吸血鬼ノスフェラトゥ
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吸血鬼ノスフェラトゥ | |
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Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens | |
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監督 | F・W・ムルナウ |
脚本 | ヘンリック・ガレーン |
原作 | ブラム・ストーカー[1] |
製作 | エンリコ・ディークマン アルビン・グラウ |
出演者 | マックス・シュレック グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム グレタ・シュレーダー アレクサンダー・グラナック |
音楽 | ハンス・エルトマン |
撮影 | F・A・ヴァグナー ギュンター・クランフ[1] |
公開 | ![]() |
上映時間 | 94分(オリジナル) |
製作国 | ![]() |
言語 | ドイツ語(字幕) |
『吸血鬼ノスフェラトゥ』(きゅうけつきノスフェラトゥ、原題:Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens)は、F・W・ムルナウにより1922年に作成されたドイツ表現主義映画。ヴァンパイアを扱ったホラー映画の元祖として知られる。
邦題には『吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲』、『吸血鬼ノスフェラトゥ 恐怖の交響曲』がある[2]。
1978年にはヴェルナー・ヘルツォークの脚本・監督によるリメイク版『ノスフェラトゥ』が制作されている。
また、本作をベースに「主演のマックス・シュレックは本当に吸血鬼だった」とする『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』が制作された。マックス・シュレックをウィレム・デフォー、監督のF・W・ムルナウをジョン・マルコヴィッチが演じている。
あらすじ[編集]
ドイツ・ヴィスボルクの不動産屋で働くフッターは、主ノックの指示で、トランシルヴァニアの貴族オルロック伯爵の城に契約のため向かう。しかし、オルロックの正体は数百年生き続ける吸血鬼であり、フッターは彼に噛まれてしまう。同じ頃、フッターの妻エレンは夢遊病にかかり、オルロックの悪夢にうなされるようになる。オルロックは自身が埋葬された土を入れた棺を積み込みドイツ行きの船に向かい、フッターはそれを阻止しようとするが失敗し、付近の農家に保護される。ドイツ行きの船に乗り込んだオルロックは船長を殺してドイツに到着し、オルロックに操られて発狂したノックは精神病院を脱走して棺を屋敷に運び込む。
ドイツに戻ったフッターはエレンとの再会を喜ぶが、町は漂着した船からネズミが大量発生したことから「ペスト流行の危険がある」として騒ぎになっていた。オルロックは向かいの屋敷からエレンを狙い、フッターは危険を感じる。エレンはフッターの吸血鬼の書を読み、吸血鬼を倒す方法が「心に汚れのない女性が生き血を与え、朝日が昇るまで吸血鬼を逃がさないようにする」ことだと知る。警察がノックを捕まえるために走り回る中、エレンの容体が悪化したため、フッターはブルワー教授を呼びに家を飛び出し、その隙を突いてオルロックが屋敷に乗り込みエレンを襲う。フッターがブルワーを連れて家に戻ると、エレンの生き血を吸うことに夢中になっていたオルロックは朝日を浴びて消滅し、精神病院に連れ戻されていたノックも主人の死を知り落胆する。フッターはエレンの側に近寄ると、彼女は奇跡の力で生き返り、二人は抱き合う。
登場人物[編集]
- トーマス・フッター
- 演 - グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム
- ヴィスボルクに住む青年。ノックの経営する不動産屋で働いている。原作におけるジョナサン・ハーカー。
- エレン・フッター
- 演 - グレタ・シュレーダー
- フッターの妻。夫がトランシルヴァニアに行くことに強い不安を感じる。原作におけるミナ・ハーカー。
- オルロック伯爵
- 演 - マックス・シュレック
- トランシルヴァニアの貴族。ドイツのヴィスボルク(架空の町)に家を探している。原作におけるドラキュラ伯爵。
- ノック
- 演 - アレクサンダー・グラナック
- 不動産業を営む、何かと噂の多い男。フッターを伯爵の城に向かわせる。原作におけるレンフィールド。
- ハーディング
- 演 - ゲオルク・H・シュネル
- フッターの友人。彼が留守の間、エレンの世話を頼まれる。原作におけるアーサー・ホルムウッド。
- アンネ
- 演 - ルース・ランドスホーフ
- ハーディングの妻。原作におけるルーシー・ウェステンラ。
- ブルワー教授
- 演 - ヨハン・ゴットウト
- 大学教授。原作におけるヴァン・ヘルシング。
- ジーファース博士
- 演 - グスタフ・ボーツ
- 精神病院の院長。原作におけるジャック・セワード。
作品解説[編集]
ムルナウは当初、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作に映画を製作する予定だったが、彼の制作会社は版権元であるフローレンス未亡人から映像化の権利を得られなかった。そのため、ムルナウは独自の解釈と話の筋をわずかに変えることでこれを解決した。「ドラキュラ」 (Dracula) のタイトルは「ノスフェラトゥ」 (Nosferatu) に、ドラキュラ伯爵がオルロック (Orlok) 伯爵に変更された。
2012年現在、ヴァンパイアや不死者の意として使用されている "Nosferatu" という言葉の語源は、 "nosfur-atu" という古代スロヴァキアの言葉であり、それ自体もギリシャ語で「病気を含んだ」を意味する "νοσοφορος" が由来である。西ヨーロッパの人々に、ヴァンパイアは病気を運んでくるものと見なされていた。
本作における吸血鬼「ノスフェラトゥ」は、鋭い前歯を持ち頭髪が1本も無いという、特異な風貌である。一般に知られる吸血鬼のイメージが鋭い犬歯を持ちコウモリやオオカミを思わせるのに対し、本作のそれはネズミを連想させる。
オルロック伯爵の城の撮影は、スロバキアのオラヴァ城(スロバキア語: Oravský hrad, ドイツ語: Arwaburg, ハンガリー語: Árva vára)で行われた。
フローレンス未亡人は著作権を侵害した盗作とドイツの裁判所に訴え、1925年に裁判所は「ドラキュラ」を土台にしていることは明白だと認定して配給停止の判決を下し、未亡人は本作のネガとプリントをすべて差し押さえた。
復元版[編集]
2005年から2006年にかけて、1922年のフランス語字幕つき染色プリント版を元に、ムルナウ研究の第一人者ルシアノ・ベリアトゥアが復元した。2007年に『吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲』クリティカル・エディションDVDとして紀伊國屋書店から発売されている。
日本では2009年にシネマヴェーラ渋谷で上映された。また、テレビではNHK BSプレミアムで、2011年9月2日に放送された[3]。
脚注[編集]
- ^ a b クレジットなし
- ^ “映画 吸血鬼ノスフェラトゥ”. allcinema. 2011年8月24日閲覧。
- ^ F・W・ムルナウ「吸血鬼ノスフェラトゥ 恐怖の交響曲」(1922)は明日9/2昼 NHK BSプレミアムで [映画](録画地獄、2011年9月1日)
関連項目[編集]
- ドラキュラ
- ノスフェラトゥ (1979年の映画)
- シャドウ・オブ・ヴァンパイア:2000年の映画。本作を基にしたフィクション。