語学

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語学(ごがく)とは、母語以外の言語を学ぶこと。言語学を指すこともあるが、語学はあくまで「実用」を目的とし、言語学はあくまで「言語そのものの解明」を目的とする。

語学の方法[編集]

語学には、様々な方法がある。その中には、かつては主流だったものが現在では、ほとんど実践されなくなってしまったものや、支持が得られなくなったものも多い。

語学における難易度[編集]

母語(もしくはそれに準ずる言語)以外の言語を学ぶ際の難易度は一概には言えない。学ぶ対象とする言語と母語との間のあらゆる言語学的関係、及び個々人の資質や学習環境に大きく作用されるためである。また、母語以外にも既に習得している言語(第二言語等)や何らかの接触を持ってきた言語と対象言語の関係も影響する要素になりうる。したがって、あらゆる言語についてそれぞれにあらゆる言語に対する一般的な習得における難易を客観的に概説することは通常不可能である。本節は日本語話者(日本語を解する者)を対象とされているため日本及び日本語と、日本以外の国・地域及び日本語以外の諸言語の関係を中心に述べられるが、可能な限り日本語以外の諸言語間の関係からそれらの難易についても記すものとする。

学問において、難しいものよりは簡単なものを選びたがる傾向は誰にでもありうる。例えば、「インドネシア語文法が易しく、ラテン語は文法が難しい」などと議論されることは珍しいことではない。しかし、このような議論は間違っている。習得が容易な言語があるとするならば、それは母語に近い系統の言語である。例えば、オランダ人にとってドイツ語アラビア語の習得のしやすさを比べたとき、ドイツ語は同じゲルマン語派に属し、文法も語彙も非常に似ていて習得にそれほどの苦労は要さないが、アラビア語の場合、まず新たにアラビア文字を覚え、さらにセム語族に独特な動詞の単数完了形を理解しなければならないことから、習得に非常に時間がかかる。翻って最初の例を見てみるとインドネシア語もラテン語も日本語とは全く文法的性格を異にしていることから、どちらが日本語に比べてどれだけ近いという議論は全く無駄である[1]

また、文法の難易度に関しても、インドネシア語は文法が簡単なのではなく、文法的規則が少ないだけであり、確かに、比較的早く文法項目を完成させることができるが、規則が少ない分だけ例外も多く、連語表現や定型構文を大量に覚えなくてはならず、結局中級程度以上の語学力を狙うには時間がかかる。逆にラテン語は名詞、動詞の活用など文法項目が繁雑であるが、その分例外は少なく、入門レベルを終えれば実用レベルまで達するのにそれほどの労力は要さない。

同じことは日本語自身にも言え、巷では「日本語は難しい言語だ」などと言われるが、それらの多くは主観的な議論で、根拠のないことである。欧米人が「日本語は難しい」と言った場合、文字体系や文法体系が英語などと大きく異なり親和性が薄い点が強く、日本語そのものが難しいわけではないのである。CIAが言語習得難易度を定めているが、それによるとフランス語スペイン語は習得が容易で、日本語、アラビア語は習得が難しいとのこと。しかし、日本人にとってフランス語は容易な言語であるとは言えず、やはり英語との共通点が多いか少ないかで判断しているようである。

日本では、英語教育にかなり力を入れているにもかかわらず、世界諸国において常時英語ワーストランキング(特にスピーキングに於いて)に入ってしまうのは、やはり日本語と英語において、文字(漢字・カタカナ・ひらがなの3種類⇔アルファベット)、発音(口先から出す音が多い⇔口の奥から出す音が多い。強勢(アクセント)に関しては、日本語が音節毎に音の高低を交えて発話するピッチ(高低)アクセントのシラブル言語なのに対して英語は特定の音節のみを強く発音するストレス(強勢)言語である)、文法構造(SOV⇔SVO)等全く異なった言語体系をもっているためである。英語母語話者が日本語を難関だとするのも同じ原因である。日本人が韓国語(或いは中国語)の習得が比較的容易なのは、共通点が多いためである。しかしながら、日本人でありながら、一度英語を高レベルまでマスターしてしまえば、フランス語スペイン語イタリア語などの習得は比較的容易である。なぜならば、この3語もまた英語と多くの共通点を持っているため日本人が韓国語を学ぶようなアドバンテージを獲得できるためである。更には、一度これらの3言語のいずれかを習得してしまえば、その他の言語習得は更に容易になる。これは3語がいずれも同じラテン語の起源を持つ為である。紀元後に英語と分化したオランダ語に至っては、英語習得者は劇的にレベルアップを図れる。このように、ひとくちに日本人といっても、英語のように日本語以外の言語をどれだけ習得しているかによって、学ぶ対象の言語レベルには確実な個人差がうまれる。

英検1級を取得しているような日本人は、インドネシア語などを更には韓国語を習得するよりオランダ語を習得するほうが容易なケースもあり得る。一般的には、日本人にとってインドネシア語、モンゴル語などは、同じアジア圏として習得しやすい言語と見られがちであるが、むしろ英語に習熟した者は、スペイン語、フランス語、イタリア語等の欧州の言語はもちろんのこと、ロシア語を含むスラブ系言語においても、英語と共通した単語が多数あり馴染み易い、反面インドネシア語やモンゴル語、アラビア語などは、英語とは単語においてほとんど相関性が無いため、実質ゼロから単語を覚えなければならない。また、欧州系の語順は、日本語のそれとおおよそ異なっているが、英語を習熟した日本人であれば、その異なった点も違和感としては感じないだろう。その点で、これら一般的に言われる難易度というものは、母語の影響もさる事ながら、第二外国語(あるいは第三、第四外国語)で何を学んでいるかも非常に大きな要素となる。「日本人が学びやすい」とされている外国語の難易度表等は、純粋に日本語のみができる日本人というのが前提であり、英語やフランス語等のスキルがある日本人であれば、この難易度表も多様に変化してくる。よって、難易度というのは母語として何語を話しているか以外にも、個々の資質や環境によって大きく左右されるものであり、また個々とその対象とする言語の「相性」というものもあるため、あくまで目安程度に留めておくべきである。

以上のようなことを踏まえて、強いて日本語母語話者にとって習得が容易な言語を挙げるとすれば、

  • 文法的性格が似ている
    モンゴル語・トルコ語・朝鮮語(ともに日本語と同じ膠着語に分類する)
  • 文字体系・語彙が似ている
    中国語、朝鮮語、ベトナム語(ともに漢字文化圏に属し、日本語と共通する漢語を持つ)

などがあり、よく言語の紹介でも「日本人には馴染みやすい」などと言われるが、結局言えることは、どの言語も非母語である限り、マスターするのはそれなりの時間を要するということである。

主要な言語の難易と習得上の特徴[編集]

以下は、特に言及がない限り日本語母語話者が諸言語を習得するときの難易とその特徴について述べるものとする。

アラビア語[編集]

アラビア語の学習は非常に困難である[2]。アラビア語は日本語英語と似ておらず、かつ、語根のしくみなどある程度アラビア語の文法を習得しなければ『現代文語アラビア語辞典』などアラビア語の辞書を用いることは難しい。

イタリア語[編集]

イタリア語は、世界中の多くの学校で広く教えられており、実際、第二言語としては4~5番目の規模があるとされている[3]。しかし、日本の初等教育中等教育において第一外国語として教えられることは稀である。

日本においては、第二、第三外国語として主に大学で学習される。2003年の調査によると、全国105の大学で、約1万人の学習者がいるという[4]

オランダ語[編集]

英語は元々、ゲルマン民族大移動を経て、現在のオランダ地方近辺において、オランダ語と分化したことがその起源であるため、最も英語に近い言語であると言える。一方で、近隣の方言と見ることもできる。両者を比較すると極めて類似したスペルの単語や、文法法則も多い。従って、英語教育が浸透している日本人が学ぶには比較的学びやすい言語であると言える。

スペイン語[編集]

スペイン語は、英語学習をしっかりとやってきた日本人には、比較的有利な言語である。ラテン系言語で、英語と多少異なるものの、単語の大部分は英語と共通性を持っている ため、全く初見の単語と出くわしたとしても、英語の既得知識により、そのスペルからおおよその意味を推定できる。 文字は、アルファベット表記を基本としており特殊文字はニョール[要検証 ]等ごく一部で、学びやすい。また、発音に至っては日本語と同じく母音を中心として発音構造を持ち、おおむねスペルの通り発音ができるため、ヒアリング、スピーキングの点においては、欧州言語の中でも比較的学びやすい。 しかし、英語には無い、女性名詞男性名詞の存在、英語と異なり全ての時制変化に人称変化が影響してくるという複雑性があるので、最初はかなりこの点で苦労する。

中国語[編集]

中国語は、ニューズウィーク調査によれば[要文献特定詳細情報]、日本人が学びやすい言語として、レベル2にランクされ比較的学びやすいとされている。理由としては、やはり日本人に馴染みがある漢字を採用している部分が大きい。したがって、中国語を学んだことが全くない日本人でも一部の語句の意味を掴む事は可能であるが、語順は英語と同様SVOであったり、日本では存在しない漢字が多数あったりと一筋縄にいかない部分もある。また、発音については4つの声調を持つうえに、必ずしも漢字のスペルと日本人の感覚で考える発音と一致するわけではないので、リスニング・スピーキングは難関であると言えるが、読み書きは漢字を使用する日本人においては他言語話者に比べてアドバンテージが大きいと言える。

朝鮮語[編集]

朝鮮語は、ニューズウィーク調査によれば[要文献特定詳細情報]、インドネシア語と並んで最も学びやすいレベル1の評価が与えられている。日本語を母語とする者にとっては、最も習得しやすい外国語の一つとして数えられる。文法においては、その語順が主語→目的語・補語等→述語という並びが類似している。特に、助詞の使い方においては他語では類をみない程、共通点が多い。「は、が、に、を」などの助詞は発音こそ若干異なるものの、その位置や接続方法、用法などは両語全く共通である)[要検証 ]。文字は、朝鮮語でしか使われないハングルが用いられるため、日本人を含む外国人が朝鮮語を学ぶにはハングルの習得から入ることが多いが、ハングルは規則性がしっかりしているので、一度覚えてしまえば、ライティングはともかくとしてリーディングにおいては比較的早く習得できる。また、ハングルであっても、体言を中心として多くが漢語由来の言葉のため、日本人が韓国語のボキャブラリーを増やすにあたっては、かなり有利である。

以下に引用する1880年に示されたドイツの実業家であるエルンスト・オッペルトの見解によれば、朝鮮語は欧米では習得するのが困難な言語とされている。

朝鮮語を習得し正確に話すことの難しさは、中国語の学習につきまとう困難と比較しても全く劣ってはいない。この難しさは際限なく大なるものであると多くの者はみなしており、またその難易度は、外国人でも比較的短時間で日本語の知識(a knowledge of Japanese)を獲得できるその比較的容易な度合いに比することはできない[5]

アメリカ国防総省のDefense Language Instituteは、アラビア語、中国語、朝鮮語、および日本語をカテゴリーIVに分類している。これは、英語話者である学習者の当該言語習熟レベルが「社会生活、また職場での一部の要求を満たす十分な能力」を持ち、また「過去、現在、および未来時制を使用して具体的な話題を扱うことができる」程度に達するのに63週間必要であることを意味する(フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語は25週間とされる)[6]。アメリカにおける朝鮮語の学習者は、朝鮮語を継承するコリアンアメリカンに多く占められており、非軍事大学で朝鮮語を学ぶ学生の80%を超えると推定されている[7]。朝鮮語はある特定の言語話者の方が学習が大幅に容易であるという。日本での方がより広く、朝鮮語を継承する者でない学習者に朝鮮語は学ばれている[8]。朝鮮語が母語でない者の朝鮮語の能力を評価することを目的とした世界韓国語認証試験は1997年に始まり、2005年の試験については17,000人が申請を行ったという[9]

トルコ語[編集]

トルコ語は、言語類型において日本語と同様の膠着語に属し、語順も日本語と同様に語末に動詞が来るため、日本語母語話者にとっては比較的学びやすい言語と見られがちであるが、多くの語は英語との相関性はほぼないため、単語を記憶する面では、むしろ欧州系言語で英語学力を転用できるようなアドバンテージは効かない。また、変化の仕方は日本語のそれに近いが、変化系は多様に及んでおり、一筋縄ではいかない部分もある。発音面に関しては、近世までのアラビア文字を廃し、ラテン文字(アルファベット)に転用したため、ほぼ表音文字となっているので、比較的学びやすい。

フランス語[編集]

フランス語は、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語等と同じ系統を祖先としてもつロマンス系言語であり、両者間で類似性をスペルや文法面(たとえば目的格が動詞の前に置かれる等)から見出され、難易度としては、スペイン語やイタリア語と同等に見られる節があるが、スペイン語やイタリア語がほぼスペルそのままに発音できるのに対し、フランス語は、スペル通りの発音という訳にはいかず、ある程度の規則性があるものの、リエゾン(音の連結)や音の脱落などが、至るところで出現するため、発音に慣れるのにはそれなりの時間を要する。

ベトナム語[編集]

ベトナム語は、ニューズウィーク調査による難易ランキングでは[要文献特定詳細情報]、日本人が学びやすい言語レベル2(4段階評価)にランクされており、中国語、スペイン語と並んで学びやすいとされている。これは、ベトナム語が孤立語であり、数や性による語形変化が全くないことが大きい。また、かつては中国の影響からチュノムと呼ばれる漢字に似た文字を採用していたが、フランス支配を契機にラテン文字を使ったクオックグーに移行したことも大きい。ただし、発音に関しては、中国語を上回る6つの声調をもち、難しい部類に入る。

ヘブライ語[編集]

現代ヘブライ語に関しては比較的容易な言語である。なぜならば、ヘブライ語を公用語としているイスラエルでは、イスラエル国籍がないユダヤ人がイスラエルに「帰還」する際に、イスラエルにおける公用語のひとつである現代ヘブライ語を現地で生活するために学習しなければならない。その際に、ウルパンというヘブライ語教室においてかなり体系的にヘブライ語をヘブライ文字の読み方など非常に基本的な事柄から教授している。そして、ウルパンにおいて用いられるヘブライ語の教科書は様々なレベルの受講生にあわせて作成されており、ウルパンでヘブライ語を教授しているヘブライ語の教師たちは、受講生がヘブライ語を楽しくわかりやすく学習できるよう、教室内の環境も良好にするなど非常に洗練されている。また、すでに廃刊にはなってしまったが、シャアル・ラマトヒールというヘブライ語の新聞も発行され、同紙はヘブライ語のレベルは初級程度ではあるが、記事の内容はイスラエルの政治中東和平などに関する事柄であるため、高等教育課程を受講したことがある成人がヘブライ語を学習する際に読解用の新聞としてウルパンなどにおいて用いられていた。また、日本においてもヘブライ語を教授する教室があり、ヘブライ語の受講生がヘブライ語を学習する動機は原則として聖書などに関心がある者が多く、まれにパレスチナ問題や中東和平などに関心がある者や、ヘブライ語話者と結婚するためにヘブライ語を学習する者もいる。そして、聖書ヘブライ語を学習する者は、最初に現代ヘブライ語を習得しそれから聖書ヘブライ語を学習するほうが最初から聖書ヘブライ語のみを学習するよりも学習することが容易である。また、ヘブライ語を修得するとアラビア語の学習が容易になり、ドイツ語とヘブライ語を修得するとイディッシュ語の学習が容易になる。

モンゴル語[編集]

少なくとも日本語の母語話者にとっては、モンゴル語の学習は非常に容易である。モンゴル語は膠着語であるために文法的にも非常に近い。その点では韓国語も同じだが、韓国語にある激音濃音といった日本人初学者には聞き取れない音声学上の違いもモンゴル語には存在しない。ただし、LとRの違いはモンゴルにも存在する。母音の「オ」と「ウ」が2種類あるが、これは円唇か平唇かの違いにすぎないので、日本語話者にとってはそれほど大きな負担にはなっていない。

脚注[編集]

  1. ^ ただしE.ポリワーノフをはじめとする言語学者は日本語とインドネシア語の同系論を唱えている。確かに音韻論的にはラテン語よりもインドネシア語の方が日本語に近い。詳しくは「日本語の起源-これまでに唱えられた主要な説」の「オーストロネシア語起源説(混合語起源説)」を参照。
  2. ^ アラビア語学習ガイド、2012年8月31日閲覧
  3. ^ http://www.iic-colonia.de/italiano-2000/09.12%20Analisi%20generale%20dei%20dati.htm
  4. ^ 高田和文大学におけるイタリア語教育の現状と第二外国語学習の意義について」『静岡文化芸術大学研究紀要』、2006年
  5. ^ Oppert, Ernst (1880). A Forbidden Land: Voyages to the Corea. S. Low, Marston, Searle, and Rivington. http://books.google.com/books?id=PB8PAAAAYAAJ&. 
  6. ^ Raugh, Harold E.. “The Origins of the Transformation of the Defense Language Program”. Applied Language Learning 16 (2): 1-12. http://www.dliflc.edu/academics/academic_materials/all/ALLissues/all16two.pdf 2008年1月9日閲覧。. 
  7. ^ Lee, Saekyun H.; HyunJoo Han. “Issues of Validity of SAT Subject Test Korea with Listening”. Applied Language Learning 17 (1): 33-56. http://www.dliflc.edu/academics/academic_materials/all/ALLissues/ALL17.pdf. 
  8. ^ Fujita-Round, Sachiyo; John C. Maher (2007). “Language Education Policy in Japan”. United States: Springer. pp. 393-404. ISBN 978-0-387-32875-1. 
  9. ^ “Korea Marks 558th Hangul Day”. The Chosun Ilbo. (2004年10月10日). http://english.chosun.com/w21data/html/news/200410/200410100002.html 2008年1月9日閲覧。 [リンク切れ]

関連項目[編集]