾類図鑑] Euproctis属は「従来 Euproctis 及び Porthesia の2属に分け」られており「将来いくつかの属に細分すべきである」「この属のなかには毒毛をもっているため、皮膚に炎症やかゆみを与えるものが多い」(p.31)とし、モンシロドクガ,トラサンドクガ,ゴマフリドクガ,キドクガ,ドクガ,チャドクガ,フタホシドクガ,マガリキドクガの8種を挙げる(p.32-34)。
  6. ^ http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_seikatsueisei_kankyo_seikatsu_gaicyutaisaku_cyadokuga.html[リンク切れ]
  7. ^ 近年、殺虫剤の使用量を減らすという観点から、消毒用アルコールや灯油をボロキレなどに含ませ、火をつけて焼き殺すという駆除方法が紹介されている。しかし、結果的には木を傷める事になるうえに、火災の危険があり、一般には勧められない。

参考文献

  • 一色周知監修,六浦晃(他)著『原色日本蛾類幼虫図鑑(上)』保育社、1965年。 
  • 江崎悌三,一色周知,六浦晃(他)著『原色日本蛾類図鑑(下) 改訂新版』保育社、1971年。 

関連項目

外部リンク