コンテンツにスキップ

江名鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
江名鉄道
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
福島県磐城市大字江名字風越6
設立 1947年(昭和22年)3月29日
業種 鉄軌道業
事業内容 旅客鉄道事業
代表者 社長 高橋源太郎
資本金 10,000,000円
発行済株式総数 200,000株
特記事項:1967年3月20日現在(『私鉄要覧 昭和42年度版』 26頁)
テンプレートを表示
概要
現況 廃止
起終点 起点:栄町駅
終点:江名駅
駅数 6駅
運営
開業 1953年1月12日 (1953-01-12)
廃止 1967年11月15日 (1967-11-15)
路線諸元
路線総延長 4.8 km (3.0 mi)
軌間 1,067 mm (3 ft 6 in)
最小曲線半径 160 m (520 ft)
最急勾配 16
路線図
KHSTaq STR+r
泉駅
HSTq KRZu
国鉄常磐線
LSTR
福島臨海鉄道本線
KHSTxe
小名浜駅
exBHF
0.000 栄町駅
exTUNNEL2
第1小名浜トンネル
exTUNNEL2
第2小名浜トンネル
exBHF
1.240 水産高校前駅
exBHF
2.560 永崎駅
exBHF
3.660 馬落前駅
exTUNNEL2
第1中之作トンネル
exTUNNEL2
第2中之作トンネル
exBHF
4.000 中之作駅
exTUNNEL1
江名トンネル 225m
exKBHFe
4.800 江名駅
テンプレートを表示

江名鉄道(えなてつどう)は福島県小名浜栄町駅江名駅を結んでいた鉄道。小名浜臨港鉄道(現福島臨海鉄道)に接続し、営業管理も委ねていて車両も自前のものを持たず、延長線のような存在であった。1966年の営業休止までの僅か13年間の運行であった。

歴史

[編集]

磐城海岸軌道時代

[編集]

後に小名浜臨港鉄道、現在の福島臨海鉄道となる磐城海岸軌道がこの区間の鉄道路線の嚆矢である。泉駅と小名浜の間には762 mm軌間の東商会の馬車鉄道軌道法により営業を行っていたところ、江名村からの漁獲物の輸送のために小名浜から江名に至る軌道の計画が起こった。江名軽便鉄道として特許出願し、1913年(大正2年)8月26日軌道敷設特許状が下付された。磐城海岸軌道として会社を設立し、廃線になった三春馬車鉄道より不要になった車両、資材を購入し[1]1916年大正5年)7月26日[2][3]に開業した。貨車は東商会の路線を泉まで直通した。翌1917年(大正6年)12月19日に東商会の泉 - 小名浜の路線を譲り受けることが出願され、泉から江名まで同一事業者による運行となった。

小名浜 - 江名は輸送量が少なく、保守も思うに任せなかったという。線路敷が個人の所有地内を通っていたことなどもあり、軌道敷設特許が1936年昭和11年)12月5日に取り消しとなった。ここに江名への鉄路は一度途絶えることになったが、残る根元の泉 - 小名浜は運行をつづけた。

1937年(昭和12年)、磐城海岸軌道は沿線に進出する日本水素工業(日本化成の前身)の資本参加を受け、小名浜臨港鉄道に改称、地方鉄道法による営業に変更、1941年(昭和16年)に1,067 mmに改軌開業した。

江名鉄道開業まで

[編集]

軌道の廃止になった江名では運動が起こり、小名浜臨港鉄道は1944年(昭和19年)にこの区間の免許を申請、1946年(昭和21年)に認可された。ところが制限会社に指定されてしまったために免許を別会社に移すことにして、ここに江名鉄道が設立された。戦後の混乱により着工は1948年(昭和23年)にずれ込み、工事はさらにその後5年を要した。建設費は膨れ上がり大半は借入金でまかなう状態であったという。1952年(昭和27年)に小名浜臨港鉄道が営業管理を行うことが決定され、1953年(昭和28年)1月11日に開業式が行われ、12日より営業運転開始となった。

開業から廃止まで

[編集]

小名浜臨港鉄道の延長線を建設するために便法として作った会社ではあったが、資本関係も薄く運転管理を引き受けるのみで、採算の取れないことが明らかとなっているこの路線は小名浜臨港鉄道にとって魅力はなかったようで、路線の保守も最小限であったらしい。江名鉄道は1959年(昭和34年)以降、社長が空席で鉄道関係の従業員もいない状態であった。1965年(昭和40年)の台風で線路に被害を受けたものを仮復旧で運転していたところ、当局の申し入れで1966年(昭和41年)2月14日限りで運転休止、そのまま復旧せずに翌1967年(昭和42年)11月15日付で廃止された。同年4月に改称して福島臨海鉄道となった小名浜 - 栄町も同時に廃止となった。

年表

[編集]
  • 1913年大正2年)8月26日 江名軽便鉄道に軌道敷設特許[4]
  • 1914年(大正3年)3月21日 工事施工申請書提出
  • 1915年(大正4年)6月2日 磐城海岸軌道発足[5]
  • 1916年(大正5年)7月26日 小名浜 - 江名村南町間開業
  • 1917年(大正6年)12月19日 東商会の泉 - 小名浜間軌道譲受を出願
  • 1918年(大正7年)8月30日 軌道特許権譲渡許可[6]
  • 1936年昭和11年)12月5日 小名浜 - 江名軌道敷設特許取消(許可ヲ受ケスシテ線路ヲ撤去シ運輸営業ヲ休止セルタメ) [7]
  • 1937年(昭和12年)2月28日 (磐城海岸軌道社長に日本水素工業社長中野友礼就任)
  • 1939年(昭和14年)
    • 10月16日 (磐城海岸軌道、小名浜臨港鉄道に改称)
    • 6月10日 地方鉄道に変更許可(泉-小名浜間)[8]
  • 1945年(昭和20年)10月 小名浜臨港鉄道、小名浜 - 江名間鉄道敷設免許申請
  • 1946年(昭和21年)5月21日 同敷設免許
  • 1947年(昭和22年)
    • 3月29日 磐南臨港鉄道設立
    • 6月 小名浜 - 江名間免許譲渡許可
  • 1948年(昭和23年)1月19日 着工、のちインフレのため工事中止
  • 1949年(昭和24年)10月 江名鉄道に改称
  • 1950年(昭和25年)6月 工事再開
  • 1952年(昭和27年)10月 小名浜臨海鉄道が営業管理を行うと決定
  • 1953年(昭和28年)1月11日 開業式、翌日小名浜 - 江名間営業運転開始
  • 1965年(昭和40年)7月 台風により永崎付近の護岸擁壁が決壊、仮復旧で運転再開
  • 1966年(昭和41年)2月15日 当初6か月の予定で運転休止
  • 1967年(昭和42年)
    • 4月1日 (小名浜臨港鉄道が福島臨海鉄道に改称)
    • 11月15日 全線廃止

施設

[編集]

停車場2、停留所3で、接続駅の栄町が停留所であったのは珍しい。全線単線、本線の線路延長4939.830 m、側線延長1,266 m、隧道5個所、橋梁8個所、票券閉塞式腕木式信号機3個所、踏切は第2種が?個所、第3種が3個所があった。途中唯一の交換可能駅は永崎で、島式ホーム1本に側線2本があったが、廃止の数年前に駅員無配置になっていた。江名は市街地から南にやや離れた所にあり、旅客ホーム、貨物ホーム、入換線、機廻線、ピットなどがあった。

[編集]

停は停留所。距離は経路図参照。

  • 栄町(停、さかえまち)- 水産高校前(停、すいさんこうこうまえ。旧下神白、しもかじろ)- 永崎(ながさき)- 馬落前(停、もうじまえ[9])- 中之作(停、なかのさく)- 江名(えな)

運転

[編集]

自社車両を持たず、すべて小名浜臨港鉄道の車両により運転された。栄町駅からそのまま乗り入れ、旅客列車12往復、貨物列車は2往復(後に減って1往復)であった。貨物列車は当初は蒸気機関車牽引であったが、貨物が少ない場合には気動車貨車をつけて運転された。

輸送実績

[編集]
年度 輸送人員(千人) 貨物量(トン)
1958 361 24,382
1963 357 15,370
  • 私鉄統計年報各年版

脚注

[編集]
  1. ^ おやけこういち『小名浜鉄道往来記』1994年、26頁
  2. ^ 高井 (1966) によるが、『地方鉄道及軌道一覧 : 附・専用鉄道. 昭和10年4月1日現在』では4月15日及び7月26日開業、『鉄道院鉄道統計資料. 大正5年度』は4月17日開業と記載している。
  3. ^ 4月15日に運輸営業の許可証が交付されたが、踏切敷板不足の箇所、道路拡張未済の箇所の改善という条件付きのため4月17日に開業。また3月14日付で終点延長の認可申請をしており7月26日に開業(おやけこういち『小名浜鉄道往来記』1991年、26頁)
  4. ^ 『鉄道院年報. 大正3年度』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  5. ^ 『日本全国諸会社役員録. 第24回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  6. ^ 「軌道特許権譲渡」『官報』1918年9月2日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  7. ^ 「軌道特許取消」『官報』1936年12月9日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  8. ^ 「軌道ヲ地方鉄道ニ変更許可」『官報』1939年6月15日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  9. ^ 高井 (1966) は本文中で「もうじまえ」、表-2停車場一覧中で「まうじまえ」としている

参考文献

[編集]
  • 高井薫平 (1966). “小名浜臨港鉄道”. 鉄道ピクトリアル No. 186 (1966年7月臨時増刊号:私鉄車両めぐり7): pp. 8-9, 40-51. (再録:鉄道ピクトリアル編集部 編『私鉄車両めぐり特輯』 2巻、鉄道図書刊行会、東京、1977年。 
  • 吉川文夫 著「昭和52年5月1日現在における補遺」、鉄道ピクトリアル編集部 編『私鉄車両めぐり特輯』 2巻、鉄道図書刊行会、東京、1977年、補遺2-3頁。