ガマール・アブドゥル=ナーセル (揚陸艦)
ガマール・アブドゥル=ナーセル (1010) جمال عبد الناصر | |
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ガマール・アブドゥル=ナーセル、2022年撮影。 | |
基本情報 | |
建造所 |
アトランティーク造船所 (サン=ナゼール) バルト海造船所 (サンクトペテルブルク) |
運用者 |
ロシア海軍 エジプト海軍 |
艦種 | 強襲揚陸艦(指揮・戦力投射艦) |
級名 | ミストラル級強襲揚陸艦 |
母港 | アレクサンドリア |
艦歴 | |
発注 | 2011年6月 |
起工 | 2012年2月1日(アトランティーク造船所) |
進水 | 2013年10月15日[1] |
竣工 | 2015年9月23日(購入日)[2] |
就役 | 2016年6月 |
改名 | 元ロシア海軍「ウラジオストク」(Владивосток) |
要目 | |
基準排水量 | 16,500t |
常備排水量 | 21,300t |
満載排水量 | 32,300t |
全長 | 200m |
最大幅 | 32m |
吃水 | 6.3m |
主機 | バルチラ16V32ディーゼル発電機×3 |
出力 | 8,300馬力(6,200kw) |
速力 | 18.8ノット (34.8 km/h) |
航続距離 |
5,800海里 (10,741.6 km)/18ノット (33.3 km/h) 10,700海里 (19,816.4 km)/ 15ノット (27.8 km/h) |
乗員 |
乗組員160名 司令部要員150名 揚陸部隊員450名(最大900名)[3] |
兵装 |
「ウラジオストク」時 |
搭載機 |
「ウラジオストク」時 |
ガマール・アブドゥル=ナーセル (1010)(「ガマル・アブドゥル・ナセル」とも、アラビア語: جمال عبد الناصر、英語: ENS Gamal Abdel Nasser)とは、エジプトの揚陸艦である。
フランスのミストラル級揚陸艦の一隻。ロシア海軍向けに建造され、2014年クリミア危機の影響で2015年に引き渡しが中止となった[6]「ウラジオストク」(ロシア語: Владивосток)をエジプトが購入、エジプト海軍で就役することとなった(後述)。艦名は1952年のエジプト革命を主導し、第2代エジプト大統領となった政治家、ガマール・アブドゥル=ナーセル(ガマル・アブドゥル・ナセル)に由来する。
本記事では艦名を艦歴に応じて、「ウラジオストク」、「ナセル」のように使い分けることとする。
艦歴
[編集]「ウラジオストク」時代
[編集]「ウラジオストク」は2011年6月、同型艦「セバストポリ」(現「アンワル・アッ=サーダート」)とともに2015年就役予定で[7][8][9][10]、ロシア政府によって発注され、フランスが工程の6割を、ロシアが4割を担当した。2012年2月1日、フランスのサン=ナゼールにあるアトランティーク造船所で起工、続いて2012年10月、ロシアのサンクトペテルブルクにあるバルト海造船所でも建造が開始された。建造に当たってはシステムに民生品を流用することで、建造費を抑えることとされた[11][12]。
フランスにおいて最終組み立てが行われたのち[13]、「ウラジオストク」は2013年10月15日に進水[14]、2014年3月5日には処女航海を行った[15][16]。
ロシアがフランスとミストラル級強襲揚陸艦を建造・購入することは、第二次大戦以降最大規模となるロシアと西側諸国間での防衛事業であるとされたが[17]、2014年クリミア危機・ウクライナ内戦の影響によりロシアと西側諸国の関係が悪化[11][12]。他国からの政治的圧力もあり、2014年9月3日、フランスのフランソワ・オランド大統領はロシアへの「ウラジオストク」と「セバストポリ」の引き渡しの一時中止を発表した[18]。
同年9月13日、ウクライナで一時停戦が成立し、「ウラジオストク」と「セバストポリ」の引き渡しも(フランス国防省筋によれば11月中旬に[19])再開するものと思われたが、11月25日、両艦の引き渡しを無期限延期することが発表された。 ロシアは法的措置も検討に入れてこの決定に抗議したが[20]、2015年8月、フランス・ロシア両政府において「ウラジオストク」と「セバストポリ」の引き渡し中止が正式に決定、フランスはロシアに費用を全額返還することとなった[21]。
「ナセル」時代
[編集]同年9月23日、フランスとエジプトは「ウラジオストク」と「セバストポリ」をエジプトが9億5000万ユーロ(当時のレートで1,273億円、乗員の訓練コスト含む)で購入することに同意した[22][23]。2016年1月上旬には支払いを完了した[24]。
「ウラジオストク」は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」に改名され、2016年6月2日、フランスの造船企業であるDCNSによりエジプトへの引き渡しが行われた。アレクサンドリアへ配備されるのに先立ち、「ナセル」はエジプト・フランス海軍の合同演習に参加した[25]。
2016年6月に正式にエジプト海軍に就役した。
脚注
[編集]- ^ “France Floats Out First Russian Mistral Warship | Defense | RIA Novosti”. En.ria.ru (2013年10月15日). 2014年4月20日閲覧。
- ^ Regan, James (23 September 2015). “Hollande, Sissi agree on sale of Mistral warships to Egypt”. Reuters. Paris 25 September 2015閲覧。
- ^ 多田智彦『世界の戦闘艦カタログ』アリアドネ企画、2012年、pp.52頁。ISBN 978-4-384-04527-7。
- ^ DP-65 antisaboteur grenade launchers
- ^ “Russia’s Mistrals will be rapid response ships - News - Society - The Voice of Russia: News, Breaking news, Politics, Economics, Business, Russia, International current events, Expert opinion, podcasts, Video”. : (2012年9月12日). 2014年4月20日閲覧。
- ^ “Mistral : sortie en mer du "Vladivostok" a Saint-Nazaire, des marins russes a bord” (フランス語). clicanoo.re (13 September 2014). 5 November 2014閲覧。
- ^ “Russian Navy to Receive Mistral Warship in 3 Years | Defense | RIA Novosti”. En.rian.ru. 2014年4月20日閲覧。
- ^ John Pike. “Russia signs $1.7 bln deal for 2 French warships”. Globalsecurity.org. 2014年4月20日閲覧。
- ^ “Vladivostok, Russian Navy future Mistral class LHD, specificities and characteristics(Navy recognition)”. 2013年3月17日閲覧。
- ^ “Russia Moves Mistral Stern Construction to France”. 21 June 2013閲覧。
- ^ a b Stephen Daly (April 2014). “French Amphibious Warfare Ships for Russia? Economic Sanctions, Coincident Procurement Opportunities, and the Mistral Class LHDs”. Canadian American Strategic Review. オリジナルの2014年9月6日時点におけるアーカイブ。 2014年9月15日閲覧. "Then there is the possibility of poking Vladimir Putin in the eye by taking over ownership of the Sevastopol."
- ^ a b Jim Dorschner (September 2014). “A Tale of Two Ships: Turning Russia's Loss into a Mistral Bounty for NATO and Canada ? 'NATO Naval Ship Alliance' and 'HMCS Resolute'”. Canadian American Strategic Review. オリジナルの2014年9月15日時点におけるアーカイブ。 . "The September 2014 decision by France to withhold delivery of two Mistral class Landing Helicopter Dock (LHD), being built for Russia, represents a tremendous opportunity for the NATO alliance, for the Royal Canadian Navy (RCN), and even for a French shipbuilding industry and economy that might otherwise lose out."
- ^ 01.10.2012. “First Mistral Laid Down at Baltiysky Zavod Shipyard”. Rusnavy.com. 2014年4月20日閲覧。
- ^ “DCNS launch Vladivostok, Russian Navy's first Mistral class LHD(Navy recognition)”. 16 October 2013閲覧。
- ^ News Desk. “Vladivostok - Mistral Class LHD Bound for Russia Begins Sea Trials in the Atlantic”. Defense Update. 2014年4月20日閲覧。
- ^ “Official: Delivery of First Mistral class LHD Vladivostok on hold until November”. 3 September 2014閲覧。
- ^ “France, U.S. Discuss Russian Mistral Carrier Query | Defense News”. defensenews.com. 2014年4月20日閲覧。
- ^ “Ukraine crisis: France halts warship delivery to Russia”. オリジナルの2014年9月14日時点におけるアーカイブ。 3 September 2014閲覧。
- ^ “Mistral delivery to Russia to be approved by mid-November”. ITAR TASS 26 October 2014閲覧。
- ^ “Russia Mistral: France halts delivery indefinitely”. BBC News Online. 25 November 2014閲覧。
- ^ “Mistral warships: Russia and France agree compensation deal”. BBC News. (2015年8月5日) 2016年7月27日閲覧。
- ^ Dalton, Matthew (23 September 2015). “France to Sell Two Mistral Warships to Egypt”. Wall Street Journal
- ^ Cullinane, Susannah; Martel, Noisette (23 September 2015). “France to sell Egypt two warships previously contracted to Russia”. CNN
- ^ “French Arms Exports Reach All-Time High in 2015” 14 January 2016閲覧。
- ^ “DCNS DELIVERS THE FIRST MISTRAL-CLASS HELICOPTER CARRIER TO THE EGYPTIAN NAVY, THE LHD GAMAL ABDEL NASSER”. (2 June 2016)
関連項目
[編集]- エジプト海軍艦艇一覧
- ミストラル級強襲揚陸艦
- タヒヤ・ミスル (065) - アキテーヌ級駆逐艦2番艦。「ノルマンディー」(D651)としてフランス海軍での就役が予定されていたが、2015年にエジプト海軍へ売却された。