ロードバイク

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ロードバイクの例、Orbea Orca

ロードバイク (: road bike) は、舗装路を主とした道路での高速走行を目的に設計された自転車である。「ロードレーサー」と呼ばれることもある[1]ツール・ド・フランスなどの自転車ロードレースで用いられる。

歴史[編集]

競技用としてのロードバイクの原型が完成したのは1900年代頃と考えられる。当初、ロードレースは土道、トラックレースは陸上競技と共用の踏み固められた土のトラックで行われており、一方に特化した機材は存在せず、双方ともブレーキのない固定ギアの自転車が用いられていた。しかし、ロードレース用の自転車にブレーキが装備されるようになり、トラックレースではそれを禁じたことから双方の機材特化が始まった。ハンドルはセミドロップハンドルに近いものであったが、1910年代に入るとロードレースに適したドロップハンドルが開発された。また、この時代になるとダブルコグと呼ばれる左右で歯数の違うギアを装備した車両が一般的となり、起伏にもある程度対応できるようになった[注釈 1]。しかし、ダブルコグ式は坂に差し掛かるたびに後輪を逆に取り付ける必要があるため交換に時間を要し、また固定に用いられるウィングナットは低温状況下において、かじかんだ手での着脱が困難なものであった。

1930年代になると、現在のロードバイク用ハンドルとして一般的なマースバーが使われ始め、1933年にウィングナット留めの欠点を補ったカンパニョーロの原点ともいえるクイックレリーズが登場した。

4年後の1937年には、ツール・ド・フランスにおいて変速機が使用できるようになった[注釈 2]

第二次世界大戦によってロードレースの開催が一時中断するものの、1947年にツール・ド・フランスが再開されるとふたたび技術革新が進み、フロントギアへの変速機構の導入や、木製リムから金属性リムへの移行などが行われた。

1950年頃になると、クランクを逆転させて変速する必要がないスライド式のディレーラーが前後とも主流となり、まもなくリアはタケノコ式のディレーラーに移り変わっていった。

1960年代初頭には、変速性能が良いパンタグラフ式[注釈 3]が前後とも主流になった。こうして変速機構が進化するなか、ブレーキは備えるが固定ギアで、変速器を持たない車両を用いる選手もまた1960年代前半頃まで少数ではあるが存在した。

1970年代に入ると、1971年にコンポーネントという概念を形にした「ヌーボレコード」が発売され、翌年にはシマノデュラエースを発売。カンパニョーロはこれに対抗して、1973年に「スーパーレコード」を発売するなど、ロードバイク業界は一気に変化を遂げた。1978年には、シマノが現在主流となっている「カセットフリー」(スプロケット)を実用化。デュラエースEXシリーズの一部として発売された。1980年代以降、ロードバイクもマウンテンバイクで培われた新しい技術を採り入れ、軽量化や新素材の開発も進み、信頼性・操作性が格段に向上した。

特徴[編集]

ロードレース用自転車に準じるが、競技使用を前提としなければ競技機材規定に拘束されず、また、トライアスロンは自転車競技(ロードレース)ではないため、厳密にはロードレース用自転車ではない。高速走行性能を優先して設計されるが、空気抵抗の点ではさらに先鋭化させたリカンベントも存在する。泥よけやスタンドなど、走ることに不要な部品は基本的に装備せず、前照灯や後部反射板を備えていない車両も存在する。溝が浅く少ない、幅の細い高圧タイヤを履き、転がり抵抗の減少を図っている。基本的にドロップハンドルと呼ばれる特徴的な形状のハンドルをもつ。部品や素材は開発が続けられており、軽量化が進んでいる。

1990年代までは「ロードレーサー」と呼ばれていた。『BICYCLE CLUB』(バイシクルクラブ)を刊行する枻出版社がこの頃に編集方針をマウンテンバイク中心の“ストリート系”へ転換、「―バイク」と呼び始めてからこの呼称が広がっている[要出典]

安全性[編集]

時速30km/h以上のスピードを出せること、前傾の運転姿勢を取るため前方視界が限られることなどから、シティサイクルなどに比べて事故の当事者となり得る可能性が高いため、一般道での走行には細心の注意を必要とする[注釈 4]

質量[編集]

車体質量が小さいほど加速や登坂に要するエネルギーは少なくて済むために、ロードバイクでは軽量性が重視される。現在では、新素材・設計の導入によりその質量は非常に小さく、一般的なシティサイクル実用車の1/2 - 1/3(もしくはそれ以下)の質量になる。軽量なものでは5kgを切るような車体を作成することも可能である。[4]

競技主催者が定める重量制限[編集]

国際自転車競技連合 (UCI) の規定では、過度な機材の軽量化を防止するために質量の最低重量を6.8kgと設定している[注釈 5]

構成部品[編集]

フレーム[編集]

ほぼすべてがシンプルなダイヤモンドフレームを採用しているといってもよい。これにはロードレースではUCIの規定によりダイヤモンドフレーム以外の機材を用いることが許されていないという理由もある。ただし、そのような規制がなかった1990年代には、個性的なフレームの自転車がタイムトライアル競技で採用されていた。UCIでなく国際トライアスロン連合が統括するトライアスロン競技用として、非ダイヤモンドフレームの製品もあるが、以前に比べると減少傾向にある。1cm刻みのフレームサイズを用意できたパイプ接合の頃に比べ、サイズ別の成型型を用意しなければならないCFRP製一体成型が普及することに伴い、粗いサイズ展開になりつつある。

ロードバイク(ロードレーサー)は、源流を同じくするトラックレーサーとともに、現存する競技用、あるいはそれに準ずる自転車の最も古い形態であるということができ、最もシンプルな形をしている。より速く走るためにできるだけ軽くし、無駄なものを可能な限り排除した設計がなされている。そのため、積載能力や走行以外の二次的な用途を前提とした設計はあまり考慮されていない。なかには乗り手の体重制限を設けてまで素材の肉厚を切り詰め、軽量化を図ったフレームも存在する。

フレーム素材は、クロムモリブデン鋼(クロモリ)に代表される(スチール)、アルミニウム合金カーボンが主流である。またかつてはアルミ+スチールやアルミ+カーボンなどのハイブリッドフレームも販売されていた。2014年現在、トップカテゴリーではフルカーボンフレームが主流だが、入門用のものではアルミフレームも多く、スチールフレームは軽量化の面でアルミやカーボンに劣るためレースではほとんど使用されなくなったが、一般的に耐久性が高く長い期間使用できることやクラシカルな細身のフレームは独特の美しさを感じさせることもあり根強い人気がある。

ごくわずかだが荒れた路面での振動吸収を狙ったサスペンション機構を搭載する物も存在する。

ホイール[編集]

プロレース、ハイレベルなアマチュアにおいては、コースに応じて高速巡航時の空力性能に優れたエアロホイールや、ヒルクライムに適した軽量ホイールなどが使い分けられる。また、規定で認められている場合には直径が違うホイールを使い分けることもある。この場合には、規格の違うホイールはフレームに適合しないため、車両ごと交換が行われる。

規格[編集]

ロードバイクのタイヤは、700C、650C(26インチWO)。主流は 700C であり、ロードレースなど UCI 管轄の自転車競技で 700C 以外が使われることは稀だが、トライアスロン用機材を中心に 650C のものが存在する。650C のホイールは、700C よりも径が小さいことで空気抵抗の少ないポジションがとりやすくなるため、集団走行やドラフティング(他の競技者の真後ろについて空気抵抗を軽減する技術)が原則として禁止されているトライアスロンでは、650C は合理的な選択である。また、650C はタイヤの外径が小さいため、タイヤを回転させるためのトルクが小さく、さらにギア比も小さくなることから加速の点では有利である。そのため、一時期ロードレースでも山岳での勾配が険しいコースで用いる選手もいた。しかし、直進安定性、高速巡航性能、コーナリング特性は 700C に比べて劣っているというのが定説である。

製法による分類[編集]

ホイールには大きく分けて2種類の製品がある。

手組み(てぐみ)ホイール
従来からのタイプで、メカニックによって文字通り一つ一つのパーツから手で組まれたものをいう。ほぼすべてのパーツを自分の好みや用途、体型などさまざまな要素に合わせて選べるため、自分に合ったホイールを作ることができるという利点がある。また市販されている部品を使うため、補修、整備も容易である。現在では補修、整備の容易さからツーリング用に使われたり、完組みホイールに比べて安価なために練習に使われたりする場合が多い。全体としてのバランスはよいが、特化した性質がないのが欠点ともいえる。
完組み(かんぐみ)ホイール
1990年代に登場した、工場生産による市販の既製品である。機械による製造、あるいは熟練の担当作業員による組み立てによって、安定した品質の製品を大量に供給することが可能で、現在ではこのタイプが主流になりつつある[注釈 6]。すべてのパーツを専用に設計することもできるためスポークの本数を大きく減らしたホイールなども生産でき、平地巡航目的、山岳コース対応の軽量モデルなど、競技の設定に応じて専用設計が行える利点があるため、手組みに比べてレースに用いられることが多い。

構造[編集]

ホイールはハブ本体、リム、スポーク、ニップルから成り立っている。

ハブ本体
ホイールの中心にある回転部分。良いホイールはハブ本体のベアリングの精度が良いか、ハブ本体が軽量に作られている。ハブの本体はアルミ製が多いが、軽量を謳っているモデルは負荷の少ない部分にカーボンを用いることもある。現在は後輪用のオーバーロックナット寸法は130mmが主流であるが、20年ほど前までは126mm、また、現在は少ないが120mmのものも存在する。
リム
ホイールの外周部にあたるリムは、素材として主にアルミが用いられるが、高級モデルを中心にカーボンを用いたものも存在する。ちなみに、レースの世界ではほとんどがカーボン製のリムを使用している。また昔ながらの木製リムもわずかではあるが流通している。マグネシウムのリムも一部流通しているが主流となり得るほどのバリエーションは存在しない。さまざまな形状があるが、大別すると通常のリムと平地巡航能力を上げたディープリムがある。ディープリムは重量で劣るが、空気抵抗の減少によって高速巡航能力が上がるように設計がなされている。
スポーク
スポークの材質には、ステンレスや鉄、チタンなどがある。一般的にはステンレスが使われているが、完組みホイールではアルミスポークを採用したものもある。チタンは大変高価でありながら伸びやすいため、普及してはいない。また、わずかではあるが非金属製スポークも存在する。また、空力抵抗の問題から、スポークの中心部を平らにつぶして空気抵抗を減らしたエアロスポークも利用されるほか、スポークではなく一体成形のディスクを採用したホイールも存在する。ただし、ディスクホイールは風が抜けないので、横から強風を受けると転倒の原因にもなり、また、質量面でも不利であるためトライアスロンタイムトライアル(TT)など、使用環境は限定的といえる。

タイヤ[編集]

ロードバイクのタイヤは軽量性が重視されるため、トラックレーサーと並んで細いタイヤが用いられ、タイヤ幅は18 - 25mm程度が主流である。コースやコンディションによってはタイヤの直径を増やすことにより、エアボリューム増による振動減少を狙って25mm幅程度のものも使用されることがある。また、アルミフレームの完成車では25㎜を標準装着とするモデルが増えている。ただし、タイムトライアル用のフレームなど、設計によってはチェーンステイ長をギリギリまで切り詰めているため、23mm幅のタイヤでさえ取り付けられないフレームも存在する。

ロードバイクのタイヤの種類には、チューブラークリンチャー(またはワイヤード・オン、略して WO)の2つの方式がある。また、マウンテンバイクでは一般化されているチューブレスタイヤの開発も進められているが今のところ実用化に成功しているのは IRC 社とハッチンソン社のみである。

レース用機材としてはチューブラーが一般的であるが、近年はクリンチャータイヤの性能も大きく向上しており、整備性やコスト面から、ホビーレーサーの間ではクリンチャーを採用するロードバイクも少なくない。しかし、近年一般的になりつつあるカーボンホイールにおいては、カーボンの強度上、エッジを作ることが難しいため、チューブラータイヤが一般的である。

コンポーネント[編集]

コンポーネントそのものは1970年代から存在していたが、1980年代までは各種変速機のみ製造していたメーカーが存在し、好みに応じて選択することもあった。現在では、コンポーネントとしてひとまとめに選択・使用するのが普通である。コンポーネントとは、クランク、チェーン、前後変速機、前後ブレーキ、ブレーキレバー、多段ギア(カセットスプロケット)、前後輪ハブなど、自転車を構成する主要な部品をまとめた呼び方である。

サドル[編集]

かつてはロードバイクでも一枚革をサドルフレームに鋲で張った革サドルが主流であったが、1970年代頃よりプラスチックベースに緩衝材を挟み込んで表面に薄い革もしくは合成皮革を張ったプラスチックサドルが出回り始める。サンマルコ社のコンコール、ロールスや、セラ・イタリア社のターボシリーズなど定番商品が登場し、完全にプラスチックサドルが主流となった。

現在では、サドルのレールやベースにカーボンやチタンといった軽く振動吸収の高い素材を使用したモデルもあり、合成皮革すら貼っていない「成型されたカーボンの板」そのものを用いることによって軽量性に特化したサドルも存在する。

ロードバイクは軽量に作られるため、サドルも薄く、乗り心地の悪いことが普通であった。これらは尿道を圧迫するなどして、乗り手が苦痛を感じることもあった。この対策として、サドルの中央から後部に溝を入れたり、中央に縦に穴を空けたサドルが登場した。サドルの前の方、尿道などがあたる部分に溝や穴を設け、圧力がかからないように工夫されたり、また、女性ライダーの増加にあわせて、サドルの後部を広くした女性用モデルも発売されている。しかし、近年では徐々に穴や溝がないモデルへの回帰が進みつつある。また、プロ選手はほとんどこれらの穴空き・溝つきサドルを使用しない。

サドルの相性は個人差が大きく、価格だけでは必ずしもその性能を評価できない。気に入ったサドルを長年使い続ける選手も多く、ランス・アームストロングのコンコールライト(刺繡なし)やマリオ・チポリーニのリーガルなどが有名である。日本人でも藤野智一は引退までロールスを愛用し続けた。

ハンドル[編集]

アルミもしくはカーボンのドロップハンドルが採用されている。通常はステムを介してフロントフォークと結合されるが、近年ではプロ用機材を中心にステム一体型のハンドルも登場している。1900年代ツール・ド・フランスに使われた自転車ではドロップハンドルはまだ主流ではなく、セミドロップハンドルに近い形をしており、ハンドル形態は未完成だった。1910年代になって、ドロップハンドルがロードバイクのハンドルとして定着し、現在に至っている[注釈 7]

ペダル[編集]

ロードバイクのほとんどが足をペダルに固定できるビンディングペダル(クリップレスペダル)を使用する。多種多様なビンディングペダルが市場に出回っており、好みに応じて選択することが多い。ロードバイクのペダルは力をあますことなく伝達することに特化しており、留め具であるクリートが大きく、サイクリングシューズを履いたままでの歩行は難しい。そのため歩行の容易なMTB用のビンディングも広く使用されている。

ギア[編集]

MTB のクランクはトリプルで前3枚歯に対し、ロードバイクは前2枚歯が一般的である。チェーンリングは52Tと39Tのダブルギアが一般的であるが、ヒルクライム用として50Tと34Tのコンパクトクランクも使われている。

スプロケットの枚数は、ロードバイク、MTB ともに一番多いもので11枚である。ロードバイクのスプロケットのローギアは、シマノで32T、カンパニョーロで29Tが最も低いギア比となっている。

カンパニョーロは11段変速を先駆けて実現させたのに対し、シマノはアルテグラとDURA-ACEを電動化させた。2015年現在では、両社とも11段変速、電動化させた製品を提供している。

主なロードバイク・ブランド[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 変速機もすでに登場していたが、ツール・ド・フランスでは禁止されていた。
  2. ^ 当時はフロントはシングル、リア3速が一般的だった。
  3. ^ 正確には、パンタグラフ=菱形、ではなく、平行四辺形=パラレログラム
  4. ^ 2010年1月に東京都稲城市で起きたロードバイクとの衝突による歩行者の死亡事故では、「前傾姿勢で信号が見えにくい。仕方がない」[2]「自転車の構造上、下向きになり、ヘルメットもかぶっていたので、信号が見えにくかった」[3]という加害者側の主張が一部認められ、禁錮2年、執行猶予3年の有罪判決で結審している[3]
  5. ^ 最新の機材ではこれを下回ることも容易であり、プロ競技においてはバラストの装着、あるいはパワー測定装置など、質量はあるが競技において有利に作用する機材を装着して規定をクリアする場合もある。
  6. ^ しかし、特別な製品を除き、大多数の製品は競技など高いレベルでの使用を考慮した場合、手組ホイール同様にメカニックによる調律は必要である。
  7. ^ ただし、タイムトライアル競技、またはトライアスロン競技になるとこの限りではなく、空気抵抗を少しでも減らすためにブルホーンハンドルをもとに、ダウンヒルバーというアタッチメントがハンドル上部に装着される。

出典[編集]

  1. ^ 大辞林より。
  2. ^ 東光宏. “自転車に家族を殺されるということ”. 2015年3月24日閲覧。
  3. ^ a b 命奪う一瞬の不注意”. 読売新聞 (2015年3月5日). 2015年3月24日閲覧。
  4. ^ Weight Weenies WEIGHTWEENIES”. 2015年3月24日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]