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アルルの女

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジョルジュ・ビゼー

アルルの女』(アルルのおんな、フランス語: L'Arlésienne)は、ジョルジュ・ビゼーによる全27曲の付随音楽であり、アルフォンス・ドーデの同名の短編小説『アルルの女フランス語版』およびそれに基づく戯曲の上演のために1872年に作曲されたものである。付随音楽から編曲された2つの組曲が一般には最も広く知られている。

あらすじ

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南フランス豪農の息子フレデリは、アルル闘牛場で見かけた女性に心を奪われてしまった。フレデリにはヴィヴェットという許嫁がいるが、彼女の献身的な愛もフレデリを正気に戻すことはできない。日に日に衰えていく息子を見て、フレデリの母はアルルの女との結婚を許そうとする。それを伝え聞いたヴィヴェットがフレデリの幸せのためならと、身を退くことをフレデリの母に伝える。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を忘れてヴィヴェットと結婚することを決意する。2人の結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れて、今夜アルルの女と駆け落ちすることを伝える。物陰からそれを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝いの踊りファランドールがにぎやかに踊られる中、機織り小屋の階上から身をおどらせて自ら命を絶つ。

日本語訳(戯曲)

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劇付随音楽

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作曲期間が短く、また契約の関係で極めて小編成のオーケストラしか使えなかったため、作曲には大変苦労したという話が伝わっている。[要出典]初演の評価は芳しくなかった。6年後に再演された時は大好評のうちに迎えられたが、その時すでにビゼーはこの世の人ではなかった。

楽器編成

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ハープ、フルート2、オーボエコーラングレ)1、クラリネット1、ファゴット1、アルト・サクソフォーン1、ナチュラルホルン1、ヴァルヴ・ホルン1、ティンパニプロヴァンス太鼓ピアノハルモニウム弦五部(第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ1、チェロ5、コントラバス2)、合唱

組曲

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一般に知られているのは、演奏会用に劇付随音楽から数曲を選んだ組曲である。

第1組曲

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第1組曲はビゼー自身が通常オーケストラ向けに編成を拡大して組曲としたものである。劇付随音楽が初演された直後の1872年11月10日に初演されて成功を収めた。

第1曲『前奏曲
劇音楽No.1 序曲から。3部構成。第1部の主旋律は、プロヴァンス民謡『3人の王の行列』に基づく。第2部のアルト・サクソフォーンによる旋律は、フレデリの弟の知的障害を表す動機によっている。第3部は、フレデリの恋の悩みを表している。
{
 \key c \minor \tempo "Allegro deciso" 4=104 \time 4/4 \relative c' {
r2 c4\ff-. g4-.| c4( c8) [r16 d16] \acciaccatura f8 ees8 [r16 d16 ees8 r16 c16]| g'4( g8) [r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8 d4-. g4-.| f8-. ees8-. d8-. ees8-. c4-. g4-.| c4( c8) [r16 d16] \acciaccatura f8 ees8 [r16 d16 ees8 r16 c16]| g'4( g8) [r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8-. ees4-. d4-.| c4( c8) [ r16 d16] d4-. d4-.| ees-. d8[ r16 c16] d4-. ees4-.| f4( f8) [ r16 ees16] f4-. g4-.| c,4-. d8-. ees8-. f8-. ees8-. d8-. c8-.| c8-.[ b8-. g8-. r16 d'16] d4-. d4-.| ees4-. d8[ r16 c16] d4-. ees4-.| f4( f8) [ r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8-. ees4-. d4-.| c4( c8)
 }
}
第2曲『メヌエット
劇音楽No.17 間奏曲から。

{
	\tempo "Allegro giocoso" 4 = 184
	\clef treble
	\key c \minor
	\time 3/4
	r4 r g'\ff(
	g'')-. g''-. g''-.
	g'' \acciaccatura aes''8 g''( f'') g''-. aes''-.
	g''4 \acciaccatura aes''8 g''( f'') g''-. aes''-.
	\break
	bes''4-. c'''8( d''') es'''-. d'''-.
	c'''-. bes''-. aes''-. g''-. f''-. es''-.
	d''( c'') bes'-. aes'-. g'4-.
	aes'8-. bes'-. c''4-. d''-.
	bes'-.
}
第3曲『アダージェット
劇音楽No.19 メロドラマの中間部から。

{
	\clef treble \key d \minor \time 3/4 
	\tempo "Adagio" 4 = 40
	\new Voice = "melody" {
		<<
			{
				\voiceOne
			 R2. r4 r4 a'4(
			}
			\new Voice {
				\voiceTwo
				c'4 \pp c'2 c'4 c'2 
			}
		>>
		\oneVoice
		bes'2 a'4
		g'2 \tuplet 5/4 { a'16 bes' a' g' a' }
		c''8 bes'4 bes'8 \slashedGrace bes' a'16 g' a' c''
		a'4 g') a'\(
		\break
		g'2 a'4\<
		bes'2 c''8 d''
		e''4 e'' \tuplet 5/4 { f''16 g'' f'' e'' f'' }
		a''4\!( a''16) g''\> f'' e'' g'' f'' c'' a'\!
		bes'2 \pp a'4 g'2\)
	}
}
第4曲『カリヨン
劇音楽No.18 導入曲およびNo.19 メロドラマ前後部から。ビゼーは『アダージェット』に使わなかった部分を中間部に置く三部形式に構成し直している。

{
	\clef treble \key cis \minor \time 3/4 
	\tempo "Allegretto moderato" 4 = 104
	\new Voice = "melody" {
		gis'-^ e'-^ fis'-^
		gis'-^ e'-^ fis'-^
		gis'-^ e'-^ fis'-^
		gis'-^ e'-^ fis'-^
		<<
			{
				\voiceOne
			 b''2^"VI." ^\ff \tuplet 3/2 { fis''8 b'' fis'' }
			}
			\new Voice {
				\voiceTwo
				gis'4-^ e'-^ fis'-^
			}
		>>
		\break
		<<
			{
				\voiceOne
			 e''2 b'4
			}
			\new Voice {
				\voiceTwo
				gis'4-^ e'-^ fis'-^-"etc."
			}
		>>
		\oneVoice
		cis''8( dis'') e'' gis'' fis'' dis''
		b'8( cis'') dis''( cis'') b' fis'
	}
}

第2組曲

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第2組曲は、ビゼーの死後の1879年に彼の友人エルネスト・ギローの手により完成された。ギローは管弦楽法に長けていただけでなく、ビゼーの管弦楽法の癖についてもよく把握しており、『アルルの女』以外の楽曲も加えて第1組曲と同じようなオーケストラ編成で編曲した。

第1曲『パストラール
劇音楽No.7 導入曲および合唱から。もともと二部に分かれていた曲を、ギローは三部形式に構成し直している。
{
 \key a \major \tempo "Andante sostenuto assai" 4=80 \time 4/4 \relative a'' {
<<
\clef bass
  \relative { e2( e4) r4 e2( e4) r4}
  \\
  \relative { a,2\sfz\>( a8\!) r8 r4 a2\sfz\>( a8\!) r8 r4}
  \\
  \relative { r4 e4\ff-> e'4->( e8) r8 r4 e,4\ff-> e'4->( e8) r8}
>>
\clef treble a,2\ff->( b8 cis8 e,8 fis8)| gis4.->( a8 b8 cis8 e,8 fis8)| gis4.->(a16 cis16 fis8 e16 d16 cis8 b16 a16)| b8\( cis16 b16 fis8 gis16 a16 b4( b8)\) r8|
b2->( cis8 d8 fis,8 gis8)| ais4.->( b8 cis8 d8 fis,8 gis8)| ais4.->( b16 d16 gis8 fis16 e16 d8 cis16 b16)| a8\( b16 a16 fis8 e16 fis16 a4( a8)\) r8
 }
}
第2曲『間奏曲
劇音楽No.15 導入曲から。中間部のアルト・サクソフォーンによる敬虔な旋律は、『神の子羊』という歌曲としても歌われた。

{
	\clef treble \key c \minor \time 4/4
	\set Score.tempoHideNote = ##t
	\tempo "Andante moderato ma con moto" 4 = 70
	es'2-> \fff d'4-> bes->
	g4.-> a8-> bes4-> c'8-> d'8->
	es'4-> d'8-> es'-> f'4-> g'->
	es'4.-> d'8-> c'4-> r
	\break
	\set Score.tempoHideNote = ##t
	\tempo "Allegro moderato" 4 = 116
	g'2^"Sax."\( \p as'4 g'
	c''2 bes'4 g'
	es'4 d'8 es'8 f'4. \grace as'16 g'8
	f'2~ f'4\) r4
}
音楽・音声外部リンク
齋藤秀雄指揮、新交響楽団演奏(日本コロムビア社発売)
アルルの女 メヌエット - 歴史的音源(国立国会図書館デジタルコレクション
第3曲『メヌエット
アルルの女といえば、この曲と連想されるほど有名な曲であるが、実はビゼーの歌劇『美しきパースの娘』の曲をギローが転用、編曲したものである[1][出典無効]フルートハープによる美しい旋律が展開される。

{
	\clef treble \key c \minor \time 3/4
	\tempo "Andantino quasi alegretto" 4 = 72
	\new Voice = "melody" {
		<<
			{
				\voiceOne
			 R2 R2
			}
			\new Voice {
				\voiceTwo
				es8^"Hfe." \pp bes es' bes g' bes
				es bes es' bes g' bes
			}
		>>
		\oneVoice
		g''4^"Fl."\( g''8. f''16 es'' f'' g'' as''
		bes''8 g'' es''' bes'' g'''\) r8
		f''4( f''8. g''16 f'' es'' d'' c'')
		\break
		bes'8( d'' f'' d'' bes'') r8
		es''4\( es'' f''16 es'' d'' es''
		f''8\< g'' as'' bes'' c'''\)\! r8
		f''4\( \pp f'' \slashedGrace g''16 f'' e'' f'' g''
		es''4 es''8\) r8 r4
	}
}
第4曲『ファランドール
劇音楽No.21 ファランドールなどからギローが終曲として構成。プロヴァンス民謡『3人の王の行列』(短調)に基づく旋律とファランドールが組み合わされ、熱狂的なクライマックスを築き上げる。『ファランドール』の軽快な旋律は、民謡『馬のダンス』(長調)に基づく。

{
  \clef treble \key d \minor \time 4/4
  \tempo "Allegro deciso (Tempo di marcia)" 4 = 104
  r2 d''4 \ff a'
  d''4.. e''16 f''8. e''16 f''8. d''16
  a''4 r8 f'' g''4 a''
  bes''8 a'' g'' f'' e''4 a''
  \break
  g''8 f'' e'' f'' d''4 a'4
  d''4.. e''16 f''8. e''16 f''8. d''16
  a''4 r8 f'' g''4 a''
  bes''8 a'' g'' f'' f''4 e''
  d''~ d''8 r8 \bar "||"
}

{
  \clef treble \key d \major \time 2/4
  \set Score.tempoHideNote = ##t
  \tempo "Allegro vivo e deciso" 4 = 120
  s s8 d'''8 \ppp
  cis'''-. d'''-. e'''-. fis'''-.
  e'''-. d'''-. cis'''-. b''-.
  cis'''-. d'''-. e'''-. cis'''-.
  d'''16( cis''' d''' e''') d'''8-. d'''-.
  \break
  cis'''-. d'''-. e'''-. fis'''-.
  e'''-. d'''-. cis'''-. b''-.
  cis'''-. d'''-. e'''-. cis'''-.
  d'''4 r8
}

楽器編成

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通常の二管編成(ただしサクソフォーンが加わる)に拡大され、金管楽器が大幅に追加されている。またハルモニウムは省かれ、ハープが追加されている。

フルート2(第2では持ち替えでピッコロ1)、オーボエ2(持ち替えでコーラングレ1)、クラリネット2、ファゴット2、アルト・サクソフォーン1、ホルン4(第2組曲の間奏曲では3・4番ホルンにヴァルヴ付きが指定されている)、コルネット2、トランペット2(省略可。ただしその場合、第1・第2組曲の2つのメヌエットにおけるトランペット・パートはコルネットで代用すること)、トロンボーン3、ティンパニ、スネアドラム(第1のみ)、シンバル、バスドラム、プロヴァンス太鼓(以上第2のみ)、ハープまたはピアノ、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス:それぞれ通常の人数)

備考

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  • 付随音楽、第1組曲、第2組曲とも、サクソフォーンをオーケストラで用いた楽曲としてはごく早い時期のもので、一般に知られる曲では最も古い。組曲はサクソフォーン抜きでも他の楽器による代替で演奏可能に書かれているが、今日ではあまり行われない。

脚注

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  1. ^ アルルの女第2組曲のメヌエット”. jymid.music.coocan.jp. 2006年3月19日閲覧。

外部リンク

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