未知への飛行
未知への飛行 | |
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Fail Safe | |
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監督 | シドニー・ルメット |
脚本 |
ウォルター・バーンスタイン ピーター・ジョージ |
原作 |
ユージン・バーディック、ハーヴィー ウィーラー 『フェイルセーフ』 |
製作 |
シドニー・ルメット チャールズ・H・マグワイア マックス・E・ヤングスタイン |
出演者 | ヘンリー・フォンダ |
撮影 | ジェラルド・ハーシュフェルド |
編集 | ラルフ・ローゼンブラム |
製作会社 | コロンビア ピクチャーズ |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 112分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
興行収入 | $1,800,000(レンタル)[1] |
『未知への飛行』(みちへのひこう、原題:Fail Safe)は、1964年制作のアメリカ合衆国の映画。シドニー・ルメット監督。
米ソの核戦争を題材とした映画。原題の「Fail Safe(フェイルセーフ)」とは、装置の誤操作や誤動作による事故を防ぐための設計手法であり、この映画では安全な待機ポイント、誤った攻撃命令など複数の意味を含んでいる。
日本でのビデオタイトルは『未知への飛行/フェイル・セイフ』。
あらすじ[編集]
米ソ冷戦時代のアメリカ。カナダ国境に正体不明の飛行物体がオマハの国防司令部のレーダースクリーンに現れた。警戒のため飛行していたアメリカ空軍の爆撃機「Vindicator」の対ソ編隊はソ連領最前線の待機ポイント=フェイル・セイフ地点に向かい、待機旋回を始めた。ほどなく司令部ではレーダーの飛行物体は民間航空機だと判明したが、その間爆撃機編隊はモスクワを核攻撃せよとの暗号指令を受信した。司令部の軍事コンピュータが誤作動を起こしたことによる誤った暗号指令であった。これを知ったアメリカ政府は音声通信で攻撃中止を連絡しようとするが、ソ連側の電波妨害によって通信は途絶しており、編隊は暗号指令を信じてフェイル・セイフ地点を超え、ソ連国境に向かった。
アメリカ側は最終手段として戦闘機で編隊を撃墜しようとするが、既に距離が離れすぎていたため戦闘機は燃料切れで墜落してしまい、代替手段として編隊の位置をソ連側に通報する。ソ連側の迎撃部隊によって編隊のうち4機は撃ち落されたが、1番機だけは攻撃をかわしてモスクワ上空に到達、ついにモスクワに核攻撃が行われてしまう。大統領はソ連の報復による全面核戦争を回避し、ソ連側にモスクワへの核攻撃がコンピュータの誤作動によるものであることを証明するため、驚くべき決断を下す。それは、自軍、つまりアメリカ空軍の爆撃機と核爆弾を用いて、ニューヨークを核攻撃することだった。
キャスト[編集]
※括弧内は日本語吹き替え
- アメリカ合衆国大統領:ヘンリー・フォンダ(有本欽隆)
- ブラック将軍:ダン・オハーリー(楠見尚巳)
- グロテシェル教授:ウォルター・マッソー(佐々木梅治)
- ボーガン将軍:フランク・オーヴァートン(たかお鷹)
- バック:ラリー・ハグマン(斉藤次郎)
- グレイディ大佐:エドワード・ビンズ
- ラスコブ下院議員:ソレル・ブック
- カッシオ大佐:フリッツ・ウィーヴァー
- スウェンソン国防長官:ウィリアム・ハンセン
- コリンズ:ドム・デルイーズ
- フォスター:ダナ・エルカー
- ゴードン・ナップ:ラッセル・コリンズ
※日本語吹替は上記の他、1986年8月3日に『CINEMAだいすき!』にて放送されたテレビ版も存在する。
製作[編集]
映画はホワイトハウスの地下壕、アメリカ国防総省の作戦会議室、戦略航空軍団作戦会議室、爆撃機のコックピットで展開される。市民の日常生活はオープニングと映画のラストのみに登場し、ラストのニューヨークのシーンでは市民は核爆発の脅威を感じず、爆発の瞬間に映像が静止するシーンで終了する。音楽はアラスカ州の空軍基地のラジオ音楽以外使用されていない。一方の当事国であるソ連が登場せず、物語は国防総省と戦略航空軍団の作戦室にある電子地図で描かれる。アメリカ大統領とソ連首相との会話は、ラリー・ハグマンが演じる通訳の翻訳によって描写され、映画は大統領やグロテシェル教授、ブラック将軍、ボーガン将軍などのアメリカ政府・軍部首脳の会話で構成されている。
原作に登場する爆撃機「Vindicator」はB-58の資料映像を使用しており、迎撃機のF-104、F-102、ミラージュIII、F-101もフィルムクリップで描写されている。これは、核兵器を適正に管理できていないことを前提とした映画への協力をアメリカ空軍が拒否したため、資料映像しか使用できなかったことによる[2]。爆撃機編隊のシーンは、1機のB-58の資料映像を複数のB-58が存在しているように編集したものが使用されている。
訴訟問題[編集]
『未知への飛行』と『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』は、両方ともコロンビア ピクチャーズの製作作品で、核戦争の危機を描いた点も共通している。『博士の異常な愛情』は、ピーター・ジョージの『破滅への二時間』を原作にしており、監督のスタンリー・キューブリックは本作と競合して興行成績を損なうことを避けるため、『博士の異常な愛情』を先に公開するように求めた[3]。
キューブリックとジョージは、原作の『破滅への二時間』と『フェイルセーフ』の内容が似ていることから、「盗作された」として『未知への飛行』に対して訴訟を起こした[4]。最終的に両者は和解したため、本作は『博士の異常な愛情』より8か月遅れで公開されることになった[5]。
評価[編集]
本作は批評家からは好評だったが、興行成績は振るわなかった。これは、同じテーマを扱った『博士の異常な愛情』が先に公開されたこともある。しかし、本作は原作の品質を保持しているものとして高い評価を受けている[6]。原作と映画は、長年「コンピューターの誤作動が核戦争の危機を招く」という考えを否定する人々から批判されたが、核戦争の危機を描いたことで広く世間に受け入れられている[2]。
リメイク[編集]
2000年、テレビ映画『FAIL SAFE 未知への飛行』としてリメイクされた。監督はスティーヴン・フリアーズ、キャストはリチャード・ドレイファス、ジョージ・クルーニー、ノア・ワイリー、ブライアン・デネヒー、サム・エリオット、ハーヴェイ・カイテルら。
脚注[編集]
- ^ "Big Rental Pictures of 1964". Variety, January 6, 1965, p. 39.
- ^ a b "Fail-Safe (Reviews)." strategypage.com. Retrieved: September 5, 2012.
- ^ Jacobson, Colin. "Review:Fail-Safe: Special Edition (1964)." dvdmg.com, 2000. Retrieved: November 21, 2010.
- ^ Scherman, David E. (1963年3月8日). “in Two Big Book-alikes a Mad General and a Bad Black Box Blow Up Two Cities, and then— Everybody Blows Up!”. Life Magazine: p. 49 2017年8月18日閲覧。
- ^ Schlosser, Eric (2014) (英語). Command and Control: Nuclear Weapons, the Damascus Accident, and the Illusion of Safety. Penguin. p. 297. ISBN 9780143125785
- ^ Erickson, Hal. "Fail Safe (1964)." The New York Times. Retrieved: October 24, 2009.
参考文献[編集]
- Dolan Edward F. Jr. Hollywood Goes to War. London: Bison Books, 1985. ISBN 0-86124-229-7.
- Evans, Alun. Brassey's Guide to War Films. Dulles, Virginia: Potomac Books, 2000. ISBN 1-57488-263-5.
- Harwick, Jack and Ed Schnepf. "A Viewer's Guide to Aviation Movies". The Making of the Great Aviation Films, General Aviation Series, Volume 2, 1989.
- LoBrutto, Vincent. Stanley Kubrick: A Biography. New York: Da Capo Press, 1999. ISBN 978-0-306-80906-4.