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タマゴテングタケ

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タマゴテングタケ

Amanita phalloides

分類
: 菌界 Fungus
: 担子菌門 Basidiomycota
: 菌じん綱 Hymenomycetes
: ハラタケ目 Agaricales
: テングタケ科 Amanitaceae
: テングタケ属 Amanita
亜属 : マツカサモドキ亜属 Subgenus Amanitina
: タマゴテングタケ phalloides
学名
Amanita phalloides
和名
タマゴテングタケ
英名
Death Cap

タマゴテングタケ(卵天狗茸、Amanita phalloides)はハラタケ目テングタケ科テングタケ属菌類

子実体キノコ)は夏から秋、主にブナミズナラなどの広葉樹林に生える。はオリーブ色。条線はない。は白色でつばがある。ひだは白色。ひだ濃硫酸をたらすと淡紅紫色に変色するという、他のキノコには見られない特徴があり、このキノコの判別に用いられる。

種名phalloidesの意味は「男根 (phallus) に似た (-oides) 」であるが、文字通りの意味なのか、Phallusスッポンタケ属)に似ているという意味なのかははっきりしない。

毒性

本種はドクツルタケシロタマゴテングタケとともに「猛毒キノコ御三家」などと呼ばれているほど[1]の猛毒種である。中毒症状はドクツルタケやシロタマゴテングタケ同様、2段階に分けて起こる。まず食後24時間程度でコレラの様な激しい嘔吐下痢腹痛が起こる。その後、小康状態となり、回復したかに見えるが、その数日後、肝臓腎臓等内臓の細胞が破壊され劇症肝炎様症状を呈し高確率でに至る。

古くから知られている毒キノコであるため、その毒素成分(キノコ毒)の研究も進んでおり、アマトキシン類ファロトキシン類、ビロトキシン類などがその毒素であることが明らかにされている。これらは8つのアミノ酸が環状になった環状ペプチドであり、タマゴテングタケの毒性はこのうち主にアマトキシン (amanitatoxin) 類によると考えられている。毒性はα-アマニチン で、マウス (LD50) 0.3mg/kg[2]

アマニチン (amanitin) は消化管からの吸収が早く、1時間程度で肝細胞に取り込まれる[2]。アマトキシン類はこれらのキノコ毒の中では遅効性で(15時間くらいから作用が現れる)あるが毒性は強く、タマゴテングタケの幼菌1つにヒトの致死量に相当するアマトキシン類が含有されている。アマトキシンは細胞においてDNAからmRNAの転写を阻害する作用を持ち、これによってタンパク質の合成を妨げ、体組織、特に肝臓や腎臓などを形成する個々の細胞そのものを死に至らしめることが、このキノコ毒の毒性につながっている。また、他にタマゴテングタケと名のつくキノコにクロタマゴテングタケタマゴテングタケモドキコタマゴテングタケクロコタマゴテングタケなどが存在するがいずれも有毒である。

タマゴテングタケにはこれら毒成分に対する抗毒活性をもつアンタマニドという成分も同時に含まれており、食中毒を抑えることこそはできないが、これを動物に投与してから毒を与えても中毒しない[3]

タマゴテングタケは「最も有毒なキノコ」としてギネスブックに掲載されている[4]。 また、ローマ教皇クレメンス7世もこのキノコの犠牲者の1人で、1534年9月25日にタマゴテングタケの中毒で亡くなった[5]

分布

ヨーロッパには多く自生しており、death cap(意味:死の傘)と呼ばれ、よく知られた毒キノコの一つである。またニュージーランドにおいても多発する。日本では北海道で発見されることがあるが、本州以南の地域では見つかることは稀である。

中毒の治療

解毒剤は存在しないため、毒成分の体外排出促進と脱水症状への対症療法を施す。肝機能検査、腎機能検査と活性炭投与(4時間おき)は数日間継続。強制利尿。血液吸着[6]毒成分が濾過膜を通過し難いので血液透析は無効とされている。

治療例
酸素吸入、人工呼吸輸液、肝保護剤の投与。
血漿交換と透析[7]
摂食後6時間以内の場合、胃洗浄
摂食後6時間以上経過の場合、活性炭及び下剤(D-ソルビトール液(75%)2mL/kg)投与。十二指腸チューブによる胆汁の除去。

脚注

  1. ^ 大海淳 著 『いますぐ使えるきのこ採りナビ図鑑』 大泉書店、2006年10月1日発行、ISBN 978-4-278-04717-2、60頁。
  2. ^ a b アマニタトキシン群(タマゴテングタケ、ドクツルタケ)財団法人 日本中毒情報センター (PDF)
  3. ^ 長沢栄史監修『フィールドベスト図鑑14日本の毒きのこ』学習研究社、2007年1月30日第6刷発行、ISBN 4-05-401882-3、263頁。
  4. ^ ギネスブック2001』、きこ書房 、2001年1月31日、168頁。
  5. ^ 『ギネスブック’94』、騎虎書房 、1993年12月25日、91頁。
  6. ^ 吸着法(adsorption)日本血液浄化技術研究会
  7. ^ 松村謙一郎、田島平一郎、南野毅 ほか、劇症肝炎の経過をたどったアマニタトキシン中毒 (キノコ中毒)の1症例 肝臓 1987年 28巻 8号 p.1123-1127, doi:10.2957/kanzo.28.1123

関連項目

外部リンク