日産・VKエンジン

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日産・VKエンジン
VK45DE レース仕様
製造期間 2001年 -
タイプ V型8気筒ガソリンエンジン
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日産・VKエンジンとは、日産自動車V型8気筒ガソリンエンジンの系列である。

VHエンジンの後継として、2001年平成13年)にF50型シーマのフルモデルチェンジに合わせ、日産初のV型8気筒直接噴射(筒内噴射)式エンジンであるVK45DDが登場した。

2003年(平成15年)8月には、シーマのマイナーチェンジで燃料供給方式をポート噴射式としたVK45DEが搭載され、VK45DDは廃止された。同年10月、PGF50型プレジデントにVK45DEを搭載。2005年(平成17年)8月、Y50型フーガに333 PS仕様のVK45DEを搭載。自主規制撤廃後、日産のエンジンでは初めて280PSを越えた。

また、VK45DEをスケールアップしたVK56DEは日本国外で販売されているSUVピックアップトラックに搭載されている。

モータースポーツでは、VK45DEが世界耐久選手権ル・マン24時間レースのLMP2クラスで多くのプライベーターチームに使用された[1][2]

バリエーション[編集]

VK45DD[編集]

  • 種類:V型8気筒 DOHC 32バルブ CVTC(NEO-Di)
  • 排気量:4,494cc
  • 内径×行程:93.0mm×82.7mm
  • 圧縮比:11.0
  • 最高出力、最大トルク
    • 206kW(280 PS)/6,000rpm、451Nm (46.0kg-m)/3,600 rpm (シーマ2WD車)
    • 206kW(280 PS)/6,000rpm、402Nm (41.0kg-m)/3,600 rpm (シーマ4WD車)

搭載車種[編集]

「VK45DD」は、シリンダーブロックこそ旧型の4.1リットルV型8気筒ユニット(VH41DE)の発展形であるが、事実上まったくの新設計である。直噴システムは同社の2.0リットル直噴ユニットQR20DDと同じタイプ[3]を用いており、また、シリンダーヘッドの構造や給排気ポートの形状などをV6のVQシリーズモジュール化して、開発や生産のコストを引き下げている。従来品より40%も軽いというチタン合金給排気バルブや、軽量タイプのピストンなど、運動系の部品の軽量化を徹底したことと、摺動部のクリアランスを縮小したことで、高い静粛性燃費の向上が図られたという。とくに静粛性については、旧型の4.1リットルV型8気筒に比較し50-70%も向上している。

VK45DE[編集]

VK45DE(フーガ450GT)
  • 種類:V型8気筒 DOHC 32バルブ CVTC
  • 排気量:4,494cc
  • 内径×行程:93.0mm×82.7 mm
  • 圧縮比:11.0
  • 最高出力、最大トルク
    • 206kW(280PS)/6,000rpm、451Nm (46.0kg-m)/3,600rpm (プレジデント、シーマ2WD車)
    • 206kW(280PS)/6,000rpm、402Nm (41.0kg-m)/3,600rpm (シーマ4WD車)
    • 245kW(333PS)/6,400rpm、451Nm (46.0kg-m)/4,000rpm (フーガ)
    • 235kW(320PS)/6,000rpm、454Nm (46.4kg-m)/4,000rpm (FX45)
    • 254kW(340PS)/6,400rpm、451Nm (46.0kg-m)/4,000rpm (2003年 - 2005年 M45)

搭載車種[編集]

モータースポーツでの使用例が目立つのが本型式の特徴で、2007年から2009年にかけて2008年にボア・ストローク量を見直した上でSUPER GTで使用されたほか、2011年からはル・マン24時間レースのLMP2クラス向けにニスモザイテック経由でエンジン単体の供給を行う[1]。そして2011年ル・マン24時間レースのLMP2クラスでデビューイヤーながら1-2位を獲得、その後も多くのプライベーターチームに使用された[4]。またマザーシャシーのエンジンもこれと見られている。

VK50VE[編集]

VK50VE
  • 種類:V型8気筒 DOHC 32バルブ VVEL
  • 排気量:5,026 cc
  • 内径×行程:95.5mm×87.7mm
  • 圧縮比:10.9
  • 最高出力、最大トルク
  • 287kW(390PS)/6,500rpm、500Nm(51.0kg-m)/4,400rpm

搭載車種[編集]

2015年から2019年まで、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズなどに新設されたLMP3クラスにおいて、本エンジンがワンメイクエンジンとして採用されている[5]。LMP3用エンジンは出力が約420PSで、メンテナンスはオレカが担当する[6]

VK56DE[編集]

VK56DE(インフィニティ・QX56
  • 種類:V型8気筒 DOHC 32バルブ CVTC
  • 排気量:5,552cc
  • 内径×行程:98.0mm×92.0mm
  • 圧縮比:9.8
  • 最高出力、最大トルク
    • 235kW(320PS)/5,200rpm、522Nm(54.3kg-m)/3,400rpm(インフィニティ・QX)
    • 227kW(305PS)/4,900rpm、514Nm(52.4kg-m)/3,600rpm(アルマーダ)

搭載車種[編集]

2020年より、従来のVK50VEに代わり本エンジンが、LMP3ワンメイクエンジンとして採用されている[7]

VK56VD[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b ニスモ、11年規定対応のLMP2用エンジン販売へ - オートスポーツWEB・2010年9月21日
  2. ^ ニッサン、LMP2にVK45DEエンジンを多数供給”. オートスポーツweb. 2012年2月24日閲覧。
  3. ^ 燃焼室の一端からピストン冠面に対して斜めに噴霧する、キャスティングネットインジェクターを採用。
  4. ^ ル・マン24時間で見せた強さの秘密”. NISMO. 2022年4月22日閲覧。
  5. ^ Nissan named official engine supplier of LMP3 class - Motorsport.com・2014年9月18日
  6. ^ ACO、『LMP3』クラスに関する詳細を明らかに - オートスポーツ・2014年7月20日
  7. ^ リジェ、2020年規定に対応した新型プロト『JS P320』発表。ニッサンV8搭載の次世代LMP3”. autosport web. 2019年6月5日閲覧。

関連項目[編集]