SRI農法

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SRI農法(エスアールアイのうほう)とは、イネが成長するのに最善な環境(テロワール)を可能な限り与えた有機農業技術で農家負担の少ない低投入型(種子肥料農薬)の幼苗一本植え高収量稲作農法である。名称は「System of Rice Intensification(インテンシフィケーション)」(イネ強化法・イネ強化システム)の略称。

概要[編集]

SRIは乳苗・疎植と間断灌漑による土壌水分の制御が基本であるが、国と地域の気候風土によって独自の改良・普及された農法になっている。主な共通点は下記になる。

  • SRI主原則(出典)[1][2][3][4]
    • まだ苗が小さいうち(乳苗:7~10センチメートル・1,5~2葉[5][6][7][8][9][10])に、田植えすること(浅植)により、育苗が省力化できる。
    • 苗は間隔(30センチメートル)をあけて疎植(1~2本)することにより、光合成が良くなり収量向上と病虫害も減少する。
    • 水田は水分を保ちつつ、湛水しないこと(栄養成長期に連続湛水せず、間断灌漑を行う)
    • 有機質堆肥の施用と中耕除草による土壌への酸素供給。
  • 国内でも食糧増産時代に「米作日本一表彰事業」(朝日新聞農業賞事務局)が、1949年1968年迄あり1トンの壁を越えた超多収技術が存在した[11][12][13][14][15]

歴史[編集]

1961年マダガスカルイエズス会神父アンリ・デ・ロラニエ(Henri de Laulanie)が赴任[16][17]1981年、農村の若者向けの教育機関としてアンツィラベに農学校を設立。1983年、アンリ・デ・ロラニエ(Henri de Laulanie)氏がSRI農法を提案。1990年NGO「Tefy Saina」を設立。1993年コーネル大学の国際食料農業開発研究所長のノーマン・アポフ(Norman Uphoff)教授がマダガスカルで、焼畑農業に代わる食料生産手段を見出す。1994年、マダガスカルのラノマファナで導入。1995年、アンリ・デ・ロラニエ氏が死去。1997年アジアで普及(南京農業大学インドネシア農業研究開発庁・インドタミル・ナードゥ州フィリピンからペルーまで二十ヶ国で導入。2001年ラオスで開始[18]2007年4月1日、J-SRI 研究会発足(東京大学大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻国際情報農学研究室内)(会長 山路永司)[19]2015年ベトナムクアンナム省で導入[20][21]

書籍[編集]

  • 『稲作革命SRI―飢餓・貧困・水不足から世界を救う』ISBN 978-4532317287 日本経済新聞出版社 (2011年9月23日)
  • 『乳苗稲作の実際―らくらく育苗で安定増収』ISBN 978-4540941276 農山漁村文化協会 (1995年2月1日)
  • 『イネつくりの基礎』ISBN 978-4540191732 農山漁村文化協会 (2020年2月13日)[22]

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 超稲作技術SRI” (2006年12月10日). 2020年3月25日閲覧。
  2. ^ System of Rice Intensification An emerging alternative”. 2020年3月12日閲覧。
  3. ^ ベトナムにおけるSRI農法─ 農民組織による有機SRI稲作の実践 ─”. 2020年3月23日閲覧。
  4. ^ 農家が自力で収穫高を劇的に伸ばす農法”. ウェブマガジンOur World (2013年1月7日). 2020年3月12日閲覧。
  5. ^ 乳苗(にゅうびょう)”. ルーラル電子図書館. 2020年3月23日閲覧。
  6. ^ 乳苗でラクラク田植え”. 2020年4月10日閲覧。
  7. ^ 乳苗移植技術導入の経営的効果”. 農研機構. 2020年4月10日閲覧。
  8. ^ 耐水紙を用いた乳苗育苗と本田生育”. 東北農業研究 (1993年). 2020年4月10日閲覧。
  9. ^ 水稲ロングマット水耕苗の育苗初期における保温効果”. 農産部 水田作研究室 生産工学研究室. 2020年4月10日閲覧。
  10. ^ 筑波・水稲ロングマット水耕苗ー酒々井の岩澤政行さん”. 農を語る 自然にやさしい不耕起栽培. 2020年4月10日閲覧。
  11. ^ 失われた「10アールあたり1トン」の米作技術 60年前の日本一農家を訪ねて”. 日本経済新聞社 (2014年10月22日). 2020年4月2日閲覧。
  12. ^ 「米作日本一」農家が教えてくれた〈水のかけひき〉(1)”. 農林水産・食品産業技術振興協会. 2020年4月2日閲覧。
  13. ^ 「米作日本一」農家が教えてくれた〈水のかけひき〉(2)”. 農林水産・食品産業技術振興協会. 2020年4月2日閲覧。
  14. ^ 米作日本一20年史 : 1949-1968”. CiNii. 2020年4月2日閲覧。
  15. ^ 増収こそ稲作経営の王道?経営者よ、現状に甘んじることなかれ?”. 農業技術通信社の農業総合専門サイト (2009年11月1日). 2020年4月2日閲覧。
  16. ^ SRI農法の成立とマダガスカルの在来稲作”. マダガスカル研究懇談会. 2020年3月12日閲覧。
  17. ^ SRI農法のマダガスカル国内外における普及と展開”. マダガスカル研究懇談会. 2020年3月12日閲覧。
  18. ^ ラオスの米作り~SRIに挑戦!”. ADRA Japan (2010年8月12日). 2020年3月24日閲覧。
  19. ^ J-SRI 研究会”. 東京大学大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻国際情報農学研究室内. 2020年3月25日閲覧。
  20. ^ クァンナム省山岳地域における食糧生産支援”. 公益財団法人 国際開発救援財団 FIDR(ファイダー) (2015年4月2日). 2020年3月12日閲覧。
  21. ^ (事業申請書)”. 2020年3月24日閲覧。
  22. ^ イネつくりの基礎”. 農山漁村文化協会. 2020年4月2日閲覧。
  23. ^ ポスト緑の革命期のインドネシア・ジャワにおける低投入農法の普及過程 : 有機SRI (System of Rice Intensification)の普及事例の社会ネットワーク分析”. 国立国会図書館. 2020年4月6日閲覧。
  24. ^ 東南アジアにおける農業土木学的視点からのSRI栽培技術の比較と標準化手法の開発”. KAKEN. 2020年3月27日閲覧。
  25. ^ 栃木県農家水田において乳苗移植栽培した水稲の根系調査事例”. 根の研究. 2020年4月1日閲覧。
  26. ^ 現代の農業指導者-1-片倉権次郎論--「相対的なものの見方」で稲作増収技術を確立”. 国立国会図書館. 2020年4月2日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]