教育虐待
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教育虐待(きょういくぎゃくたい)とは、児童虐待の一種である。「教育熱心過ぎる親や教師などが過度な期待を子どもに負わせ、思うとおりの結果が出ないと厳しく叱責してしまうこと」を指す[1]。
概要[編集]
子供の人権を無視して勉学や習い事などを社会通念上許される範疇を逸脱して無理強いさせる行為である。そもそも子供にとって受忍限度を超えた時点で躾や教育の一環とは言えない。
2011年の「日本子ども虐待防止学会」において武蔵大学の武田信子教授が「子供の受忍限度を超えて勉強させるのは教育虐待にあたる」と発表した[2]ことから世間に認知されるようになったとされる。元々は受験勉強など、勉強(学問)を指していたが、近年では行き過ぎた習い事全般も含めるようになった。
「教育虐待」という用語は2010年代以降に使われるようになったものだが、戦後の高度経済成長終了後に教育が普及し、学歴社会が到来して受験戦争が始まった時代から、教育熱心すぎる親や教師が子供を追い込むことは行われており、そうした親は「教育ママ」などと呼ばれてきた。実際には母親のみならず父親も含め、両親ともに教育虐待を行う場合が多い。
高学歴で経済的・社会的地位の高い両親の元で起きることが多く、弁護士の間では教育虐待と呼ばれている[3]。また逆に低学歴の親がその劣等感(学歴コンプレックス)から、子供に対して過酷な勉強や習い事、受験競争に駆り立てる場合もある。いわゆる「お受験」と呼ばれる受験戦争の低年齢化に伴い、1980年代の大学受験から小学校・幼稚園受験まで競争の低年齢化が進んでいる。
親が「子供の未来のため」や「良かれと思って」などと自己主張を交えて自らの行為を一方的に正当化させるケースが大半を占めるが、これは親が子に過剰な期待をしたり、親自身が持つコンプレックスを払拭させる狙い[4]があるためと推測される。
教育虐待がエスカレートした結果、殺人事件に発展することもあり、親に子供が殺されたり、逆にある程度成長した子供が耐えられなくなった時点で反逆し、家庭内暴力などにより親や祖父母が子供に殺される場合もある。
事件[編集]
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子供が死亡した事件[編集]
- 開成高校生殺人事件(1977年)- 開成高校の生徒だった息子を父親が殺害した事件。
- 名古屋小6受験殺人事件(2016年)- 受験生であった小6の息子を父親が殺害した事件。
- 目黒女児虐待事件(2018年)- 当時5歳の女児に毎朝4時頃から勉強を強制し、最終的に死亡させた事件。
親が死亡した事件[編集]
- 神奈川金属バット両親殺害事件(1980年)- 浪人生だった息子が両親を殺害した事件。受験戦争による家庭内暴力事件のはしりとして注目を集めた。
- ジェニファー・パンによる両親殺傷事件(2010年) - ベトナム系カナダ人女性が嘱託殺人により両親を殺傷した事件。
- 滋賀医科大生母親殺害事件(2018年)
その他[編集]
- 奈良自宅放火母子3人殺人事件(2006年)- 父親の指導を苦にした16歳の少年が自宅に放火し、母子3人が死亡した事件。
参考文献[編集]
- 橘ジュン『最下層女子校生~無関心社会の罪』小学館新書、2016年
脚注[編集]
- ^ 橘ジュン『最下層女子校生~無関心社会の罪』小学館新書、2016年、p.41
- ^ “「教育虐待」親に強制された習い事で優勝したけど、思い出したくもない…その背景は?” (日本語). 弁護士ドットコム (2017年9月10日). 2018年8月21日閲覧。
- ^ 『教育 第57巻 第 738~743号』p.81、国土社、2007年
- ^ “子どもへの期待 なぜ虐待に?” (日本語). 日本放送協会 (2017年12月20日). 2018年8月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月20日閲覧。