「ローズ・ピアノ」の版間の差分
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2008年6月20日 (金) 21:48時点における版
ローズ・ピアノ(Rhodes Piano )は電気式鍵盤楽器の一種(エレクトリックピアノ)。日本では70年代までローデス・ピアノと表記される事が多かった。
概要
1940年代にハロルド・ローズ(Harold Rhodes )によって「前線の兵士たちを慰安する(音楽療法)目的で」発明された。最も初期の物は航空機のパーツを使って組み立てられた"Pre-Piano"というもの(同様の楽器はKAWAIから「トイ・ピアノ」として現在も販売されている)。これにマグネティックピックアップを取り付け、大音量を得られるように改良した。楽器メーカーのフェンダー社が権利を買い取り発売していた為、「フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノ」或いは「フェンダー・ローズ(ローデス)」と呼称されていた。フェンダーによって生産が開始された頃はフィエスタ・レッド(朱色)の筐体を持ち、3〜4種類のバリエーションが作られたが、後述の「ピアノ・ベース」を除いて殆ど流通しなかった。
1960年代には製造が開始されているが、まだ生産数も少なかった事や非常に重かった事、ピアノの代用品としてはあまりにもかけ離れた音であった事により、広くは使われなかった。ドアーズのレイ・マンザレクが、低音域32鍵のバージョン「ピアノ・ベース」でベースラインを弾いていたのと、ビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」でビリー・プレストンが初期型(天板が銀色)のスーツケース・ピアノを演奏していたのが最も有名な例だろう。1970年代中盤になってから、それまで多く使われていたRMIエレクトラピアノやウーリッツァーなどに代わり、ロックやジャズで広く使用される様になった(使用例を参照)。1973年、「ローズ」のブランドはフェンダーから独立する(尤も、フェンダーと同じCBS傘下であった)。1980年代中盤にヤマハからDX7が発売され、ローズを模したクリスタルのようなエレクトリックピアノのトーンが人気を博すまではクロスオーバーバンドでの必需品ともなった。電子キーボードが主流となった現在も尚、スムーズ・ジャズを初め幾つかのジャンルで使用される事がある。
現在でもローズの音を求める演奏家は多く、ビンテージのローズを買い求める人は多い。全盛期の生産数は多かったので、プレミア価値は他の楽器と比べて少ないが、1台ごとの性格の違いが大きいので注意されたい。多くの電子ピアノやシンセサイザーにローズのサンプリング音が内蔵されている他、サンプリング・ライブラリーも多数販売されている。また、2006年には遂に、ローズ・ブランドでの新型エレクトリックピアノ「ローズMk7」が発表された。
原理
トーンジェネレータと呼ばれる片持ち梁状の金属片をハンマーで叩き、その振動で近傍のバーという一種の音叉のような共鳴体が共振することで、鋭い打撃音と長く伸びる減衰音から鳴る独特の音色を発音する。生の音は、正弦波に近くて特徴ある澄んだ、なおかつアタックの強い音を発生するが、ピアノに内蔵のトーンコントロールの調整や、アンプをオーバードライブ気味に歪ませた時の低音のうなるような力強い音は独特な印象を与える。初期には太い音が好まれ、1970年代後半からは金属的なアタックを強調した透明感のある音が好まれるようになる(「ダイノ・マイ・ピアノ」という改造モデルがそのサウンドの元祖であった。しかしこのサウンドはDX7など後発の音源方式で再現されやすく、ローズが駆逐される原因ともなる)。
機種
幾つかの機種が存在するが、日本では以下の2機種が知名度が高いと思われる。
- ローズ・スーツケース・ピアノ
- キーボード部分とアンプ/スピーカー部分が1セットになった機種。運搬を考慮してスーツケース型のトランクに収納する仕様になっている。出力80Wのアンプで4個のスピーカーを鳴らす為、必ずしも別売のアンプ/PAを必要としない。また、このアンプとスピーカーによって得られる音質が独特であるとされている。73鍵式と88鍵式があり、どちらもサスティン・ペダルとトーンコントロールが付いている。
- ローズ・マーク1・ステージ・ピアノ
- 上記のスーツケース型からアンプとスピーカー部分を省略したタイプ。その為スーツケース型より安価だが、単体では音を出す事が出来ず、PAもしくは別売のアンプを用意する必要がある。こちらも73鍵式と88鍵式がある。
使用例
ジャズ
- チック・コリアが、初めてマイルス・デイヴィスのセッションに呼ばれた際、現場には見慣れたピアノがなく、当時まだ珍しかったローズピアノとRMIピアノが置かれていた。マイルスが音色を気に入って取り寄せたのだが、チックは最初、「こんなオモチャを弾くのか?」と否定的だったという。しかし、いざ弾き始めるや、その独特な音色に驚き、イマジネーションが一気に膨らんだそうである。ローズの音色はその後、チックのシグネイチャートーンになる。また、ローズに対する同様の印象を、やはりマイルスに呼ばれた、キース・ジャレットも残している。エレクトリック初期のステージでは殆ど使われていないが、徐々にステージにもローズが置かれるようになっていった。
ソウル
- スティーヴィー・ワンダーは1970年代、クラビネットと並ぶメインの楽器としてローズ・ピアノを弾いた。
- ダニー・ハサウェイはメインとして使っていたのはウーリッツァーだが、「ヴァルデス・イン・ザ・カントリー」などで見事なプレイを披露している。
- レイ・チャールズもローズとウーリッツァーの両方を使用した。
フュージョン
- ジェフ・ベックとヤン・ハマー・グループによるアルバム「ライヴ・ワイアー」で全体的に使用されている。
- 深町純の作品で数多く使用されている。代表的な曲は、アルバム「プロ・ユース・シリーズ 深町純」に収録された「バンブー・ボング」など。
- スタッフなどのバンドで、リチャード・ティーは以後流行となる金属的な音で印象に残る演奏を残している。
ロック
- レッド・ツェッペリンのアルバム「聖なる館」に収録された「ノー・クォーター」をライブで再現する際、ジョン・ポール・ジョーンズが演奏している(エフェクトはマエストロのフェイザーを使用。スタジオ版ではホーナー・エレクトラピアノという、アップライトタイプでローズとウーリッツァーの中間の様な音色を持ったエレピを使用し(レッド・ツェッペリンの全アルバムで聴かれるエレピ音色は全てこの楽器が使われた)、EMS VCS3のフィルター回路でエフェクトを付けている)。
- スティクスの「ベイブ」で冒頭部から使用されている。
- PFMのアルバム「ジェット・ラグ」他で全体的に使用されている。
- パトリック・モラーツはイエスのアルバム「リレイヤー」で使用した。特に同アルバムの2曲目での演奏は凄まじい。
関連項目