ブダペスト市電2100形電車
ブダペスト市電2100形電車 ブダペスト市電2200形電車 CAF ウルボス3 | |
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基本情報 | |
運用者 | ブダペスト交通会社(BKV) |
製造所 | CAF |
製造年 | 2015年 - 2016年、2019年 - 2020年 |
製造数 |
2100形 12両(2101 - ) 2200形 35両(2201 - ) (2019年現在) |
運用開始 | 2015年9月17日 |
投入先 | ブダペスト市電 |
主要諸元 | |
編成 |
2100形 9車体連接車 (Mc+S+T+S+M+S+T+S+Mc) 2200形 5車体連接車 (Mc+S+T+S+Mc) |
軸配置 |
2100形 Bo′+2′+Bo′+2′+Bo′ 2200形 Bo′+2′+Bo′ |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 |
直流600 V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 50 km/h |
車両定員 |
2100形 345人(着席81人)[注釈a 1] フリースペース2箇所 最大562人[注釈a 2] 2200形 200人(着席46人)[注釈a 1] フリースペース2箇所 最大326人[注釈a 2] |
車両重量 |
2100形 66.8 t 2200形 40.8 t |
全長 |
2100形 55,911 mm 2200形 34,166 mm |
全幅 | 2,400 mm |
全高 | 3,453 mm |
床面高さ | 350 mm |
車輪径 | 600 mm |
固定軸距 | 1,850 mm |
台車中心間距離 |
2100形 11,245 mm、10,500 mm 2200形 11,245 mm |
主電動機 |
かご形三相誘導電動機 TSA製TMR 36-18-4[1] |
主電動機出力 | 70 kW |
搭載数 |
2100形 12基 2200形 8基 |
編成出力 |
2100形 840 kW 2200形 560 kW |
制御装置 | VVVFインバータ制御 |
制動装置 | 回生ブレーキ、ディスクブレーキ、電磁吸着ブレーキ |
備考 | 主要数値は[2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12]に基づく。 |
この項目では、ハンガリーの首都・ブダペストの路面電車であるブダペスト市電で2015年から使用されている、スペイン・CAF製の路面電車車両(超低床電車)について解説する。9車体連接車(2100形)と5車体連接車(2200形)が導入されており、全長55.9 mの2100形は2020年現在世界最長の路面電車車両である[2][5][8][9][10][11][13]。
概要
2011年、ブダペスト市電を始めとするブダペストの公共交通機関を統括するブダペスト交通統括会社(BKK)は、製造から40年以上が経過し老朽化が進んだ旧型路面電車車両を置き換えるため、EUやハンガリー政府、ブダペスト市からの補助金を用いた新型電車の導入を決定し、2013年に行われた入札の結果スペインの鉄道車両メーカーであるCAFとの間に製造契約を結ぶ事となった[注釈 1]。そして、交通機関の運営や車両の維持・管理を行う子会社のブダペスト交通会社(BKV)に向けて2015年から製造が始まったのが、世界各国に導入実績を持つ超低床電車のウルボス3(Urbos 3)の中で、車両全体(100%)が低床構造となっているウルボス100(Urbos 100)である[14][5][7][15][16][17]。
2100形・2200形共に台車がないフローティング車体(S)を含んだ両運転台式の連接車で、先頭車体(Mc)および2100形の中間車体(M)には動力台車が、それ以外の台車が設置されている中間車体(T)には付随台車が設置されている。車体は全て床上高さ350 mmの低床構造となっているため台車には車軸が存在せず、動力台車に搭載されている主電動機(かご形三相誘導電動機)は各車輪の外側に設置され、かさ歯車やシャフトを介して動力を伝達するハブモーター方式が用いられる。2100形・2200形共に車内には車椅子やベビーカーが設置可能なフリースペースが2箇所に設置されている他、車内案内表示装置や空調装置、監視カメラも搭載されている。制動装置には回生ブレーキが用いられており、置き換え対象となる旧型電車と比べて消費電力が大幅に抑えられている[3][11][18]。
また、ブダペスト市電には市内の歴史地区を走る路線について景観保護のため架線を撤去し非電化区間(架線レス区間)とする計画が存在しており、この区間でも走行可能となるスーパー・キャパシタと蓄電池を用いた「Greentech Freedrive」システムの対応工事が可能な設計となっている[2][3][7]。
-
車内
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屋根上の機器配置(2211)
運用
2013年に結ばれた当初の契約では1次車として2100形12両、2200形25両、合計37両を導入する予定であったが、翌2014年にオプション契約を行使し2200形10両の追加発注が行われた。これらの車両は2015年からブダペスト市電へ搬入され、同年の9月17日から2200形が、翌2016年3月から2100形が営業運転を開始した。1次車全車両の製造が完了した同年時点でのブダペスト市電が所有する超低床電車は全在籍車両の15%、座席キロの40%となり、それまで超低床電車が運行していた1・4・6系統[注釈 2]以外でも運用範囲が拡大した他、これらの系統でも超低床電車で運行される列車の本数が増加した。また、営業運転開始に合わせて一部の停留所における安全地帯の改修を始めとする近代化や、ブダフォクにある車庫の9車体連接車に合わせた改修工事も行われた。2019年の時点で、9車体連接車の2100形は1系統に、5車体連接車の2200形は50・56・56A系統に投入されている[19][20][21][11][5][7][10][22][23][24][25]。
超低床電車の運行範囲増加や1号線の延伸[注釈 3]に合わせて、ブダペスト交通会社では2017年にオプション契約分を利用して2次車となる2100形5両、2200形21両、合計26両の追加発注を実施しており、2019年から2020年の間の導入を予定している。これ以外にもCAFと交わしたオプションには2020年までに行使可能な51両の追加発注分が残されており、うち20両は製造当初から「Greentech Freedrive」システムを用いた車両として導入可能となっている[5][7][10][19]。
その他
ブダペスト交通統括会社(BKK)の本社ビルのロビーには、2016年に高校生(当時)のベンス・ゲルリツキー(Bence Gerliczky)がBKKの協力の元で制作した、8,500 - 9,000個のレゴブロックを用いた2200形の模型が展示されている[27]。
関連項目
- コンビーノ・プラス - シーメンスが展開していた路面電車車両ブランド。ブダペスト市電初の超低床電車として導入された6車体連接車・全長53.99 mの2000形電車は、2006年の登場から2100形の導入が始まった2016年まで世界最長の路面電車車両だった[12][28][29][30]。
脚注
注釈
出典
- ^ “CAF Urbos streetcar platform”. 2023年2月14日閲覧。
- ^ a b c 服部重敬「欧州のLRV 最新事情」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、87-88頁、ISBN 9784802206778。
- ^ a b c “Budapest Tram” (英語). CAF. 2020年1月18日閲覧。
- ^ “CAF Villamos” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Zrt.. 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b c d e “Budapesti villamos- és trolibusz járműprojekt II. ütem” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Központ. 2020年1月18日閲覧。
- ^ “14.pdf” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Zrt.. 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b c d e “FRISSÍTVE! 37 helyett 47 darab új villamos érkezik Budapestre” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Központ (2014年3月3日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b “Újabb CAF villamosok állnak forgalomba Budapesten” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Zrt. (2015年10月21日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b “BKV * CAF Urbos” (ハンガリー語). HBweb.hu. 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b c d Kevin Smith (2017年11月15日). “Budapest exercises option for more CAF trams” (英語). International Railway Journal. 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b c d Budapesti Közlekedési Zrt. 2016, p. 24.
- ^ a b 宇都宮浄人 2019, p. 107.
- ^ “CAF AWARDED CONTRACT TO SUPPLY 26 TRAMS FOR BUDAPEST” (英語). CAF (2018年1月4日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ Budapesti Közlekedési Zrt. 2015, p. 4.
- ^ ブダペストスタイル (PDF) (Report). 日本貿易振興機構. 2017. p. 72. 2020年1月18日閲覧。
- ^ “THERE IS AN URBOS FOR EACH TYPE OF CITY” (英語). CAF. 2020年1月18日閲覧。
- ^ 宇都宮浄人 2019, p. 107-108.
- ^ “CAF vontatómotor” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Zrt.. 2020年1月18日閲覧。
- ^ a b Budapesti Közlekedési Zrt. 2016, p. 8.
- ^ Budapesti Közlekedési Zrt. 2016, p. 20.
- ^ Budapesti Közlekedési Zrt. 2016, p. 23.
- ^ 宇都宮浄人 2019, p. 108.
- ^ “Fejlesztjük a Száva és a Hungária kocsiszínt” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Zrt. (2014年10月10日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ Ferenc Joo (2015年9月21日). “CAF LRVs enter service in Budapest” (英語). International Railway Journal. 2020年1月18日閲覧。
- ^ Dávid Vitézy [@vitdavid] (2016年6月16日). "56m-long new #CAF trams arriving to Budapest, old tram depot has to be replaced by a new one". X(旧Twitter)より2020年1月18日閲覧。 |date=の値と|number=から計算された日付が2日以上異なります(解説)
- ^ “Átadásra került az 1-es villamos Kelenföld vasútállomásig meghosszabbított szakasza” (ハンガリー語). Budapesti Közlekedési Központ (2019年7月9日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ “CAF tram made out of thousands of parts” (英語). Budapesti Közlekedési Központ (2016年12月2日). 2020年1月18日閲覧。
- ^ Zoltan Donath (2006年4月1日). “Putting the world's longest trams into service in Budapest” (英語). Raiway Gazette. 2020年1月18日閲覧。
- ^ Máté Petrány (2014年5月20日). “The World's Longest Tram Got A Bit Shorter After This Crash” (英語). Jalopnik. 2020年1月18日閲覧。
- ^ 服部重敬「特集 新潟トランシス part4 欧州のGT低床車 世界初の全低床車としての登場から現在まで」『路面電車EX 2017 vol.10』、イカロス出版、2017年10月20日、45頁、ISBN 978-4802204231。
参考資料
- 宇都宮浄人「海外LRT事情・LRT化を進めるハンガリー」『路面電車EX 2019 vol.14』、イカロス出版、2019年11月19日、96-105頁、ISBN 978-4802207621。
- Budapesti Közlekedési Zrt. (22 December 2015). Anuual Report 2016 (PDF) (Report). 2020年1月18日閲覧。
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- Budapesti Közlekedési Zrt. (2016). Anuual Report 2017 (PDF) (Report). 2020年1月18日閲覧。
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