伏字

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伏字、もしくは伏せ字(ふせじ)とは、何らかの目的で特定の文章全文、特定の単語、単語の一部の文字記号などに置き換えた言葉を指す。

概要[編集]

語句を伏せる目的には次のようなものが考えられる。

  1. 検閲や、名誉毀損とされることを避ける目的。
  2. 上の目的を複雑化させ、名誉を損ねることを避けた上で言及すべく、「某社」「某氏」などのようにほのめかす、あるいはローマ字のイニシャルを使用するといったもの。
  3. 単に一般的な語句が入るために空白や伏字にしているもの。
  4. 一般公衆に伝えるには品位を損なうとして、マスメディア(新聞広告など)において自主的に伏せる目的。
  5. 主に文学作品などで、原稿が破れなどで欠落していたり、汚れなどで判読できなかった場合に代用する。その際はその旨を注記することが多い。
  6. パスワードを入力する際、他人に読み取られるのを防ぐため(プロジェクタなどで出力し、公開する際、入力の場面が映し出されても読み取れなくなる)。
  7. Googleなどの検索エンジンでヒットされにくくするため(ただし、検索エンジンも性能が向上し、多少の伏字や曖昧な表現も推測して検索できるため、効果は低い)。

第二次世界大戦以前の日本では治安維持法下で思想統制が行われていた。思想書やプロレタリア文学のみならず、一般の小説等でも「社会主義」、「共産主義」、「無政府主義」といった語句は検閲を免れるために伏字とされることが多かった。この体制下において、言論の発信者が自らの自由性を確保する(発表を可能とする)ために伏せ字を用いていた。第二次世界大戦後の占領期ごく初期では形の上では言論の自由が保障されていたものの、実際としては連合軍による検閲が実施されていた。戦時中には当たり前に使われていた伏せ字が、検閲の痕跡を残さない為に原則的に禁止された。 現代においては、作品研究の前提として、戦前・戦中期に発表された本文に伏せ字がある場合、穴埋めにより伏せ字を除去する。このように均された作品本文では、本文生成における作家の意識や検閲制度への対抗措置が見えにくくなる。

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記号としては○や×、*などが多く使われる。比較的長い部分を纏めて伏せ字にする場合には…(リーダー)も使われた。雑誌である改造では「ゝ」が用いられた。記号の読み方として、「まるまる」、「ばつばつ」などが日本語では充てられることがある。また、関西地方の方言では○を「まる」、×を「ペケ」と呼ぶ。特に「ペケ」は横山やすしが好んで使っていた言葉である。×については他に「チョメチョメ」という言葉もあるが、これは、テレビ番組「アイ・アイゲーム」にて司会者の山城新伍が伏字を「チョメチョメ」と表現して流行語となったことが起源である。 他には、空白や意図的な誤字も伏せ字として使われた。これらの記号を使用すると、元の文章が分かりにくくなるため、伏せ字部分に入るべき文字を別刷として密かに配布するということも行われた。 また、この記号にはこの文字が入るなどの筆者と読者間の暗黙の了解により、読み解かれていた例もある。「〇〇」は常に「日本」か「天皇」を意味する等である。事例には乏しいが、雑誌である芸術市場では「1961」などの数字を伏せ字とした。この数値は、五十音配列表の縦横の位置を示しているとされ、読者は、掲載の号と対応した配列表を入手しなければ、読み解くことは困難である。 伏せ字の目的は文章を抹消する為であるので、原文と同じ文字数を記号化する必要性は無いはずである。しかし、原文の文字数を無視した伏せ字の事例は殆ど見られない。これは、問題の無い箇所まで誤って伏せ字にしてしまわないように、伏せ字化の時に文字数を守る習慣が定着したと考えられる。

また、印刷において足りない活字のスペースを確保するため、他の活字を伏せて植字する(上下さかさまに植字する)ことを伏字と呼ぶことがある。印刷の結果が下駄の歯(「〓」のような形)に見えることから下駄記号とも呼ぶ。

印刷技術の発達によって現在では活字による植字はほとんど行われていないが、他方、電子メディアにおいて文字集合の制約などで意図した文字が表示できない場合に伏字で補う場合がある。この伏字には「●」や記号「〓」などが多く使われているようである。後者は一般に「ゲタ」と呼ばれ、元々は活版印刷における文選の際、見当らない漢字に対して、取敢えず適当な活字を裏返しに差しておいたものが、そのまま印刷されたことから来た記号である。語句を隠す意図はないため、例えば「内田百〓(〓は門構えに月)」のように直後や文末に注を添えることが多い。

また、記号で伏せ字をする場合、意図的に伏せ字の位置や数を調整することで、読む側に本来のものとは全く異なる単語や固有名詞、無関係な別人や団体・商品名などを誤想起させる事が可能な場合もある。また、このような例としてはダブルミーニング的な感じでも用いられる。 伏せ字について、商標の侵害を防ぐなどの意味で必要という意見もあれば、商標権とはそのような趣旨のものでは無くこの場合は侵害とは無関係である(名前を出したからと言って商標の侵害にはならない)、仮に問題があるとしても伏せ字にしても文脈から分かるため対策としては無意味である、伏せ字を使った表記が不快であるなどの理由で否定する意見もある[1][出典無効]

中国語[編集]

中国語では隱諱號と呼ぶ。主に日本語と同様に「×」を利用する。

脚注[編集]

  1. ^ buena et al. “意味のない伏字を使う人”. goo. 2016年5月18日閲覧。

参考文献[編集]

Jonathan E. Abel, Redacted: The Archives of Censorship in Transwar Japan (University of California Press, 2012) ISBN 978-0520953406.

牧義之 『伏字の文化史―検閲・文学・出版』 森話社 2014年 ISBN 978-4864050739 15,17,34,43,46頁

関連項目[編集]