サワトラノオ
サワトラノオ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Lysimachia leucantha Miq. (1867)[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
サワトラノオ(沢虎の尾)[3] |
サワトラノオ(沢虎の尾、学名:Lysimachia leucantha)は、サクラソウ科オカトラノオ属の多年草[4][5][6]。群落をつくって生育し、同属の他の種とくらべて軟弱で[6]、ヨシ原に生えるものは、ヨシに寄りかかるように伸びる[4]。別名、ミズトラノオ[1][6]。
特徴
[編集]地下茎は横に這う。地上茎は円柱形で稜があり、無毛で直立し、上部でほとんで枝分かれせず、高さは40-80cmになる。ときに栄養状態が良ければ茎の上部で2-3に分枝する。葉は互生し、多数の葉をつけ、葉身は倒披針状線形または広線形で、長さ2-4.5cm、幅3-5mm、先端はややとがるか鈍く、基部はしだいに狭まる。葉の縁は全縁で波打ち、葉肉内に黒色の腺点が散生する。葉柄はまったく無いか、ほとんど無い。葉柄の基部に托葉状の小さな葉がつく[4][5][6]。
花期は4-5月。枝先に総状花序をつけ、白色の多数の花をやや密につけ、下側から咲きだす。花序軸から出る花柄の基部に線形の苞がある。花序軸は初め短いが、果時には長く伸びる。花柄は花期に長さ6-10mmであるが、果期には長さ1.5-2cmに伸長する。花冠は径7-8mm、白色で5裂し、花冠裂片は倒卵形で長さ4mm、先端は円い。萼は深く5裂し、萼裂片は披針形になり先端は鋭くとがり、長さ3mmで、黒色の腺点がある。雄蕊は5個あり、花糸は長く花冠の外に突出し、葯は花糸の先端にT字型につく。花柱は1個あり、蕾時から花冠を突出する。果実は蒴果で径2.5mmの球形となり、萼片より短い[4][5][6]。
分布と生育環境
[編集]日本では、本州(埼玉県・静岡県・大阪府)、九州(佐賀県・熊本県・大分県)に分布し、低湿地、水辺の湿地などに稀に生育する[4][5][6]。国外では、朝鮮半島に分布する[5][6]。
名前の由来
[編集]和名サワトラノオは「沢虎の尾」の意[3]。「サハトラノオ」の名前は、1856年(安政3年)に出版された飯沼慾斎の『草木図説』に出てくる[7]。
種小名(種形容語)leucantha は、「白い花の」の意味[8]。
種の保全状況評価
[編集]絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
- 埼玉県-絶滅危惧I類(CR)、千葉県-消息不明・絶滅生物(X)、東京都-絶滅(EX)[9]、静岡県(2020年)絶滅危惧IB類(EN)[10]、富山県-情報不足、大阪府-絶滅危惧I類、広島県-要注意(AN)情報不足、福岡県-絶滅危惧IA類(CR)、佐賀県-絶滅危惧I類種、熊本県-絶滅危惧IA類(CR)、宮崎県-絶滅危惧IA類(CR-r,g,d)、鹿児島県-絶滅危惧II類[9]
- 静岡県富士市の自生地が、2015年7月に「浮島ヶ原のサワトラノオ群生地」として、富士市指定天然記念物に指定されている[11]。
ギャラリー
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枝先に総状花序をつけ、白色の多数の花をやや密につけ、下側から咲きだす。花序軸から出る花柄の基部に線形の苞がある。花冠裂片の先は円い。
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萼は深く5裂し、萼裂片は披針形になり先端は鋭くとがる。雄蕊は5個あり、花糸は長く花冠の外に突出し、葯は花糸の先端にT字型につく。
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4月中旬。ヨシの間に生え、花序はまだつけていない。
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5月上旬。ヨシに寄りかかって伸びる。
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地上茎は円柱形で稜があり、無毛で直立する。葉は互生し、多数の葉をつける。葉柄の基部に托葉状の小さな葉がつく。
類似種
[編集]トウサワトラノオ Lysimachia candida Lindl. (1846)[12] - 本種サワトラノオに似るが、サワトラノオより花がやや大きく花冠の径10mm、花冠裂片の長さ8-10mm、花冠裂片の先端はとがる。萼裂片は線形で長さ4-6mmになる。花柱は長さ6mmほどあり、サワトラノオより長いが、花冠が大きいため、サワトラノオと異なり花冠を突出しない。本州(栃木県・愛知県)、台湾、中国大陸に分布する[4][5][13]。
脚注
[編集]- ^ a b サワトラノオ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ サワトラノオ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b サワトラノオ、公園の生き物リスト、富士自然観察の会
- ^ a b c d e f 永田芳男「サワトラノオ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.201
- ^ a b c d e f 高橋英樹 (2017)「サクラソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 4』pp.194-195
- ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.924
- ^ 飯沼慾斎 草木図説前編20巻(3)、コマ番号71/76、国立国会図書館デジタルコレクション-2021年8月15日閲覧
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1500
- ^ a b サワトラノオ、日本のレッドデータ検索システム-2021年8月15日閲覧
- ^ 静岡県版植物レッドリスト 2020、静岡県版レッドリスト、静岡県自然保護課
- ^ 浮島ヶ原のサワトラノオ群生地の富士市指定天然記念物指定について、富士市市民部文化振興課
- ^ トウサワトラノオ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 永田芳男「トウサワトラノオ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.202
参考文献
[編集]- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- サワトラノオ、公園の生き物リスト、富士自然観察の会
- 静岡県版植物レッドリスト 2020、静岡県版レッドリスト、静岡県自然保護課
- 浮島ヶ原のサワトラノオ群生地の富士市指定天然記念物指定について、富士市市民部文化振興課
- 飯沼慾斎 草木図説前編20巻(3)、コマ番号72/76、国立国会図書館デジタルコレクション-2021年8月15日閲覧
- 日本のレッドデータ検索システム