2007年の韓国シリーズ

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2007年の韓国シリーズ

概要[編集]

2007年韓国シリーズは、公式戦1位のSKワイバーンズとプレーオフ勝者の2位斗山ベアーズ間で10月22日から7回戦制で行われ、SKワイバーンズが4勝2敗で韓国シリーズ優勝となった。

シリーズが開幕する前の下馬評では、同年の公式戦で22勝5敗、防御率2.05で話題になった絶対的なエース、ダニエル・リオスを擁する斗山ベアーズの方が優位に見えた。リオスの22勝はすべて先発で挙げたものでシーズンで先発22勝は韓国プロ野球初年度である1982年同球団のOBである朴哲淳(パク・チョルスン)以来の記録であった。それに、赴任したチームをポスト・シーズンまでは導くものの、それまで韓国シリーズ優勝は1度もなかったSKの金星根(キム・ソングン)監督のジンクスと、対戦成績でも斗山が10勝8敗と勝ち越した事実が加えられ、公式戦2位でありながら、斗山の優勝を予想する専門家も少なくはなかった。

リオスとケニー・レイボーンの対決で幕を開けたシリーズは、レイボーンが6回2失点と比較的に好投しながらも、相手のリオスがSKの打線を完封し、斗山の先勝で始まった。続く第2戦でも斗山の打線がSK先発の蔡秉龍(チェ・ビョンヨン)を攻略して先発のランデルを援護。敵地で行われた2戦をものにして、斗山がそのまま一気に優勝まで貫くかと思われた。

それまで24回行われた韓国シリーズで第1戦から0勝2敗のチームが逆転優勝をした前歴がなかったこと[1][2]、そして第3戦から斗山の本拠地で行われることから、斗山の優勝はほぼ確実に見えた。が、第3戦でSK投手陣の内角をえぐる投球に敏感になった斗山の選手たちが興奮。両チームの選手がベンチを出て乱闘寸前まで行く騒ぎを起こすと、これが逆にSKの選手たちの奮い立たせるきっかけを与えてしまった。

結局、第3戦はSKが9対1の楽勝でシリーズを1勝2敗に持ち込むと、第4戦では22勝のエース、リオスを中3日で出した斗山に対してSKの金星根監督は公式戦3勝7敗の高卒ルーキー、金廣鉉(キム・グァンヒョン)を予告先発に指名する度肝を抜く大胆な采配を見せた。誰もがリオスを避けて自軍の投手陣を温存するため作った捨てゲームであり、かと言って負ければ王手をかけられる試合に高卒ルーキーを先発させたことに疑問を示したが、金廣鉉は見事7回2/3を被安打1、無失点で投げぬけると、打線の方は中3日の登板で疲れ気味だった相手先発リオスを2本のホームランで撃沈させ、4対0で快勝。誰も予想できなかった大番狂わせを演出して、シリーズを2勝2敗のタイに持ち込んだ。

この1戦でSKは勢いに乗った一方、中3日だったとは言え、絶対的な信頼を寄せていた22勝のエースが3勝の高卒ルーキーとの対決で敗れた衝撃で斗山の方は動揺の色を隠せず、続く第5戦でも攻撃陣が5つの併殺を喫する拙攻で、6回まで無失点に抑えた先発のランデルの力投に応えられなかった。結局リリーフ陣が打ち込まれ、第5戦も0対4で斗山の完敗。ホームでの3試合すべてで白星をSKに献上し、第2戦までの展開とは反対に斗山が先に王手をかけられた。

1日開いて、舞台を再びSKの本拠地・文鶴球場に移して行われた第6戦でもSKの勢いは変わらず、斗山側は最後の砦として高卒ルーキーでありながら中継ぎの軸として1年間働いた林泰勲(イム・テフン)を先発させた。斗山は1回に1点を先制したが、林泰勲は4回を持たずに2本塁打を浴び3失点と逆転を許し降板。結局、第6戦も5対2でSKの勝利に終わり、SKは韓国シリーズ史上初めて0勝2敗から逆転優勝に成功した球団になった。

SKの金星根監督は監督生活16年、指揮を執った6番目のチームでようやく悲願の優勝を達成して、それまでついていた「Bクラスチームの建て直しは上手だが、優勝はできないそこまでの監督」という世間の評価をついに振り払うことに成功した。

一方、斗山は敵地での連勝で2勝0敗でありながら、第3戦以降は4試合で3点しか挙げられなかった拙攻で、力投する投手陣の足を引っ張り、6年ぶりに王者に返り咲くチャンスを逃した。

2000年開幕前の現代ユニコーンズの移転問題で傷つけられた仁川の野球ファンの心も癒され、SKワイバーンスが仁川市民に愛される球団になったと見てもいいだろう。SKの首位独走が続いた翌年のシーズン、仁川を本拠地としていたチームとしては史上最高の70万超の観客を動員で、仁川の野球ファンはチームの健闘ぶりに答え、球団は本拠地に完全に根付くことに成功した。

また、このシリーズの終了時点で、当時存在していた韓国プロ野球8球団すべてが優勝を経験することになった。しかし、2008年シーズンから現代ユニコーンズの解散と新球団のヒーローズの参入で、再び優勝を経験していない球団が出てきた。

ステージ 勝利チーム 成績 星取表 敗戦チーム
準プレーオフ ハンファ・イーグルス(公式戦3位) 2勝1敗 ○●○ 三星ライオンズ(公式戦4位)
プレーオフ 斗山ベアーズ(公式戦2位) 3勝 ○○○ ハンファ・イーグルス(公式戦3位)
韓国シリーズ SKワイバーンズ(公式戦1位) 4勝2敗 ●●○○○○ 斗山ベアーズ(公式戦2位)

準プレイオフ[編集]

第1戦 10月9日・大田ハンバッ運動場野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
三星ライオンズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0
ハンファ・イーグルス 0 1 0 1 1 2 0 0 X 5 7 0
  1. 柳賢振(リュ・ヒョンジン、1-0)  ブラウン(0-1)  
  2. 本塁打
    ハンファ:金泰均(キム・テギュン、4回裏、ソロ)、李杋浩(イ・ボムホ、6回裏、2ラン)

第2戦 10月10日・大邱市民運動場野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ハンファ・イーグルス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0
三星ライオンズ 0 1 0 0 0 0 3 2 X 6 9 0
  1. :尹盛桓(ユン・ソンファン、1-0)  鄭珉哲(チョン・ミンチョル、0-1)  
  2. 本塁打
    三星:陳甲龍(チン・カブヨン、2回裏、ソロ)、梁埈赫(ヤン・ジュンヒョク、6回裏、2ラン)

第3戦 10月12日・大田ハンバッ運動場野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
三星ライオンズ 0 0 1 0 0 1 0 0 1 3 8 1
ハンファ・イーグルス 2 0 1 0 0 0 1 1 X 5 10 0
  1. 宋津宇(ソン・ジヌ、1-0)  :メゾン(0-1)  S具臺晟(ク・デソン、0-0-1S)  
  2. 本塁打
    三星:申命澈(シン・ミョンチョル、9回表、ソロ)
    ハンファ:李杋浩(3回裏、ソロ, 7回裏、ソロ,)、高東鎮(コ・ドンジン、8回裏、ソロ)
  • ハンファ・イーグルス2勝1敗でプレイオフ進出

プレイオフ[編集]

第1戦 10月14日・蚕室野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ハンファ・イーグルス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 2
斗山ベアーズ 1 1 0 0 0 0 3 3 X 8 14 0
  1. リオス(1-0)  崔映弼(チェ・ヨンピル、0-1)  

第2戦 10月15日・蚕室野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ハンファ・イーグルス 0 2 0 0 0 0 2 0 1 5 13 1
斗山ベアーズ 1 0 3 0 0 1 3 1 X 9 13 0
  1. ランデル(1-0)  鄭珉哲(チョン・ミンチョル、0-1)  S鄭載勳(チョン・ジェフン、0-0-1S)  
  2. 本塁打
    斗山:李鍾旭(イ・ジョンウク、1回裏、ソロ)、金賢洙(キム・ヒョンス、3回裏、ソロ)

第3戦 10月17日・大田ハンバッ運動場野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
斗山ベアーズ 3 0 1 0 0 0 2 1 0 6 8 0
ハンファ・イーグルス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 2
  1. :金明帝(キム・ミョンジェ、1-0)  柳賢振(リュ・ヒョンジン、0-1)  
  • 斗山ベアーズ3勝で韓国シリーズ進出
  • MVP : 李鍾旭(外野手、斗山)

韓国シリーズ[編集]

第1戦 10月22日・文鶴野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
斗山ベアーズ 1 0 0 0 1 0 0 0 0 2 6 0
SKワイバーンズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1
  1. リオス(1-0)  レイボーン(0-1)  

第2戦 10月23日・文鶴野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
斗山ベアーズ 0 0 2 0 1 3 0 0 0 6 10 0
SKワイバーンズ 2 0 0 0 1 0 0 0 0 3 7 0
  1. ランデル(1-0)  :蔡秉龍(チェ・ビョンヨン、0-1)  S:林泰勲(イム・テフン、0-0-1S)  
  2. 本塁打
    斗山:高永民(コ・ヨンミン、3回表、2ラン)、蔡尚秉(チェ・サンビョン、5回表、ソロ)
    SK:李昊俊(イ・ホジュン、1回裏、2ラン)、趙東和(チョ・ドンファ、5回裏、ソロ)

第3戦 10月25日・蚕室野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
SKワイバーンズ 2 0 0 0 0 7 0 0 0 9 16 1
斗山ベアーズ 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 6 4
  1. ロマノ(1-0)  :金明帝(キム・ミョンジェ、0-1)  

第4戦 10月26日・蚕室野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
SKワイバーンズ 1 0 0 0 2 1 0 0 0 4 13 0
斗山ベアーズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
  1. 金廣鉉(キム・グァンヒョン、1-0)  :リオス(1-1)  
  2. 本塁打
    SK:趙東和(5回表、ソロ)、金宰炫(キム・ジェヒョン、5回表、ソロ)

第5戦 10月27日・蚕室野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
SKワイバーンズ 0 0 0 0 0 0 0 4 0 4 10 0
斗山ベアーズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 1
  1. :曺雄天(チョ・ウンチョン、1-0)  :林泰勲(0-1-1S)  

第6戦 10月29日・文鶴野球場[編集]

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
斗山ベアーズ 1 0 0 0 0 0 0 0 1 2 8 0
SKワイバーンズ 0 0 3 0 0 0 0 2 X 5 10 1
  1. :蔡秉龍(1-1)  :林泰勲(0-2-1S)  S鄭大炫(チョン・デヒョン、0-0-1S)  
  2. 本塁打
    SK:鄭根宇(チョン・グヌ、3回裏、2ラン)、金宰炫(3回裏、ソロ)
  • SKワイバーンズ4勝2敗で韓国シリーズ優勝
  • MVP: 金宰炫(キム・ジェヒョン、外野手、SK)打率.348、2本塁打、4打点

脚注[編集]

  1. ^ ただし、1993年はヘテ・タイガースが1勝2敗1分けから、2003年は現代ユニコーンズが1勝2敗から逆転優勝している。
  2. ^ メジャーリーグでは、1986年のニューヨーク・メッツや1996年のニューヨーク・ヤンキースなどが0勝2敗から逆転優勝を果たしている。また日本でも、1980年の広島東洋カープや2000年の読売ジャイアンツなどで実例があるほか、1986年の西武ライオンズなど0勝3敗からの逆転優勝もあった。韓国プロ野球では3連敗の後4連勝の記録はなく、2000年斗山ベアーズが現代ユニコーンズ相手に3連敗の後3連勝でシリーズを第7戦まで持ち込んだが、最終戦で敗れたことがある(日本でも1976年の日本シリーズで同様の事例がある)。