ハギマシコ
ハギマシコ | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ハギマシコ Leucosticte arctoa (オス冬羽)
| ||||||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Leucosticte arctoa (Pallas, 1811) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ハギマシコ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Asian Rosy finch | ||||||||||||||||||||||||||||||
亜種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ハギマシコ(萩猿子、学名: Leucosticte arctoa)は、アトリ科ハギマシコ属に分類される鳥類の1種である[2]。
分布
[編集]旧北区の東部に分布する[2](ロシア東部、モンゴル、中国北東部、北朝鮮、韓国、 日本)。夏季にロシア(シベリア中・東部)のアルタイ山脈、サヤン山脈からモンゴル北部、ザバイカル、コリャーク地方、カムチャツカ半島、千島列島北部の山地で繁殖し、冬季になると低地や暖地に移動[2]、中国や朝鮮半島へ南下し越冬する。
日本では亜種ハギマシコ (Leucosticte arctoa brunneonucha) が主に冬季、越冬のため冬鳥として飛来するが、本州中部以北で見られ[3]、西日本には少ない[4]。夏季に北海道や東北地方の高山帯に残る個体もおり、北海道の日高山脈や利尻島のほか、大雪山では巣材を運ぶ個体や[5]巣立ち直後の幼鳥に給餌する観察例があり、繁殖している可能性があるが、巣や卵は確認されていない[6]。北海道で冬鳥または留鳥とされるほか、南千島、本州、見島(山口県)で冬鳥、舳倉島(石川県)では旅鳥、佐渡島(新潟県)、九州、対馬(長崎県)、伊豆諸島の八丈島(東京都)ではまれな旅鳥として記録されている[2]。
形態
[編集]全長約16cm。スズメ(約14.5cm)より少し大きい。体重約30g。
夏羽は全身が褐色みの強い羽毛で覆われ、嘴の色彩が黒い。冬羽では嘴の色彩はオレンジがかった黄色で先端が黒い[5]。オスの冬羽は前頭部から腹面にかけて黒く、胸部や腹面には白色や赤紫色の細かい斑紋が入る。和名はこの斑紋がハギの花のように見えることに由来する。後頭から側頸にかけては明褐色。胴体背面や肩羽は褐色で、羽毛の軸周辺の斑紋(軸斑)は黒褐色。メスの冬羽は褐色みが強く、腹面に灰色がかった赤紫色の斑紋が狭く入る。
分類
[編集]現在では通常、北アメリカに分布する以下の3種を別種に分類しているが[7]、これまで分類学的に安定せず、それらを単一種(ハギマシコ、英: Rosy Finch)としたほか、3ないし4種にも分類された[8]、
- Leucosticte tephrocotis (Swainson, 1832) - ハイガシラハギマシコ(英: Grey-crowned Rosy Finch)[9]
- Leucosticte atrata (Ridgway, 1874) - クロハギマシコ(英: Black Rosy Finch)[10]
- Leucosticte australis (Ridgway, 1874) - チャボウシハギマシコ(英: Brown-capped Rosy Finch)[11]
亜種
[編集]- Leucosticte arctoa arctoa (Pallas, 1811) - 基亜種。ロシアのアルタイ地方に分布する[12]。
- Leucosticte arctoa cognate (Madarász, 1909) - モンゴルに近いロシアのサヤン山脈および近隣の山脈に分布する[12]。
- Leucosticte arctoa sushkini (Stegmann, 1932) - モンゴル北部のハンガイ地方 (Khangai region) に分布する[12]。
- Leucosticte arctoa gigliolii (Salvadori, 1869) - ヤブロノヴイ山脈の東、バイカル湖北部の山脈に分布する[12]。
- Leucosticte arctoa gigliolii (gigliolii)
- Leucosticte arctoa gigliolii (curilica)
- Leucosticte arctoa brunneonucha (Brandt, 1842) - 亜種ハギマシコ。シベリア東部の山脈(レナ川からカムチャツカ半島、千島列島)に分布する[12]。
生態
[編集]標高の高い岩礫地や崖地に生息し、冬季になると海岸、崖地や岩場、疎林、草原、荒地などに移動する[2]。非繁殖期には、数十羽から数百羽の群れで行動する。
食性は植物食で、主に種子を食べる。主に地表で採食を行う。
岩の隙間に木の枝、苔、枯れ草などを組み合わせた皿状の巣を作り、1腹4-5個の卵を産む。抱卵期間は12-14日でメスのみが抱卵する。雛は18-20日で巣立ちするが、その後も約14日程度親から給餌される。
鳴き声は、地鳴きでは「ジュッジュッ」「ジェッジェッ」と濁って聞こえる。高めの声で「ピィスピィス」と鳴いたり、「チッチッ」という鳴き声を発したりもする。飛翔時に聞くことが多い[3]。
脚注
[編集]- ^ “The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.2. Leucosticte arctoa” (英語). 国際自然保護連合 (IUCN). 2014年4月20日閲覧。
- ^ a b c d e 日本鳥学会(目録編集委員会)編 編『日本鳥類目録』(改訂第7版)日本鳥学会、2012年、359-360頁。ISBN 978-4-930975-00-3。
- ^ a b 蒲谷鶴彦、松田道夫『日本野鳥大鑑 鳴き声333 (下)』小学館、1996年、125頁。
- ^ 日本の野鳥650 (2014)、675頁
- ^ a b 日本の野鳥590 (2000)、579頁
- ^ 河井大輔・川崎康広・島田明英、諸橋淳『新訂 北海道野鳥図鑑』(第2版)亜璃西社、2013年、195頁。
- ^ “IOC World Bird List Ver. 3.3 (Finches, NW warblers & orioles)” (英語). 国際鳥類学会議 (IOC). 2013年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月20日閲覧。
- ^ 日比彰「世界中で美しい アトリのなかまたち」『Birder』第18巻第1号、文一総合出版、2004年1月、40頁。
- ^ “Gray-crowned Rosy-Finch (Leucosticte tephrocotis) (Swainson, 1832)” (英語). Avibase - the world bird database. BirdLife International. 2014年3月22日閲覧。
- ^ “Black Rosy-Finch (Leucosticte atrata) (Ridgway, 1874)” (英語). Avibase - the world bird database. BirdLife International. 2014年3月22日閲覧。
- ^ “Brown-capped Rosy-Finch (Leucosticte australis) (Ridgway, 1874)” (英語). Avibase - the world bird database. BirdLife International. 2014年3月22日閲覧。
- ^ a b c d e Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 628. ISBN 978-0-8014-4501-9
参考文献
[編集]- 安部直哉『山溪名前図鑑 野鳥の名前』山と溪谷社、2008年、81頁。ISBN 978-4-635-07017-1。
- 五百沢日丸『日本の鳥550 山野の鳥』(増補改訂版)文一総合出版、2004年、309頁。ISBN 4-8299-0165-9。
- 黒田長久監修、C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 編『動物大百科9 鳥類III』平凡社、1986年、160頁。ISBN 4-582-54509-2。
- 高野伸二『フィールドガイド 日本の野鳥』(増補改訂版)日本野鳥の会、2007年、284-285頁。ISBN 978-4-931150-41-6。
- 高野伸二 編『山溪カラー名鑑 日本の野鳥』山と溪谷社、1985年、524-525頁。ISBN 4-635-09018-3。
- 真木広造、大西敏一『日本の野鳥590』平凡社、2000年。ISBN 4-582-54230-1。
- 真木広造、大西敏一・五百澤日丸『日本の野鳥650』平凡社、2014年。ISBN 978-4-582-54252-3。
- 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、18頁。
- 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、102頁。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- “Asian Rosy-Finch (Leucosticte arctoa) (Pallas, 1811)” (英語). Avibase - the world bird database. BirdLife International. 2014年3月22日閲覧。
- “Asian Rosy-finch (Leucosticte arctoa) Videos, Photos (& Sounds)” (英語). The Internet Bird Collection (IBC). 2014年3月22日閲覧。