ナンヨウツバメウオ
ナンヨウツバメウオ | ||||||||||||||||||||||||
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成魚
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Platax orbicularis (Forsskål, 1775) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム[2] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
orbicular batfish 等(本文参照) |
ナンヨウツバメウオ(学名:Platax orbicularis)は、マンジュウダイ科に属する魚の一種[3]。インド太平洋に分布するが、西大西洋への侵入が確認されている。
分類
[編集]本種は1775年にフィンランドの探検家、東洋学者、博物学者であるPeter Forsskålによって Chaetodon orbicularis として記載された。タイプ産地はサウジアラビアのジッダである。
種小名は「円形」という意味で、成魚の円状の体形に由来する[4]。英名は様々で、orbicular batfish、cooper batfish、circular batfish、orbiculate batfish、round batfish、narrow-banded batfish、orbic batfishなどがある。
形態
[編集]体長は最大60cm[2]。体は側扁した円形[5][6]。背鰭は5棘34 - 39軟条から、臀鰭は3棘25 - 29軟条から成る[2]。鱗は小さく細かく、顔には少ない[7]。同属種のアカククリ程では無いが、吻部が少し突出する[7]。成魚と幼魚では姿が大きく異なる。
成魚の体色はくすんだ銀色で、眼を通る位置と頭部後方、体側面後方、尾鰭前部に暗い茶色の帯が入る[6][8]。腹鰭前部、胸鰭、背鰭上部と臀鰭前部、尾鰭中央部は黄色[8]。背鰭上部、臀鰭下部、尾鰭後部は黒く縁どられる[8]。体側面には小さな黒点がある[8]。
幼魚は背鰭、臀鰭、腹鰭が細長く、成長とともに丸みを帯びてくる[6]。幼魚の体色は全体的に赤褐色で、眼を通る暗色帯が一本あり、胸鰭と尾鰭の大部分は透明である[6][8]。この体色は枯葉に擬態していると考えられている[8]。体側面には黒く縁どられた小さな白い点をもつ[6]。
分布・生態
[編集]南アフリカ、マダガスカル、マスカリン諸島、セーシェル、東アフリカからインド太平洋に分布し、分布域は紅海からペルシア湾を通って、ミクロネシア、トゥアモトゥ諸島に至り、日本、オーストラリア南部から北部まで広がる[1][2][8]。西大西洋のフロリダ州沖で記録されており、おそらく放流されたものと考えられている[5]。
オーストラリアでは西オーストラリア州のシャーク湾から北部まで、南は東海岸のシドニー付近まで発生し、ティモール海のアシュモア・カルティエ諸島のほか、インド洋東部のクリスマス島やココス諸島でも見られる[8]。
日本では幼魚が岩手県以南の太平洋沿岸、鳥取県、瀬戸内海で見られ、漁港などで枯葉に擬態し浮遊している姿も観察される[6][8][9]。成魚は琉球諸島など比較的温暖な地域でよく見られる。
成魚は単独または数匹で、水深10 - 25 mの沿岸部のサンゴ礁や岩礁、砂地で生活する[8]。稀に大規模な群れを作る[8]。幼魚は単独または数匹で生活し、沿岸部の漁港やマングローブ林、サンゴ礁で見られる。藻類や無脊椎動物、小魚を捕食する雑食性[8]。
雌は全長30 cm程で性成熟する[1]。繁殖は満月の日の日暮れに行われ、雌が直径平均1.3 mmの卵を75000 - 150000個産み、24時間後に全長平均3.7 mmの稚魚が孵化する[10]。稚魚はプランクトンを捕食し、18日ほどで全長1.5 cmに成長する[10]。
人間との関係
[編集]日本では普通食用とされないが、南太平洋地域では釣りや網を使った小規模漁業で漁獲され、食用となる[2]。フランス領ポリネシア、特にタヒチでは養殖が行われている。幼魚はその特異な姿から観賞用として販売される[1]。
脚注
[編集]- ^ a b c d Carpenter, K.E.; Robertson, R. (2019). “Platax orbicularis”. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T190152A53937753. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T190152A53937753.en 11 January 2024閲覧。.
- ^ a b c d e Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2023). "Platax orbicularis" in FishBase. February 2023 version.
- ^ “WoRMS - World Register of Marine Species - Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. www.marinespecies.org. 2023年5月7日閲覧。
- ^ “Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (12 January 2021). 11 January 2024閲覧。
- ^ a b “Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. Nonindigenous Aquatic Species Database, Gainesville, FL. U.S. Geological Survey (2023年). 11 January 2024閲覧。
- ^ a b c d e f 中坊(2018).
- ^ a b “Shorefishes - The Fishes - Species”. biogeodb.stri.si.edu. 2023年5月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “Platax orbicularis” (英語). fishesofaustralia.net.au. 2023年5月7日閲覧。
- ^ 丈, 浜橋 (2021). “兵庫県神戸市から得られた瀬戸内海初記録のナンヨウツバメウオ”. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 15: 38–40. doi:10.34583/ichthy.15.0_38 .
- ^ a b “Platax orbiculaire • Platax orbicularis • Fiche poissons” (フランス語). Fishipedia. 2023年5月7日閲覧。
参考文献
[編集]- 中坊徹次『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、432頁。ISBN 978-4-09-208311-0。