渡邉康雄
渡邊 康雄(わたなべ やすお、1949年1月24日 - )は、日本のピアニスト、指揮者[1]。祖父は元首相・鳩山一郎。父は指揮者の渡邉暁雄[2]。弟はピアニストの渡邉規久雄 [3]。従兄弟に鳩山由紀夫、鳩山邦夫がいる。
経歴
[編集]東京都に生まれ、東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校作曲科を経て18歳で渡米し、ボストンのニューイングランド音楽院とニューヨークのジュリアード音楽院にて8年間学んだ[4]。ピアノをセオドア・レトヴィンとサッシャ・ゴルトニツキーに師事した[4]。
1972年、父が指揮する東京フィルハーモニー管弦楽団とブラームスのピアノ協奏曲第2番で共演し、ピアニストとしてデビューした[5]。以後NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、広島交響楽団、ヘルシンキ放送交響楽団などと共演した[6][7]。演奏したピアノ協奏曲のレパートリーはベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲、チャイコフスキーのピアノ協奏曲、ラヴェルの二つのピアノ協奏曲など40曲以上におよぶ[6]。
1982年には、父・暁雄がてこ入れに腐心した徳島交響楽団[8]を指揮し、指揮者としての活動を開始した[9][10][11]。愛媛交響楽団[12]、山形フィルハーモニー交響楽団[13]、神戸室内合奏団[6]と続き、1992年に東京のサントリーホールにおいて日本フィルハーモニー交響楽団を指揮してプロの指揮者としての正式なデビュー公演を飾った[14]。その後は東京都交響楽団[15]、京都市交響楽団[6]、九州交響楽団[16]、群馬交響楽団[17]などを指揮した。
ピアノと指揮を兼ねる「弾き振り」をたびたび披露するが、その際にはオーケストラメンバーとのやりとりに重きを置いてピアノの蓋を外している[18]。普通にピアノを弾く時と弾き振りをする時とは感覚が異なると語り、「普通に弾くと『なんでこんな指使いなんだろう』と思わせる」モーツァルトのピアノ協奏曲のエドウィン・フィッシャー校訂版が、弾き振りに際しては非常に合理的であると述べている[19]。
また、こまやかな配慮が可能になるという理由から、特にモーツァルトとベートーヴェンのピアノ協奏曲は弾き振りが合っていると語り[20]、2019年3月にはオーケストラ・アンサンブル・金沢とともに、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番と第5番を演奏した[21]。なお、その演奏はCD化された[22]。
2019年には、父・暁雄の生誕100周年を記念した日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会にピアニストとして出演し、ガーシュウィンのピアノ協奏曲第3楽章を演奏した[23]。なお、第1楽章は寺田悦子が、第2楽章は弟の規久雄がピアノを担当し、指揮は父の教え子である藤岡幸夫が務めた[24]。この演奏会には、大学時代から渡邊家と交流がある上皇と上皇后が臨席した[25][26]。
父の生誕100周年に際しては「ようやく父の呪縛が解けた気がする」と語った[27]。
役職など
[編集]- 日本演奏家連盟会員[28]
- 日本シベリウス協会会員[6]
- 日本指揮者協会会員[6]
- 桐朋学園非常勤講師(1979年より現在まで) [6]
- 愛知県立藝術大学非常勤講師(1989年~1992年) [6]
- 神戸室内合奏団常任指揮者(1988年~1991年)[6]
- 1992年に設立された公益信託渡邉曉雄音楽基金には運営委員として名を連ね、2019年の時点でも委員を務めている[29][30][31]。
- 1996年から2015年3月にかけて、くらしき作陽大学で専任教授を務めた[6]。後進を育てつつ、音楽ファンの裾野拡大のために小学校でのトークリサイタルなども行なった[32]。2015年2月8日には退任記念のリサイタルを開催し[33]、ベートーヴェンのソナタなどを演奏した[34]。現在は名誉教授[35]。
- 若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール審査員[6]
- 第1回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際オンラインピアノコンクール(若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールを継いだもの)審査員[36][37]
- 第8回Kジュニア&学生音楽コンクール審査員[38]
- 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校同窓会会長[6]
- 北欧音楽祭すわ名誉会長[6]・・・中止が検討されていた第21回の継続を求めた[39][40][41]
- 第2~3回津山国際総合音楽祭音楽助監督[42][43]
- 第4回津山国際総合音楽祭音楽副監督[44]
- 第5回津山国際総合音楽祭音楽専門委員[45]
- 第6回津山国際総合音楽祭音楽副監督[46]
- 第7回津山国際総合音楽祭音楽監督[47]
ディスコグラフィ
[編集]- 『バロック・ヴァイオリン名曲集』 1997年[48]
- 『吉川朝子 & Agositini(Vn)渡邉康雄(P)Duo Serenade』 2002年[49]
- 『松村禎三:巡礼、ベートーヴェン:ソナタ第9番 他/渡辺康雄(P)』 2004年[50]
- 『ミルシュタインへのオマージュ フェデリコ・アゴスティーニ愛奏曲集』 2005年[51]
- 『 ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版) ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲) 』 2008年[52]
- 『Piano Concerto, 1, 5, : 渡邉康雄(P)/ O Ens金沢』2019年[53]
脚注
[編集]- ^ 『ONTOMO BOOKS 最新 世界の指揮者名鑑866』音楽之友社、2010年1月1日。
- ^ 明治~平成,367日誕生日大事典, 20世紀日本人名事典,新撰 芸能人物事典. “渡辺 暁雄(ワタナベ アケオ)とは”. コトバンク. 2020年1月16日閲覧。
- ^ 日本人名大辞典+Plus, デジタル版. “渡邉規久雄(わたなべ きくお)とは”. コトバンク. 2020年1月16日閲覧。
- ^ a b “2014 Sakuyo Faculty Concert Ⅴ 「森悠子 ヴァイオリンの調べ」 | くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学”. くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “ミリオンコンサート協会”. www.millionconcert.co.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m “プロフィール - 渡邉康雄 オフィシャルサイト”. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “広島交響楽団”. 広島交響楽団. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “渡邉暁雄先生を偲ぶ”. orchestra.musicinfo.co.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “渡邉 康雄 - 研究者 - researchmap”. researchmap.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “memorial”. tso.serio.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “新日本フィルハーモニー交響楽団/NHK DVD名曲アルバム 楽聖たちへの旅~グリークとシベリウス - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “過去の演奏記録2”. orchestra.musicinfo.co.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “山フィル演奏会の軌跡(1985-1989)”. 山形フィルハーモニー交響楽団. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “[渡邉康雄 日本フィル指揮デビューコンサート] サントリーホール 公演アーカイブ”. サントリーホール. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “創立50周年 コンサートアーカイブ|東京都交響楽団”. www.tmso.or.jp. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第7回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “平日午後のモーツァルト Ⅰ”. 群馬交響楽団. 2020年1月16日閲覧。
- ^ 横谷貴一 (2019-03). “渡邊康雄(ピアニスト、指揮者)「ベートーヴェンは『皇帝』で戦争の悲劇と平和への熱い想いを訴えたのだと思います。」”. 音楽現代 2019年3月号: p84.
- ^ 長井進之介 (2019-03). “渡邊康雄 ”最高の室内楽”を目指す 指揮とピアノが密接な「協奏曲」に”. 音楽の友 2019年3月号: p143.
- ^ “渡邉康雄(ピアノ/指揮)”. WEBぶらあぼ. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “渡邉康雄 ― ベートーヴェン ピアノ協奏曲の世界 ― | オーケストラ・アンサンブル金沢”. オーケストラアンサンブル金沢. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “渡邉康雄/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1&5番 「皇帝」 - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “渡邉曉雄生誕100周年記念演奏会”. 日本フィルハーモニー交響楽団 (2018年10月18日). 2020年1月15日閲覧。
- ^ “息子と弟子演奏ささげる 指揮者・渡辺暁雄生誕100年 : ニュース : 東京多摩 : 地域 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2019年6月20日). 2020年1月15日閲覧。
- ^ “6月22日(土)上皇上皇后両陛下のご臨席を賜り、『渡邉曉雄生誕100周年記念演奏会』を行いました”. 日本フィルハーモニー交響楽団 (2019年6月24日). 2020年1月15日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年6月22日). “上皇ご夫妻、日本フィル演奏会ご鑑賞”. 産経ニュース. 2020年1月15日閲覧。
- ^ 西正之 (2019年3月11日). “ピアニスト渡邊康雄、「ようやく父の呪縛解けた」”. 朝日新聞夕刊
- ^ “会員名簿|公益社団法人 日本演奏連盟”. www.jfm.or.jp. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “創立指揮者 渡邉曉雄”. 日本フィルハーモニー交響楽団 (2016年8月23日). 2020年1月15日閲覧。
- ^ “KAJIMOTO | ニュース | ◆井上道義、「渡邉暁雄音楽基金」特別賞を受賞!”. www.kajimotomusic.com. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “第27回「渡邉暁雄音楽基金」音楽賞・特別賞の発表記者会見レポート”. CLASSICA JAPAN. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “「トークリサイタル by 作陽の渡邉康雄」in 奥出雲町立横田小学校 開催! | くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学”. くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “気高く美しい音色「渡邉康雄 ~退任記念~ ピアノリサイタル」 | くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学”. くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “2014 Sakuyo Faculty Concert VII 「渡邉康雄~退任記念~ピアノリサイタル」 | くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学”. くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “役職者・名誉教授 | くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学”. くらしき作陽大学 作陽音楽短期大学. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “2019 International Jury”. The International Tchaikovsky Online Piano Competition for Young Musicians. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “第1回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際オンラインピアノコンクールで谷 昂登が優勝”. クラシック音楽情報誌 ぶらあぼ. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “第8回ジュニア&学生音楽コンクール”. k-concours.org. 2020年1月16日閲覧。
- ^ 矢島秀章 (2019年6月4日). “今年度で終了の提案も 北欧音楽祭継続決まる”. 長野日報
- ^ “「北欧音楽祭」継続望む声 下諏訪今年は10月12~14日”. 信濃毎日新聞. (2019年6月4日)
- ^ “「北欧音楽祭」10月12~14日”. 下諏訪市民新聞. (2019年6月4日)
- ^ “第2回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第3回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第4回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第5回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第6回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “第7回津山国際総合音楽祭”. 第9回津山国際総合音楽祭|公式ホームページ|. 2020年1月16日閲覧。
- ^ “海野義雄/バロック・ヴァイオリン名曲集 - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ 株式会社ローソンエンタテインメント. “吉川朝子 & Agositini(Vn)渡邉康雄(P)Duo Serenade”. HMV&BOOKS online. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “渡邉康雄/松村禎三:巡礼、ベートーヴェン:ソナタ第9番 他/渡辺康雄(P) - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “Federico Agostini/ミルシュタインへのオマージュ フェデリコ・アゴスティーニ愛奏曲集 - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ “[バレエ・リュスの二大傑作ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)-ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲) 九州交響楽団/[バレエ・リュスの二大傑作]ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版) ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲) - TOWER RECORDS ONLINE]”. tower.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ 株式会社ローソンエンタテインメント. “Piano Concerto, 1, 5, : 渡邉康雄(P)/ O Ens金沢”. HMV&BOOKS online. 2020年1月15日閲覧。