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バングラデシュ空軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バングラデシュ空軍
বাংলাদেশ বিমান বাহিনী
Bangladesh Air Force
創設 1971年
国籍 バングラデシュの旗 バングラデシュ人民共和国
軍種 空軍
タイプ 軍事航空
兵力 17,390人[1][2]
上級部隊 バングラデシュ軍
基地 ダッカ宿営地英語版
作戦機 180機[3][4]
主な戦歴 バングラデシュ独立戦争
チッタゴン丘陵地帯紛争英語版
2015年バングラデシュ・アラカン軍国境衝突英語版
識別
国籍識別標
フィンフラッシュ
空軍旗
使用作戦機
戦闘機 MiG-29BM/UB
F-7BGI/BG
練習機 PT-6
Yak-130
輸送機 C-130B
C-130J
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バングラデシュ空軍(バングラデシュくうぐん、ベンガル語: বাংলাদেশ বিমান বাহিনী英語: Bangladesh Air Force、略称:BAF)は、バングラデシュ人民共和国空軍組織。バングラデシュ領土の防空、全土への戦術的・戦略的航空輸送、バングラデシュ陸軍英語版バングラデシュ海軍英語版の航空支援等を任務とする。

歴史

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バングラデシュ独立戦争中の1971年9月28日、インドナガランド州ディマプルにおいて、A・K・カンデカー英語版少将指揮の下、空軍から離反したベンガル人パイロット7名と整備兵58名で構成されるムクティ・バヒニ英語版の航空部隊が発足し[5][6]、航空機はインドからDC-3輸送機1機、DHC-3輸送機1機、SA 316汎用ヘリコプター1機が供与された[6]。ディマプルには第二次世界大戦中に建設された約1,525メートルの滑走路を有する飛行場が密林の中に残されており、航空部隊の拠点として利用された[7]。航空部隊は「キロフライト英語版」と呼ばれ、DHC-3輸送機とSA 316汎用ヘリコプターには対地攻撃用のロケット弾ポッド機関銃などの武装が施された[7][8]。12月3日、DHC-3輸送機はチッタゴン空港を空爆し、石油タンクを破壊する戦果を上げた[9]

1971年12月16日のパキスタン軍降伏後、東パキスタンがバングラデシュとして独立し、バングラデシュ空軍としては1972年4月6日から活動を開始、11月から12月にかけてソビエト連邦からの支援で多数の航空機が導入された。ソビエト連邦から導入した航空機は、MiG-21MF戦闘機10機、MiG-21UM練習機2機、Mi-8輸送ヘリコプター12機などで、中華人民共和国からも供給を受けた[10]

1972年7月2日のインド・パキスタン両政府による和平協定(シムラー協定)締結後、1973年に約2,000人の空軍将兵がバングラデシュに帰国したことでバングラデシュ空軍は拡大したが[6]、1977年9月28日に日本赤軍が起こしたダッカ日航機ハイジャック事件の際に空軍将兵の反乱英語版が発生、多数の将兵が逮捕され[11]、軍事法廷で有罪判決を受けた後、561名が絞首刑となった[12][13]

バングラデシュとパキスタンの関係は、ジアウル・ラフマンフセイン・モハンマド・エルシャド政権下で防衛協力体制の改善が図られ、特にインドの影響力拡大への懸念から、1980年代後半にパキスタンからF-6戦闘機の供与を受けている[10]。1999年にはシェイク・ハシナ首相の下でロシア連邦からMiG-29戦闘機8機を購入している[14]

2020年11月25日には、バングラデシュ空軍初となる女性パイロット64名が訓練学校を卒業した[15]

組織

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バングラデシュ空軍は、首都ダッカシャージャラル国際空港と南東部のチッタゴンにあるシャーアマーナト国際空港に主要飛行隊を配置している[16][17]。部隊は飛行隊を基本単位とし、飛行隊の下に分遣隊が編成される場合もある[16]

  • 第1飛行隊"The Pioneers"(No.1 Sqn シャーアマーナト国際空港) - Mi-17/-171Shベル 212AW139
  • 第3飛行隊"Unicorns"(No.2 Sqn シャーアマーナト国際空港) - An-32B
  • 第5飛行隊"Supersonics"(No.5 Sqn シャージャラル国際空港) - F-7BGI/BG
  • 第8飛行隊"Vigilance Valor Victory"(No.8 Sqn シャージャラル国際空港) - MiG-29BM/UB
  • 第9飛行隊(No.9 Sqn テジガオン空港英語版) - ベル 212
  • 第11飛行隊(No.11 Sqn ジョソール空港英語版) - PT-6
  • 第15飛行隊(No.15 Sqn ジョソール空港) - K-8W
  • 第18飛行隊(No.18 Sqn ジョソール空港) - ベル 206LAW119KX
  • 第21飛行隊"The Avengers"(No.21 Sqn シャーアマーナト国際空港) - Yak-130
  • 第25飛行隊"Trendsetters"(No.25 Sqn シャーアマーナト国際空港) - L-39ZA、FT-7
  • 第31飛行隊"Beyond the call of duty"(No.31 Sqn テジガオン空港) - Mi-17/-171Sh
  • 第35飛行隊"Thunder Cat"(No.35 Sqn シャージャラル国際空港) - F-7BGI/BG
  • 第101飛行隊"Excellence & Beyond"(No.101 Sqn テジガオン空港) - C-130BC-130J、Mi-17/-171Sh
  • 第103飛行隊(No.103 Sqn テジガオン空港) - L-410
  • 第105飛行隊"Trident"(No.105 Sqn シャーアマーナト国際空港) - Yak-130
  • 飛行訓練学校(ボグラ空港英語版) - PT-6

装備

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フォースゴール 2030

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バングラデシュ空軍では、軍近代化計画である「フォースゴール 2030」に基づき保有航空機の更新を進めており、2010年以降、固定翼機ではF-7BGI/BG戦闘機16機、Yak-130高等練習機16機、C-130J輸送機2機、K-8W練習機8機、L-410輸送機3機、PT-6練習機23機が導入され[18][19][20]マルチロール戦闘機16機の調達計画が進行中である[21]。回転翼機ではMi-171Sh輸送ヘリコプター21機、AW139捜索救難ヘリコプター4機、AW119KX練習ヘリコプター2機が導入され、攻撃ヘリコプター8機の調達計画が進行中である[21]

固定翼機

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名称 画像 製造国 種別 現用数 備考
F-7BGI/BG 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 戦闘機 36[3]
MiG-29BM/UB ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦 戦闘機 8[3]
L-410  チェコ 輸送機 3[19]
An-32B ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦 輸送機 3[3]
C-130B アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 輸送機 4[3]
C-130J アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 輸送機 3[3] イギリス空軍中古機[22]
PT-6 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 練習機 22[23]
L-39ZA  チェコ 練習機 7[3]
K-8W 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 練習機 15[4][24][25]
FT-7 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 練習機 11[3]
Yak-130 ロシアの旗 ロシア連邦 練習機 13[3]

回転翼機

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名称 画像 製造国 種別 現用数 備考
Mi-17/-171Sh
ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦 輸送ヘリコプター 30[3]
AW139 イタリアの旗 イタリア 捜索救難ヘリコプター 4[3]
ベル 212 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 汎用ヘリコプター 14[3]
ベル 206L アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 練習ヘリコプター 6[3]
AW119KX イタリアの旗 イタリア 練習ヘリコプター 2[3]

脚注

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出典

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  1. ^ (ベンガル語)Bangladesh Pratidin. https://www.bd-pratidin.com/news/2017/06/08/238362+2021年11月26日閲覧。 
  2. ^ (ベンガル語)The Daily Sangram. https://dailysangram.com/post/287234-সশস্ত্র-বাহিনীর-সদস্য-সংখ্যা-২-লাখ-৪-হাজার-৫৯৬-জন+2021年5月18日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n World Air Forces 2021”. FlightGlobal (2020年12月4日). 2021年1月5日閲覧。
  4. ^ a b “7 newly procured aircraft for BAF arrive in Chittagong”. Dhaka Tribune. (2020年10月15日). https://www.dhakatribune.com/bangladesh/nation/2020/10/15/7-newly-procured-aircraft-for-baf-arrive-in-chittagong 2020年10月16日閲覧。 
  5. ^ BAF History”. Bangladesh Air Force. 2021年5月23日閲覧。
  6. ^ a b c Uddin, Syed Mohd. Saleh (2012). “Bangladesh Air Force”. In Islam, Sirajul; Jamal, Ahmed A.. Banglapedia: National Encyclopedia of Bangladesh (Second ed.). Asiatic Society of Bangladesh. オリジナルの2020-12-28時点におけるアーカイブ。. http://en.banglapedia.org/index.php?title=Bangladesh_Air_Force 2017年4月3日閲覧。 
  7. ^ a b Khandker, Air Vice Marshal (ret.) A.K, 1971 Bhetore Baire. p. 173, ISBN 978-984-90747-4-8
  8. ^ Khandker, Air Vice Marshal (ret.) A.K, 1971 Bhetore Baire. p. 172, ISBN 978-984-90747-4-8
  9. ^ Habib, Haroon. “1971 wartime Dakota handed over to Bangladesh”. The Hindu. オリジナルの2020年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201228092443/https://www.thehindu.com/news/international/south-asia/1971-wartime-dakota-handed-over-to-bangladesh/article6902879.ece 2017年4月3日閲覧。 
  10. ^ a b Armed Forces Overviews: Bangladesh”. Scramble. 2013年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ2015年3月12日閲覧。
  11. ^ “United Red Army: 1977 Forever”. The Daily Star. (2012年5月30日). オリジナルの2017年4月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170404215536/http://www.thedailystar.net/news-detail-236199 2017年4月4日閲覧。 
  12. ^ “Bangladesh says 561 military men hanged after 1977 coup attempt”. UPI. http://www.upi.com/Archives/1988/05/24/Bangladesh-says-561-military-men-hanged-after-1977-coup-attempt/5405580449600/ 2016年12月14日閲覧。 
  13. ^ Rahman, Syedur (2010). Historical Dictionary of Bangladesh. Scarecrow Press. pp. 55. ISBN 978-0-8108-7453-4. https://books.google.com/books?id=bJfcCPUr0OoC&pg=PA55 
  14. ^ “5 acquitted in MiG-29 graft case”. The Daily Star. (2011年6月2日). オリジナルの2017年4月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170404131116/http://www.thedailystar.net/news-detail-188294 2017年4月3日閲覧。 
  15. ^ 64 Female recruits participate in BAF's passing out parade for graduates”. Dhaka Tribune (2020年11月25日). 2021年11月28日閲覧。
  16. ^ a b 石川潤一「知りたい!世界の空軍 第55回 バングラデシュ空軍」『JWings No154 2011年6月号』、イカロス出版、2011年6月、110-113頁。 
  17. ^ BANGLADESH AIR FORCE”. www.scramble. 2021年11月28日閲覧。
  18. ^ “Second C-130J Super Hercules aircraft arrived in Bangladesh”. Air Recognition. (2020年5月28日). オリジナルの2020年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201228092415/https://www.airrecognition.com/index.php/news/defense-aviation-news/2020/may/6277-second-c-130j-super-hercules-aircraft-arrived-in-bangladesh.html 2020年5月29日閲覧。 
  19. ^ a b “BD to build fighter planes one day, hopes PM”. UNB. (2015年5月27日). オリジナルの2015年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151228202214/http://unb.com.bd/pm-aircraft-lead 2015年5月27日閲覧。 
  20. ^ (ベンガル語)Manab Zamin. (2017年7月7日). https://mzamin.com/details-archive2016.php?mzamin=72866+2021年7月21日閲覧。 
  21. ^ a b “Steps taken to address irregularities in Biman: Minister”. United News of Bangladesh. (2020年1月30日). オリジナルの2020年2月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200202060535/http://unb.com.bd/category/Bangladesh/steps-taken-to-address-irregularities-in-biman-minister/42858 2020年2月2日閲覧。 
  22. ^ Bangladesh To Buy Two RAF C130J Transport Planes”. Defenseworld.net (2017年7月8日). 2017年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ2017年8月12日閲覧。
  23. ^ (ベンガル語)Jamuna Television. https://www.jamuna.tv/news/128953+2021年1月9日閲覧。 
  24. ^ A Look at China's Growing International Arms Trade”. USNI News. 2020年10月30日閲覧。
  25. ^ Two Air Force pilots killed as jet crashes in Jessore”. Dhaka Tribune (July 2018). 2018年7月14日閲覧。

外部リンク

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